出版社 : 国書刊行会
澁澤龍彦生前に企画されながらも実現を見ずに終った幻の選集が、半世紀の歳月を経てついに刊行。 最終第4巻は高野聖、天守物語、通夜物語、活人形、式部小路、化鳥、処方秘箋、山僧、絵本の春、祝杯、全10篇を収める。三島由紀夫と澁澤の伝説の対談「鏡花の魅力」も収録。全巻ついに完結。 高野聖 化鳥 通夜物語 活人形 処方秘箋 式部小路 山僧 天守物語 絵本の春 祝杯 鏡花の魅力(三島由紀夫×澁澤龍彦) 解説 山尾悠子
ル゠グウィンがトールキンやエディスンと並べ、名文家として名を挙げた、ケルトの魔法を歌う詩人にして神智学者である作家、ケネス・モリス。ダンセイニよりも神秘主義的と評されるその幻想小説を百年の時を経て集成した本邦初の単行本。 人は誰も宇宙の根源的な霊の一部、天の炎を内に秘めており、いつかその源に還るまで、魂を進化させることが人間の使命であるーー 東西の神話や伝説、音楽や色彩、動植物や鉱石、天の神秘と豊饒なる大地に題材を得て、詩情に満ちた文体で綴られた、読むことがそのまま喜びであるような体験を与えてくれる29の幻想物語。 装幀 白座 装画 林由紀子「夜明けに開く薔薇」 東と西 王と三人の行者 薔薇と杯 詩人ハーリド 幼子アポロンの神殿 北の統治者 ヴァイオリニストの夢 ティタニアが摘んだ花 牧神の戯れ アル・カドルの夜 白禽の宿 眼のない龍 紅桃花渓 故郷へ 子守パーリ ショーン・アプ・シェンキン 山のデイオ 物語の彼方 人魚の悲劇 エヴァン・レイションの神曲 ドン・キホーテ最後の冒険 天上の音楽 ダフォディルの花 バッハのフーガ ニ短調 惑わしの打破 青玉の頸飾り 地獄と天国、そしてベートーヴェン 神と人 神の化身 神秘の山 智慧の林檎 勝利 惑星の王 聖者と森の神々 訳者解説 館野浩美
ジョン・ソーンダイク博士は、20世紀初めに数多登場したシャーロック・ホームズのライヴァルたちの中でも最も人気を博した名探偵である。当時最新の科学知識を犯罪捜査に導入、顕微鏡をはじめ様々な実験器具を用いて証拠を調べ、事件の真相をあばいていく法医学者ソーンダイクの活躍は読者の喝采を浴びた。また短篇集『歌う骨』では、最初に犯人の視点から犯行を描き、次に探偵が手がかりを収集して謎を論理的に解き明かす過程を描く「倒叙ミステリ」形式を発明した。真相解明の推理のロジックに重きを置いた作風は、現在も高く評価されている。本全集は、ソーンダイク博士シリーズの中短篇42作を全3巻に集成、初出誌から挿絵や図版を収録し、完全新訳で贈る、探偵小説ファン待望の決定版全集である。 第1巻は、「アルミニウムの短剣」他の有名作を含む記念すべき第一短篇集『ジョン・ソーンダイクの事件記録』(1909)と、倒叙形式の発明でミステリ史における里程標的短篇集『歌う骨』(1912)に、作者自身による名探偵紹介「ソーンダイク博士をご紹介」を収録。 《ジョン・ソーンダイクの事件記録》 まえがき 鋲底靴の男 よそ者の鍵 博識な人類学者 青いスパンコール モアブ語の暗号 清の高官の真珠 アルミニウムの短剣 深海からのメッセージ 《歌う骨》 まえがき オスカー・ブロドスキー事件 練り上げた事前計画 船上犯罪の因果 ろくでなしのロマンス 前科者 付録 ソーンダイク博士をご紹介 解説 渕上瘦平
