出版社 : 徳間書店
報道記者の風見孝治は、かつて解放戦線の総攻撃を前に、恋人のビェン一家を国外へ脱出させ、自らはサイゴン陥落の歴史的瞬間を取材するため、アメリカ大使館に篭った。重傷を負った風見が生き残り、ビェンは死んだ。-8年後、神戸でビェンの弟妹に再会した風見は、この2人の後で蠢く陰の男たちの正体を知らされ、ビェンの死の真相を追った(表題作)。他、重い旋律でかなでるサスペンス・ロマン5編。
嘉永2年、江戸南町奉行所見習同心・加田三七は御奉行遠山左衛門尉景元に抜擢され、弱冠25歳で定廻り同心の大役に就いた。そんなある雨の夜、岡場所の女おきくが殺された。現場の寺裏には足駄の歯跡があり、女の首には黒ずんだ痣があった。三七は岡場所の持主・権兵衛の行方を追ったが、権兵衛もその夕、水死体で発見。首にはやはり黒い痣が(「犬と猫と鼠」)。他12篇を収録する人情捕物帳傑作。
戦国時代に天下の覇を競った名将たちの卓抜な政略と戦略について記されたものは多いが、その心に分け入ったものは少ない。父を追放した武田信玄、兄を放逐した上杉謙信、父を殺し弟を討った伊達政宗、乱暴狼藉の限りを尽した織田信長、その信長を本能寺に屠った明智光秀、そして秀吉…。下克上の世を激越な心と鋭利な先見性で生き抜いた名将たちの屈折した心と天才性を余すところなく描いたユニークな伝記。
殺人犯が精神異常者だったら、正式の裁判を受けないですむー両親や検事はそれを選んだ。だが被告のクローディア・ドレイパーは、私は責任能力がある、裁判を受けたいと主張する。マクミラン検事VS.レビンスキー弁護士の法延における熾烈な闘いと、人間らしさを求めて自らの恥部をもさらけ出して苦悩するクローディアの姿を描く感動の法廷ドラマ!ワーナー映画化。
江戸への道中、病に倒れた小山田庄左衛門を救ったのは豆腐屋の半次と、おえん、おせいの美人姉妹だった。病癒えた庄左衛門は、やがておえんと恋仲に。血気もいつしか衰え、仇討は武士の作法にすぎないのではないかとの思いに悩まされ始めていた。その頃、内蔵助は内匠頭の弟によるお家再興を願い出たが容られず、逐に討入りを決意。時に、元禄15年12月14日。そして庄左衛門は…。長篇歴史小説。
帝和医大附属病院手術部の雨宮博子は、有能なナースとして高い評価を得ている。特に、第1外科部長で消化器外科の権威である苅谷教授は、野心家の博子にとってなくてはならぬ存在であった。その苅谷が、政界の長老の手術中、突然よろめき、メスを落とすというアクシデントが起きた。苅谷の健康に疑惑を抱く南雲助教授に反撥を感じながらも、博子は不吉な予感に襲われる。会心の長篇医学ロマン。
幕末の京。仁孝帝の没後にその皇女として生れた和の宮は、有栖川家の若宮・熾仁親王と婚約し、興入れの日を楽しみに待っていた。だが、公武合体を狙う岩倉具視らによって、この婚約は覆された。二人の宮は、幼少より和の宮に仕える夕秀の手引で駆落ちを図るが果たせず、和の宮は将軍家茂に嫁した。家茂の病没、十五代将軍慶喜による大政奉還の後、二人は江戸で再会を果たすのだが…。華麗なる長篇悲恋絵巻。
保険調査会社〈トリプルI〉に所属するウルフ・ラニハン。マンハッタンでは少しは知られたタフな調査員だ。おやじは元海兵隊中将のデヴィッドスン。得意先は保険会社。保険金が支払われる前に、キナ臭いところがないか調査するのがウルフの任務だ。女には弱く、バーボンにも目がない。ヤバイことだって平気でやってのける、ろくでなしウルフが手がけた13の事件を一挙掲載。本邦初訳。
長谷川清人・43歳。アメリカ各地のスキー場で催されるワールド・プロスキーレース・サーキットで、年齢・体力の限界をこえて大活躍した伝説のスキーヤーである。アスペンから始まったこのシーズンのレースは、清人と同い年のロートル・レーサー、ブルーノとの熾烈な闘いであった。清人には胸に秘した暗い目的があった。そのシーズン初め、13歳になる一人娘の舞子を西穂高で亡くしていた。彼女の死の原因になった2人のアメリカ人青年を捜し、娘の仇をとる…気力と憎悪の力だけが、清人のレースを支えていた。
饗庭仁-瞬発力を秘めたしなやかな筋肉と褐色の肌をもつ泥棒の段取屋。組織がらみの仕事は一切請けない主義だが、それが災いして、現在は文無しだ。ホテルの古美術展を襲う仕事も、たった1人の少年に目の前で鮮やかに獲物を攫われる。そして妖しい美女、葉子の色香に惑わされ、組織の仕事を請負わざるをえなくなってしまった。しかしそれが、あの少年との再会につながろうとは!妖精と呼ばれるその少年こそ、ベルフォールの宇宙生体工学研究所から逃げだした狂気のクローン・サイボーグだったのだ!気鋭が描く会心のフューチャー・アクション。
