1989年12月1日発売
未知への情熱で中国に渡った青年・紅真吾の貿易公司は、日本の商社に押されて破産した。“最後の豪遊”をきめこんだ真吾は、料亭で、高価な豚の毛集めの話に誘われる。揚子江3千キロの旅に同行するのは、大陸浪人など素姓の知れぬ猛者ばかり9人だった。広大な中国大陸に繰り広げられる、日本の代表的冒険小説。
興亡激しい戦国の世に、周到な謀をめぐらして家名を守りぬく、真田昌幸とその子信之・幸村、そして配下に従う腕利きの忍者群。天下分けめの関ケ原で、ついに父子・兄弟は敵味方に分かれて戦う羽目に…。
ブルーの瞳に、黒いまつ毛。8年ぶりに会うブラッドは、以前にも増して輝いている。しかい、キャサリンの胸は重かった。父から会社を受け継いだキャサリンは、立派に社長業をこなしていたが、父は決定的な遺言を残していた。それは、彼女が1年以内に結婚しなければ、社長の地位を追われるというものだ。「私と結婚して」やっとの想いでささやいたキャサリンに待っていた答えは-。
マージは、さっそうと歩く男の姿に目を見はった。トレース・ウォーカーとの2年ぶりの再会である。マージは、精神科医としての立場から、心惹かれる気持ちを抑えようとしたが目の前に現れたトレースの魅力には、どうすることもできなかった。求め合う2人…しかしその間には、トレースの別れた妻ゲイラの姿があった。ゲイラは、自由の生活を求め、狂言自殺をはかったのだ。4人の子の幸せのため、なんとか離婚はくい止めようとしていたトレースの姿を、マージは今も、ぬぐい去ることができなかった。
「きみにそっくりだ」プラドー美術館に飾られた聖母マリアの絵を前にしてしかも、姉のヘルミオネが結婚を望んでいる相手のシルバーラ伯爵が口にした言葉はヴァレーダを不思議な気分にさせた…。娘の家庭教師として素性を偽り、スペイン訪問に同行してほしい-という姉のヘルミオネの頼みをききいれはしたものの、静かな田舎の暮らしとはまるで違うスペインの日々はヴァレーダには驚くことばかりだった。
1870年、アメリカはゴールドラッシュにわきかえっていた。メキシコの大牧場主の娘サマンサは友人の兄エイドリアンとの初めての恋にときめかせていた。けれど肝心のかれは、そんなサマンサの心を無視するかのように、にえきらない態度をとりつづける。いらだつサマンサは、ある日駅馬車の中でかれの気持ちを試そうとする。乗りあわせたハンサムな男ハンクの気をひいて、エイドリアンの嫉妬心をかきたてようというのだ。ところが、その思いは見事に裏切られる-ハンクに純潔を奪われたあげく、エイドリアンはホモだと知らされたのだ。
折しも、父の牧場は正体不明の盗賊たちにくり返し襲われていた。恋人を失い、傷心の日々をおくるサマンサは、気晴らしに遠乗りに出かける。と、その時を待っていたかのように、突如サマンサの前に現われた盗賊たちは、抵抗する彼女を、かれらのアジトに掠奪していく。そのボスは何とハンクであった。恋人の秘密を暴き、彼女をあざわらうように強引に奪った男、いつか必ず復讐をと誓った憎いかれに、今は人質という屈辱の身で再会するとは-。恐怖にふるえるサマンサに、しかしハンクは、なぜか優しく、いつしか彼女の憎しみも揺らぎはじめるのだが。
政治家への野望を抱く弁護士の夫、クレイグとの結婚生活は、危機にあった。アンは、自由な女になりたかったのだ。ブロードウェイの大スター、キャロルに頼まれたちょっとした芝居の代役がもとで、俳優のウエッブと出会ったアンは、この危険な、しかし魅力的な男に、はじめて大人の女の喜びを知らされた。やがてパリで、トップモデルになったアンに、映画出演の話がもちこまれる。相手役は、なんとあのゴシップと謎にみちみちたウエッブ、その人だった。