少年を誘う不気味な古書店主、呪われた聖書台の因果、年代物の時禱書に隠された秘密、ジョン・ディーの魔術書の怪……ケンブリッジ大学図書館フェロー、英国書誌学会長を務めた特異な経歴の作家による、全14篇の比類なき書物愛に満ちた異色の古書怪談集! 【荒俣宏氏推薦!】 英国は「学者が怪談を書く」国だ。開祖M・R・ジェイムズは教室でホラーを朗読し、マンビーはナチの捕虜収容所でこれを書いた! 解説=紀田順一郎「怪奇小説の正統を目ざした文献学者」 前書き 甦ったヘロデ王 碑文 アラバスターの手 トプリー屋敷の競売 チューダー様式の煙突 クリスマスのゲーム 白い袋 四柱式ベッド 黒人の頭 トレガネット時禱書 霧の中の邂逅 聖書台 出品番号七十九 悪魔の筆跡 解説「怪奇小説の正統を目ざした文献学者」紀田順一郎
手塚治虫氏! 「SFベスト作品を挙げるようにいわれれば、 この『トンネル』を十指のなかに入れることにいささかもためらいはない」 筒井康隆氏! 「あの手塚治虫にヒントをあたえたほどの作品なら面白い筈と確信して読みはじめたのだが、たしかにこれは面白かった」 舞台はニューヨーク。青年技師マック・アランには、長年温める壮大な計画があった。アメリカとヨーロッパを24時間で結ぶ「大西洋横断海底トンネル超特急プロジェクト」--。老獪な大銀行家ロイドの協力を仰ぎ、投資家からの資金集めに成功する。完成期限は15年……。 未曽有の大工事に18万人の労働者を動員、人類史上かつてないプロジェクトがはじまった。爆発事故の大惨事、株の取り付け騒ぎ、労働者の暴動……。 技師マック・アランの波瀾万丈の四半世紀を描くドイツSFの嚆矢! 手塚治虫氏をして、初期長篇マンガ『地底国の怪人』を描かせた幻の翻訳書! 手塚治虫、筒井康隆両氏のエッセイも収録。 1913年刊行の25カ国で翻訳で翻訳されたドイツ初の国際的ベストセラー小説。若きヒトラーも読んだという。 現代に読みやすく、新字・新仮名、また漢字をひらき、満を持しての幻の翻訳書の復刻。 愛書家も満足の仮フランス装・筒函入。 第一編 第二編 第三編 第四編 第五編 第六編 訳者解説 秦 豊吉 忘れられない本 手塚治虫 ケッラアマン『トンネル』 筒井康隆 ドイツ出版界初の世界的ベストセラー 幻の訳書の復刻によせてーーケラーマンの『トンネルについて』 識名章喜
2016年に惜しくも逝去した名匠トレヴァー、最後の短篇集がついに登場。妻の死を受け入れられない男と未亡人暮らしを楽しもうとする女、それぞれの人生が交錯する「ミセス・クラスソープ」、一人の男を愛した幼馴染の女二人が再会する「カフェ・ダライアで」、ストーカー話が被害者と加害者の立場から巧みに描かれる「世間話」、記憶障害をもった絵画修復士が町をさまよい一人の娼婦と出会って生まれる奇跡「ジョットの天使たち」など、ストーリーテリングの妙味と人間観察の精細さが頂点に達した全10篇収録。 ピアノ教師の生徒 足の不自由な男 カフェ・ダライアで ミスター・レーヴンズウッドを丸め込もうとする話 ミセス・クラスソープ 身元不明の娘 世間話 ジョットの天使たち 冬の牧歌 女たち 訳者あとがき
『最高の任務』で第162回芥川賞候補となった現代文学の新星、乗代雄介がデビュー前から15年以上にわたって書き継いできたブログを著者自選・全面改稿のうえ書籍化。 総数約600編に及ぶ掌編創作群より67編を精選した『創作』、先人たちの言葉を供に、芸術と文学をめぐる思索の旅路を行く長編エッセイ『ワインディング・ノート』に書き下ろし小説『虫麻呂雑記』(140枚)を併録。 ◆推薦の言葉 『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』は下品極まりないものから唐突にピュアな青春ものまで、どのエチュードも強烈なビートを発しているが、「のりしろ」なる書き手は、少なくとも自分の想像上ではいつも真顔だった。己の技術を誇示したいのでもなく、誰かとつながろうとしているのでもない。ただ“書かずにはおれない”人。本で読める日をずっと待っていました。 