1992年4月発売
アイドル歌手・畠中有里奈にいったい何が起こったのか。刺されたはずの自分が生きていて、刺した男が死体で発見されたのだ。悪夢の1夜に耐えきれず、彼女は法月父子に救いを求めたのだが…。知的興奮とスリル。回転計はレッドゾーンにはりついたままだ。
次女夕里子の恋人国友刑事がやむなく少年を射殺。ところが少年の父親は獄中にいた大物。復讐に燃えた大物は見事脱獄し、なんと三姉妹の命を狙う。射殺、毒殺、誘拐とあらゆる手段で狙われる彼女たちの運命やいかに…。三人の性格が事件に絶妙に反映して物語は盛り上がる。絶好調シリーズの第六作。
三国志時代、それは中国史上でもっとも波乱に富み、もっとも興味深い時代である。後漢の無法政治の闇のかなたからヒーローの時代の光が差す。諸葛亮孔明と劉備の親交、曹操の権謀、孫権の術数など、人々は躍動し、蠢動する。そして、次なる隋の大統一達成まで、時の流れは瞬時によどみもない。
17歳の少年・未来は、白血病の母の死に目に会えなかった。天涯孤独の身となった未来に残した母の遺書から、自分と母を捨てたはずの父にはバスク人の血が流れていることを知る。父の行動の謎を探るため、未来は単身パリへ旅立った。パリで会った不思議な老人から、父の秘密と宿命の血族を知った少年は…。
お十夜の晩に千住の在、西新井の石碑の前で全裸のまま眠っていた美男子は、名づけて碑夜十郎で剣の達人。記憶を失ったまま女白浪のお絹に拾われた美男剣士夜十郎が、河内山宗俊らご存知天保六花撰のメンバーとともに、江戸の町を走りまわり、悪人どもと庶民の敵をこらしめる講談タッチの痛快長編時代小説。
父祖の地小田原下曽我で、病を克服し、自然と交流する日々。野間文芸賞受賞の名作「まぼろしの記」をはじめとする、尾崎一雄最晩年の代表的中短篇、「春の色」「退職の願い」「朝の焚火」「虫も樹も」「花ぐもり」「梅雨あけ」、さらに、「楠ノ木の箱」計8篇を収録。危うい“生”と理不尽な“死”を、透徹した静寂さの上に浮彫りにした深い感動を呼ぶ名篇。
鏡の前の女の意識の流れ、性をめぐる自由奔放な空想と溢れるイメージの連鎖を結晶化させた実験小説「水晶幻想」。亡き恋人を慕い〈輪廻転生〉を想う女の独白「抒情歌」。生きものの死を冷厳に見据える“虚無”の視線「禽獣」。「青い海黒い海」「春景色」「死者の書」「それを見た人達」、「散りぬるを」等、前衛的手法のみられる初期短篇8篇。“死への強い憧憬”を底流とした著者の文学の原点。
日本に現れた“メシア”の神・ミハイルは、愛美=ルキフェルを倒すため、洸を狂戦士(バーサーカー)に変身させようと、画策していた。一方、愛美のDNAを調べた海渡たちは、それが男と女の遺伝子が絡み合ったものであることを知る。やはり愛美は“メシア”が創りだした生物兵器だったのだ。洸一家を拉致したミハイルは“メシア”が支配するTホテルへ愛美をおびき出す。愛美を待っていたのは、狂戦士と化した洸だった。ミハイルと、堕天戦士・ルキフェルの最後の戦いが始まった。
ある大戦争で〈ニンゲン〉が滅び、今は子孫の〈螺民〉が暮らしている、そんな世界のことー。若き総帥秋陽が率いる波党船団は、交易の帰途、港町海郷の悪徳支配者豪伯の手下に襲われる。危機を救ってくれたのは、ANNとJEENという2人の若く美しい呪法人形・魔神形。ある目的のために旅をしていた彼女らは、それが縁で豪伯を倒す手助けをする。次々に現れる手強い豪伯の部下たち。彼らを相手に、単なる人形とは思えない力を発揮する2人には、何か特別な秘密があるらしい…。
バツグンの美少女、町田カオリ、16歳。ろくでもない母と祖母、それに気の弱い義父と暮らしているが、心はいつも寂しく孤独だ。しかし、“自分は超能力を持っている”と信じて疑わない。その彼女が、自分の体を奪った義父と、彼女の体を狙う勤め先の社長を超能力で殺した。黒魔術で生き返らそうと必死に努力するが、そこには意外なドンデン返しが…。書き下ろしミステリー。
エルヴェ・ギベール。フランス文学の将来を担う気鋭の作家として凄まじいスピードで創作を行なっていたが、1988年エイズに罹っていることが発覚し、フランス中に衝撃を与える。絶望の中、エイズと闘う自分自身の姿-ホモセクシャル、乱脈深まる愛欲の日々-を一切合切さらけだして描いたのがこの作品である。1991年12月27日、36歳の誕生日の直後にギベールは死去。友人の哲学者ミッシェル・フーコーのエイズ死を追うような死であった。本書は、生前1冊の邦訳も出されなかった彼の、遅ればせの日本デビュー作である。
党の修正により、となりの男に貸した帽子を除いて、すべての写真から消滅した男。一枚の写真も持たずに亡命したため、薄れ行く記憶とともに、自分の過去が消えてしまうのではないかと脅える女…。〈笑い〉と〈忘却〉というモチーフが、さまざまなエピソードを通して繰り返しヴァリエーションを奏でながら展開され、共鳴し合いながら、精緻なモザイクのように構成される物語。
幼い時から悪戯にかけては天才的。14歳で出奔。芝・増上寺で勉学に励み先輩僧たちを驚嘆させるが、学寮に女を連れ込んで破門。放浪の後京都北郊、金谷山極楽寺の住職となる。その後も愚行蛮行はとどまることなく…。その坊さん・横井金谷が晩年に筆をとった。題して『金谷道人御一代記』。-痛快無類の自叙伝をもとに、聖者と無頼の間を突っ走った天衣無縫の僧の生涯を再現する。
15年前、わずか一年で結婚生活に失敗して以来、ずっと独り身を続けてきた47歳の女性弁護士撩子。大学時代の友人に連れられていったホスト・クラブの化粧室で、撩子は、突然、唇を奪われた。相手は爽やかな笑顔の青年宮島ヒデジ。彼女は、ヒデの境遇を聞くうちに麻疹にかかったように、彼に一目惚れをしていた…。表題作を初め、大人の愛のかたちを描く5編を収める短編集。
フィリップ・フレッチャーは売れない中年俳優。ひょんなことから旧知の大スター、ゴードン・ワイルドと再会した彼は、仕事の口利きを頼む。ところがゴードンは悪罵の限りを尽くし、激情に駆られたフィリップは彼を殺害してしまう。警察の追及をかわす彼のもとには次々に仕事が舞い込み始めるが、昔馴染みも続々と彼の怒りを買う羽目になってー。元俳優が描く愉快な殺人回り舞台。
世界のダイヤ取引を支配する〈システム〉は、窮地に陥った。南アからの仕入れが滞り、在庫が底をついた時、救い主が現れた。シベリア産ダイヤだ。品質は一級、値段も一級。ロシア側交渉官のニコライは、卸し値引上げを通告したところだ。が、実は彼の心はヴィヴィアンで一杯、二人の出会いは衝撃的だった。彼女は贅沢が大好き、彼はお金には無縁…。いや、でも、ダイヤなら…。