1991年9月発売
「サーレイハム・ジューダ!」邪術師シャルロが断末魔に放った一言がシオンのそして霊峰山の運命を変えていった。「法の霊士」の即位式の日、シオンはシャルロの言葉を確かめるため、懲罰士の警備をかいくぐり、首領に会うために霊峰山の奥へと進んでいった。しかし新任の「法の霊士」に見つかり、囚われる。即位の儀をけがした理由で、シオンは霊峰山始まって以来の厳しい処置“死刑”を宣告される。薬草で意識を奪われ、漆黒の神輿で処刑場に運ばれるシオンの運命は…。シリーズ完結編。
日本の黎明時代、大和の国を巡る戦を中心に、不思議な力を有する少女・美々花と、大王の血を引く青年・鷹彦が活躍する。大陸から、海の彼方から、彼らを襲う敵とは。史実と神話のはざまで、膨大な資料を駆使し、闇の中から著者がよみがえらせる遥かなる物語。古代史の裏側を探る超SF伝奇小説新シリーズ。
「テエベス百門の大都」と称えられた鴎外の教養は5歳からの漢学によって基礎を培われ、この幼学以来の漢学的素養の浩瀚が晩年の史伝の鴻筆に裨益したが、一方で鴎外は若き日から晩年に到るまで漢詩を能くした人でもあった。本書は、既にその漢詩に関する専著のある漱石に比しこれまで纏った言及の稀だった鴎外の漢詩を鑑賞評釈し、その漢学的素養と用語・師友にも及んだ初の研究書である。
一流商社部長の愛人が誘拐された。内閣調査室の捜査官・黒岩は異例の命令を受け、女の捜索に着手、犯人を突き止める一方、同じく女を追う組織暴力団の存在を察知した。内調と暴力団、相反する巨大組織が、何故一女性の行方を?任務に疑問を抱いた黒岩は命令に背き、真相解明へひとり乗り出す。暴力団から商社部長への繋がりを辿り、事件の裏に、内調によるおそるべき計画が進行していることを知って黒岩は、自らの組織に闘いを挑むことを決意するが…。長篇ハードロマン。
長女の空(そら)を川崎病で喪った愛氏と僕は流離の旅に出る。山峡へ。森の声に耳を澄ます日々…。二人に再び生きる力を与えたのは繊細な奥日光の自然だった。新しいフォト・ノベルの誕生。
蟹だらけの船。魚とりの少年。羊飼いと狩人。猫と警官。菓子泥棒。パルチザンと少女。動物たちの森-。地中海からアルプスにつらなる自然を背景に描かれた、ユーモラスで寓話的な、そしてみずみずしく爽やかな、11の珠玉の短篇。名作『まっぷたつの子爵』から、遺作『パロマー』につながる、カルヴィーノの多彩な魅力の原点をなす初期作品集。
さまざまな虚構が重層的に広がる台湾-その混沌とした現実を見据え、現実もまたひとつの仮象にすぎぬという醒めた認識に立ちながら、甘美な幻影の中国と現実の台湾の狭間に生きる人びとの生の実質を生活者と同じ目の高さで描き切る待望の短篇集。
ハルオと立人とわたし。男女3人の共同生活は、どこか奇妙でヘンに家庭っぽい…。あらかじめ壊れたところから営む現代の最も新しい人間関係を鋭く捉えた大型新人デビュー作。第9回「海燕」新人文学賞受賞作。
見果てぬ青春の夢を追って、アメリカ中西部の大学へ、そしてニューヨークへ-。’60年代の無垢と頽廃の気配がきざす風俗、新しい詩の潮流、性のパフォーマンスに賭ける日米の若者たちを描いて、アメリカと自己をみつめる連作小説。
東京郊外に移り住んだ家族は、4年生の男の子を頭に2年生の女の子、そして幼稚園前の男の子のいる賑やかな5人家族。奔放な3人の子供達を中心に若々しい父母、近隣の人々、夕方になるとなぜか吠え出す愛犬ベルらの優しく温かな交流ー。子供達の華やぎと移りゆく自然の美しさの中に生の原風景を紡ぎ出す庄野文学の記念碑的長篇。
白ギツネの谷に生まれた4匹の仔ギツネたちは、盲目の老ギツネ、セージブラシに導かれ、生きのびる知恵を学んでいく。親元をはなれ、新しい世界へ旅立つ時が近づいていたー。アイルランド児童文学の最高傑作、感動のクライマックス。
風変りな幻想の博物館の世界を描いた表題作「バーナム博物館」、アラビアン・ナイトの魅惑の源を探った「シンバッド第八の航海」、幻影の女性がもたらした甘美な呪い「ロバート・ヘレンディーンの発明」、『不思議の国のアリス』のパロディ『アリスは落ちながら』、ミステリアスな雰囲気に満ちた「探偵ゲーム」、謎めいた芸人の鬼気迫る生涯の物語「幻影師、アイゼンハイム」他、全10篇を収録。
ジョン・ベアドはヘミングウェイを専門とする、しがない大学教員。常人離れした記憶力の持ち主であるが、絵に描いたような学者バカ。学内政治に疎く、学者として出世する望みはほとんどない。そんなある日、キーウェストのとあるバーで論文をしたためていた彼は、詐欺師のシルヴェスター・キャッスルメインと知り合いになり、ヘミングウェイの小説の贋作作りを持ちかけられる。ヒトラーの日記やハワード・ヒューズの自伝など過去にも贋作事件の例はある、うまくすれば一攫千金も夢ではないのだ。最初のうちは気が進まなかったベアドだったが、ベトナム戦争で負傷し創作に手を染めるなど、自身の人生をヘミングウェイの生涯に重ね合わせがちな彼は、いつしか我知らずのうちに贋作作りに没頭してしまう。だが夢中になってタイプライターを打つ彼の目の前に、なんとヘミングウェイその人が現われたことから、事態は意外な方向へ進展していくのだった。消失したヘミングウェイ作品の贋作でひと儲けをしようという悪だくみに、パラレル・ワールドの幻想をからめたライトなSFコメディの世界。ヒューゴー賞、ネビュラ賞受賞。
23歳の実姉・沙由里と24歳の義姉・亜矢子。二人が美しすぎる故に、秀之の性の悩み、渇望は大きかった。清純な沙由里への熱き想い。大人の色香をたたえた亜矢子への欲望。初めての相手は沙由里ねえさんと…。だが、実の姉とはできない。そしてついに、秀之は決心した。亜矢子ねえさんに教えてもらおう…。はやる心を抑え、秀之は裸で、眠っている亜矢子の寝室に向かったー。
いけない、やめさせなければ。同僚教師に抱かれ、女の色香を発散させながら、日高早紀子はせいいっぱい抗う。しかし、朱唇を奪われ、豊麗な乳房を揉まれると、理性が消え去り、“充実感”を求めて疼きだす、二十八歳の女の悲しき性…。女教師、早紀子の呪われた私生活を、凌辱作家、綺羅光が描ききる、渾身のレイプ。