高城晶平(cero) ◆『創作』 総数約600に及ぶ掌編「創作」より66編を著者みずから精選! デビュー以前から書き続けられた、文章による打ち壊し(ラッダイト)の記録。 ◆『ワインディング・ノート』 太宰治、サリンジャー、いがらしみきお、手塚治虫、宮沢賢治、カフカ、細野晴臣、スタインベック、村上春樹、cero、キェルケゴール……先人たちの言葉を供に、芸術と文学をめぐる思索の旅路を行く長編エッセイ。 ◆『虫麻呂雑記』 私は書こうとしている。野間文芸新人賞を受けるまでの半年間のこと、偶然出会ったデリヘル嬢を連れて万葉歌人・高橋虫麻呂の足跡をたどる小旅行、移ろう時間と風景、孤独と見ることについてーー。書きおろし中編(140枚)。
地上から人が消え、最後の一人として生き残ったケイト。 彼女はアメリカのとある海辺の家で暮らしながら、終末世界での日常生活のこと、日々考えたとりとめのないこと、家族と暮らした過去のこと、生存者を探しながら放置された自動車を乗り継いで世界中の美術館を旅して訪ねたこと、ギリシアを訪ねて神話世界に思いを巡らせたことなどを、タイプライターで書き続ける。 彼女はほぼずっと孤独だった。そして時々、道に伝言を残していた…… ジョイスやベケットの系譜に連なる革新的作家デイヴィッド・マークソンの代表作にして、読む人の心を動揺させ、唯一無二のきらめきを放つ、息をのむほど知的で美しい〈アメリカ実験小説の最高到達点〉。 「とりとめのない、ゆえに豊かな知的連想が、世界が終わった寂寥感と合流する、その独特さ。まさに唯一無二。」 柴田元幸 「地球最後の一人となってタイプを打つ女の物語に読者が共感するのは、書くのも読むのも孤独な営みだからだ。」 若島正 「究極の二十世紀小説はーー誰も書かなかったのでデイヴィッド・マークソンが書いたのだがーー正気を失った女が浜辺の家に暮らし、日々の出来事や思い出をタイプライターで綴りながら、そこに記された言葉と自分との関係の中にある絶対的本質をつかもうとする、そんな物語だ。」 訳者あとがきより 装画=ケッソクヒデキ 装幀=アルビレオ
澁澤龍彦生前に企画されながらも実現を見ずに終った幻の選集が、半世紀の歳月を経てついに刊行。 第3巻は草迷宮、戦国茶漬、照葉狂言、ななもと桜、化銀杏、夜行巡査、貴婦人、瓜の涙、全8篇を収める。あわせて、澁澤龍彦の名品「ランプの廻転」も収録。 草迷宮 戦国茶漬 照葉狂言 ななもと桜 化銀杏 夜行巡査 貴婦人 瓜の涙 「ランプの廻転」澁澤龍彦
澁澤龍彦生前に企画されながらも実現を見ずに終った幻の選集が、半世紀の歳月を経てついに刊行。我が国最高の幻想作家・鏡花の膨大な作品から、澁澤ならではの鑑識眼が選び抜いた約50篇を4巻で構成。 第2巻は眉かくしの霊、海神別荘、黒百合、沼夫人、髯題目、幻往来、蠅を憎む記、龍潭譚、玄武朱雀、ささ蟹、薬草取の全11篇を収録。 至高の審美眼が選りすぐった 天上界の作家の神品の数々 谷崎潤一郎も川端康成も決して連れていってくれない一種澄みきった天上界、そこへ連れていってくれるのが泉鏡花の文学だということを、三島さんはしきりに強調していたが、まったく私もその通りだと思う。いくら鏡花文学の構造を論じ、基層を論じ、文体を論じても、鏡花の幻想の翼に身みずから乗せられて、この天上界の至福に一挙に参入しえないひとは、不幸な読者というほかあるまい。 --------澁澤龍彦 澁澤・種村没後の索漠たる世界となった現在、いま望まれるのは澁澤セレクトによる鏡花選集である。遺された澁澤リストを見れば、偏りが大きいこと以上に数多くの魅力的な謎を孕んでいるようにも思われる。いかにも澁澤好みと誰もが頷く作も多ければ、意外なマッチングの選択もあり、また何故これを澁澤がと不思議に感じられるものも少なくはない。