出版社 : 国書刊行会
笑いの大博覧会、復活!名翻訳家浅倉久志のライフワークである“ユーモア・スケッチ”ものを全4巻に集大成。第1弾は『ユーモア・スケッチ傑作展1』(全25篇)+単行本未収録作品20篇。
翻訳文学を求める熱心な編集者に告げておく。ピエール・マッコルランは、現代に復活させてしかるべき作家である。マッコルランを出す勇気と機略のある編集者がいたら、私はそのひとに敬意を表するだろう。--澁澤龍彦 アントナン・アルトー、レイモン・クノー、ボリス・ヴィアンらも熱愛してやまなかったフランスの小説家ピエール・マッコルラン。 奇妙で、ファンタスティックで、ユーモアに溢れるその傑作を集大成した、本邦初の3冊本選集がついに刊行。 第1回配本は、奇妙な笑い病のパンデミックがこの世を滅亡させる、世界終末論的疫病小説『黄色い笑い』。マルセル・シュネデールがマッコルランの最高傑作と絶賛したマンドラゴラ幻想小説『悪意』。長編2編を収録。ともに本邦初訳。
なぜ温暖化を阻止できなかったのか。 アメリカの地質学者が描く悪夢の2084年。 時は2084年。すでに世界は深刻な気候温暖化で危機に直面している。 21世紀初めの10年、20年間には深刻な影響が明らかだったのに、政治家や化石燃料推進派は科学的根拠を否定し続け、科学者の警告を握りつぶした。 2050年以降世界各地で未曽有の事態が進行し、2084年には人類は生存の危機に瀕している── 主人公の歴史記録の研究者(2012年生)が、なぜ温暖化を阻止できなかったのかという疑問を念頭に、世界各地の記者や学者の歴史証言を取材して執筆する形で綴られるディストピアSF小説。 *「あなたが生存を脅かす気候変動の不安で眠れないならば、ジェームズ・ローレンス・パウエルの『2084年報告書』を読むと、温暖化と闘って地球を救おうするリーダーを選ぶのに必死になるだろう」(マリ・クレール誌) *「実に怖い本だーー急いでしっかり行動しないとこうなる。そして本書にはどうやって変化を起こせるかの手がかりが満載であり、予言ではなく、フィクションである」(ニューヨークタイムズ紙ベストセラー著者ビル・マッキベン) *「未来からのこれらの報告はーー科学者、医師、司祭、大使、政治家、ツバルーー私に警告した。一日一日を無駄にできないことを教えてくれる。すべきことはたくさんある」(ジョージ・メイソン大学気候情報センター エドワード・マイバッハ) *「気候変動の甚大な影響が明らかな今、歴史家で優れた作家のジェームズ・パウエルは、切迫する潰滅的な気候変動を避けるために私たちがいま行動しなければ、恐ろしい地球規模の悪夢に直面することを伝える。本書を読んで変化を起こそう」ペンシルベニア州立大学教授マイケル・E・マン) 【目次】 第1部 旱魃と火災 第2部 洪水 第3部 海面上昇 第4部 氷 第5部 戦争 第6部 ファシズムと移住 第7部 健康 第8部 種 第9部 出口 第1部 旱魃と火災 第2部 洪水 第3部 海面上昇 第4部 氷 第5部 戦争 第6部 ファシズムと移住 第7部 健康 第8部 種 第9部 出口
