出版社 : 小学館
稲穂が金色に輝き、風に揺れてシャラシャラと唄を奏でる山陰の秋。娘の奈緒子、孫の嫁・美代子、曾孫・東真、近所の花屋の店員・史明の四人に送られ、九十二歳の松恵は息を引き取ろうとしていた。松恵は、先だった夫が今際の際に発した言葉を思い出す。奈緒子は、だれの子だ…。「百年近くを生きれば、全て枯れ、悟り、遺す思いもなくなり、身軽に旅立てるとばかり信じておりましたが、どうしてどうして、人間って簡単に軽くはならないようです」多くの人の心を受けとめ救った大おばあちゃんが、美しい風景に送られ、今日旅立ちます。
事件の陰にある「救い」を描いた連作長編 一人娘・真由が誘拐されて一か月、安否のわからないまま、白石千賀は役場の仕事に復帰、溜池工事の請負業者決定を控えていた。そんな千賀にかかってくる「おたくの真由ちゃんが死体で発見されました」といういたずら電話の主とは・・・・(第一話「談合」)。真由ちゃん誘拐事件から2か月後、同じ町内に住む24歳の会社員・鈴木航介が死体で発見された。同僚の久保和弘はその1週間前、経理部員である航介から不正を指摘されていた。そして、航介の携帯にいまも届くメールの中に衝撃的な一文を発見する(第二話「追悼」)。渡亜矢子は真由ちゃん事件の犯人を追っている刑事。無事に戻ってきた幼児から証言を引き出すのは容易ではなかったが、工夫を重ねて聞き出した犯人像に近い人物を探し当て、ついに逮捕にこぎ着けるが・・・・(第三話「波紋」)。そして最終話、すべてのエピソードが1つの線になり、事件の背景にさまざまな「救い」があったことを知る(「再現」)。「一つの事件が起こした波紋は、別の新しい事件を引き起こし、その新しい事件がまた波を立てる。波は当事者のみならず、周りの人々までをも飲み込み、翻弄していく」──
医師の話ではない。人間の話をしているのだ。 栗原一止は夏目漱石を敬愛し、信州の「24時間、365日対応」の本庄病院で働く内科医である。写真家の妻・ハルの献身的な支えや、頼りになる同僚、下宿先「御嶽荘」の愉快な住人たちに力をもらい、日々を乗り切っている。 そんな一止に、母校の医局からの誘いがかかる。医師が慢性的に不足しているこの病院で一人でも多くの患者と向き合うか、母校・信濃大学の大学病院で最先端の医療を学ぶか。一止が選択したのは、本庄病院での続投だった(『神様のカルテ』)。新年度、本庄病院の内科病棟に新任の医師・進藤辰也が東京の病院から着任してきた。彼は一止、そして外科の砂山次郎と信濃大学の同窓であった。かつて“医学部の良心”と呼ばれた進藤の加入を喜ぶ一止に対し、砂山は微妙な反応をする。赴任直後の期待とは裏腹に、進藤の医師としての行動は、かつてのその姿からは想像もできないものだった。 そんななか、本庄病院に激震が走る。 【編集担当からのおすすめ情報】 読んだ人すべての心を温かくする、 39万部突破のベストセラーに、第二弾が登場します。 第一弾は櫻井翔、宮崎あおいの出演で2011年全国東宝系にて、映画化! 2010年本屋大賞第二位。 その前作を遙かに超える感動を、お届けします。 大反響! 発売一週間で4刷、21万部突破!
