出版社 : 国書刊行会
「あらゆる時代を通じて最も偉大な科学的探偵」ソーンダイク博士シリーズの全中短篇を新訳、初出誌等から貴重な挿絵・図版を収載した決定版全集。第二巻は、ソーンダイク博士の初登場作として執筆され、後に長篇に改稿された単行本未収録の中篇「ニュー・イン三十一番地」、イングランド南西端、ウルフ・ロック灯台周辺の海域を舞台にした倒叙物「死者の手」をはじめ、短篇集『大いなる肖像画の謎』(1918)から「パーシヴァル・ブランドの替え玉」他の2篇、さらにヒエログリフの印影に隠された謎を解く宝探し暗号小説「青いスカラベ」、証拠に付着した埃の顕微鏡検査から強盗殺人犯を追及する「ニュージャージー・スフィンクス」、干し草の焼け跡で発見された頭蓋骨の謎に挑む「火葬の積み薪」など、第一次大戦後に再開されたシリーズ7篇をまとめた短篇集『ソーンダイク博士の事件簿』(1923)を収録。付録エッセー「探偵小説の技法」、「『ソーンダイク博士の著名事件』まえがき」。
ル=グウィンがトールキンらと並べ名文家として名を挙げた、ケルトの魔法を歌う詩人にして神智学者である作家、ケネス・モリス。ダンセイニよりも神秘主義的と評されるその幻想小説を百年の時を経て集成した本邦初の単行本。
「あらゆる時代わ通じて最も偉大な科学的探偵」ソーンダイク博士シリーズの中短篇全42作品を完全新訳、初出誌等から貴重な挿絵・図版を収載した決定版全集。第一巻は、密室トリックで有名な「アルミニウムの短剣」など8篇を収めた記念すべき第一短篇集『ジョン・ソーンダイクの事件記録』(1909)と、「オスカー・ブロドスキー事件」をはじめとする、犯人視点で語られた犯行が探偵の捜査と推理により解明される過程を描く“倒叙”形式の発明で、ミステリ史に不滅の輝きを放つ『歌う骨』(1912)。里程標的短篇集リスト“クイーンの定員”にも選ばれた二冊を収録。付録エッセー「ソーンダイク博士をご紹介」。
少年を誘う不気味な古書店主、呪われた聖書台の因果、年代物の時祷書に隠された秘密、ジョン・ディーの魔術書の怪…ケンブリッジ大学図書館フェロー、英国書誌学会長を務めた特異な経歴の作家による、全14篇の比類なき書物愛に満ちた異色の古書怪談集!
舞台はニューヨーク。青年技師マック・アランには、長年温めていた壮大な計画があった。アメリカとヨーロッパを24時間で結ぶ“大西洋横断海底トンネル超特急プロジェクト”-。老獪な大銀行家ロイドの協力を仰ぎ、投資家からの資金集めに成功する。完成期限は15年…。未曽有の大工事に18万人の労働者を動員、人類史上かつてないプロジェクトがはじまった。爆発事故の大惨事、株の取り付け騒ぎ、労働者の暴動…。技師マック・アランがトンネルに捧げた挫折と歓喜の四半世紀を描く、ドイツSFの嚆矢!手塚治虫、筒井康隆両氏のエッセイも収録。
2016年に逝去した名匠、最後の短篇集。妻の死を受け入れられない男と未亡人暮らしを楽しもうとする女、それぞれの人生が交錯する「ミセス・クラスソープ」、一人の男を愛した幼馴染の女二人が再会する「カフェ・ダライアで」、ストーカー話が被害者と加害者の立場から巧みに描かれる「世間話」、記憶障害をもった絵画修復士が町をさまよい一人の娼婦と出会って生まれる奇跡「ジョットの天使たち」など、ストーリーテリングの妙味と人間観察の精細さが頂点に達した全10篇収録。
現代文学の新星、乗代雄介が15年以上にわたり書き継いだブログを著者自選・全面改稿のうえ書籍化!書き下ろし小説、『虫麻呂雑記』(140枚)を併録。
地上から人が消え、最後の一人として生き残ったケイト。彼女はアメリカのとある海辺の家で暮らしながら、終末世界での日常生活のこと、日々考えたとりとめのないこと、家族と暮らした過去のこと、生存者を探しながら放置された自動車を乗り継いで世界中の美術館を旅して訪ねたこと、ギリシアを訪ねて神話世界に思いを巡らせたことなどを、タイプライターで書き続ける。彼女はほぼずっと孤独だった。そして時々、道に伝言を残していた…ジョイスやベケットの系譜に連なる革新的作家デイヴィッド・マークソンの代表作にして、読む人の心を動揺させ、唯一無二のきらめきを放つ、息をのむほど知的で美しい“アメリカ実験小説の最高到達点”。