《レギス3への着陸完了。サブ=デルタ92型砂漠惑星。われわれは第二手順に則ってエヴァナ大陸の赤道地帯へ上陸する》この通信から40時間後、まったく意味をなさない奇妙な音声を伝えてきたのを最後に消息を絶ったコンドル号を捜索するため、二等巡洋艦インヴィンシブル号は琴座の惑星レギス3に降り立った。そこは見わたす限りの広大な大地に生命の気配のない、赤茶けた灰色の空間であった。やがて、偵察のために投入された撮影衛星が人工的な構造物をとらえ、探索隊が写真が示す地点へと向かう。たどり着いたのは、奇怪な形状を有し廃墟と化した《都市》であった。《都市》の内部へと足を踏み入れ、調査を進める探索隊であったが、そこにコンドル号発見の知らせがもたらされる。急ぎ現地に向かった一行が目にしたのは、あたり一面に物と人骨が散乱し、砂漠にめり込んでそそり立つ、変わりはてたコンドル号の姿であった。謎に満ちたこの惑星でいったい何が起こったのか⁉ーー『エデン』『ソラリス』からつらなるファースト・コンタクト三部作の傑作のポーランド語原典からの新訳。 【目 次】 黒い雨 廃墟の谷間で コンドル 一人目 雲 ラウダの仮説 ロアン隊 敗北 長い夜 会話 不死身 訳者あとがき(関口時正) 解説 稼働する物語装置、星の啓示(沼野充義) スタニスワフ・レム年譜 黒い雨 廃墟の谷間で コンドル 一人目 雲 ラウダの仮説 ロアン隊 敗北 長い夜 会話 不死身 訳者あとがき(関口時正) 解説 稼働する物語装置、星の啓示(沼野充義) スタニスワフ・レム年譜
ウッドハウスの全小説中、否、世界文学史上、もっともイカれていて、ハチャメチャで、ナイスなキャラの持ち主といわれたフレッド伯父さんが、あのブランディングズ城で大暴れ。英国ウッドハウス協会の「一番好きな短編」投票でも堂々のトップを獲得した「ゆけゆけ、フレッド伯父さん」もあわせて収録。
「捨ててやった、クロードを。あのフランス人のドブネズミ」 あらゆるものに牙を剥き、すべての人間を敵に回す わきまえない女ハリエットの地獄めぐりがいま始まる…… 伝説の作家アイリス・オーウェンスの最高傑作にして 40年の時を超えて現代を撃つ、孤高の問題作! 〈この凄い小説の破天荒な語りを日本語にできるのは 渡辺佐智江さんしかいないと思い、薦めたらたちまち意気投合、 二人でオーウェンス・ファンクラブを結成した。 ぜひあなたも本書を読んで仲間入りを!〉若島正 真夏のニューヨーク、ハリエットは同居するクロードと仲違いしてアパートを追い出される危機に陥る。身を守るために悪戦苦闘する彼女を待ち受けていたさらなる地獄とは……速射砲のように放たれる、宗教・人種・セックス・フェミニズム等々のあらゆる問題を無差別攻撃した過激なセリフ、知的で過剰なユーモアにあふれた筆致で描かれる一人の女の残酷物語。『ロリータ』の版元オリンピア・プレスでポルノ作家として活躍し、スーザン・ソンタグをして「彼女は最先端(ヒップスター)」と言わしめた伝説の作家の鮮烈な第一長篇がついに邦訳!(1973年作)
残念ながら自分には いささか陰鬱な傾向があるに違いないーー 英国屈指のユーモア作家に隠された、もう一つの顔。 ユーモア小説『ボートの三人男』で知られるジェローム・K・ジェロームによる異色作品集。 西洋骨董のように古風な趣と気品をそなえた、知られざる逸品の数々。 心和ませる幽霊小説、冷たく怖い怪奇小説、優しく美しい幻想小説、不思議な現代ファンタジイ、数千年の時を跨ぐケルト・ファンタジイ等々、多彩な味わいの奇譚17篇を収録。 1篇ごとに異なる魅力の、世にも稀なる短篇小説集。 【目次】 食後の夜話 ダンスのお相手 骸骨 ディック・ダンカーマンの猫 蛇 ウィブリイの霊 新ユートピア 人生の教え 海の都 チャールズとミヴァンウェイの話 牧場小屋(セター)の女 人影(シルエット) 二本杉の館 四階に来た男 ニコラス・スナイダーズの魂、あるいはザンダムの守銭奴 奏でのフィドル ブルターニュのマルヴィーナ 訳者あとがき 食後の夜話 ダンスのお相手 骸骨 ディック・ダンカーマンの猫 蛇 ウィブリイの霊 新ユートピア 人生の教え 海の都 チャールズとミヴァンウェイの話 牧場小屋(セター)の女 人影(シルエット) 二本杉の館 四階に来た男 ニコラス・スナイダーズの魂、あるいはザンダムの守銭奴 奏でのフィドル ブルターニュのマルヴィーナ 訳者あとがき