出会いは、最悪だった。コンビ漫画家、絵門千明は、相方の麻生藤太と立ち寄ったバーで、二人連れの女性客の一人、梶山真智子とちょっとした口論になった。ふたりには、バツイチで子持ちの共通項がある。翌朝。最悪の目覚めを迎えた千明。自宅マンションの呼び鈴が鳴る。そこには、昨夜のバトル相手、真智子の姿があった。「なんで…」お互いに言葉が出ない。真智子は、千明の自宅マンションの一つ隣りに越してきたのだった。30代男女を主人公に描く、「ラブコメ」シリーズ第二弾。
仕事中心に生きている宇田川勇一は、父・総太郎が病に倒れたことを知る。妻、そして心を閉ざしてしまった息子とともに急ぎ故郷・広島へ帰省するが、脳死状態と医者に告げられた変わり果てた父の姿に絶句する。一方で、実家の部屋が纏う空気や呼吸のリズムは、勇一のなかに新鮮な風を起こし始める。ミシミシいわせながら昇る階段。黒光りする廊下の板。ガラガラと懐かしい音を立てる古い引き戸。両開きの窓から入り込む蝉の鳴き声。午後の風に微ぐ柿の葉。「鳥はええぞお。わしは今度は鳥に生まれてくるけえの」そういっていた父の言葉がふと胸にのぼる。
本の街・神保町を舞台にした青春恋愛映画の原作小説。 交際を始めて1年になる恋人から、突然、「他の女性と結婚することになった」と告げられた貴子は、深く傷ついて、ただ泣き暮らす毎日を送ることになった。職場恋愛だったために会社も辞めることになった貴子は、恋人と仕事をいっぺんに失うことに。そんなとき叔父のサトルから貴子に電話がかかる。叔父は40代、奥さんの桃子さんに家出され、ひとりで神保町で「森崎書店」という古書店を経営していた。飄々としてつかみどころがなく、親類の間では変人として通っていたサトル叔父、小さい頃は貴子も遊んでもらったこともあったものの、ここ数年は交流はなかった。その叔父からの連絡は、「店に住んで、仕事を手伝って欲しい」というものだった。誰かの救いを求めていた貴子は、叔父の申し出を受け入れて、本の街のど真ん中に住むことになったーー。 物語の1年半後を描いた続編小説「桃子さんの帰還」も収録。 【編集担当からのおすすめ情報】 監督が一読、「映画にしたい」と思った魅力的な原作小説。
映画化決定!「ちょんまげぷりん」待望の続編 木島安兵衛が江戸に帰って八年が過ぎ、遊佐友也は十四才になっていた。コンビニエンス・ストアで万引きをした後、家に帰らず逃げ続けていた友也だったが、深夜、巨大な水たまり状の穴の中に吸い込まれ、百八十年前の江戸時代にタイム・スリップしてしまう。 ちょうど、この世界では、安兵衛が菓子屋を営んでいるはずーー。そう思って、安兵衛を探し続ける友也だったが、菓子屋「時翔庵」はつぶれており、安兵衛もなぜか消息を絶っていた。失意の底にいる友也だったが、追い打ちをかけるように周囲の人民から、くせ者として追われる身となるがーー。
累計25万部ヒットの大人気シリーズ、待望の第四弾! 難関の入部テストをくぐり抜け、みごと名門海堂高校野球部へ入部した吾郎と寿也。 二軍、一軍へとはい上がるため意気込む吾郎たち。 しかし彼らを待ち受けていたのは“夢島”と呼ばれる養成所での想像を絶する猛特訓だった。 そんななか、吾郎は持ち前の気力と体力で、ハードなトレーニングを次々にクリアするが、そのたぐいまれな才能ゆえに、教官の乾から目をつけられ、執拗な嫌がらせを受けるはめになる。 入部早々前途多難の海堂高校野球部で、吾郎は無事レギュラーを勝ち取ることができるのかーー!?
