出版社 : 小学館
お義母さん、うちの子に食べ物を与えないでください!孫にごはんを食べさせて何が悪いんだい!専業主婦として家庭を支えてきた料理上手の姑。フードスタイリストだが日々の食事は簡素でよしとする嫁。一つ屋根の下で二つの食卓がぶつかって、やっかいな出来事が次々と巻き起こる。多彩で魅力的な料理シーンも満載!令和時代の家族“食”小説。
母を亡くし辞典編纂者の父が勤める写字室を遊び場にして育ったエズメは、ある日、床に落ちてきたカードを見つける。そこに書かれていたのは「ボンドメイド」(はしため)という単語。そこから、「捨てられたことば」を掬い上げるエズメの人生の旅が始まった。女性参政権運動と第一次大戦に揺れる激動の時代ー草創期の英国『オックスフォード英語大辞典』編纂室を舞台に「捨てられたことば」の蒐集に生涯を捧げた女性を描く感動作。
まったく先の見えない状態で会社を辞めてしまった美月(28歳)。転がり込んだのは母の親友・市子(56歳)の家。昔なじみの市子たち個性の強い大人に囲まれ、一緒に過ごすうち、絶望の中にいた美月は徐々に上を向く。誰の心にも存在する将来への恐れや不安、葛藤。何度も心が折れそうになりながらも、やがて美月は自分の夢と希望を見つけていく…。
「春美は普通の子と違います」浪曲が好きだった北村春美の母は、春美の才能を信じて“うなり”を教え込み、それによくこたえた春美は全国規模のコンクールで優勝。翌年、都はるみとしてデビューすると、「アンコ椿は恋の花」「涙の連絡船」「好きになった人」と毎年のようにヒットを飛ばし、当代随一の歌手に上り詰めた。ところが、それから20年後、都はるみは「普通のおばさんになりたい」と突然、芸能界からの引退を宣言。その背景には何があったのかー。都はるみ本人はもちろん、市川昭介ら関係者への丹念な取材をもとに中上健次が綴った、渾身のノンフィクション小説。
満州で現地招集されたものの、数日で終戦となり、日本に帰国する術がないまま現地で過ごしていた“私”。ある日、シベリア送りにする日本人を徴発していた巡査につかまってしまい、目を盗んでなんとか逃げだしたものの、その先ではロシヤ兵が待ち構えていた。付け焼き刃で覚えていたロシヤ語を駆使して事態を打開しようとするがー。危機的かつ悲惨な状況をユーモラスな筆致で描いた直木賞候補作「耳学問」のほか、太宰治らとの交友を綴った「玉川上水」、小説デビュー作にして芥川賞候補となった「抑制の日」など13篇を収録した、“短篇の名手”木山捷平の面目躍如の一冊。
世に蔓延する感染症。アルバイト店員ミチルの収入は激減し転居を余儀なくされる。そんなミチルを温かく迎えてくれたのは、40歳以上独身女性限定のシェアハウス「若葉荘」の人々だった。訳ありな女性達が迷いながらもたくましく生きる様を見て、ミチルは自分の幸せを他の誰でもない自分で叶える術を身につけていく。迷える女性に読んで欲しい珠玉の物語。
世間を震撼させた猟奇殺害事件に中上健次が迫る。海と山に囲まれた熊野の寒村。そこでひときわ広い土地を所有する池田家の長男・達男は、小さいころから悪行が絶えず、猿の肉を食べたり、神事に使う魚を獲るなどやりたい放題。それでも面と向かって文句を言う者は誰もいなかった。そんななか、何者かがハマチの養殖場に重油を流して地元に大損害を与える事件が発生。次いでぼや騒ぎまで起きた。だれもが達男の仕業だと考えたがー。実際に起きた「熊野一族7人殺害事件」をもとに、中上健次が映画シナリオを書き下ろした話題作と、のちに雑誌連載されたノベライズ版を収録。
感染爆発は、革命の聖地から始まった。舞台は香港、ワシントンD.C.、NY、東京、メルボルン…。“インテリジェンスの巨匠”が満を持して放つ、最高機密級の国際諜報小説。
諸国漫遊!? 嘆願ツアーにGO! レディア廃国を阻止するため、諸国への嘆願ツアーに出かけるクラノス一行。 プロの踊り子でもある騎士団員モトフィフ&アズカ、美少女と見紛う美少年ツータスの活躍もあって、旅は順調に進む。 しかし、憎きキーラが隠居すると聞きつけた帝都組が暴走、ソーエンを旗頭に仇討ちに出る。 さらには死んだはずの怪物ゲネイトまで復活&脱走したとの報が届きーー。 トラブルだらけの珍道中、はたしてキッチュらの運命やいかに!? 痛快討ち入りファンタジー第2幕!