◆荒俣宏氏 「1ペニー恐怖文庫(ドレッドフル)」?!──近年、これが英語圏で大復活している。19世紀に大流行した娯楽小説群は、一般市民に読書という新趣味を広げる原動力となった。日本でいうなら、まさしく、山東京伝の黄表紙・曲亭馬琴の合巻にあたる。怪奇も残虐も色恋も陰謀も、同時代に生きた作者でないと書けない生々しさで、よみがえる。そしてついに、その代表作が、日本語で読める日が来た! ◆1516年、ドイツ〈黒き森〉。嵐が吹きすさび、あたり一面を異様な轟音が覆いつくす漆黒の夜、老醜の境にあるヴァグナーは見知らぬ人物の訪問を受け、奇怪なる契約を交わす。それは、若さと美貌、富と不死の命を手に入れる代価として狼に変身する運命を背負うというものであった。それからおよそ5年後、フィレンツェでも指折りに大きな城館の、贅を尽くした家具調度の揃う一室で、リヴェロラ伯爵アンドレアは死の牀にあった。父に寄り添う二人の姉弟ニシダ姫とフランシスコに伯爵は、自らとリヴェロラ家にかかわる秘密を明らかにしてくれるものが収められているという秘密の衣裳室の鑰を渡し、フランシスコが婚姻を果たすその日に扉をあけるよう遺言を残して息絶える。父の死を看取り二人はそれぞれの寝所に戻るが、ほどなくして、艶やかな黒い瞳に不吉とも言える異様な光を宿らせたニシダ姫は、フランシスコの部屋に忍びこんで鑰を盗みだし、秘密の衣裳室へ歩を進めていく。数日後、伯爵の葬儀が執り行なわれ、そこに若さを取り戻したヴァグナーの姿があったーー交錯する愛憎と怨恨、野望と戦乱、フィレンツェ、コンスタンチノープル、エーゲ海のロードス島、さらには地中海のいずことも知れぬ孤島を舞台に繰り広げられる、ゴシック・ロマンスの後裔ともいうべき波瀾万丈の物語がここに開幕!
《ベルギー幻想派の最高峰》 ジャン・レー/ジョン・フランダースの決定版作品集! 現代ゴシック・ファンタジーの最高傑作『マルペルチュイ』待望の新訳に加えて、ほとんどの収録作が初訳となる、幻の本邦初紹介短篇集2冊、枠物語的怪奇譚集『恐怖の輪』とJ・フランダース名義の幻想SF小説集『四次元』を収録。 飽くなき生への歓喜と病的でグロテスクな想像力を混淆させ、幻怪で濃密な文体によって独自の世界を創造した、作者絶頂期の精華を集大成。 *** 【収録作】 『マルペルチュイ 不思議な家の物語』 Malpertuis: Histoire d’une maison fantastique 大伯父カッサーヴの奇妙な遺言に従い、莫大な遺産の相続と引き換えに〈マルペルチュイ〉館に住まうこととなった一族の者たち。 幽囚のごとき彼らが享楽と色恋に耽る一方、屋敷の暗闇には奇怪な存在がひそかに蠢き、やがて、住人たちが消える不可解な事件が立て続けに起こる。 一族の若き青年ジャン=ジャックはこの呪われた館を探索し、襲い来る幾重もの怖ろしい出来事の果てに、カッサーヴの末裔たちが抱える驚くべき秘密と真実に辿り着く…… 満を持して新訳となる、ジャン・レーの代表作にして、『ゴーメンガースト』『アルゴールの城』に比肩する現代ゴシック・ファンタジーの最高傑作。 