出版社 : 岩波書店
『修業時代』の続篇である本書は、「諦念」を主題とした、ゲーテ(一七四九ー一八三二)最晩年の豊かな英知に満ちた作品である。主筋に数篇の挿話と二つのアフォリズム群をはめこんだ独特のスタイルを持ち、底知れぬスケールを感じさせる「大作」である。新訳。
「ペルシャ絨毯に人生とは何かの答えがある」という老詩人クロンショーの謎めいた言葉の意味に、ついに思い至るフィリップ。「彼らを赦したまえ。その為すことを知らざればなり」心の自由を得たフィリップの念頭に、ふいにこんな言葉が浮かぶのだった。全三冊完結。
1 パロマー氏の休暇 1・1 浜辺のパロマー氏 1・1・1 波のレクチュール 1・1・2 あらわな胸 1・1・3 太陽の剣 1・2 庭のパロマー氏 1・2・1 亀の恋 1・2・2 クロウタドリの口笛 1・2・3 はてしない草原 1・3 パロマー氏空を見る 1・3・1 昼下がりの月 1・3・2 惑星と眼 1・3・3 星たちの瞑想 2 街のパロマー氏 2・1 テラスのパロマー氏 2・1・1 テラスにて 2・1・2 ヤモリの腹 2・1・3 ホシムクドリの襲来 2・2 パロマー氏買物をする 2・2・1 鵞鳥の脂肪一キロ半 2・2・2 チーズの博物館 2・2・3 大理石と血 2・3 動物園のパロマー氏 2・3・1 キリンの駆け足 2・3・2 シラコのゴリラ 2・3・3 鱗の秩序 3 パロマー氏の沈黙 3・1 パロマー氏の旅 3・1・1 砂の花壇 3・1・2 蛇と頭蓋骨 3・1・3 不揃いなサンダル 3・2 パロマー氏と社会 3・2・1 言葉をかみしめることについて 3・2・2 若者に腹を立てることについて 3・2・3 きわめつけのモデル 3・3 パロマー氏の瞑想 3・3・1 世界が世界をみつめている 3・3・2 鏡の宇宙 3・3・3 うまい死に方 解説
本巻には、成島柳北と大沼枕山の詩を収めた。成島柳北の詩は、『柳北詩鈔』、『明治十家絶句』を底本とし、大沼枕山の詩は、『枕山詩鈔』、『枕山詩鈔二編』、『枕山詩鈔三編』、『枕山先生遺稿』、『東京詞』を底本とした。
技量はありながらも小才の利かぬ性格ゆえに、「のっそり」とあだ名で呼ばれる大工十兵衛。その十兵衛が、義理も人情も捨てて、谷中感応寺の五重塔建立に一身を捧げる。エゴイズムや作為を越えた魔性のものに憑かれ、翻弄される職人の姿を、求心的な文体で浮き彫りにする文豪露伴の傑作。
日本の近代において久しく、あの著名な『人形の家』に象徴される社会劇という枠組みに堅く閉じられたイプセン。このイプセンの戯曲の台詞の核心に踏み込み、その重層的なありようを素手で自在に解きほぐし、いま二十一世紀に解き放つ。原典をノルウェー語から全訳した著者ならではの、芝居の本音の面白さがいたるところから吹き出す、渾身の書き下し四〇〇枚。
1 フィリアス・フォッグとパスパルトゥー、一方が主人に、他方が召使になることを了承しあう 2 パスパルトゥー、ついに自分の理想を見出したと確信する 3 フィリアス・フォッグが大変な結果をしょいこむことになる会話が交わされる 4 フィリアス・フォッグ、彼の召使であるパスパルトゥーを仰天させる 5 新銘柄株がロンドン市場に登場する 6 刑事フィックス、きわめて当然の焦燥を示す 7 こと捜査に関しては、パスポートが用をなさないことが改めて証明される 8 パスパルトゥー、おそらくはいささか度をこして喋りすぎる 9 紅海とインド洋上の航行はフィリアス・フォッグの計画に好都合に運ぶ 10 パスパルトゥー、幸いにも片方の靴を無くしただけで事なきをえる 11 フィリアス・フォッグ、とてつもなく高価な乗り物を買う 12 フィリアス・フォッグとその同行者たちはインドの森林の中を突き進む。またその結末 13 パスパルトゥー、幸運は大胆な者たちに微笑むことをまたしても証明してみせる 14 フィリアス・フォッグ、ガンジス川の美しい渓谷に沿う道を、その眺めを見ようともしないままひたすら下っていく 15 紙幣を入れた袋は更に数千ポンド分軽くなる 16 フィックスは彼が耳にする話について、皆目知らないという顔をする 17 シンガポールから香港までの航海中におきた色々なこと 18 フィリアス・フォッグ、パスパルトゥー、フィックスは、めいめいそれぞれの仕事にかかる 19 パスパルトゥー、自分の主人に強すぎる関心を抱く。そしてその結末 20 フィックス、フィリアス・フォッグとじかに接触を持つ 21 タンカデール号の船長が二〇〇ポンドの手当をもらいそこねる可能性がでてくる 22 パスパルトゥー、たとえ地球の反対側にいてもポケットになにがしかの金を所持しておくことが身のためであると思い知る 23 パスパルトゥーの鼻がとてつもなく長く伸びる 24 太平洋横断がなしとげられる 25 サンフランシスコの概観。