赤毛の青年ジェラルドが先祖ドム・マニュエルのロマンスを執筆中、悪霊が現われ、お前の肉体に乗り移って現世を引き受けてやろうと言う。申し出を受け入れたジェラルドは銀の馬カルキに跨り、彼方の都アンタンに向かった。あらゆる神の終着地である彼の地を統べる文献学匠になり代わり、その王座に座るつもりなのだ。その途上、不思議な鏡の魔力で、神話的人物、英雄たちへの転生を体験したジェラルドは、至上神としての己の運命を確信するのだがー文学の古典や歴史、神話の自在な変奏により展開される“造物主/詩人への悲歌”。
信仰に基づく理想的な社会の建設を目指して新天地に渡ったピューリタンたち。白人とインディアン、開拓者たちと滅びゆきし者の運命は激しく交錯する。新世代の若者たちとインディアンの人種を超えた絆、ロマンス、そして復讐劇…フェミニズムの文脈でも再評価著しい激動と葛藤の歴史ロマンス大河小説。
現代イタリア文学と聞いて思い浮かべるのは、エーコ、タブッキ、カルヴィーノ、ブッツァーティ、モラヴィア…しかし彼らがおもに活躍していたのは前世紀のこと。では、イタリアの文学は衰退したのかといえば、とんでもない、なぜこれまで紹介されてこなかったのか不思議に思える作家たちが山ほどいるのだ。本書はいまを生きる新しいイタリアの作家によるヴァラエティ豊かな作品を厳選した、本邦初の21世紀イタリア短篇アンソロジーである。普通の人々の生活に降りかかる移民・格差・人種問題、新しいセクシャリティのかたち、めくるめく幻想の世界、そして甘くほろ苦い少年少女時代の記憶ー現在のイタリア文学シーンを代表する13人が繊細に大胆に鮮烈に描く多様性にみちた15の短篇を収録。巻末に各作家・作品を詳述する解説を附す。
『大地』の著者の失われた作品、40年の時を経て…。主人公の天才児、ランドルフ(ラン)・コルファックスの成長物語。ランは人生の真実と意味を追い求めて、ニューヨーク、イギリス、パリに旅する。DMZ(非武装地帯)の警備に就いた韓国では、人生を一変する出来事に遭遇ーついに愛に辿りつく。ランは才気煥発なステファニー・コンに恋をする。彼女は中国人の父親とパリで暮らし、アメリカ人の母は彼女が六歳のときに家を出たまま音信不通であった。ふたりの若者は、真のアイデンティティーを模索する。ランは貪欲な知的好奇心に悩まされ、世の中で経験することを頭のなかに組み込もうと懸命になる。ステファニーは混血の生まれゆえに疎外感を抱き、自身の二つの文化のせめぎあいを解消しようともがく。しばらくぶりに再会を果たした二人を待ち受けていたものは、ランの英知をもってしても想像を絶する結末であった。『終わりなき探求』はパール・バックが生涯大切にしていたテーマの数々が織りなされ、読者を魅了する。最晩年の著者が情熱を傾けた、著者自身に最も近い作品として、パール・バックを長年愛読してきた何百万もの読者の心に響くだろう。
今は亡き大鉱山主の娘エリザベス・ブースは、ハドソン河畔にある古いカーペンター・ゴシック様式の屋敷に、夫ポールと暮らしていた。山師気質で粗暴なポールは、メディアコンサルタントとしての成功を目論見、いくつもの胡散臭い事業の立ち上げを画策し動き回っている。ひっきりなしに屋敷にかかってくるいくつもの電話、そして訪ねてくる怪しい男たち。彼らが交わす錯綜した会話の断片からは、CIA、FBI、放送局、種子販売会社、鉱山開発会社などの影が垣間見え、やがて巨大利権をめぐる遠大な世界的陰謀へと話は広がり、エリザベス自身もそこで起こる事件へと巻き込まれていく…全米図書賞受賞『JR』の作家ギャディスによる、一軒の屋敷を舞台に繰り広げられる、超絶技巧×超高密度文体のゴシック・サスペンス&黙示録的狂騒会話劇。(1985年作)