小比木至と本郷美津子は、東京・九段のホテルにチェックインした。二人ともそれぞれ別の相手との結婚を控え、これが最後の愛の交歓である。だが、小比木の愛撫はいつもと違った。美津子が助手兼愛人をつとめていた天才画家・千波宗太郎の性の技巧そっくりなのだ。その千波は一年前、妻とともに絞殺されている。小比木は、美津子を心理的に追いつめ、真相を探り出そうとする。長篇サスペンス・ロマン。
青函トンネル中央部付近に異常湧水が発見された頃、竜飛岬側から怪しい3人の男が斜坑内へ侵入していった。同時刻、上野発下り超特急アカシア209号では、青函連絡船復活を叫び爆薬を仕掛けた男女四人組が新幹線を停止、乗客を人質にトンネル内に居座ってしまった。急増する異常湧水と爆破犯、侵入者の三重の危機に、全権を委託された副技師長・梶木はどう対処するのか!パニツク長篇。
平凡なOL生活に飽き足らぬ依理子の前に、ある日“侍従”と称する謎の男が現れる。「望む所へ御供を」との言葉に誘われ、夜ごと冒険が始まった。やがてレズ・バーで出会った元侯爵夫人との愛に溺れた依理子は、夫人を追って侯爵邸へ忍び込むが、そこには夢とも現実ともつかぬ世界がー。青年を愛する侯爵。依理子そっくりの謎の少年。奇怪な蝋人形館。狂気と倒錯の館で、最後に彼女を持ち受けるものとは!
徳川三代将軍家光の治世、泰平の世が続き、武士も文弱に流れたとはいえ、まだ豊臣家残党の策動が絶えなかった。武骨一徹の旗本大久保彦左衛門の次男大八郎は父に似ず、その軟弱ぶりを、水野十郎左衛門ら旗本奴白柄組に嘲笑される始末。そんな頃、浜竜四郎と名乗る剣客が無法者を懲らしめているとの噂が流れた。青年武士大八郎をめぐる剣と愛慕の渦を描く長篇時代小説。
無法者を懲らす剣客浜竜四郎は大八郎のもう一つの顔だった。一方、徳川幕府転覆を企む流兵馬一味は浜竜四郎の名を騙り、辻斬りを働いて江戸市中を震え上らせた。兵馬の妹越路太夫を白柄組の毒牙から救い一心太助に匿わせたことで大八郎は許婚伊佐緒の父から絶縁、父彦左衛門からも勘当されてしまった。同じく家を出た伊佐緒と共に太助の世話を受け、大八郎は兵馬一味を追った。長篇時代小説。
米国の原子力潜水艦セタセアが、ソ連海軍に撃沈された。この事件で二カ月後に迫った米ソ首脳会談の実現が危うくなった。事件の鍵を握る英国のスパイ、カラソフを国外脱出させるため、英国“作戦本部”の秘密工作員クィラーが送り込まれることになった。だが、KGBの待ち伏せによってカラソフは死亡。事件の背後には、英ソ間で仕組まれた“取引”があった。好評クィラー・シリーズ。本邦初訳。
円光寺宗夫は画家である。世紀末的怪奇画で流行児になっていた。その円光寺の家に、週刊誌記者の門倉隆造が刃渡り30センチほどの短剣を持参した。剣には“魄”の字が彫られ、柄には竜頭が施されていた。この「魄の剣」は、円光寺の親友で有名なファッションデザイナー、草鹿譲二の家の古井戸から発見されたという。草鹿はガンで死期が近い。女祈祷師が、対になった「魂の剣」を持ってきた女と草鹿が結婚すれば平癒すると告げた。疑惑を抱いた円光寺は女祈祷師の出自を調べに四国へ飛ぶが、そこには南北朝の血の時代があった。
推理作家志望の根岸登志彦は、7月15日午前3時アパートの一室で、50メートル先のメゾン・ガーネット401号室に住むアイドルスター、佐伯真弓が自室から墜落するのを目撃した。そして1カ月後、2カ月後の同日同時刻、同室から男性の第2、第3の墜落を目撃。悪霊の祟りか殺人か?彼は謎を究明すべく401号に移り住んで3カ月目の同日午前3時になって…。一方、スーパー浦上屋の売上金6千万円の強奪にまんまと成功したハチ、タカ、ヒョウの3人組を追及する警察と、根岸の推理が真相に迫るに及んで…。
中国、六朝時代。莫大な財をなした陸一族の長老・和隆は、霊能者のお告げに従い、全ての財産をある場所に隠した。そして、その在りかを特注の壷に封じた。そして-。舞台は現代。数奇な運命を経て、壷は諏訪景太の手元に在った。景太は壷にまつわる書付けを解読し、途方もない財宝の存在を知る。しかし、たった一つだけ、解けない謎が残った。恋人の台湾美女・李〓蘭とともに、最後の謎に挑戦する景太。しかし、台湾、香港、中国と足を伸ばす彼らの行手には、香港系の不気味な一団が待ちかまえていた…!