1990年発売
第二次世界大戦下、爆撃の続くロンドン。15歳の少年ビルは人込みのなかで少女ジュリーと出会う。二人は大人の「保護」の手をのがれ、空き家に住みつき、飢餓や生命の危険ととなり合わせの共同生活を始めるが…。-戦争という異常な状況下で精一杯生きた青春を鮮やかに描く英国の秀作。
モモは、古代の円形劇場の廃墟に住む身よりのない少女が時間どろぼうに盗まれた時間を人々にとり戻す物語である。エンデによって生み出された一人の少女が、なぜ国を越え、世代を越え多くの人々に愛されるのか。「如意宝」と話型分析のユニークな方法論の導入によって、物語の構造とエンデのくれた宝物を読み解き、日本の昔話との共通性・普遍性を探り出す独創的作品論。
豪華な調度やカラフルな装飾で、男と女を官能の夢に誘うラブホテル…。そこでは、解放された性の饗宴が操りひろげられている。そして今日も、ラブホテルハンター江戸洋介は、女弁護士、女子競艇選手など様々な職業の華やかな女性たちと、恋のアバンチュールを楽しみながら、彼女たちを悦楽へと導いていく。
シャーロック・ホームズ物語の背景…霧深きロンドンの建物、通り、広場、駅、橋。この本は、ホームズの活躍と時を同じくする、1879〜1914年撮影の200余枚の写真で構成されている。巻末には当時のロンドン市街詳細地図を添付。名探偵シャーロック・ホームズが医師ワトスンとともに、事件解決のカギを求めて歩き、人々に会い、犯人を追って馬車で駈けた、旧きロンドンの街々が、いま鮮やかによみがえる。“ホームズの目”で見るヴィクトリア朝の帝都ロンドン。
性のはけ口のない3年間の未亡人生活に別れを告げるため、熟母は我が子に救いを求める。若く逞ましい息子を見たとき、母は思わずツバを飲みこみ、花芯をおびただしく濡らしながら、肉体に導いていくが、禁じられた関係故に、その歓びはものすごいものだった。背徳の性に悶え悩みつつも母と子は…。
いったい犯人はだれなのか、父親か、精神異常者か、それとも、すべては妄想なのか?バザールのざわめきの中、人生の悲劇に初めて遭遇する少女の悲しみと恐怖、大学教授の彷徨の愛。東南アジアを舞台に展開される愛と妄想のサスペンス・ロマン。
死を覚悟した信長が、再び生をうけて、新しい天下国家づくりに乗り出した。“信長が生きていたら”という仮定のもとに、その後の彼の“野望と行動”を、大胆な設定と著者ならではの着眼点で描いた異色作。
なぜ、建武の新政が暗礁に乗りあげたのか? 根本には、公卿は武家を蔑視し、武家は公卿を軽んじていたからである。それが端的に論功行賞に現れ、武家の不満は爆発した。武家は不平のやり場を尊氏に求めたが、この趨勢を心苦く思っていたのが、大塔ノ宮だった。尊氏を倒せ! その作戦は宮のもとで練られていた。北東残党の蠢動は激しく、宮には絶好の時かと思われたが……。 建武の新政が、早くも暗礁に乗りあげるーー公卿は武家を蔑視し、武家は公卿を軽んじる。それが端的に論功行賞にあらわれ、武家の不満は爆発した。武家は不平のやり場を尊氏に求めたが、情勢は混迷を深める。 ■建武らくがき帖(つづき) 今・道鏡 夕顔晩歌 男 山 毛抜き 初雪見参 北山手入れ 土の牢 ■風花帖 野分のあと 東景色 義貞・駁す 網引き地蔵 門 風 花 内裏炎上 小公子 第五列 魚見堂 筑紫びらき
一夜にして人間の評価が変るのが乱世の慣い。尊氏が“筑紫隠れ”の朝、新田義貞は、凱旋将軍として、堂上の歓呼をあびていた。左近衛ノ中将の栄誉、それのみでなく、後醍醐の寵姫・勾当の内侍を賜ったのだ。それにひきかえ、貴顕に生命乞いする佐々木道誉の鵺(ぬえ)ぶり。また、朝敵たる汚名は逃れたものの、尾羽打ち枯らした尊氏。しかし彼は、北九州に勢力を養い、反攻を意図する。 一夜にして人間の評価が変るのが乱世の慣い。尊氏が「筑紫隠れ」の朝、新田義貞は凱旋将軍として、堂上の歓呼をあびていた。--尾羽打ち枯らした尊氏であったが、北九州に勢力を養い、密かに反攻を企てる。 ■風花帖(つづき) 勾当の内侍 路頭の子 豆と豆がら ■筑紫帖 瘧 河内鞠唄 よそ者 昼の月 ひびき灘 菊池党 多々羅合戦 船あつめ 山海相聞 雨 期 ■湊川帖 面 別れ霜 献 言 桜井の宿 この半夜 日輪分裂
著者の故郷を舞台にそこに住む人々とその暮しを描く。厳しい自然と対峙する強靭な生命力のしたたかさ。優しく哀しくユーモア滲む短篇の名手・三浦哲郎の瑞々しき豊饒の世界。「金色の朝」「がたくり馬車」「沈丁花」ほか〈故郷〉の匂い染み込む作品群十六篇。新境地を拓いた著者ならではの短篇集。