出版社 : 河出書房新社
江戸中期、彗星の如く現われた巨人が相撲をかえた。魔物のように全力で相手に躍りかかるその姿に悪政と飢饉にあえぐ民衆は自らの運命を託すー壮大なスケールで稀代の相撲人・雷電為右衛門の運命とその時代を描き出した巨篇。
デュラスが、自らの創造力のなかからつくりあげた「白骨の西洋」-海と空にひらけた、砂と風の町、S・タラ。「海」であり「死」であるこの町を舞台に、「旅人」や妊娠した狂女といった名前のない登場人物が繰り広げる物語は、デュラス文学の極北であると同時に、『ロル・V・シュタインの喪心』『副領事』と同じ背景をもち、その世界の核となるものである。
凍てつくような冬の夜、数千年の重みを背負わされた架空の町シュタットを舞台に、四人の登場人物が直面する、死刑執行という極限のドラマ…。デュラスが寓意と象徴の技法を駆使して、六八年五月革命の衝撃を、離散の民の自立性を保ったまま普遍的な存在にたどりつけるのか、というユダヤ人の悲劇的な問いかけに重ね合わせるように描き出した問題作。
「昭和」をひたむきに生きぬいた女の半生を、村と河の移りかわりとともに描く、名作『四万十川』の作者による、感動の大作。満州分村移民の隠された悲劇、その傷痕をのりこえて希望へ歩み出す女たち男たちの戦後。
『フィネガンズ・ウェイク』から『ユリシーズ』へ、全十八章の新訳抜粋(原文対訳)と豊富なダブリンの写真で構成するジョイス-ダブリン-ユリシリーズをヴィジュアルに読み解く本。
時は平安の世、広才の士と仰がれた小野篁は美しきこと世にまれな、年若い女に恋をする。しかしその女は、篁の“異母妹”だった。みずからの命をすりへらし、来世で出会うことに望みをかける女。だが男は、罪深き恋ゆえに、のちの世で会うことも叶わぬことを知り、現世に女の魂を永遠にとどめようとする。二人の恋の忘れ形見、小野小町。恋を遠ざけ続けた彼女は、やがて自分の中に封じられたさらなる悲劇を知ることになる…。夜ごと地獄の庁に座す魔性の男、小野篁。その女(むすめ)、小町。平安京の闇に葬られた小町の悲恋とは。呪われた一族の血とは。『東京魔方陣』の著者による話題騒然の伝奇小説。
能の名作「善知島(うとう)」を素材に、人間存在の無明の深淵をあざやかに浮き彫りにした表題の傑作のほか、古典より材を得て、自在かつ縦横に小説世界を構築した、人間凝視の鋭さに満ちた著者の代表的短篇集の待望の文庫化。
第六学級B組でのあたらしい学年を記念して、オヅ先生の提案で始められた学級日誌。終わりゆく世界のなかで夢み、成長する少年たち。たがいに傷つけあい、いやしあう学校ともだちの一年間を、彼ら自身のことばで綴る珠玉作。
桜散る闇と殺りくの街・スプラッタシティでくりひろげられる“夢の中の「私」”桃木跳蛇とゾンビたちとの壮絶なバトルー今世紀最大、史上空前の悪夢を出現させる笙野文学の代表作にして、現代文学の金字塔、待望の文庫化。
二十世紀における最も重要な二人の思想家の出会いが生んだ幻の名著。本論に加え、1934年から40年にかけてのベンヤミン宛書簡を通し、時とともに輝きを増すその思考の核心に迫る。
きっと彼女に白いヴェールをかぶせて赤いコンバーチブルで連れて帰ろう。高3の夏をグルグルまわったミオと僕の恋。全審査員を感動させた純・青春小説。第32回文芸賞受賞作。
シャーロック・ホームズが巻き込まれた知られざる怪事件。それはケンブリッジ大学トリニティ・カレッジの哲学者、ラッセルからの電報で幕を開ける。 イダイナル ズノウ ヌスマレントス スグコラレタシ ホームズを待ち受けるのは、ヴィトゲンシュタイン、ケインズ、オカルトの帝王クロウリーなど希代の知性たち。ホームズ・パロディの怪作、ここに登場。
人体の多くの断片が、ほとんどフランス全土にわたって、さまざまな貨車の中から発見された。被害者は極度の肥満体の女性、そしてこれらの断片を運んだ列車は同一地点ーヴィオルヌの陸橋を通過していることが判明した。だが、いまだに頭部のみは発見されていない…。デュラスが実際の事件に取材し、十年の歳月をかけて結実させた「狂気」をめぐる凄絶な物語。
建築家である夫、巌と二人の息子、邑人と都夢と暮らす未央子は四十六歳。家族の危機に、未央子の年齢の危機が重なり、行き場を失くしつつある時、ホームステイの少年を迎えることになる。オーストラリアからやってきた十六歳の少年、エマニュエル・Kは、未央子にとって瞬時に魂の奥底まで理解しあえるような、不思議な心のつながりを感じる存在であった。南十字星から贈られたこの少年は、やがて静かな波紋となって、家族を予期せぬ方向へ導いていく…。