「半世紀も昔のほんの下書きのリスト、何を書いたか忘れてしまったよ」と泉下の氏には苦笑されてしまいそうであるが、それでも鏡花と澁澤龍彦、相対する二者の魅惑は互いに響きあい、興趣は尽きない。おぼつかぬことながら謎の一端なりとも追っていければと思う。 ---------山尾悠子(「第I巻解説」より) ◎鏡花没後80年記念出版 ★澁澤龍彦の生前、1970年代前半に企画されながらも、惜しくも実現を見ずに終った幻の選集が、半世紀の歳月を経てついに刊行。 ★我が国における最高最大の幻想作家・泉鏡花の膨大多彩な作品群から、澁澤龍彦ならではの鑑識眼が選び抜いた、小説・戯曲約50篇を4巻で構成。 ★各巻の解説は、鏡花作品をこよなく愛し、2018年には泉鏡花文学賞を受賞した山尾悠子が担当。各巻に、解説者が特に選んだ一作品も増補追加する。 ★装釘は、名匠・小村雪岱の鏡花本をあたうかぎり再現した。表紙や本扉はもちろんのこと、見返しも雪岱描き下ろしの絵を用いた、美麗な豪華愛蔵版。 眉かくしの霊 海神別荘 黒百合 沼夫人 髯題目 幻往来 蠅を憎む記 龍潭譚 玄武朱雀 ささ蟹 【山尾追加作品】薬草取 解説 山尾悠子
赤毛の青年ジェラルドが先祖ドム・マニュエルのロマンスの執筆に没頭していたところに、悪霊が現われ、お前の肉体に乗り移ってお前の現世を引き受けてやろうと言う。又従妹イヴリンとの不義の関係に手を焼いていたジェラルドは申し出をうべなう。さらに以前の魔術仲間から銀の馬カルキを贈られ、彼は勇んで彼方の都アンタンに向かう。あらゆる神の終着地である彼の地を統べる文献学匠になり代わり、その王座に座るつもりなのだ。その途上、不思議な鏡の魔力によって、プロメテウス、ソロモン、オデュッセウス、ネロ、タンホイザーと、ボルヘス「不死の人」のカルタフィルスにも見まごう転生を体験したジェラルドは、あらゆる神の上に立つ至上神としての己の運命をますます深く確信するのだがーー『黄金の驢馬』『ガルガンチュアとパンタグリュエル』『ファウスト』『ドン・キホーテ』などの自在な変奏により展開される〈造物主/詩人への悲歌〉。
信仰に基づく理想的な社会の建設を目指して新天地に渡ったピューリタンたち。白人とインディアン、開拓者たちと滅びゆきし者の運命は激しく交錯する。新世代の若者たちとインディアンの人種を超えた絆、ロマンス、そして復讐劇…フェミニズムの文脈でも再評価著しい激動と葛藤の歴史ロマンス大河小説。
エーコ、タブッキ、カルヴィーノだけじゃない、 もっと新しいイタリアの文学がここにある。 本邦初、21世紀イタリア短篇アンソロジーがついに登場! 13人の作家(うち11人が日本初紹介)による15の物語。 序文=小野正嗣 現代イタリア文学と聞いて思い浮かべるのは、エーコ、タブッキ、カルヴィーノ、ブッツァーティ、モラヴィア……しかし彼らがおもに活躍していたのは前世紀のこと。では、イタリアの文学は衰退したのかといえば、とんでもない、なぜこれまで紹介されてこなかったのか不思議に思える作家たちが山ほどいるのだ。本書はいまを生きる新しいイタリアの作家によるヴァラエティ豊かな作品を厳選した、本邦初の21世紀イタリア短篇アンソロジーである。普通の人々の生活に降りかかる移民・格差・人種問題、新しいセクシャリティのかたち、めくるめく幻想の世界、そして甘くほろ苦い少年少女時代の記憶ーー現在のイタリア文学シーンを代表する13人が繊細に大胆に鮮烈に描く多様性にみちた15の短篇を収録。巻末に各作家・作品を詳述する解説を附す。 〈『どこか、安心できる場所で 新しいイタリアの文学』は、文学というレンズあるいはマイクを通して、21世紀のイタリアの諸側面を伝えてくれる。