1988年発売
父の郷里土佐で見つかった渋紙色の古い日記に誘われ父祖の事蹟を辿りはじめた著者は、やがて厖大な資料と格闘しながら幕末維新の歴史の襞の一つ一つを解きほぐし、この動乱の時代を活写する。歴史小説に新しい手法を切拓いた渾身の労作。
明治22年、弱冠23歳にして露伴は美妙編集の『都の花』に「露団々」を連載し人生即文学への途を開いた。自らの運命とたたかう男の流離の物語である初期長篇「いさなとり」をあわせ収める。この2作には、露伴の理想主義、人間観、運命観がはやくも色濃く漂っている。
そのとき、犯人は青函連絡船の上りに、被害者は下りに乗って、津軽海峡上をすれちがった!連続殺人事件にまきこまれた笹谷美緒と、恋人で美緒の父の助手・黒江壮が不可能犯に挑戦、スケールの大きい、用意周到な犯人のトリックを破るスリルと興奮の本格長編書下ろし。犯人は誰か?殺人の仕掛けの秘密は?
津和野、高山、四国の中村、秋田県角館…小京都と呼ばれる街で起きた連鎖殺人の謎に挑む名探偵キャサリンの推理!現場にはつねに若い女の姿が見え隠れし、不幸と悲しみの影がただよっていた。そして旅情あふれる美しい観光地を北から南まで訪ね歩いたキャサリンが、最後に突きとめた意想外の真犯人とは?長編旅情ミステリー。
暗く荒涼たるさいはての海。冬の嵐は信頼も理性も憧れも、殺意さえも白一色の下に埋めつくす。断崖の白い館で2年前、美しい女性の20歳の生命を奪った悪魔は、そこに集まったいとこたちのうえに、ふたたび邪悪な影を投げかける。隔絶された“雪の密室”に起こる奇怪な事件を通して、残酷な愛の行くえを綴る異色のファンタジツク・ミステリー。
大阪中之島の大倉庫で、ある夜奇妙な出来事がおきた。海坊主の親方ことなにわの源蔵が現場にかけつけて確認できた痕跡は三つ。番犬の火傷、鉄砲をうったような音、そして米つぶほどの丸薬であった。それらはなにを物語っているのか?ユニークな風貌で型破りの名探偵が活躍する、明治期の大阪捕物帖シリーズ。
国際派俳優の本格ハードボイルド作品。堂田将司は米上院議員マッキャノン2世の主宰する秘密情報機関・日本拠点員である。東京赤坂の路上で焼殺事件に遭遇した彼は、首なし死体の謎を追ってタイへ飛ぶ。灼熱のタイ王国を巻き込む前代未聞の大陰謀とは?アジアの動乱と変革を鋭くえぐる国際情報小説第1弾。
好漢は好漢を知る。不運にも官を追われた宋江の行くところその好漢ぶりを慕い、危急を救う男がいた。例えば正直者だが、喧嘩早い巨漢、李逵、弓の達人花栄、戴宗…。一騎当千の豪男たちは青州をかき回し、梁山泊に合流した!再び卑劣漢の江州長官に闘いを挑む。いかなる闘いだったかーまだまだ疾風篇。
シンガポールでミハルが消えた!どうやらインドの人身売買団・南十字星団に誘拐されたらしい。ジローと竜さんは、インドへ連れて行かれる前に無事ミハルを救出することができるだろうか。また世界中の金持ちのハーレム・インドの幻の都ジャイナプールから、とらえられている娘たちを救け出す計画は成功するだろうか。そして、ドイツのアウトバーンで予定しているフェラーリ・テスタロッサの慣らし運転はどうなる?
昭和20年8月16日。上海からの1隻のオンボロ機帆船が、4名の日本軍特務員を乗せて、東シナ海に浮かぶ孤島・江〓島に向った。終戦を知らぬ守備隊千余名を全滅から守るためである。荒れ狂う海、刻々と迫るタイムリミット、乗員にまぎこんだ見えざる敵側工作員。東シナ海を男たちの男で染める死闘。プロ対プロが容赦なく対決する戦争冒険小説の傑作。
1979年5月、英国首相のもとに1通の文書がとどけられた。そこには1枚の映画広告文が添えられており、コピーには“カイゼローダ塩坑の決定的秘密とはなにか?”と大書されていた。一見して、首相は事の重大さに気づき、M16部長のシドニー・ライデン卿と会見した。塩坑の秘密が明るみにでると、大英帝国の威信は失墜し、ひいては自由主義世界をゆるがすことにもなりかねないのだ。アメリカにさえ知られてはならない。ライデン卿の密命をうけて、ボイド・スチュアートがロサンジェルスへ乗り込んだ。白日のもとにさらしてはならない秘密なのだ。〔XPD(Expedient Demise)とは、「好都合な死亡事故」という意味である〕
はたして“カイゼローダ塩坑の秘密”とはなにか?ときをおなじくして、ソヴェトKGB、米国家安全保障局もイギリスの動きを察知し、行動を起こしていた。スチュアートがおぼろげに、その秘密の正体を知ったとき、事態はすでに急をつげていた。アメリカもソ連も目前に迫っている。どうやらチャーチルとヒットラーの関係に、重大な謎が隠されているらしい。スチュアートはライデン卿に確認を求めるが、卿は言を左右して煮えきらない態度の終始している。おそるべきことに、イギリスは秘密を知ったスチュアートをXPDしようとしたのだった。現代史の裏にひそむ大陰謀を描くデイトン会心の長編野心作!〔XPD(Expedient Demise)とは、「好都合な死亡事故」という意味である。〕
恋人に捨てられ、傷ついた心に芽ばえる殺意。もう戻って来ない楽しかった日々と訣別するため、女は完全犯罪を計画する。-微妙に揺れ動く女心の翳りを描く表現作「ころす・の・よ」をはじめ、暑く重苦しい夏の殺人事件と蛍を象徴的にからませた「暗い光」、スラリー仕立ての「阿美の女」、日常生活の盲点を突く「盲点のひと」など、本格推理の佳作を七編収録した最新オリジナル短編集。
いよいよ智佐子と克郎はハネムーンに出発した。行く先は上海船の旅。三良旅行社のツアーに便乗して、旅費を節約したのが間違いだったらしく、往きの船中から、二人は怪事件に巻きこまれた。老い先短い大金持ちと、その遺産目当てなのがミエミエの血縁たちというツアーのメンバーは、それでなくても胡散臭い。上海に到着すると、早速殺人事件が一行を出迎えた。シリーズ完結編。
他人の目には理想のカップルだが、二人だけになると異常な嫉妬を露わにする弁護士を夫に持った妻の孤独な悩みと、終日妻への不信感に苛まれるその男。-現代人が直面するさまざまな疲労・倦怠・空虚と、一歩間違えれば悲劇が生まれる現代の恐怖を題材にした表題作ほか、いずれも一見平穏な日常生活の下に潜む意外な犯意や、犯人の心理を鮮やかに捉えた2編を収録する。
マリブの海辺にある父の家で、僕と父の新しい生活が始まった。父は僕に、僕自身について小説を書くように言った。僕は海を、月を、太陽を、船を知ってはいるけれど、僕自身や世界をほんとうに理解するにはどうすればいいんだろう。-10歳の少年ピートは父親との時に厳しく、時にさわやかな会話を通じて、生きることの意味を学んでゆく。名匠が息子に捧げた心あたたまる詩的小説。