出版社 : 産業編集センター
大崎署の刑事・安西京香は警視庁への昇進が決まっていたが、薬科大生を中心とした服毒自殺事案が発端となり、1年間の休職を余儀なくされた。彼女が密かに行なっていた独自捜査に上層部が目をつけたのだった。京香の復帰は、女子高生の自殺現場への臨場となった。高校生の名前は新崎芽衣奈、現場は自宅寝室。壁には人気アイドルグループ「アリスエイジ」の中心人物・三笠ほのかのポスターが貼られていた。半年前に自殺したほのかを追って、世間では彼女のファンと思われる若者たちの自死が続いていた。解決済みであるはずのかつての事件が、再び京香の中で頭をもたげ始めた…。メビウスの輪の始まりはどこに?真実と心理に迫るアイドル×警察×ミステリー!
東京新宿。「島田法律事務所」に籍をおく弁護士・坂井尚也は、その裏に「幻影保険」請負人という顔を持つ。生前に積み立てた時間を死後に使う「幻影保険」を求めて、人々は彼のもとを訪れ、幻影の時間を生き、終えていくのだ。順調に見えた保険業だったが、坂井はある日突然、仕事を畳むと言い出す。廃業理由について彼は一切の説明を拒み、そして姿を消した。予想外の結末。真実はどこに。静かに心奪われる終末ファンタジー。
10年の浪人期間を経て薬科大に入学した数納薫と、12年もの浪人生活をまるで青春を謳歌するかのように過ごした芹澤ノエル。田舎の内科開業医の息子と大病院理事長の孫とではそのライフスタイルや考え方はまるで違っていたが、二人は互いに心許せる関係を築いていた。しかしそんな日々は、ある日突然、終わることに。芹澤が自殺したのだ。芹澤の死が受け入れられない薫は、ある時、彼が残した薬の存在を知った。それは、たった一錠で痛みも苦しみもなく確実に死ぬことができるという薬だった。時を同じくしてSNSでは不可解な死の連鎖の噂が広まり始め…。第6回「暮らしの小説大賞」受賞作。
ある日、中学生の柚香はデパートの片隅でひっそりと営業する骨董屋を見つけた。眼球にまつわる品ばかりが集められたその店の名は「眼球堂」。柚香は店主から「この店の骨董はどれもみな物語を持っている。君が物語を読み取れたなら、その対価として私は君に健やかな眼球をあげよう」と持ちかけられた。店主の取引きに応じた柚香はまず、平凡な古い人形を手に取るが…。
さまざまな理由から、生き続けるのが困難な人が行使できる「死の権利=DR」。彼らの死をほう助する医師・神恵一は、次々と訪れる患者を前に、自らの役割に苦悩するー。衝撃の結末が深い感動を誘う、圧倒的デビュー作!第五回暮らしの小説大賞受賞作。
「ペットシッターちいさなあしあと」は岩手県盛岡市にある、ペットの看取りを行なう会社だ。社長の陽太(25歳)はにおいで生き物の死期が分かる。社員には動物の言葉が分かる薫(26歳)、動物に深い愛情と敬意を抱く柚子川(31歳)がいる。ある秋の日。海外から帰国した父親と久しぶりに対面した陽太は、彼から漂うそのにおいに気付いた…。「死」を通じて明らかになる、それぞれの人生。粗末にしてかまわない「生」などひとつもないことが静かに語られる、切なくも温かい命の物語。
冬のカガミノでトコネムリが突然変異をおこした。一気に罹患していく村人たち。仙道は病のかげに銀蜂の王の存在を感じ取る。すべての魔術師を己の配下におき、世界を支配しようとする王。まゆと仙道は命懸けで戦い、カガミノは表面上は平和を取り戻した。この戦いで力を使い果たした仙道は、次第に守り蜂・月花がわからなくなっていく。急激に衰え始める体。失われていく利き蜜師の力。そんな仙道に寄り添ったのは…。人気ファンタジー・シリーズ完結!
