1987年11月発売
昼はとことんマヌケでも、ひとたび闇夜にくり出せば、精力絶倫、推理も冴える-。袋田飛彦、通称“フクロウ警視”は、35歳。同期はとっくに警視正に出世しているのに、勤務中のいねむりがたたってオチコボレ。でも無能とはちがう。犯罪の勾いをいちはやくキャッチし、隠れた事件を暴くため特設された特別自由捜査隊のキャップなのだ。今回は、〈日の出〉のダイイング・メッセージを残して息絶えた銀座の画廊の経営者をめぐって、恋と波瀾の深夜の大冒険…。ふくろう警視のひとみに光が宿った!痛快ユーモア推理!
第8装甲野戦旅団長J.フランソワ准将は、死んだら必ず天国へ行けるだろう。それほどいやな奴だった。トライテニア平原の会戦に最終的な勝利をおさめた雨の降る夜、部下を持たない個人戦闘員のコクラン少佐は、そんな彼に呼ばれた。不吉な予感…「少佐、君はわが旅団で最高の勇者だ。だから君を選んだのだ」…有無をいわせぬ命令だった。彼の行手に非情な世界が待ちうけている!詩情豊かに描く表題作ほか「銀河英雄伝説」に結晶するまで、田中芳樹が精魂をこめて発表した傑作7篇。ファン待望の声に応えて贈る傑作スペース・アドベンチャー!
「志濃田さん?山崎です。大変なことになりました」-広告代理店〈関通〉から掛かってきたこの1本の電話が、いまにして思えば壮大な茶番劇の始まりだったのだ。私はアニメ制作会社〈ジパングアニメーション〉のプロデューサー。次期放送予定の子供向け巨大メカアニメの新番組に備えて脚本家と打合せの最中、スポンサーの意向に基いて突然、寝耳に水の企画変更指令が飛び込んできた。B企画の「サンバイマン」で行け、と言うのだ。でも実はこの企画は…。主人公の目を通して、マスコミの救いなき悪ノリ体質をリアルに描く、新・ギョーカイ小説!
米軍の要請に従い宗谷、津軽、対馬の三海峡封鎖に踏み切った自衛隊は、ソ連太平洋艦隊の北海道進攻に直面した。緒戦のソ連潜水艦による奇襲でレーダー網を寸断された東北、北部各方面隊は、手さぐりの陸海防衛を余儀なくされていた。さらに、ソ連軍に呼応する蠍(スコーピオン)グループは道内各地で蠢動、北海道は風前の灯となった。圧倒的なソ連軍の戦力から、北海道を守ることはできるのか?近未来パニック巨篇。
西ドイツの首府ボンで日本人女性の変死体が発見された。女性は元オペラ歌手・両角佐枝子。ボン警察は自殺と断定するが、身許調査に立会った日本大使館二等書記官草葉宗平は不審を抱く。彼女が訪ねた音大の講師ハウザーも、1カ月前謎の死をとげているのだ。佐枝子の娘も5年前、留学先のミュンヘンで自殺。草葉は単身事件解明に乗りだした。「浴室の告発」ほか、海外を舞台にした本格サスペンス連作。
昭和の初め。“三尺の辰”こと磯貝辰之助、身の丈四尺三寸、侠気の巷に生きる1匹の虫。花火の三尺玉同様、前後の見境なく逆上してははぜる。道頓堀界隈を這う。一大歓楽街開発をめぐり、二雄の熾烈な諍いが起こり、小村の旦那に“買われた”三尺の辰、敵方・西塚を刺し、5年後出所。辰を待ちうけた道頓堀は…(表題作)。流転する人の世と時代の底で蠢く男たちの哀歓を描破する傑作集4篇。
私は中年の独身男、サンフランシスコのしがない私立探偵だ。恋人はいるが、結婚まではほど遠い。日々悩める私に、ある日たてつづけに3件も依頼が。宝石の警備、尾行、上流婦人の居所の確認。どれも楽な仕事だ。ようやく運が向きかけてきたか。ところが、3件が3件とも信じられない具合にねじれ、探偵免許さえ取り上げられそうになってしまった。好評“名無しの探偵”シリーズ注目の最新作。
悪しき文明の苦界に背を向けて、比叡山中に一家を挙げ移り住んだ中年の売れない作家・苦楽利氏が目指す、自然回復生活の前途は?本物の卵を求め養鶏に手を出し、にわか百姓となって土地を耕し、ドブロクを密造し…失敗の連続にも、いささかも懲りぬ苦楽利氏を悩ます家族の反乱!洛北の景観を背景に、現代のドン・キホーテの切ない冒険を描く、芥川賞作家の心温まる初の諷刺ユーモア快作。
ラグビーグラウンドで三本の指骨が試合中に見つかり、全日本代表選手玉沢が死亡した。一方、ラグビー協会理事長早川が数カ月前から失踪しており、発見された指は早川のものと断定された。変死した玉沢の家族を調べ始めた警視庁赤坂署の梶田は早川と玉沢との複雑な人間関係に驚愕し、早川が探し求め、日記に書かれていた人物を追って伊勢へと向かう。やがて、二つの事件を追う梶田が掴んだ驚くべき事実は、伊勢の小さな町から、怖るべき過去を持つ連続殺人犯を浮かびあがらせた-。
日本各地で米軍基地施設が連続爆破され、その卓越した戦闘能力から、この事件の背後に高度な訓練を受けた集団の存在を日本政府は確信する。統幕別室室長の水上は、事件を調査すべく新・鬼道組を召集。かくして、南海の島の壮烈な戦いで潰滅した鬼道組が、唯一の生き残り・連城と共に甦った。その連城達の前に立ちはだかる魔王の兵士・ノーマン大佐の陰謀とは?また自ら殺戮の地へ向かう野獣・石田を待ち受けているものは?
