1988年発売
「胃と腸が、体の中で切断されている!!」高松病院の昼食会の席上、病院長・高松良一が突然、腹部に激痛を訴え急死。手術に立ち会った医師たちは、その奇怪な症状に戦慄する。医学界の常識を覆す奇病か、それとも殺人か?しかも、同夜の宿直医・望月までが同じ症状で死亡。病院内を恐怖が疾る!解剖された2人の体内から米粒大の鉄球が発見された。不気味に光る鉄球の意味するものは何か?不可能犯罪の謎に挑む新米医師・吉松直樹。医学者としても一流の著者が、最先端の医学知識と奇抜なトリックとを縦横に駆使した、書下ろし本格推理の白眉。
くたびれた黒羽二重の着流しに雪駄ばき、はげた朱鞘を落とし差しにしたどこから見ても尾羽打ち枯らした浪人者は、人呼んで白柄朱膳。元高遠藩士で、その剣法は一刀微塵流。たったの一刀で、四方八方の敵を粉砕するという“あばれ剣法”であった。北町奉行遠山金四郎を友とする白柄朱膳が立ち向かう大江戸の怪事件とは…?稀代の絵師瀬川春草が呼び売りのかわら版に描いた“大江戸小町づくし28美人”が身を投げるやら斬り殺されるやら、はたまた心中やらとつぎつぎに惨事に見舞われるという奇怪な事件がひきつづいていた。つぎは御蔵小町、春草の娘(黒い水面)。-大江戸の闇に出没する怪人変化のからくりを斬る破邪の剣。白柄朱膳事件帖。
慶長17年(1812)夏、船島において佐々木小次郎と試合した宮本武蔵は、みごとに強敵小次郎を倒した。その後、因州鳥取6万5千石の池田家中の士に円明二刀流を指南していた武蔵に、19年春、新当唯一流岩井唯一赤山なる剣客が試合を挑む高札を立てた。が、この剣客をも苦もなく打ち倒したのち、武蔵は京へと向かった。その武蔵を追う者に、一族の長宍戸梅軒の仇討ちを名目とする手裏剣の名手天郷一郎太・小三郎の兄弟がいた。大坂夏の陣の直前、豊臣方につこうとして真田幸村らの反対に遭った武蔵は大坂城を去った。そして、不敵な少年三木之助を養子にしたのち、下野国小山の本多上野介正純のすすめで江戸へと向かった。-剣豪宮本武蔵の生涯を描く傑作長編。
一見何の関係もなさそうな2人の女が相次いで生命を奪われ、その左腕を切り取られた。1人は映画のスクリーン上で濃艶な美貌と甘い歌声をうたわれた女優吉野小夜子、もう1人はこれも凄艶な美貌の持ち主、“白蛇のお菊”の異名を持つ女スリ。いつものくせで、居酒屋でしたたかに酔ったわたし(駆け出しの探偵小説家松下研三氏)のカバンの中に、いつの間にかまぎれ込んでいたコルトの拳銃。あやめもわかぬ暗黒の中に、青白い燐光を放って浮き上がった人間の片腕。-わたしを震えあがらせたこの二つの事実から、神津恭介はみごとに犯人を推理した。残るは決め手となる証拠だけだ。(「女の手」)-ほかに表題作「血ぬられた薔薇」をはじめ6編を収録。
警察庁最強部隊ー竜崎三四郎を長とする“鬼の軍団”の隊員たちが次々と襲撃される、という事態が生起していた。日本を二分する暴力組織と、その間をぬって東南アジアの麻薬王をバックにのし上がった第三勢力、そのことごとくは潰えたはずだがはたして何者か?いつもならまっさきに飛び出す竜崎警視が、今回ばかりは副団長の壇警視やナンバー3の長島警部、婦警軍団の長部隊にまかせて、妙に落ち着いている。三四郎の胸中は…?おりしも、ヤクザが次々とアメリカ本土に乗り込んでいるとの情報が入ってきた。ヤ印と米軍MPを顎で使う謎の美女と妖しげなホテルチェーン、これを結ぶと麻薬と武器と売春の組織として一本のものにつながってくる。三四郎を先頭に竜崎軍団出撃のときが来た。
まずしい漁師がアッラーに祈りながら網を打つと、2匹の猿がかかった。その猿を使ってまた網を投げると、たくさんの魚がとれた。彼の前には次々と運が開けはじめる。そして…(「貧乏カリーフの物語」)。ほかに「黄色い若者の物語」「ハサン・アル・バスリの冒険」など、たくみな展開が楽しめるお話の数々。
傍目に安逸をめさぼっているかに見えたマイフリート館。だが優しかった当主夫人は、ある夜、不可解な深夜の散歩に出た挙句、森の奥で殴殺されてしまう。誰が?何のために?捜査の進展とともに、館はしだいにその真の貌をあらわにしていく。そして人々の入り組んだ心理の綾の中にウェクスフォードが見いだした、ある衝撃的な事実とは…?