生きものの言葉がわかる薫(25歳)の再就職先はペットシッター「ちいさなあしあと」。主な仕事はペットの看取りだ。イヌ、ネコ、ウサギ…彼らの最期に立ち合い、見送り、その想いを飼い主に伝える。逝くものと残されるものとの心ふるえる物語。
仙道とまゆ、ユーリーの乗った飛行船が、音楽祭を数日後にひかえた芸術の都・月の古都に不時着した。そこは利き蜜師の権威が通じない特殊な町だった。一行は飛行船の同乗者である琴の名手・エイラの館に身を寄せることになるが、そこに漂う重く異様な空気が仙道を戸惑わせた。大祭の日、まゆはユーリーの影に潜む銀黒王に気づく。そして訪れた対決の時。まゆが選び取った手段とは…。迫力のスケールで描かれる利き蜜師の物語第三話。
みさと町立図書館分館に勤める遥は、33歳独身の実家暮らし。遥が持参する父お手製の弁当に、岡部主査はいつも手を伸ばし、くすねていく。人事異動でやってきた彼は、図書整理もできないネットサーファー(死語)で砂糖中毒だ。本の貸借トラブル&クレーム対処をはじめ、家庭内の愚痴聞きや遺失物捜索など色々ある“図書館業務”は、ままならないことが多い。でも小さな町の図書館分館では、訪れる人たちの生活が感じられる。理解もできる。だから、ここではちょっと優しくなれるのだ。いなかの図書館を舞台に描かれる、小さな町のハートフル・ストーリー。
チューリップの庭園と、息をのむような図書室を備える古城・ベルジュ城。利き蜜師・仙道と弟子のまゆは、利き蜜師協会からの、ある命を受け城を訪れた。敷地に入った瞬間、仙道はそこに働く特殊な力を感じる。仙道たちを迎えた城主シェーラは若く美麗な女主人だったが、その気配はあまりに弱々しい。やがて仙道とまゆはこの城で、利き蜜師の真実を知ることになり…。迫力のスケールで描かれる利き蜜師の物語第二話。
豊かな花場を持つ村・カガミノ。蜂蜜の専門家であり術師である利き蜜師・仙道の平穏な日々は、村に迷い込んだ一匹の銀蜂に気づいたことで一変する。東の地で悪しき風が吹き始めている…。仙道は幼い弟子・まゆを連れてカガミノを出るが…。迫力のスケールで描かれる、利き蜜師の物語。第三回「暮らしの小説大賞」出版社特別賞受賞作。
小学2年生の眞子の夢は、一緒に住んでいるひいばあちゃんと、手紙交換をすることだった。毎日、手紙を書く眞子。けれど何日経っても返事はこなくて…。子どもの頃のキラキラした日々や優しさや強さ。忘れかけていた大事なことを、思い出させてくれる傑作感動長編。
22歳の美也子は津軽塗職人の父と、デイトレーダーをしているオネエの弟との三人暮らし。母は、貧乏暮らしと父の身勝手さに愛想を尽かして出て行った。美也子はスーパーのレジ係の傍ら、家業の津軽塗を手伝っていたが、元来の内向的な性格と極度の人見知りに加え、クレーマーに苛まれてとうとうスーパーを辞める。しばらくの間、充実した無職ライフを謳歌していたが、やがて津軽塗の世界に本格的に入ることを決めた。50回ほども塗りと研ぎを繰り返す津軽塗。一人でこつこつと行う手仕事は美也子の性に合っていて、その毎日に張りを与え始める。父のもとで下積みをしながら、美也子は少しずつ腕を上げていき、弟の勧めで、オランダで開催される工芸品展に打って出ることに。第1回暮らしの小説大賞受賞作!
3年間で100万ポンド稼いだ者だけに全ての遺産を譲る…。前代未聞の遺言により、熾烈な金儲けレースを始めた息子たち。だが事態は思わぬ方向へと展開してゆく。
莫大な遺産は一体誰の手に?骨肉の愛憎とむきだしの闘争の末、彼らがたどり着いた終着点は?欲望うずまく現代社会で、人間の真の幸せとは何か、を問いかける感動の後編。