『恐怖の輪 リュリュに語る怖いお話』 Les Cercles de l’épouvante 中世騎士の義手が引き起こす怪、ディー博士の魔術道具の呪い、怪鳥ヴュルクとの凄絶な戦い…… 幾重もの恐怖の輪が環をなす、収録11篇中10篇が本邦初訳の、父が愛娘に語る枠物語的怪奇譚集。 『四次元 幻想物語集』 Vierde Dimensie: fantastiche verhalen 自動人形に宿った死刑囚の魂の怪、顕微鏡の中に現れた小さな老人の化物、奇妙な逃亡呪術を用いる殺人犯を追う刑事…… 収録全16篇が本邦初紹介となる、ジョン・フランダース名義のオランダ語怪奇幻想・SF・ミステリ短篇集。 *** 装幀:坂野公一(welle design) 装画:ジャン・デルヴィル「メドゥーサ」(1893) 扉画:フェルナン・クノップフ「ブリュージュにてーー正門」(1904頃)
幻想文学新人賞(選者=澁澤龍彦・中井英夫)と群像新人文学賞の鬼才、高原英理の怪奇恐怖小説を集大成。都市幻想を描く「町の底」、ゾンビの愛の物語「グレー・グレー」など、伝説的なホラー小説集『抒情的恐怖群』の全7編に、「 闇の司」「 水漬く屍、草生す屍」「かごめ魍魎」など5編を増補。「ホラーの古典的素材を昇華させ、巧緻な語りの技術で幻惑的な幻想小説に仕上げた」と絶賛された中短編小説。 京極夏彦氏推薦!「幻想を言葉にするのではない、言葉が幻想なのだ。戦慄を飼いならした小説ではない、小説が戦慄せしめるのである。高原英理の紡ぐ殺ぎ落とされた幻想と幻想の行間に、我々は己の儚さを知り、ただ戦慄するのである。」 【目次】 1 町の底 呪い田 帰省録 緋の間 2 樹下譚 グレー・グレー 影女抄 3 闇の司 4 水漬く屍、草生す屍 かごめ魍魎 よくない道 日の暮れ語り 後 記 1 町の底 呪い田 帰省録 緋の間 2 樹下譚 グレー・グレー 影女抄 3 闇の司 4 水漬く屍、草生す屍 かごめ魍魎 よくない道 日の暮れ語り 後 記
最後の危険なアンソロジーがついに登場! 〈異邦の宇宙船が舞い降りた……何かが起こる、 誰も逃げられない……少年トミーだけは気づいていた〉 破滅SFの傑作として名高い表題作のほか、 日本を代表するSF翻訳家:伊藤典夫が独自の審美眼で精選した全8篇。 これにて〈未来の文学〉シリーズ完結。 アンソロジー〈未来の文学〉第三弾は、長年「自ら見いだして気に入った作品のみ」を翻訳してきた伊藤典夫が厖大な短篇群から厳選した真の傑作集。異星人による侵略を少年の視点から緻密かつ鮮烈に描いた、知られざる傑作として名高いドゾワの表題作のほか、 “世界第八の不思議”に出会った忘れがたき一夜をノスタルジックに語る名品、ファーマー「キング・コング墜ちてのち」、宇宙からもたらされた未知の文明をめぐる葛藤の物語、ジョーンズ「神々の贈り物」、〈神の高速道〉の秘密に挑んだ者たちが見た目眩くヴィジョン! 華麗な文体で彩られたハリスン「地を統べるもの」、宇宙船にひそむ謎の存在との対決がサスペンスフルに展開するナース「偽態」、心優しい異星人が“ショウほど素敵な商売はない”ことを発見する涙ぐましいコメディ、モレッシイ「最後のジェリー・フェイギン・ショウ」、2045年核時代の到来百年祭でアメリカが計画したイベントとは……オールディスの問題作「リトルボーイ再び」、核戦争を生きのびた人々を待ち受ける極寒の世界ーーヒューゴー賞受賞の名作、ポール「フェルミと冬」の全8篇を収録。 