政治集会の一日 26 パシフィック鉄道会社の急行列車に乗車する 27 パスパルトゥー、時速二〇マイルで走りながらモルモンの歴史の講義を受ける 28 パスパルトゥー、理性の言語を理解させることが不可能となる 29 合衆国鉄道においてしか起こりえないような様々な出来事についての物語 30 フィリアス・フォッグ、ごく単純に己の義務を果たす 31 刑事フィックス、きわめて真剣にフィリアス・フォッグのことを気遣う 32 フィリアス・フォッグ、直々に悪運との闘いに乗り出す 33 フィリアス・フォッグ、彼の能力を遺憾なく発揮する 34 パスパルトゥーに、残酷な、しかしおそらく誰も耳にしたことのない洒落を発する機会が与えられる 35 パスパルトゥー、主人に同じ命令は二度繰り返させない 36 フィリアス・フォッグ、再び市場の価格をつりあげる 37 フィリアス・フォッグがこの世界一周の旅で儲けたのは、幸福だけであったことが証明される 解 説
鷹狩りの一団の中でひときわあでやかな貴婦人が、挨拶に向ったサンチョ・パンサに言う。「あなたの御主人というのは、いま出版されている物語の主人公で、ドゥルシネーア・デル・トポーソとかいう方を思い姫にしていらっしゃる騎士ではありませんこと」。
物語も終盤にさしかかり、ドン・キホーテ主従は、当時実在のロケ・ギナール率いる盗賊団と出会い、さらにガレー船とトルコの海賊との交戦を目撃することになる。さて、待望の本物の冒険に遭遇したわがドン・キホーテの活躍は…。
地 図 機知に富んだ郷士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ 第四部(続き) 第三十五章 ここでは小説『愚かな物好きの話』に結末がつけられる 第三十六章 旅籠で起こった、そのほかの風変りな出来事を扱う章 第三十七章 ここではその名も高き王女ミコミコーナの物語が続き、そのほかの愉快な冒険が語られる 第三十八章 ドン・キホーテが文武両道にわたって行なった興味津々たる演説を扱う章 第三十九章 ここでは《捕虜》がおのれの身の上話をする 第四十章 ここでは《捕虜》の身の上話が続けられる 第四十一章 ここでは《捕虜》がさらに身の上話を続ける 第四十二章 なおも宿屋で起こったこと、および、そのほか知るに値する多くのことについて扱う章 第四十三章 ここでは騾馬引きの若者の聞いて楽しい身の上話、および宿屋で起こったそのほかの珍しい出来事が語られる 第四十四章 ここでは旅籠で起こった前代未聞の事件が続く 第四十五章 ここではマンブリーノの兜と荷鞍にまつわる疑問が最終的に解決されると同時に、ほかの実際に起こった冒険が語られる 第四十六章 《聖同胞会》の捕吏たちの目覚ましい冒険、ならびにわれらのあっぱれな騎士ドン・キホーテの猛々しさについて 第四十七章 ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャにかけられた奇妙な魔法、および、そのほかの目覚ましい出来事について 第四十八章 ここではトレードの聖堂参事会員がなおも騎士道物語について論じ、さらに彼の才知にふさわしいそのほかの事柄に言及する 第四十九章 ここではサンチョ・パンサと主人のドン・キホーテが交わした気の利いた会話が扱われる 第五十章 ドン・キホーテと聖堂参事会員が交わした思慮に富んだ論争、およびそのほかの出来事について 第五十一章 山羊飼いが、ドン・キホーテを連れていくすべての人に語ったことを扱う 第五十二章 ドン・キホーテと山羊飼いの喧嘩、およびドン・キホーテが大汗をかくことによってめでたくおさめた、苦行者相手の珍しい冒険について 解 説 訳 注
「後篇」では、ドン・キホーテの狂気は大きく様変わりする。もはや彼は、自らの狂気に欺かれることはない。旅篭は城ではなく旅篭に見え、田舎娘は粗野で醜い娘でしかない。ここにいるのは、現実との相克に悩み思案する、懐疑的なドン・キホーテである。
なかなか開かなかった古い茶箪笥の抽匣から見つけた銀の匙。伯母さんの限りない愛情に包まれて過ごした日々。少年時代の思い出を、中勘助が自伝風に綴ったこの作品には、子ども自身の感情世界が素直に描きだされている。漱石が未曾有の秀作として絶賛した名作。
『阿部一族』は殉死の問題を取り扱った作品で、封建制のもとでの武士道の意地が、人間性をぎりぎりにまで圧迫して、ついにはその破滅に至らせる経緯を、簡潔な迫力ある筆で描いた歴史小説の傑作。他に鴎外の初期歴史小説の代表作『興津弥五右衛門の遺書』『佐橋甚五郎』の二篇を収める。
孤児になり、修道院を追われたジュリエットとジュスチーヌのふたり。姉はその美貌を利用し、すすんで淫蕩に身を任せ、まんまと出世を果たすが、純真な妹ジュスチーヌは、美徳をかたく守りつづけたために、くりかえし悪徳に迫害される。本書は革命期に刊行された思想小説で、サドが初めて世に送った作品である。本邦初訳。