明石藩江戸家老間宮が、老中土井大炊頭の門前で切腹自害を果たした。間宮の死は、生来の残虐な性格で罪なき民衆に殺戮を繰り返す藩主・松平斉韶の暴君ぶりを、命を以って訴えたものだった。しかし、斉韶は十一代将軍・徳川家斉の弟であり、翌年には老中への就任が決まっていた。このままでは幕府、ひいては国の存亡に関わると判断した土井大炊頭は斉韶暗殺を決意。そして御目付役・島田新左衛門を中心として十三人の侍たちが極秘裏に集められた。こうして前代未聞の暗殺計画が始動した。狙うは江戸から明石への参勤交代の道中。果たして密命は果たせるのか…。
二十五歳花屋の店長・松田真紀恵は、恋をする暇もなかった。朝五時に花市場に仕入れに行き、一日の労働を終える頃にはすでに夜の九時。店の片付け→夕食→お風呂が済むと、もう起床時間までわずかに五時間しかない。遊びに行くことはもちろん、流行りのドラマを見ることもできず、友達と長電話することはおろか、ペディキュアはいうに及ばずマニキュアを塗る時間もない。そんなわけで、性格はきついわ、男っぽい言葉遣いながらものすごい美人なのに、もう一年十一か月も恋をしていない。ところが、恋の神様はやっぱりどこかにいるものでー。
福岡沖に建設された巨大天然ガスプラント『レガリア』。千五百億円もの予算がつぎ込まれた日韓共同の施設に火災が発生した。折から大型台風も接近しており、海上保安庁の「海猿」仙崎大輔は、施設の設計主任である桜木を連れて、『レガリア』に乗り込む。今日が結婚三周年の記念日であった仙崎だったが、巨大施設に起きた思いもかけない爆発で逃げ場を失ってしまう。果たして仙崎は無事に脱出できるのか。妻・環菜と長男・大洋の写真を胸に抱いて、最後の脱出を試みるのだった。映画とテレビで好評を博した超人気シリーズ「海猿」の最終完結編を完全ノベライズ。
二十六歳のOL京子は、テレビで偶然見かけた競馬中継で、その場所が初恋の少年に出会った思い出の場所であることに気づく。競馬場の中につくられたジャングルジムのある児童遊園。日曜日に思い立って、その場所を訪れた京子は、そこで当時のままの十歳の初恋の少年に出会う。少年らしい純粋さとわがままな側面をあわせ持つ少年に京子は惹かれていき、毎週日曜日になるたびに、思い出の場所に出かけるようになる。少年とのデートを重ねるうち、京子は十歳の少女だった頃の心に戻り始めるのだった。初恋の少年ともう一度恋に落ちるファンタジックな物語。
映画化決定! 2024年公開!! 彼女の履いていた靴下の話がきっかけで付き合い始めた高校2年の僕たち。平凡な毎日を送っていたある日、彼女は唐突に僕に言った。 「私ね、後、一週間で死んじゃうの」 病気の進行を知り、運命を受け入れていた彼女は、残されたわずかな時間を自分らしく生きたいと願う。僕は心が追いつけないまま、彼女の望みをかなえることに奔走した。 透明なラストシーンが胸に迫ります。乙女派のバイブルと呼ばれた名作『ミシン』の系譜を正統に継いだ、切ない、切ない純愛ストーリーです。 映画化決定! 主演:窪塚愛流 蒔田彩珠。監督:篠原哲雄で2024年公開です。 【編集担当からのおすすめ情報】 映画化情報はコチラから。 https://happiness-movie.jp/
生き物と人間の深い関わりを描いた作品集 夜の国道で道路の中央に蹲っている少年がいた。彼は、一緒に暮らしていた老人が死ぬ間際に残した言葉を守り、飼っていた蟹が海岸で産卵しようと移動するのを、命がけで守ろうとしていたのだった。それを知ったドライバーたちは、最後まで少年が見守れるように動いた。しかし、蟹と少年にはさまざまな難敵が襲いかかってくる(「妖獣鬼」)。 抜き差しがたい心情が膨れあがっての、生き物たちとの深い交わりを描きながら、「人間と動物はついにわかりあえないという断念を基調としている」(北上次郎)という、人間の孤独や哀しみの深奥に迫った、傑作動物小説集。
遠山の金さんと国芳は、恋のライバルだった!? 黒船来航、団十郎(だんじゅうろう)の謎の自殺と揺れる世の中で、江戸っ子浮世絵師国(くに)芳(よし)は吉原でトロロ事件を巻き起こしたりしながらも、機転とユーモアで話題作を次々と生みだしてゆく。 娘の登鯉(とり)は、歌舞伎役者の坂東しうかに刺青(ほりもの)をつけて言い寄られたり、新場の小安とは、素直になれなくてもどかしかったり。 高野長英の娘との思いがけない再会、芸者や花魁の幼馴染(おさななじ)みのじたばた悩んでいる様子には心も揺れる。 そして謎の夜鷹の出現で明かされる登鯉の出生の秘密。 そんな中で、南町奉行所が焼け、遠山の金さんが倒れた! いよいよ佳境の国芳と登鯉をめぐる浮世模様、第四弾!
