出版社 : 講談社
きらびやかな宝石の匣。だが開けてみると、肝心の宝石は消えうせ、赤い絹布の窪みだけが残っている。この匣は虚とか不在と名づけられるべき、天与の贈りものであろうか。戦争の傷をその後の人生に刻した三姉妹を美しい宝石匣の虚になぞらえ、妖美壮麗の小説世界を築く幻想文学の傑作。会心の連作集「とらんぷ譚」の完結編。
ローラの一家は、思うような小麦の収穫がないまま、プラム川をはなれる決心をした。妹グレースの誕生、姉メアリーの失明、愛犬ジャックの死…、ローラは、もうすぐ13歳になろうとしていた。西へ西へとのびる鉄道工事の会計係をしながら、父さんは農地をさがすが…。多感な少女ローラの目を通して描いた「大草原の小さな家」の第4作。
妻子と別居中の男は宗子という女と暮している。女は海に憑かれた元海軍少尉の父親から精神的に独立できないでいる。男・女・父親ー各々の微妙で危うい関係は、7篇の短篇に鮮やかに抽出され、時間の経過とともに揺れ、やがて一つの長篇に固着する。画期的連環小説の手法で家族の崩壊、愛の変容、人生の内面を浮彫りにする。読売文学賞受賞作。
人間の弱さと愚かさを清冽な筆致で描き、愛の本質と可能性を追求する恋愛小説の傑作。アメリカ東海岸の小さい港町、東品川の倉庫街、そして神話の里出雲を択び、時空を越えてこれらの海沿いの街を繋ぐ、はかないけれど確かに存在する「虹」を描いた。
如何なれば膝ありてわれを接(うけ)しや──。長崎での原爆被爆の切実な体験を、叫ばず歌わず、強く抑制された内奥の祈りとして語り、痛切な衝撃と深甚な感銘をもたらす、林京子の代表的作品。群像新人賞・芥川賞受賞の「祭りの場」、「空罐」を冒頭に置く連作「ギヤマン ビードロ」を併録。
北の都ケベックにようやく訪れた春。アンジェリクの身辺にも矢つぎ早に事件が。謎の神父が放った密使との闘い、夫ジョフレのひそかな裏切り、刻一刻と町に近づくインディアンの大襲撃…。そして、フランス本国から最初の船で届けられたルイ14世の親書の内容は、アンジェリクにさらに重大な決断を迫るものだった。
みんな何かを知っている、みんな何も喋らない。新興住宅地で起きた母子心中事件の真相を追うTVレポーターの美希子、その行く手に見え隠れするのは誰?オランウータンと名乗る若い男は味方か敵か?都会の無関心と異常な沈黙が引きおこす恐怖の日常!筆者が新境地を拓く、長編サスペンスホラー!
青森県新郷村。キリスト伝説の地で、男が十字架に首を吊った。同行の美少年は、謎の言葉を残して闇に消える。さらに京都、香川と怨霊伝説の里で怪事件が続発し、美少年の姿が見え隠れする。彼に取り憑いたのは崇徳院の怨霊か?そしてソロモンの秘密は四国に眠るのか?興奮と戦慄の書下ろし歴史ホラー!
海面下8千メートルの深い闇で、2億年の眠りにつく生命体があった。現代人の欲望はその海底に放射能廃棄物を沈め、「彼」に巨大な目覚めを呼びおこしてしまう。人類への復讐を誓う「彼」は、地を震わせ大気を裂いて、列島に襲いかかった!人も大地も食いつくされる!文明社会への警鐘、長編パニックの傑作!
非行少女の更生を願い、絶海の孤島に施設が建造された。だが、幼くして性の歓びを知り、放恣で率直な日常にいた少女たちの前には、悪魔の罠ともいうべき悲劇が待ちうけていた。3人の死亡者を出し、28人となったはずの少女たちが、何度数え直してみても、31人いるのなぜ?恐るべき魂の告白を聞け!
日常はしがない学習塾の講師である萩生真介だが、実はテレポート(瞬間移動)能力を身につけていた。ある日、萩生のもとを三矢財閥の社長夫人と称する妖艶な美女が訪れ、一人息子・矢切鞭馬の個人教師になってくれと頼む。これが矢切一族に取り憑く妖鬼との死闘の始まりだった。バイオレンスエロスの長編。
正体不明の船のやとわれ船長だったわたしは、2度目の出航で親友の成瀬と交替した。ところが成瀬は殺される。船に疑惑を抱いた彼は、ひそかに何かを探っていたらしい。わたしが友を殺した敵を追い求めると次々奇怪かつ危険な徴候に襲われ…。美しい大自然と人間の悪を精緻に描く秀作。日本推理作家協会賞受賞作品。
オイル王国のサウジアラビアにクーデターが発生。同国駐在のすべての外国人、世界経済を左右するアメリカのオイルマンたちが、出口なしの窮地へ!必死に脱出をはかる日本人商社員たち、革命軍との虚々実々の駆け引きに狂奔する各国の要人たちの取るべき行動は!?壮大なスケールの新クライシス・ノベル。
青春の光と影を鮮烈に描く長編ロマン。ニューヨークでジャズ・ギタリストへの道を歩んでいた俊夫を見舞った不幸なアクシデント。水色の瞳と北欧系のシルバー・ブロンドの髪を持つ娘・モイラとの出会いと愛の日々。競走馬アバター号との関わりから始まった。一人の日本青年の失意と再起の軌跡をたどる意欲作。
世界が軍縮と平和の幻想に酔っているとき、裏では恐るべき計画が着々と進められていた。アメリカの喉元に、ソ連の秘密核ミサイル基地を建設しようというのだ。CIAとKGB、くわえてGRUが死闘をくり広げ、ソ連政治局内部の派闘争いもからんで事態は恐るべき様相を見せはじめる。息もつかぬ迫力で読者をひきずり込む、娯楽巨編。
鏡のなかを通りぬけたアリスは、またまた奇妙な世界へ。おしゃべりな花たちの咲く庭をふりだしに、鏡の国を歩くアリスのまえに、つぎつぎとおかしな住人があらわれてー。「ふしぎの国のアリス」につづくキャロルの作品で、チェスゲームを織りこんで構成された、夢とユーモアにあふれたファンタジーの傑作。
ローラの一家は、インディアン居留地の小さな家を去り、長い旅のすえに、ミネソタのプラム川のほとりに移った。広大な肥えた大地で、小麦の収穫に目を輝かす父さん、学校へ通いはじめたメアリーとローラ。順調にすべりだした生活はある日とつぜん、いなごの大群におそわれたー。新天地を求め、力強く生きるインガルス一家の物語第3作。
人間の存在を揺るがす根源的な不安を、心の奥深くに刻んだ即時待機の特攻体験。終焉の日常は暗く美しい光を放ち、〈夢〉の世界へと飛翔して行った。死をかかえ込み極限を生きた特攻隊員の異常な生の日々を、穏やかな島の人々の生活と対比させ、鋭い感性で描く「出孤島記」など、生と死のはざまで、現実と非現実、日常性とは何かを問う島尾文学傑作7編。