出版社 : 新潮社
幼時に戦死し、記憶の片隅にすら残っていない父。だが父親であることにはかわりはない。母親の求めに応じて父親の過去の姿を探り、やがて思いは自分の少年時代へ…。-古典の祭壇に奉られることなく、いまなお鮮烈な輝きを失わないカミュ。自動車事故死のため執筆を中断せざるをえなかったカミュ最後の未発表長編-。壮大な自伝的作品として構想され、カミュの全体像を捉える鍵を握っている未完の長編小説。
あなたも故郷に帰りますか?彼らの夏は、終わらない…心の道しるべを探して旅を続けるボブ・グリーンの小説世界!友情の絆を確かめ、恋に出会い、自分の人生を見つめるために-。オハイオ州ブリストル。彼らが生まれ育ったコロンバス近郊の小さな町。二十五年目の同窓会で、親友三人が思い立った「ひと夏の旅」は、故郷の町で終わりを告げる。けれども、旅する夏は新しい出会いと生きる勇気を与えた。男たちは、人生の新たな旅立ちに向かう。
セラピストとして開業したての「私」のもとを訪れた美しきクライアント、ジェニファーは、多重人格だった。初めて目にするその症状に魅了され、翻弄された「私」は、ついにその内の一人と恋におちてしまう。治療が「成功」すれば、二人の気持ちはどうなるのか?-NYの有名セラピストが、自らの体験をもとに、治療の現場でのセラピストとクライアントの心理的駆け引きをスリリングに綴る。多重人格のクライアントとセラピストの心理的葛藤をリアルに綴ったノンフィクション・ノヴェル。
今こそ新しい預言者があらわれる時だー。ある時は銀行員、ある時はアステカの神官の子孫。神出鬼没、正体不明の“神の代理人”謎の預言者ムルカシを探せ!元カソリックの信者で後に娼婦となったマリ子と、聖書と『ガンジー自伝』を愛読する天才的平和主義者の日本人ワタルが、ムルカシを追って都市を彷徨い、聖地を巡礼する。永遠の悟りを求めた魂の遍歴を綴るアンチ宗教小説。
長谷川正人は遭難したダイビング仲間を探すため、奥多摩の地底湖に潜った。そこは水没した鐘乳洞で、中は迷路のようだった。自分の位置を見失ってしまった正人は死を覚悟するが、突如現れた「彼女」に導かれ、奇跡的に生還した。あれは幻覚だったのか?それともー正人は「彼女」の姿を求めて再び水底へと向かう。だが、そこで見たものは…。新感覚のサスペンス・ファンタジー。
ニューハンプシャーの小さな街で十七歳の少女が惨殺された。容疑者は同級生の少年ジェイコブ。彼は理由も告げず失踪し、警察は家族の家を訪れた。彫刻家の父親ベンと小児科医の母親キャロリン、そして妹のジュディス、三人の生活はその瞬間から一変した。倫理を貫こうとする母親と愛情を訴える父、その狭間に立ってただ内向していく妹。愛情と家族のあり方を厳しく問う問題作。
25年目の同窓会。ビーチ・ボーイズの「オール・サマー・ロング」を聴きながら、かつての親友三人組が「ひと夏の旅」を思い立った。TVの取材記者ベン、教師のマイケル、会社を経営するロニー。行き先を決めない自由な旅が始まる。歳月が引き離した友情を取り戻し、新しい恋に出会う夏-爽やかで切ないボブ・グリーンの小説世界。
昭和二十年七月、原爆を運ぶ米重巡洋艦インディアナポリスをグアム-レイテ線上で撃沈するべく待ち受ける海軍伊号五八潜水艦。太平洋戦争における艦艇同士の最後の戦いが開始された。索敵と待ち伏せ、追跡と反攻、そして撃沈。史実に加えられた巧みなフィクション、双方の指揮官・戦闘員の活写、詳細な戦闘描写、意表をつく結末。第一級エンターテインメント。