レムリア大陸最小の町ルクレオは、土地の急速な砂漠化のため危機に瀕していた。この危機から町を救うには、魔王の城に住む「ベルゼブルの竜」が持つ魔剣、アシュナードの力を借りるしかなかった。この剣が秘める再生の魔力だけが、土地の荒廃を押しとどめ、緑の大地をよみがえらせることができるのだ。第1回創元ゲームブック・コンステト入選作。スーパーアドベンチャーゲーム。
彼らは自らを〈人間〉と呼んでいた!南米大陸の果て、パタゴニアの海に舟を浮かべる狩漁の民アラカルフ。かつてマゼランは、ダーウィンは、宣教師たちは彼らに何をしたのか?西欧文明が誤解し、虐げ、滅亡に追いこんだ1民族に寄せる鎮魂の書。
名探偵フィリップ・マーロウに傾倒している北岡ハルミは新宿に事務所を構える“お嬢さん探偵”。ハルミは目下スキューバ・ダイビングに凝っている。婚約者の藤城昭夫と伊豆の富沢海洋公園へ。インストラクターの案内で海底を散歩中ハルミは魚の泳ぐ姿にみとれている間に昭夫たち一行とはぐれてしまう。不安と恐怖に襲われながらハルミは海底を夢中で泳ぎ回っていると、岩と岩の間に体を突っこんだ格好で女性ダイバーが死んでいるのを発見する。酸素を口に送るレギュレーターのホースは2本とも損傷していた。発見者として伊東署に呼ばれたハルミは付近で同じような事件が続発しているのを知り、昭夫の協力を得て、持ち前の行動力で事件解明に乗り出す。-私立探偵ハルミの青春と冒険をフレッシュ感覚で描いた長編ミステリー。
桜の怪?城山公園でのミステリー。大阪の若手漫才“ヒマラヤ探険隊”の森川保夫のコンビ石原弘司は、四国宇和島での仮設舞台で公演中、突然天井から落ちて来た丸太のせいで死亡した。過失?意図的殺人?-どちらも当てはまりそうもない。ところが通夜にやって来た被害者の祖父が棺を見据えて意外なことを言い出したのだ。「まだ、お許しにならんのか」そして「お前らのお父さんもお母さんも、あそこで死んだ。行ったらあかんのや、行ったら」。そのまま意識不明に陥ってしまった老人の謎を解くべく保夫は弘司の妹と再び宇和島を訪れる。そしてその2人にまた襲いかかったのは…。勇壮な和霊神社の祭礼に絡み合う怨念の行方を追う著者独自の浪華ミステリー傑作長編。
地上げ屋、フィクサー、悪徳医師、偽マルサ、ネズミ講。こんな虱のような連中は闇から闇へ片付けろ!泣きの涙で日を送る善良で気の弱い庶民がどれほど助かることか…。そこで登場する闇の仕置人、そのプロフィルは-。川野為五郎、新宿の居酒屋『文吉』を女房にやらせヒモ然としている。が、彼こそ中国カンフー陰流唯一の継承者。大貫勘三、50過ぎの元警視庁捜一のデカ。柔道5段、唐手3段、剣道4段、合気道2段。一条良基、新宿の名門寺院副住職。26歳、色白の美貌。西洋占星術が出来、手裏剣を使う。芦花リエ、フラメンコダンサー。24、5歳。美貌だが酷薄に仕事を片付けもする。そして闇の執行長。初老。浅草の裏通りに居を構え、仕置に決定を下す。-死!著者会心の秘拳仕置人シリーズ。