出版社 : 幻戯書房
「精神と官能」「男と女」-色鮮やかな生の無限の混沌を、あふれる機知とイロニーでもって、めくるめくアラベスクへと織りあげたマニエリスム小説の傑作『ルツィンデ』のほか、文学と哲学、そして愛をめぐるフリードリヒ・シュレーゲルの初期批評3篇を収録。
一流の証とされた新聞連載の仕事を再現。昭和8年(1933)の息吹きが、88年の時を経て、新漢字・新仮名遣いでよみがえるー。邦枝の「江戸」を絵で昇華させた“雪岱調”の完成形、記念碑的作品。挿絵59点+カット7点完全復刻。
ボルヘスやビオイ・カサーレスに高く評価され、「アルゼンチン文学の秘宝」とも称された短編小説の名手シルビナ・オカンポは、日常生活に隠された不思議から奇想天外な物語を引き出した。幻想的リアリズムの頂点をなす怪奇短編集『復讐の女』と『招かれた女たち』の全78篇を収録。本邦初訳。
壮絶な引揚体験と焼跡の東京が幻視させた、夢想の大殿堂。東京裁判の証言台に立ったラスト・エンペラーには影武者がいた?元宮廷女官が発表した謎の手記をめぐり大胆な綺想を展開する未完長篇(表題作)はじめ、傀儡国家の盛衰に翻弄された人々の運命を描く作品集、満洲残影篇。
フランス革命の只中、18世紀末のトリノで、世界周游の向こうを張って42日間の室内旅行を敢行、蟄居文学の嚆矢となったグザヴィエ・ド・メーストル「部屋をめぐる旅」-その続編「部屋をめぐる夜の遠征」、および「アオスタ市の癩病者」の小説3篇と、批評家サント=ブーヴによる小伝を収録。
偽善社会をこき下ろし、ディドロに「心臓に毛が生えている」と評された、人相不明の諷刺作家フジュレ・ド・モンブロンーエロティックな妖精物語『深紅のソファー』と遊女の成り上がりの物語『修繕屋マルゴ』、奔放不羈な旅人の紀行文学『コスモポリット(世界市民)』を収録。
奔放無頼のストーリーテリングと、類人猿への異常な執心。軍人の父に放逐された文学好きの不良少年は、芸妓と出逢い一大改心。貿易商のかたわら小説デビューし、あれよという間に直木賞。しかしその回想はいつも微妙に食い違う…虚々実々に彩られた怪作家の人生を辿る自伝物語篇。
「あなたの顔をスケッチさせてくださいませんか。お会いした記念に」1970年代、独り家を出てイギリスへ絵を描きに行く画家。生まれ育った東京の記憶を瑞々しく回想する青年。大災害で壊滅した世界を生き抜く二人の男ー言語と映像の関係を思考し続けてきた著者が作り出した、20世紀文学の記憶が様々に谺する文学空間。20世紀文学が谺する全五篇。
病妻とドッペルゲンガー。死を招く千里眼。ホテルで耳にした脱植民地闘争。日本軍による婦女暴行と屍体消失…直木賞受賞作「ナリン殿下への回想」の続編(表題作)他、「MR・タチバナ」が語る数奇な物語の数々。
無情な現実に引き裂かれる男女の合間をドラマティックに物語る、本邦初訳の未完小説『過去への旅』。作者の生涯最後の日々に完成した、チェスをめぐる孤独と狂気の心理を克明に描く『チェス奇譚』。ツヴァイクの生涯を貫く“内的自由”の思想を映した二つの傑作中編。
退屈な生のいつ終わるともない寂寞のなか、空想が光輝の花を振り撤いた。夢みるような気分が胸内にただよい、生気あふれる芳香で心を誘い、蝕んだ。香りには、生気に渇えた胸さわぎの甘やかな毒が潜んでいた。生の豊穣と頽落、夢想の萌芽、成熟から破綻までを絢爛なアラベスクとして描きだした、世紀末デカダンスに先駆ける“幻滅小説”。リルケ、トーマス・マン、ヘッセ、ツヴァイク、ホーフマンスタール、ムージル、ジョイス、ルルフォを魅了した19世紀デンマーク文学の傑作長編。
聴衆の前で話しているとき、シュティリングは水を得た魚であった。話しているうちに彼の頭の中で概念がどんどん発展していき、しばしばすべてを言い表すための十分な言葉を見つけることができないほどだった。話しているとき、シュティリングという存在そのものが明るく晴れわたり、混じりけのない生命とその表出そのものになった。貧困に負けず学問を続けて大成する、独学者の数奇な人生行路を描いた18世紀ドイツの自伝文学。「疾風怒涛」運動の中心人物ゲーテ、観相学者ラヴァーター、思想家ヘルダーらとの親交から生まれた、“ヴィルヘルム・マイスター”よりも大衆に読まれた教養小説。本邦初訳。
『郵便配達は二度ベルを鳴らす』の著者ケインの、映画・ドラマ化されたノワール文学の傑作。大恐慌の巨大都市郊外で、役立たずの夫を追い出した「独居妻(グラス・ウィドウ)」が奮闘する愛と金と逸脱の物語。米国大衆の夢と欲望を描くロサンゼルス都市小説の古典。本邦初訳。 彼女が罪を犯したとすれば、その唯一の罪は、この娘をあまりに思いを込めて愛し過ぎたことだった。 第一章 第二章 第三章 第四章 第五章 第六章 第七章 第八章 第九章 第十章 第十一章 第十二章 第十三章 第十四章 第十五章 第十六章 第十七章 ジェイムズ・M・ケイン[1892–1977]年譜 訳者解題
彼は直走りに走る。毛皮が輝きを放ち、瞳が燃え上がる。いまや全世界が友達だ。犬はみな兄弟だ。この新しい世界に、鎖なんていらない。保護してもらう必要なんてないんだ。19世紀の英国詩人エリザベス・バレット・ブラウニングの日常模様が愛犬フラッシュの目を通して語られる、ユーモア溢れる伝記小説。ヴァージニア・ウルフが飼い犬に寄せたエッセイ「忠実なる友について」、エリザベス・バレットの詩「わが忠犬、フラッシュに寄す」も収録。
二度と失敗しないわ、女の機知と意志があるかぎりは!-あの『若草物語』の作者オルコットが煽情小説を書いていた?!なぜオルコットは、A.M.バーナードという男性作家名義で、かくも煽情的な小説作品群をいくつも発表していたのか?英国の名家で女家庭教師が惹き起こす、19世紀米国大衆“スリラー”小説。
イスラム教改宗者の討伐という歴史的事件を材に、民衆の『哀しき人間の運命』を綴った、セルビア『第二の聖書』と目される一大詩篇『山の花環』。宇宙創造、人間の堕落と魂の救済を詠う『小宇宙の光』。セルビア文学の金字塔となった、ニェゴシュを代表する二大叙事詩。
不正義、不条理に満ちた世界で人びとはいかに生きるか。歴史に翻弄される民族を見つめ、人類の希望を「橋」の詩学として語り続けたノーベル文学賞作家アンドリッチー「橋」、短編小説8篇、散文詩『エクス・ポント(黒海より)』と「不安」、エッセイ3篇を収録した精選作品集。