『感染』の仙川環が送る医療ミステリー第5弾! 近年急増する若年性アルツハイマーで叔母を亡くした長山歩美。その死に疑問を抱いた大学病院の主治医・佐野将彦。叔母の死と重なるようにして起きた、同病の患者を狙った連続殺人事件。叔母ももしかしたら狙われていたのでは? 二人の疑問が重なり、真相を探る間にも連続殺人事件は繰り返されていく。はたして二人は犯人を突き止めることができるのか……? 『感染』で第一回小学館文庫小説賞を受賞し、『転生』『繁殖』『再発』の4シリーズが37万部を突破した、今もっとも旬な医療ミステリー作家、仙川環の最新作がいよいよ登場! 【編集担当からのおすすめ情報】 「2文字タイトル」の仙川環医療ミステリーシリーズ5作目は、ラストのどんでん返しがさらに洗練、衝撃的に!ネタバレするので詳細は書けませんが、今作も「誰もが経験し得る、今そこにある危機」を、読後の背筋凍る感とともにたっぷりお届けします!
享保年間は将軍・徳川吉宗のもと緊縮財政による改革が進むと同時に、心中が流行した時代でもあった。その数の多さに業を煮やした幕府は、享保七年に“心中”の語を厳禁し、“相対死”と記すことを命じるとともに、心中した男女の遺体を切り捨てるという苛烈な処分に踏み切った。目安箱改め方の竜巻誠十郎は、幕府転覆を企む尾張藩の陰謀を阻止したが重傷を負う。瀕死の彼を看病してくれたのは、髪結いの女主人・おたかだった。そのおたかの縁者が心中の濡れ衣を着せられ殺害されたことを知った誠十郎は真相解明に乗り出す。大好評シリーズ、新機軸の第五弾。
婚約破棄された上、リストラに遭い、不幸のどん底にいた氏家譲は、中学時代の友人武蔵と十年ぶりに再会する。「よう、久しブリ照り!」武蔵に愛人の「相手をしてやってほしい」と頼まれた譲は、愛人のあらぬ誤解(ロリコン疑惑)からインチキ臭い神社へ連れていかれ、そこでどういうわけか中学時代の同級生・藤原たまりに遭遇。さらには、武蔵がステキに胡散臭く経営している会社「ハピネス計画」で働きはじめ…。怪しいけどどこか憎めない人物たちに巻き込まれ振り回されつづける譲に、やがて小さなハピネスが。元気が湧く長編小説。
友人を助けた代償に職を失った剣道の達人・石川義信は、娘・雪乃とともに岡山を離れ、各地を流れる。数年後、運良く倉敷の道場主の道が開けるが、彼を推挙したのは、義信に敗れて以来その生き方を改めた剣術家・前原一刀だった。その心持ちに打たれ、申し出を受けて一刀ともども青少年の教導に燃える義信。そんな石川道場には任侠に篤い男たちが次々と集まってくる!一方、雪乃は瀕死の男を偶然助ける。だが、道場にしばらく世話になることになったその男・政次郎は、雲龍の刺青を背負うやくざであった。誠を尽くし、正義に命を賭ける男たちを描く痛快長編。