小説だからってフザケるのもいい加減にしろ!日本人に欠けているものは何だ?それは言うまでもない。堅牢強固な意志の力だ。日本ファンタジーノベル大賞受賞後初の書下ろし長編小説。今、とぼけた調子で、世に問う。世界一弱いヒーロー活躍、天才・サトウのナンセンス・ワールド!カニジンジャー沢蟹まけるは改造人間である。彼を改造したマングローブは世界征服を狙う秘密結社である。沢蟹まけるは人間の自由のためにマングローブと戦うのだ。
蓬莱島に暮らす美しき仙人・玉英は、仙界でも指折りの神通力を持つものの無類の酒好きで呑みっぷりは天下一品。東に銘酒ありと聞けば、行って一盞を傾け、西に美醪ありと聞けば、数斛を乾す毎日-。ところが、人間の男に恋をしたから、さあ、大変!永生の国で暮らす仙人たちの愛しき日々を愉快に描いた、博識読者に贈る今世紀最笑の仙人小説。
試合では万年二位の中距離走者の高校生・ジョンは、ある日、林の中で新種の蝶を見つける。小さな製材の町の運命さえ変えてしまうかもしれないこの蝶の出現で、ジョンは友人、町の人まわりのすべてとぶつかってしまう。不治の病に冒された父親とも-。淡い初恋に胸を焦がし、将来を思い悩みながら、大人への一歩を踏み出していく17歳を瑞々しく描いた青春小説。
古美術店「故渓」の女主人、氏家蔦代は茶人だった父から受け継いだ確かな眼と気っぷの良さで、同業者からも一目置かれる存在。男に縁がないわけではないのに、独身を通しているのが周囲の人間にとっては不思議だったが、実は深い訳があった。情けを交わした男には決まった不幸が訪れるーそんな数奇な宿命が蔦代にはつきまとっていたのだ。その始まりは、初恋のあの人だった…。
人は一遍は死ぬけん、怖がることないきにー鰹船に乗り、命を張って富を求めようと少年は水平線を見据える。土佐・中ノ浜の貧家に生まれた彼が歩むことになる破天荒な人生を、このとき誰が予想しただろうか。時化の海での遭難、無人島漂着、捕鯨船による救出、そして異郷アメリカでの生活…時代を越えて記憶され続ける“ジョン万次郎”の壮大なドラマが今、始まろうとしている。
異郷アメリカでの人生を順調に歩み始めたかに見えた万次郎。だが最愛の妻の死をきっかけに、彼の胸に望郷の念が再び沸き上がる。鎖国を続ける故国への命懸けの渡航、肉親との再会、幕府要人たちの交流、そして咸臨丸での再渡米…。幕末の激動期に無二の国際通として活躍した中浜万次郎。自らの知恵ひとつに頼って生き抜いたその波瀾の生涯を雄渾な筆致で描きだす傑作長編小説。
東京郊外に暮らす美術大学の講師、川久保悟郎。その娘でララという名の猫にだけ心を開く孤独な少女、桃子。そして、家庭教師として川久保家にやってきた画家志望の雅代。微妙な緊張を抱きながらもバランスのとれた三人の生活はそれなりに平穏だった。そう、あの日、あの女が現れるまでは…丹念に描かれた心の襞と悲劇的なツイスト、直木賞作家の隠れた名作待望の文庫化。
強大なる経済力のため、多国籍軍の猛攻を受け『永遠に経済力を保持しない』という条文をのまされた日本国の底力を描く表題作。父を五輪のメダリスト、母をノーベル賞受賞の物理学者に持つIQ186の天才青年が凡庸なる日本人を目指す悲喜劇「インドから来た青年」など、抱腹絶倒のパロディカル・コメディーとも痛快無比の知的文系SFとも大絶賛された愉快な愉快なケッサク9編。