地 図 ベハル公爵に捧げる献辞 序 文 機知に富んだ郷士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ 第一部 第一章 名高き郷士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャの人柄、および生活ぶりについて 第二章 機知に富んだドン・キホーテが郷里をあとにした最初の旅立ちについて 第三章 ドン・キホーテが騎士に叙された愉快な儀式について 第四章 宿屋から出発したわれらの騎士に起こったことについて 第五章 ひきつづき、われらの騎士の災難が語られる 第六章 司祭と床屋がわれらの機知に富んだ郷士の書庫で行なった、愉快にして大々的な書物の詮議について 第七章 われらの善良なる騎士、ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャの二度目の旅立ちについて 第八章 勇敢なドン・キホーテが、かつて想像されたこともない驚嘆すべき風車の冒険において収めた成功、および思い出すのも楽しいほかの出来事について 機知に富んだ郷士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ 第二部 第九章 ここでは凜々しきビスカヤ人と勇敢なるマンチャ人とのあいだに繰り広げられた瞠目に値する戦いに決着がつけられる 第十章 ドン・キホーテとビスカヤ人とのあいだに起こったさらなる冒険、およびドン・キホーテが一群のヤングワス人に出くわしておちいった危機について 第十一章 ドン・キホーテと山羊飼いたちのあいだに起こったことについて 第十二章 ドン・キホーテといっしょにいた者たちに、ある山羊飼いが語ったことについて 第十三章 ここでは羊飼いの娘マルセーラの話に結末がつけられ、またそのほかの出来事も語られる 第十四章 ここでは死んだ羊飼いの絶望の詩篇が披露されると同時に、思いもよらぬ出来事が語られる 機知に富んだ郷士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ 第三部 第十五章 ここでは冷酷なヤングワス人たちと出くわすことによってドン・キホーテにふってわいた不運な冒険が語られる 第十六章 城だと思いこんだ旅籠で機知に富んだ郷士に起こったことについて 第十七章 ここでは勇敢なドン・キホーテが狂気ゆえに城と見なした旅籠で、善良な従士サンチョ・パンサとともにこうむった無数の災難がなおも続く 第十八章 ここではサンチョ・パンサが主人のドン・キホーテと交わした会話、および聞くに値する冒険が語られる 第十九章 サンチョが主人と交わした気のきいた会話、主人にふりかかった死体の冒険、および、そのほかの名高き出来事について 第二十章 勇敢なドン・キホーテが、この世の名にしおう騎士たちがかつてなしとげたいかなる冒険よりもやすやすと、ほとんど危険な目にあうことなくやりとげた前代未聞の冒険について 第二十一章 燦然たるマンブリーノの兜を奪取するにいたったとびきりの冒険、ならびに、われらの無敵の騎士に起こったそのほかのことを扱う章 訳 注
地 図 機知に富んだ郷士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ 第三部(続き) 第二十二章 行きたくもない所へ無理やり連行されていく、多くの不幸な者たちにドン・キホーテが与えた自由について 第二十三章 シエラ・モレーナ山中で高名なドン・キホーテに起こったこと、すなわち、この真実を語る物語のなかでも最も珍しい冒険のひとつについて 第二十四章 ここではシエラ・モレーナ山中での冒険が続く 第二十五章 シエラ・モレーナの山中でラ・マンチャの勇敢な騎士に起こった奇妙な出来事、ならびに、彼がベルテネブロスの苦行を真似てしたことを扱う章 第二十六章 ここではドン・キホーテが恋心を表現するために、シエラ・モレーナ山中で演じたゆかしき苦行が続けられる 第二十七章 司祭と床屋がその計略を実践した経緯、ならびに、この壮大な物語において語られるに値することどもについて 機知に富んだ郷士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ 第四部 第二十八章 同じくシエラ・モレーナ山中で司祭と床屋に起こった新奇にして愉快な冒険を扱う章 第二十九章 われらの恋する騎士を、彼がみずから行なっていた厳しい苦行から連れ出すためにとられた愉快な策略と方法を扱う章 第三十章 美しきドロテーアの聡明さ、および、はなはだ楽しくも愉快なことどもを扱う章 第三十一章 ドン・キホーテとその従士サンチョ・パンサのあいだに交わされた、味わい深くも愉快な会話、およびそのほかの出来事について 第三十二章 宿屋でドン・キホーテの一行に起きたことを扱う章 第三十三章 ここでは小説『愚かな物好きの話』が語られる 第三十四章 ここでは小説『愚かな物好きの話』が続けられる 訳 注