出版社 : 双葉社
人呼んで“南海の松”。若き日、南海の海を股にかけて暴れまくった男。その流浪と浪曼。彼の行くところ、つねに波瀾が待っていた。酒、女、博奕、そして喧嘩につぐ喧嘩の日々。血の滾り。その愚連隊魂は日本中の親分を震えあがらせた。北海道伝説のヤクザ・“南海の松”こと松田武嗣の破天荒一代。
単身赴任で独り暮しが始まった風見淳太郎にとって、最大の悩みは“退屈”だった。なにせ酒は飲めない、スポーツは嫌い、ギャンブルも体質的に駄目とあっては時間の潰し様が無いではないか。ふとした事で他人の手紙を盗み読みした瞬間、無上の悦楽を感じますますその悪癖にのめり込んで行く。しかしそれが連続殺人につながり警察の目が光り出す…。
定年退職した元刑事の武井京人は、別にペンネームを持つほどその地方では知られたコラムニストであることから、刑務所内の文芸誌の選者をしている。彼が入選を決めた読書感想文の主の希望で会ってみると、数年前に他県から逃げこみ、逮捕し護送役も務めた殺人犯・安永哲夫であった。奇遇に驚く武井に、懲役15年の長期囚の安永は、妹朝子の消息を調べてほしいという。やっと探しあてた武井が朝子の住まいを訪ねると…。
“仮面”を替えたまま日常空間で演じる、妖しい魅力にとり憑かれた小川弓子と小川五月の“女ふたり”。魔訶不思議な世界を精巧な筆致で描く、直木賞作家の長編幻想ミステリー。
高名な詩人を父に持つ武井遵は複雑な生い立ちとつねに犯罪の影がつきまとう男だった。父の名は金素雲、詩才豊かなばかりでなく日韓文化交流にも多大な貢献をした人物でもあった。その武井が実生活では宝石強奪強盗殺人事件、史上空前の26億円ニセ札事件と立て続けに引き起す。武井の屈折した人生の軌跡を丹念に辿り犯罪に至る過程をあぶり出す。
17歳でデビューして、仕事ばっかりしてきたんだもん。大人になんかなるひまなかったの。かせいでいるように見えたって、いつ飽きられるかわからない。ああ、人のうらやむ結婚もしたいし、不滅の名声もほしい。ほしくないのはあの“お母さん”だけ。わがまま少女漫画家・くればやし繭子の幸せさがしバトルロイヤル。
天下に威容を誇った大坂城の天守閣は、絢爛たる火焔の衣裳をまとって灼熱の光輝を氾濫させている。「お城は最後が一番美しい。これぞ、滅びの美学というものでありましょう」茶々はうっとりと微笑んだ。-ぶすぶすと余燼のくすぶる広大な焼跡に、無数の鴉が群れ、焼けただれた死肉をついばんでいる光景は、不気味な静謐ともいうべき地獄絵だった。
徳川幕府の天下平定は成った。が、豊臣家恩顧の武士の多くは、豊家再興を願って全国に散っている。その時期が到来するまで。薄田隼人こと岩見重太郎は、その剣名をもって諸国を巡り、豊家恩顧の武将に、大阪城にひとたび千成瓢箪の幟が立つ時は、秀頼公の許に駆せ参ずる様、盟約を結んでいた。いよいよ徳川、豊臣が覇を争う慶長水滸伝も佳境に。
世界的に有名な新進作曲家・小早川慎介が兵庫県六甲の自宅で死体で発見された。駆けつけた捜査員はすぐに青酸による死であることを察知した。捜査が進むにつれて、被害者と大学が同窓で同じ神戸に住む野沢夫妻の存在が事件に重要な関係を持つこと、被害者が遺した楽譜の中に暗号が隠されていること、またこの事件に関連があると思われる二つの殺人事件が存在したことが判明した。期待の新進気鋭が放つ書き下ろし長編傑作ミステリー。