収録作品: アラン・E・ナース「偽態」 レイモンド・F・ジョーンズ「神々の贈り物」 ブライアン・オールディス「リトルボーイ再び」 フィリップ・ホセ・ファーマー「キング・コング堕ちてのち」 M・ジョン・ハリスン「地を統べるもの」 ジョン・モレッシイ「最後のジェリー・フェイギン・ショウ」 フレデリック・ポール「フェルミと冬」 ガードナー・R・ドゾワ「海の鎖」 収録作品: アラン・E・ナース「偽態」 レイモンド・F・ジョーンズ「神々の贈り物」 ブライアン・オールディス「リトルボーイ再び」 フィリップ・ホセ・ファーマー「キング・コング堕ちてのち」 M・ジョン・ハリスン「地を統べるもの」 ジョン・モレッシイ「最後のジェリー・フェイギン・ショウ」 フレデリック・ポール「フェルミと冬」 ガードナー・R・ドゾワ「海の鎖」
英国王室御用達、笑いの大巨匠、あのウッドハウスの新シリーズ登場!! P・G・ウッドハウスの未知の傑作小説を続々と紹介。第1回は、百万長者のうえに容姿端麗、気立てもバツグンだけど、ちょっとおまぬけな青年紳士ボドキン君が主人公。豪華客船を舞台に、ワニを飼うお騒がせの人気赤毛女優、問題の多い変人客室乗務員、へーゼル色の瞳の女子ホッケー選手などなど、いつもの奇人と怪人たちが船上狭しと大活躍。最上質爆笑保証付きの至高の名作、本邦初訳。
仕事か恋愛か? ロンドンに同居する義姉妹それぞれの恋愛を 1930年代戦間期のモータリゼーションにのせ結末のカタルシスへーー エリザべス・ボウエンの長篇第4作 〈ボウエン・コレクション2〉第3回配本 エメラインは25歳、兄ヘンリーがセシリアと結婚して1年足らずで他界した機縁から、義姉セシリアとロンドンにあるフラットを共有し暮らしている。優雅で怠惰な未亡人のセシリア、マイカーを持ち旅行会社を営む20世紀のキャリアウーマンのエメライン。セシリアはイタリアから帰る急行列車の車中で、法廷弁護士マーキーと知り合う。世慣れたマーキーはまもなくエメラインに接近し、飛行機でパリに遊ぶ仲に。セシリアは無難で裕福なジュリアンから求婚される……。結末のカタルシスは? 「ページを開けばすぐに物語が動きだし、 会話だけ追っていけば話の大筋がわかってしまうという 読者に媚びを売るサービス小説の対極にあるのが、 エリザベス・ボウエンの作品だ」 豊崎由美氏推薦!
オーストリア・シュタイアーマルク州北部に、ヘリアナウという全寮制の学校がある。インディゴ症候群を患う子供たちのための学園だ。この子供たちに接近するものはみな、吐き気、めまい、ひどい頭痛に襲われることになる。新米の数学教師クレメンス・ゼッツはこの学園で教鞭をとるうちに、奇妙な事象に気づく。独特の仮装をした子供たちが次々と、車でどこかに連れ去られていくのだ。ゼッツはこの謎を探りはじめるが、進展のないまますぐに解雇されてしまう。その15年後、新聞はセンセーショナルな刑事裁判を報じる。動物虐待者を残虐な方法で殺害した容疑で逮捕されていた元数学教師が、釈放されたというのだ。その新聞記事を目にした画家のロベルト・テッツェルはかつての教え子として、ゼッツが手を染めたかもしれない犯罪の真相を追いかけていくー軽快な語り口と不気味さが全篇を覆い、独特な仕掛けがさまざまな読みを可能にする。既存の小説の枠組みを破壊して新しい文学の創造を目指した、神童クレメンス・J・ゼッツの野心溢れる傑作長篇。