ここに読める作品はほぼ同時代に書かれたという点を除けば、それぞれ主題も文体もまったく異なっている。本書だけからでも、イタリア文学の「いま」がどれほど多様で豊かなものであるかがたしかに感じ取れる。これを機会に、ここに紹介された作家や他の作家たちの作品が翻訳されることを切望する。僕たちには海外の文学を読むことが必要なのだ。イタリアの「いま」を描く、あるいはイタリアで「いま」書かれているこれらの作品を読むことで、それをいわば鏡にして、日本の僕たちは自分自身の姿を見つめ直し、自分が生きる「いま」がどのようなところなのかを確認することができるからだ〉(序文より) 小野正嗣 序文 小野正嗣 雨の季節 パオロ・コニェッティ 関口英子訳 働く男 ジョルジョ・フォンターナ 飯田亮介訳 エリザベス ダリオ・ヴォルトリーニ 越前貴美子訳 ママの親戚/虹彩と真珠母 ミケーレ・マーリ 橋本勝雄訳 わたしは誰? イジャーバ・シェーゴ 飯田亮介訳 恋するトリエステ ヘレナ・ヤネチェク 橋本勝雄訳 捨て子 ヴァレリア・パッレッラ 中嶋浩郎訳 違いの行列/王は死んだ アスカニオ・チェレスティーニ 中嶋浩郎訳 隠された光 リザ・ギンズブルグ 橋本勝雄訳 あなたとわたし、一緒の三時間 キアラ・ヴァレリオ 粒良麻央訳 愛と鏡の物語 アントニオ・モレスコ 関口英子訳 回復 ヴィオラ・ディ・グラード 越前貴美子訳 どこか、安心できる場所で フランチェスカ・マンフレーディ 粒良麻央訳 作家・作品紹介 編者あとがき
行き掛かりに哀れな悪魔を助けた質屋ジャーゲン。返礼にと突如消された口うるさい妻を、周りに言われてしぶしぶ取り戻す旅に出る。奇想天外摩訶不思議な異世界を、当代一流の口八丁と権謀術数を武器に快進する、愛と冒険の喜劇的ロマンス。 挿絵:フランク・C・パぺ 装画:木原未沙紀 装丁:山田英春 第 一 章 なぜジャーゲンは男らしいことをしたのか 第 二 章 栄えある服を纏うこと 第 三 章 暁と日の出のあいだの庭 第 四 章 ドロシーには分からなかったこと 第 五 章 パンとバターが要求すること 第 六 章 セリーダが女性であること 第 七 章 水曜日における妥協について 第 八 章 古い玩具と新しい影 第 九 章 伝統に則ったグィネヴィア救出 第 十 章 スラグナルの惨めな変装 第 十一 章 ログレウス公爵現る 第 十二 章 ヨランダの破滅 第 十三 章 ゴギアヴァン・ゴウアの哲学 第 十四 章 ジャーゲン公爵の策略準備 第 十五 章 グラシオンにおける妥協について 第 十六 章 スモイト王のさまざまな厄介事 第 十七 章 時を告げるのが早すぎた雄鶏について 第 十八 章 なぜマーリンは薄明かりの中で語ったか 第 十九 章 奇妙な足をした褐色の男 第 二十 章 祈りの効き目 第二十一章 アナイティスの船旅 第二十二章 二人がヴェールを破ったことについて 第二十三章 ジャーゲン皇子の欠点 第二十四章 コカイン国での妥協について 第二十五章 〈文献学の師〉の呪文 第二十六章 〈時〉の砂時計の中で 第二十七章 忌まわしい情況のヘレネ女王 第二十八章 レウケーでの妥協について 第二十九章 ホルヴェンディルのナンセンスについて 第 三十 章 ジャーゲン王の経済学 第三十一章 シュードポリス陥落 第三十二章 ペリシテ人のさまざまな策略 第三十三章 クローリスとの別れ 第三十四章 皇帝ジャーゲンは地獄で如何に過ごしたか 第三十五章 祖父サタンが語ったこと 第三十六章 なぜコスは反論されたか 第三十七章 美しい吸血鬼の創造 第三十八章 拍手喝采された判例について 第三十九章 地獄での妥協について 第 四十 章 教皇ジャーゲンの昇天 第四十一章 天国での妥協について 第四十二章 絶えずいらいらしている十二使徒 第四十三章 影の前に立つ姿勢{ポーズ} 第四十四章 支配人の執務室で 第四十五章 グィネヴィアの信頼 第四十六章 アナイティスの欲望 第四十七章 ヘレネの幻影 第四十八章 リーサ夫人の率直な意見 第四十九章 コシチェイとの妥協について 第 五十 章 この瞬間は重要なものでもなく