新宿要通りにあるバー『からくり』のママ麻美。推理小説好きが高じて、ついつい“探偵ゴッコ”に首を突っ込む。ヴィトンのボストンバッグをかかえた美女の来店で始まった事件も、疑惑の匂いがプンプン。場違いな国際電話がかかってきたり、彼女が何者かに轢き殺されてバッグを奪われたり…。麻美は、レズ相手でエクスタシーに達すると霊感が働く容子、純情でおっちょこちょいな警察官清水とトリオを組んで謎に挑む!
新聞社の熱海支局長をしていた北原は、“週刊熱海”を創刊した。名探偵ホームズのベーカー街イレギュラーズもどきに、客引き、観光写真屋、渡り芸者とネタ元も多彩。仲秋の名月の歌会の翌日、伊豆山子恋の森で、女性の全裸死体が発見された。顔には塩酸がかけられ身元確認は困難を窮めた…。好評湯の街ミステリー第2弾!
響三郎は国際犯罪を追って世界の舞台に颯爽と登場!日本警視庁の超エリートでありながら、国際刑事警察機構の特別捜査員に起用されたからだ。本書は、このスーパー・スター響三郎シリーズの第1弾で、東京赤坂に発生したコールガール射殺事件が国際犯罪組織の解明へ発展する。日本版007の期待十分な超傑作アクション。
長崎沖で発見された元寇船内の遺物。そこには、大モンゴル帝国崩壊の謎が隠されていた!第4代皇帝モンケ・ハンが発した華麗な“酒の噴水”建造の命。それを受けて製作にとりかかった一団の中に、皇帝暗殺を狙う男の眼が輝いていた!諸説紛々のモンゴル帝国皇帝の死因に新説で迫る壮大な歴史スパイ小説の傑作!
極秘任務でロシアに潜入したと思われる外交官の父はもう2か月も消息不明。第六感で父の危険を察知したヴィダは、偽のパスポートでロシア人になりすますと、父の救出にむかった。途中、てがかりを得るために謎の人物ともくされるイワン大公の居城に立ち寄った。ハンサムで若々しく気品に満ちた大公の姿にヴィダの胸はときめくが、かれが敵か味方かはっきりとした決め手はない。その夜、ヴィダはロシアの謀報員と思われる男が大公の部屋に入っていくのを目にする…。
越後新発田藩士の加納喬四郎は、父代わりだった兄主膳が青柳伊織に斬られて死んだため、藩を逐電した伊織を追って仇討ちの旅に出た。だが、江戸での浪人暮らしをつづけるうちいつしか仇討ちの気持ちを失っていた喬四郎が遭遇した一つの怪事件とは?それは謎の怪人物“将監”にひきいられる黒頭巾の一党を相手にまわす不思議な事件であった。喬四郎が捜す仇敵の青柳伊織は高田玄蕃と名を変え、18歳の娘小夜と深川の長屋で暮らしていたが、将監一党につけねらわれて市之介という侍とともに殺され、小夜も黒頭巾の手で捕われ、石牢の中に入れられてしまった。玄蕃に恩をうけた怪盗速足の小吉が小夜を助け、また喬四郎も小夜のため将監を追った。-将監の正体ははたして何者であったか!
2年前に家を出奔し、都会の夜に蠢いていた青年利根洋二は、ある日、父がバーのホステスと投宿した熱海の旅館で、客死したことを知った。死因は中高年を突然襲うというポックリ病であった。「あの父が…」死因に疑惑を抱いた洋二は真相を探るべく、さっそく調査を開始した。やがて浮かび上がる、死ぬ直前の父の不審な行動。そして仕掛けられた恐るべき罠に気づく洋二だったが…。大都会の孤独と若者の虚無を描いた傑作長編ハードボイルド!
テレビ視聴者2千万人に目撃されて、アイドル歌手の幡木すすむが生放送中に爆殺された。密室の照明室から、犯人はC地点という謎の言葉を残して消えた。ドル箱スターを失った赤根プロの女社長紀美子が自ら調査に乗り出した矢先、もう一人の所属スター大迫裕志が浜名湖畔のホテルで爆死した。空白の120秒間に起きた完全密室殺人であった…。本確推理復権の旗手が放つ、会心の長編本格推理!