探偵小説黄金時代に入り、さらに円熟味を増すソーンダイク博士探偵譚。第3巻収録の短篇集『パズル・ロック』『魔法の小箱』は毒殺、暗号、アリバイ、幽霊出現など多彩なテーマと独創的なトリックの宝庫! ジョン・ソーンダイク博士は、20世紀初めに数多登場したシャーロック・ホームズのライヴァルたちの中でも最も人気を博した名探偵である。当時最新の科学知識を犯罪捜査に導入、顕微鏡をはじめ様々な実験器具を用いて証拠を調べ、事件の真相をあばいていく法医学者ソーンダイクの活躍は読者の喝采を浴びた。また短篇集『歌う骨』では、最初に犯人の視点から犯行を描き、次に探偵が手がかりを収集して謎を論理的に解き明かす過程を描く「倒叙ミステリ」形式を発明した。真相解明の推理のロジックに重きを置いた作風は、現在も高く評価されている。本全集は、ソーンダイク博士シリーズの中短篇42作を全3巻に集成、初出誌から挿絵や図版を収録し、完全新訳で贈る、探偵小説ファン待望の決定版全集である。 《パズル・ロック》 パズル・ロック 緑のチェックのジャケット ネブカドネツァル王の印章 フィリス・アネズリーの危難 疫病をまき散らす者 バーナビー事件 砂丘の謎 バーリング・コートの幽霊 謎の訪問者 《魔法の小箱》 魔法の小箱 箱の中身 巧妙な隠れみの 法廷の博物学者 ポンティング氏のアリバイ パンドラの箱 巨獣の手がかり 急を救う病理学者 瓦礫で集めた情報 付録 キングズ・ベンチ・ウォーク五A番地(パーシヴァル・メイスン・ストーン) 解説 渕上痩平
『宝島』『ジキル博士とハイド氏』で名高い、英国の文豪スティーヴンソンの知られざる傑作小説。 恐怖の爆弾テロリストたちの暗躍を物語の経糸にして、黄昏の世紀末ロンドン、合衆国の荒野、はたまたカリブ海の小島を舞台に繰り広げられる、怪奇で波瀾万丈な奇談の数々。ドイルやマッケンにも大きな影響を与えた連作小説、本邦初訳なる!!
〈ボウエン・コレクション2〉全3巻 第1回配本! 20世紀英国文壇を代表する作家エリザベス・ボウエン。 1920-30年代という戦間期の不安と焦燥を背景に、 ボウエンならではの気配と示唆に浮かぶ男女の機微ーー。 本邦初訳の初期小説三冊を集成した待望のコレクション。 イタリア・リヴィエラ海岸のホテルはホリデー客でにぎわっている。医者になりたいシドニー・ウォレンは受験の疲れを癒しに、束の間ここにきている。彼女は倦怠感を漂わせる未亡人ミセス・カーに心惹かれる。ミセス・カーには20歳の息子ロナルドがいて、ドイツからここにやってくるという。ミルトン牧師、ロレンス三姉妹、第一次大戦の後遺症に悩む青年アメリングをまじえ恋がもちあがり……。イギリスの風習喜劇の雰囲気と1920年代戦間期の不安な心理を、地中海の陽光まぶしいひと夏に鮮やかに浮かび上がらせたボウエンの手腕、長篇デビュー作。 豊崎由美氏推薦! 「ボウエンは会話だけでなく、描写によってそこで何が起きているのかを示す。登場人物の行動、いる場所、そばにある物、聞こえている音、すべての描写を総動員させて、ボウエンは登場人物の発する言葉の背後にある気持ちや意味、それが発せられた理由となる過去を匂わせる。 だから、一行たりとも読み飛ばせない。丁寧に文章を追っていく読者だけが、ボウエンがそこここに仕掛けている小説の技巧に舌を巻き、物語全体の絵柄が浮かび上がってきた時の喜びを得ることができるのだ」(パンフレットより抜粋) 太田良子(訳者) 「エリザベス・ボウエンは1899年にアイルランドのダブリンで生まれ、1973年にイングランドのロンドンで死去した。文字どおり20世紀と共に生きたボウエンは、二つの祖国を持ち、300年間イングランドの植民地だったアイルランドの宿命的な独立戦争、世界を荒廃させた二度の世界大戦に関わって創作活動の根底に置き、長篇小説10篇と短篇小説約100篇を書いた。