至高の審美眼が選りすぐった 天上界の作家の神品の数々 谷崎潤一郎も川端康成も決して連れていってくれない一種澄みきった天上界、そこへ連れていってくれるのが泉鏡花の文学だということを、三島さんはしきりに強調していたが、まったく私もその通りだと思う。いくら鏡花文学の構造を論じ、基層を論じ、文体を論じても、鏡花の幻想の翼に身みずから乗せられて、この天上界の至福に一挙に参入しえないひとは、不幸な読者というほかあるまい。 --------澁澤龍彦 澁澤・種村没後の索漠たる世界となった現在、いま望まれるのは澁澤セレクトによる鏡花選集である。遺された澁澤リストを見れば、偏りが大きいこと以上に数多くの魅力的な謎を孕んでいるようにも思われる。いかにも澁澤好みと誰もが頷く作も多ければ、意外なマッチングの選択もあり、また何故これを澁澤がと不思議に感じられるものも少なくはない。「半世紀も昔のほんの下書きのリスト、何を書いたか忘れてしまったよ」と泉下の氏には苦笑されてしまいそうであるが、それでも鏡花と澁澤龍彦、相対する二者の魅惑は互いに響きあい、興趣は尽きない。おぼつかぬことながら謎の一端なりとも追っていければと思う。 ---------山尾悠子(「第1巻解説」より) ◎鏡花没後80年記念出版 ★澁澤龍彦の生前、1970年代前半に企画されながらも、惜しくも実現を見ずに終った幻の選集が、半世紀の歳月を経てついに刊行。 ★我が国における最高最大の幻想作家・泉鏡花の膨大多彩な作品群から、澁澤龍彦ならではの鑑識眼が選び抜いた、小説約50篇を4巻で構成。 ★各巻の解説は、鏡花作品をこよなく愛し、2018年には泉鏡花文学賞を受賞した山尾悠子が担当。各巻に、解説者が特に選んだ一作品も増補追加する。 ★装釘は、名匠・小村雪岱の鏡花本をあたうかぎり再現した。表紙や本扉はもちろんのこと、見返しも雪岱描き下ろしの絵を用いた、美麗な豪華愛蔵版。 ●第1巻 龍蜂集 春昼、春昼後刻、山吹、紅玉、海異記、貝の穴に河童の居る事、酸漿、お留守さま、 紫陽花、清心庵、星あかり、蛇くひ、X蟷螂鰒鉄道、夜釣、千鳥川、外科室、笈摺草紙、 裸蝋燭、名媛記、鶯花径 【山尾追加作品】山中哲学 「澁澤龍彦 泉鏡花セレクション」誕生秘話 桑原茂夫 解説 山尾悠子
ノーベル賞作家パール・バック未発表の遺作、ついに邦訳! 作品は著者が1973年に80歳で亡くなる直前に書かれ、長らく行方不明にとなっていた。40年後、その原稿は、終焉の地バーモント州から遠く離れたテキサス州の貸倉庫で発見されるという、数奇な運命をたどった。 天才少年ランドルフは、人生の真実と意味を追い求めて、ニューヨーク、イギリス、パリに旅する。DMZ(非武装地帯)の警備に就いた韓国では、人生を一変する出来事に遭遇ーーそして、ついに愛に辿りつく・・・・・。 パール・バックの叙情的な語りが心を震わせる、ランドルフ・コルファックスの成長物語。
