1987年発売
〈柏木大介調査センター〉の最初の依頼人は、姉を捜してほしい、という17歳の美少女だった。柏木大介が35歳で会社を懲戒免職になり、やむなく始めた“探偵業”は、ボディーガードを兼ねた、美少女との奇妙な“同棲生活”も加わり、うまいスタートを切ったかに見えた。しかし、その直後からクロロホルムや鉄パイプという、なんとも古典的な方法で次々と襲われ、遂には彼の目前に柩までが並ぶ、散々な仕事始めとなった-。人妻失踪に絡んで何故か異常なまでに牙をむいた巨大組織と、美少女・新米探偵コンビの孤独で果てしのない戦いを、クールな筆致でたたみこむ、新都会派ハードボイルド。シリーズ第1弾。
清純派女優ナンバー・ワン、NY映画祭主演女優賞受賞、映画監督雨宮との秘めたる関係。あの夜さえ、やって来なければ、女優仁科由布子は、幸せの絶頂に、いたはずだった。雨宮が去った後、突然現れた男は、余韻冷めやらぬ由布子を、その淫らな肉の棒で弄び、嬲欲の限りを尽くし、由布子は、凌辱の愛奴と化す。
陰鬱で閉塞的な地方都市ダブリンから希望に溢れる外界への脱出を夢に描き、挫折していく人々の生きざまを、幼年・思春期・成年・老年という人生の諸相においてとらえた短篇集。自然主義リアリズムと象徴主義、さらには「意識の流れ」の手法が複雑微妙に融け合い、壮大なるタブリン交響楽を奏でている。
新宿ネオン街の近くで起った夜の女・やす子殺しに続いて、旅客機爆発墜落事件…その乗客の中にもコールガールの名が。捜査本部の必死の裏付け捜査は以外な人物の名を割り出して…興味の推理長編!
倒産により、暴力金融に追われる新谷京助は、人生の吹きだまりのようなボロアパート日暮荘に身を潜め、絶望のヘドロの中でのたうちまわっていた。だが、その頃日本宗教界に相次いで起きた、脱税事件と殉死事件が、追いつめられた新谷に突如として不逞の企みを抱かせたのである。偽装の神がかりによりニセの生き神様となって、大教団を組織、巨億の富をつかもうという破天荒な野望である。2年数カ月の緻密な計画の果てに、ついに一世一代の大芝居、まやかしの神がかりは実行され、新宗教「地蔵法眼教」は旗あげした。
偽装の神がかりは成功し、ニセ生き神様の新興宗教は、日に日に教勢を拡大して行く。本当の宗教は釈迦とキリストにまかせておけとばかりに、次ぎ次ぎに打ち出される霊感商法の名アイデア。年商100億円-。すべて虚構の上に築かれた宗教のはずなのに、なぜ人は救われ、教団はゆるぎない存在になっていくのであろうか。教団、永遠不滅の証左として、武蔵野の一角に、大伽藍が建立されようとしていた。自らの野望のために恋も人情も捨てる宗教商人の壮絶な生涯。改めて宗教とは、救いとは、信仰とは何かを問う大河ドラマ。
伊藤博文が1909年ハルビン駅で死ななかった。朝鮮が今日まで日本の植民地であるという仮定の下で書かれた小説。日本はアメリカ、ロシヤに次ぐ世界三大国になった。朝鮮は歴史・言語・文化を完全に抹殺され、朝鮮が日本の植民地であるという事実すら知らない。しかし1人の朝鮮人が偶然、昔、朝鮮国と言語と詩歌があったことに気づく。そして消された碑銘を求めて旅立つ。
伊藤博文が1909年ハルビン駅で死ななかった。朝鮮が今日まで日本の植民地であるという仮定の下で書かれた小説。日本はアメリカ、ロシヤに次ぐ世界三大国になった。朝鮮は歴史・言語・文化を完全に抹殺され、朝鮮が日本の植民地であるという事実すら知らない。しかし1人の朝鮮人が偶然、昔、朝鮮国と言語と詩歌があったことに気づく。そして消された碑銘を求めて旅立つ。
秀吉の知恵袋とまで呼ばれ、義に生き、信を全うし、五万石の小大名でありながら、家康に大ゲンカを仕掛けた大谷吉継の生きざまと死にざまは、日本経済の実質を支える中小企業経営者、サラリーマンに多大の共感と感銘を呼ぶ!著者はライオンズ石油社長。
ビジネスマンに人気のある大阪行き寝台急行「銀河」で女が殺された。容疑者は警視庁・十津川警部の同級生。さらに同じA寝台に乗り合わせていた乗客が、なぜか次次に殺されてゆく。逮捕が迫り追い詰められた知人の窮地を救おうと、十津川は部下の亀井刑事とともに銀河A寝台に試乗したのだったがー。
現実界を超え、非在と実在が交錯しあう幻視の空間を現出させる鏡花の文学。その文章にひそむ魔力は、短篇においてこそ、凝集したきらめきを放ってあざやかに顕現する。そうした作品群から、定評ある『竜潭譚』『国貞えがく』をはじめ、絶品というべき『二、三羽ー十二、三羽』など9篇を選び収める。
母を常磐津の師匠に、伯父を俳諧の宗匠に特つ中学生長吉の、いまは芸妓になった幼馴染お糸への恋心を、詩情豊かに描いた『すみだ川』。また花柳界に遊んだ作者が、この世界の裏面をつぶさに見聞しみずからも味わった痛切な体験を、それぞれ独立した小篇に仕立ててなった『新橋夜話』のほか、『深川の唄』を加えて1冊とした。
天に駆けのぼる龍の火柱のおかげで、見失った方角を知り、あやうく遭難を免れた漁師の因縁(表題作「龍を見た男」)。駆落ちに失敗して苦界に沈んだ娘と、幼な馴染で彼女をしたう口がきけない男と心の交流(「帰って来た女」)。絶縁しながらも、相手が危難の際には味方となって筋を通す両剣士の意地(「切腹」)。その他、市井の人々の仕合せと喜怒哀楽を描いて卓抜な技倆を示す傑作時代小説集。