映画の撮影が、モンタレーでクランクインした。それも、母親が溺死した悲しい思い出のあるアンの別荘で-。ウエップに“大人の女になる”魔法をかけられたアンだったが、かれのスキャンダラスな過去への不信はつのっていくばかりだった。そんなある日、本番のカメラの前で、思わずナイフを握りかれを刺してしまう。政界、財界、映画界を舞台に、華麗なひとびとのしかける罠に、いつしかアンも巻きこまれていくのだった。
正徳(1711)のころー、江戸に“両国の三奇人”といわれる奇妙な男たちがいた。それは回向院前の魚屋太吉に薬研堀の聴雨堂なる老人、3人目の男が聴雨堂近くの裏店に“よろず指南所”の看板を下げる多賀甚三郎なる25、6歳の男で、この男なにか特異な感覚があるらしく、八丁堀が手を焼く難事件を快刀乱麻を断つごとく解決してしまう。聴雨堂平右衛門の娘お蝶が泉岳寺に参ったとき、内匠頭の墓所にぬかずく頭巾の武士は、大石内蔵助と名のった。そして、白黒だんだら染めの印羽織をまとった大高源五の死体が出現したが、それは何者かに殺された魚屋太吉であった。さらに矢頭右衛門七の死体が。-江戸の街にふたたび出没する赤穂浪士47士の謎に敢然と挑戦する多賀甚三郎。
“翔んでる女刑事”となって、世の凶悪犯罪に立ち向かうー気高い使命感に燃える純情美人近藤利代子と肉体美人酒田多恵子は、泣く子も黙る警視庁警ら二課の新人婦警である。鬼と恐れられる名物二課長三河八重子警部のモーレツなしごきにもめげず、ときには超ビキニ姿ど男どもを悩殺し、あるときはスケ番女子高生に扮し、悪党どもに立ち向かう…。恋と笑いのハラハラ名コンビが、凶悪犯罪に真っ向うから挑むベストセラー『夢みる婦警』シリーズ第二弾。
京都の旅荘八十八で、有名カメラマンが刺殺された。手掛かりは、死体の傍らにあった芥川龍之介の名作『羅生門』と、紫色の可憐な花〈羅生門蔓〉の栞だった。このツアーを企画した夏木梨香は、姉の香奈を通して警視庁の小早川警視正に助けを求めた。だが、解決の糸口が見つけられぬまま、伊豆の蓮台寺で第二の殺人が起こった…。現場に残されていた『羅生門』と栞の意味は?さらに第三の殺人はあるのか?ミステリーの名手が贈る旅情あふれる本格推理。
首都をめぐる9番目の環状道路、リングロード・ナイン。その沿道に生起する黄昏色の希望と失意をクールに描くサバービア・ストーリーズ。26人の登場人物が連鎖して、時に甘く、時に苦い物語を演じる。男と女、出会い、わかれ、そして、もういちどはじめから。時速70キロで展開するわれらの時代のドラマ。
誰かを好きだと言ってしまいたくて、誰かを嫌いだと言ってしまいたくて、でも、それがとても恐いことを招きよせてしまうような気がしてー。甘えと優しさが毀れると、その向う側には闇と憎悪がぽっかり口をあけている。サイモンとガーファンクルの名曲にのせて、80年代の《青春》の重さを描く15の物語。
17歳で子供を産み、しかもすでに夫に置き去りにされていたメリディアンが、もっと広い世界と過去と現在を意識しはじめたのは1960年4月半ばのある日のことだった。黒人運動にかかわり、世の中の矛盾に苦悩し、挫折しながらも選挙権啓蒙運動を続けたのは、曽母や母に流れる黒人民族の歴史の重さ故であった。“カラーパープル”の著者による自伝的長篇小説。