今回の〈ボウエン・コレクション2〉に入った『ホテル』は彼女の初めての長編小説で、先行の〈ボウエン・コレクション〉の『エヴァ・トラウト』はボウエンが完成させた最後の小説であり、ボウエンの小説全10冊が国内ですべて刊行されることになった。ボウエンの作品は21世紀の今、文学や歴史や世界観の新しい潮流を検証する意味であらためて評価が進む一方、ボウエンは緑の国アイルランドのホスピタリティと、美しい庭園を持つ荘園屋敷を受け継ぐイングランドの文化を愛して作品に籠め、移り替わる自然を、春夏秋冬、忘れられない美しいシーンにして数多く描き出している。白いモスリンのドレスの少女、断髪にして短いスカートでロンドンを闊歩する女は、それぞれに時代を表わし、ヒロインが運転するダイムラーやジャガーは、時代の先端を行く高級車である。小説や短篇のヒロインを通してフィクションが見せる広い世界の可能性を切り開いた点から見ても、エリザベス・ボウエンは他の追随を許さぬ作家である」(パンフレットより)
風変わりな若い妻を迎えた男 秋の新婚の旅は 〈夜の宮殿〉その他の街を経て、機械の山へ 舞踏と浮遊/夜の芝地を埋め尽くす不眠の観衆たち/幾つかの寝室と寝台の謎 圧倒的なるイメジャリーに満ちみちた驚異と蠱惑の〈旅〉のものがたり 付・巻末「短文集」
ジョン・ソーンダイク博士は、20世紀初めに数多登場したシャーロック・ホームズのライヴァルたちの中でも最も人気を博した名探偵である。当時最新の科学知識を犯罪捜査に導入、顕微鏡をはじめ様々な実験器具を用いて証拠を調べ、事件の真相をあばいていく法医学者ソーンダイクの活躍は読者の喝采を浴びた。また短篇集『歌う骨』では、最初に犯人の視点から犯行を描き、次に探偵が手がかりを収集して謎を論理的に解き明かす過程を描く「倒叙ミステリ」形式を発明した。真相解明の推理のロジックに重きを置いた作風は、現在も高く評価されている。本全集は、ソーンダイク博士シリーズの中短篇42作を全3巻に集成、初出誌から挿絵や図版を収録し、完全新訳で贈る、探偵小説ファン待望の決定版全集である。 第2巻は、後に長篇に改稿された単行本未収録の中篇「ニュー・イン三十一番地」、海を舞台にした倒叙物「死者の手」を巻頭に、短篇集『大いなる肖像画の謎』(1918)から「消えた金貸し」など2篇、さらに作者のエジプト趣味も窺える宝探し暗号小説「青いスカラベ」や、証拠に付着した埃の顕微鏡検査から強盗殺人犯を追及する科学者探偵の本領発揮の「ニュージャージー・スフィンクス」など、第一次大戦後に再開されたシリーズ7篇をまとめた短篇集『ソーンダイク博士の事件簿』(1923)を収録。付録エッセー「探偵小説の技法」他。 【目次】 ニュー・イン三十一番地 死者の手 《大いなる肖像画の謎》 パーシヴァル・ブランドの替え玉 消えた金貸し 《ソーンダイク博士の事件簿》 白い足跡の事件 青いスカラベ ニュージャージー・スフィンクス 試金石 人間をとる漁師 盗まれたインゴット 火葬の積み薪 付録1 『ソーンダイク博士の著名事件』まえがき 付録2 探偵小説の技法 解説 渕上瘦平 ニュー・イン三十一番地 死者の手 《大いなる肖像画の謎》 パーシヴァル・ブランドの替え玉 消えた金貸し 《ソーンダイク博士の事件簿》 白い足跡の事件 青いスカラベ ニュージャージー・スフィンクス 試金石 人間をとる漁師 盗まれたインゴット 火葬の積み薪 付録1 『ソーンダイク博士の著名事件』まえがき 付録2 探偵小説の技法 解説 渕上瘦平