超高密度文体で紡がれる黙示録的ゴシック・サスペンス! 全米図書賞&日本翻訳大賞受賞作『JR』の作家ギャディスによる、一軒の古いゴシック式洋館を舞台に繰り広げられる、世界的陰謀と底無しの悪意が渦巻く狂騒劇ーー * 今は亡き大鉱山主の娘エリザベス・ブースは、ハドソン河畔にある古いカーペンター・ゴシック様式の屋敷に、夫ポールと暮らしていた。 山師気質で粗暴なポールは、メディアコンサルタントとしての成功を目論見、いくつもの胡散臭い事業の立ち上げを画策し動き回っている。 ひっきりなしに屋敷にかかってくるいくつもの電話、そして訪ねてくる怪しい男たち。 彼らが交わす錯綜した会話の断片からは、CIA、FBI、放送局、種子販売会社、鉱山開発会社などの影が垣間見え、やがて巨大利権をめぐる遠大な世界的陰謀へと話は広がり、エリザベス自身もそこで起こる事件へと巻き込まれていく…… 全米図書賞受賞『JR』の作家ギャディスによる、一軒の屋敷を舞台に繰り広げられる、超絶技巧×超高密度文体のゴシック・サスペンス&黙示録的狂騒会話劇。 (1985年作) カーペンターズ・ゴシック 旧版訳者あとがき 新版にあたって
フランスの文豪バルザックの「恋」をテーマにした三つの短編作品を、『物語 フランス革命』の安達正勝による訳と、『摩利と新吾』『杖と翼』の木原敏江による描き下ろしイラストで送る、豪華美麗でエレガントなイラスト絵本! 収録作品 ・侯爵夫人のもとに届いた一通の熱烈なラブレターから始まる恋の空騒ぎ 『リストメール侯爵夫人』 ・上司の〈大佐〉に妻ロジーナを奪われた男が取った、驚くべき行動とは……? 『ロジーナ』 ・乗合馬車で意気投合した青年から託された、恋人ジュリエットへの最後のメッセージ 『ジュリエット』 *木原敏江によるイラスト全点描き下ろし! *史上初のバルザック絵本にして、木原敏江初のコラボ絵本! *豪華仕様:特別小口折表紙製本/本文特漉上質紙使用/原画を忠実に再現した美麗カラー印刷。 *小学館文庫版『杖と翼』4巻(木原敏江)にもエッセイを寄せた安達正勝による、作品の舞台である19世紀フランス文化と時代背景がよく分かるミニコラム付。
友ボードレールにエドガー・ポーと音楽の世界を教えた影の男、シャルル・バルバラ。 《知られざる鬼才》による、哲学的思考と音楽的文体、科学的着想、幻想的題材が重奏をなす全5篇の物語。 * * * ヴァイオリンに取り憑かれた狂気の名演奏家のあまりにも痛ましく愛おしい生涯 「ある名演奏家の生涯の素描」 パリ河畔の奇怪な屋敷に住まう孤独な天才発明家を描く、「未来のイヴ」に先駆ける自動人形小説 「ウィティントン少佐」 ある実在の事件をモチーフにした驚愕の犯罪小説 「ロマンゾフ」 世界の無数の蝶をパリの自宅で飼育する人間嫌いの男の物語 「蝶を飼う男」 聾者たちの滑稽で哀しいすれ違いを描いた寸劇 「聾者たち(後記)」 献辞 ある名演奏家の生涯の素描 ウィティントン少佐 ロマンゾフ 蝶を飼う男 聾者たち(後記) 訳者註 参考文献 解説
女性たちの才能は「呪い」であった。朝鮮王朝時代の女流画家師任堂が残した絹の包みに隠された過去とは。良妻賢母であれという束縛から主人公の魂を解き放ち、女性たちの内面の葛藤を描いて話題となったクォン・ジエの力作を初邦訳。 朝鮮王朝時代の村。官僚の娘として生まれた主人公は豊かな芸術的才能をもっていた。祝宴の席で文才に溢れる少女、踊りの得意な少女と出会い、三人は友人となった。ある日、主人公の目の前に、知性とたくましさを兼ね備えた少年が現れる。彼は官僚の妾の子だった。少年に惹かれながらも、身分違いの結婚を許されない主人公は芸術の世界に没頭する。やがて少女三人はそれぞれの運命にむけて歩き始める。 招魂 光と影 カササギ凧 私は、恒我(ハンア) 月影 紅梅花 草籠(チョロン) 佳然(カヨン) 紅花 俊瑞(ジュンソ) 東海(トンヘ)の海 連理の木 二人でのったブランコ 同心結 百年佳約 大関嶺(テグァルリョン) 種まき 独守空房 白丁の刀 贈り物 恋しい人 真紅の絹の包み 火花 真実 遺品 黎明