ー見えないはずの物が見え、覚えているはずのことが消えて何が悪い?おれの記憶の中心には穴がある。それが“現実”というもので、掛け値なしの現実はなんと異常で気味悪く透明なものだろう。-月面基地での作業中に事故に遭った“男”。帰還したものの強い逆行性健忘症になってしまい、さまざまなことが思い出せない。が、中国人看護師との会話や、放浪していたところをかくまってくれた老婆、ホームレスの老人との出会いによって徐々に記憶を取り戻していく。はたして、“男”にとって光とは、闇とはなんだったのかー。近未来を舞台に、物質文明や人間の陰陽を見事に描出した傑作長編。第47回読売文学賞受賞作。
男は、どん詰まりの場所にいた。大学生だった娘の交通事故死。自殺未遂の隘路から抜け出せない妻。あれを試すしかないのかー。高校時代、失意のうちに目にした一枚の絵。そのあとに訪れた不可思議な出来事。40年ぶりにその絵の前に立った男は、気が付けば娘の交通事故が起こる直前の三軒茶屋の交差点にいた。
王都での騒動が一段落した後、サージスは指名依頼のある町へ行くため、シャルとリオと一旦離れることに。残された二人は、また厄災が起きた際の対策にジャパニーズアイを駆使してめぼしいアイテムを買い揃える。そこで、クナイと呼ばれる見たことのない道具を見つけ…?また、海の中にあるダンジョンに潜って美味しいカニをゲットしたり、山の中でトリュフを見つけて焼いてみたり。さらには、不思議なドラゴンに絡まれ、人の言葉を話す鬼に攫われたりもして!?頑張り屋な少女の物語は、今回もドタバダ全開です!
あなたの自死を見届ける“よりそいプラン”。あなたの自死を物理的にお手伝いする“もろともプラン”。お申し込みの際にいずれかをお選びください。QRコードにスマホをかざすとたどり着く“さんず”のホームページ。死にたいと願う人々が“さんず”の導きで、どのような結末にいきつくのか。生きづらさを抱えた人々の人生が交錯する5篇の連作短編集。
“破倫無道の挙”か、冤罪かーいよいよ結審の時来る。(幸徳秋水が担当弁護士にあてた陳弁書には)無政府主義にたいする誤解への弁駁と、検事の取り調べに不法とが述べてある。この陳弁書にあらわれたところによれば、幸徳は決してこのような無謀を、あえてする男ではない。それは法廷での事実と符号している。社会主義者、無政府主義者たちが明治天皇の暗殺を企てたとされる、いわゆる幸徳事件。当初は「破倫無道の挙」「常識を失した凶暴な沙汰」と断じていた石川啄木は、事件の記録を読むうちに、検察による事実の歪曲に愕然とする。一方、ことを早く片づけたい検察は、逮捕後異例のスピードで予審を終え、嫌疑のかかる26人全員に極刑を求刑してしまうのだったー。事件関係者について綿密に調べ上げ、その真の姿に肉薄した渾身のノンフィクションの完結編。
詩人・室生犀星の“初の小説”を含む自伝的作品集。婚外子として生まれ、生後間もなく養子に出された“私”。いつもやさしい義姉を除いて、周囲に理解してくれる人はおらず、小学校では喧嘩を繰り返して先生からも目をつけられていた。そんななか、実の父親が亡くなり、母が行方不明になってしまう。ますます自棄になって乱暴を繰り返していた“私”は、川のなかでその後の人生を変えるあるものを見つける。それは、苔むした地蔵だったー。自伝的色彩の濃い著者初の小説「幼年時代」をはじめとする“幼年時代三部作”「性に眼覚める頃」「或る少女の死まで」に加え、繰り返し映画やテレビドラマになった「あにいもうと」の4篇を収録。
この物語は、あなたの人生を支えてくれる 宙には、育ててくれている『ママ』と産んでくれた『お母さん』がいる。厳しいときもあるけれど愛情いっぱいで接してくれるママ・風海と、イラストレーターとして活躍し、大人らしくなさが魅力的なお母さん・花野だ。二人の母がいるのは「さいこーにしあわせ」だった。 宙が小学校に上がるとき、夫の海外赴任に同行する風海のもとを離れ、花野と暮らし始める。待っていたのは、ごはんも作らず子どもの世話もしない、授業参観には来ないのに恋人とデートに行く母親との生活だった。代わりに手を差し伸べてくれたのは、商店街のビストロで働く佐伯だ。花野の中学時代の後輩の佐伯は、毎日のごはんを用意してくれて、話し相手にもなってくれた。ある日、花野への不満を溜め、堪えられなくなって家を飛び出した宙に、佐伯はとっておきのパンケーキを作ってくれ、レシピまで教えてくれた。その日から、宙は教わったレシピをノートに書きとめつづけた。 全国の書店員さん大絶賛! どこまでも温かく、やさしいやさしい希望の物語。
明治天皇に危害を加えるべく爆裂弾を製造した宮下太吉、宮下に賛同して事件を主導した新村忠雄、幸徳秋水と同棲していた過激な闘士・管野スガー。無政府主義、社会主義を標榜する彼らは、次々と「無政府主義者の撲滅」をめざす政府当局の手中に落ちてゆくー。「天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子又ハ皇太孫ニ対シ危害ヲ加ヘ又ハ加ヘントシタル者ハ死刑ニ処ス」-1947年まで存在した刑法第73条、いわゆる大逆罪。皇室に対して危害を加えようと企図した者は死刑、しかも控訴や上告をすることができないという、大変厳しい内容だ。この罪が初めて適用された通称「幸徳事件」について、著者が豊富な資料をもとに鋭く切り込む。