1993年8月25日発売
2DKの「ぼく」のアパートにアキラとよう子と島田が住みついて、それぞれがふらりと出かけては帰ってくる4人の共同生活ははじまった-。猫たちのくらしにも似たとりとめのない日常をトレースし、新しい世代のしなやかな感受性を浮かびあがらせた青春小説のイノベーション。
父こそいないが、母や弟妹がいる。保護してくれる伯父がいる。親友もガールフレンドもいる。修平にはなんの不満もないはずだ。でも、修平はなぜか落ちつかない-。不安とときめき、修平16歳。大人への入口に佇つ。
「この人と一緒にいたい」京都随一の美妓・幾松が見初めたのは維新の志士・桂小五郎の颯爽たる姿だった。幕末の嵐を共に乗り越え、桂は新政府の参議・木戸孝允となり、幾松はその妻・松子となるが、結婚を境に二人の愛は姿を変える。国事に忙殺され次第に消耗する木戸。苛立ちと愛の渇きを、若い役者との「遊び」で紛らわす松子。動乱期の女性の生きざまと愛の軌跡を綴る傑作時代小説。
「敵を打ち倒すために大事なことは、武略・計略・調略。それ以外のなにものも不要じゃ」-。元就の卓越した知将としての策略は忍びの者を遣った情報戦、敵の裏をかく合戦陣形、謀略を駆使した政治にあらわれた。下剋上の戦国期に小豪族から身を興し、宿敵陶氏、大友氏、尼子氏らとの激闘の彼方に西国平定の野望を見据えた稀代の猛将毛利元就を描いて、その意外な素顔に迫った長編小説。
山深い過疎の村に、時空を超えて現れた少年と犬。それが騒動の発端だった。山の自然を破壊し村を水没させるダムの建設をめぐって、奇妙な殺人事件が続く。村に住む老人、東京からやってきた若い新聞記者、二人を結ぶ運命の時間流とは-。SFタッチで描くニュー・サスペンス。
早春の小田原城祉公園で美女の刺殺体が発見された。遺留品を手がかりにたどり着いた岩手県の久慈で女の身元を掴んだルポライター浦上伸介の元に、女の母親が同一手口で殺害されたとの報せが入る。しかし、近親者の証言から浮かんだ二つの殺人の容疑者には、強固なアリバイが…。
全編これ二人の男女の電話の会話からなるおかしなおかしな「電話小説」。しかもこの電話は成人向けのいわゆる会員制セックス・テレフォン。二人は想像力の限りを尽くして自分たちが何に一番興奮するかを語り合う。昨年全米でベストセラーとなった本書のテーマはいわば、想像の世界の「究極のH」。
三上量子は心の悩みの相談に乗り、的確な見立てをして、独自の方法で治療にあたる臨床心理士。このほど、西新宿のビルに『三上量子カウンセリング・ルーム』を開業した。数日後、隣に『四方晴彦探偵事務所』がオープンした。この四方晴彦こそ、量子が三年前に離婚した元亭主だった。その量子のもとに記憶喪失の悩みを訴える阿川美砂江と名乗るクライアントが訪れる。その女性の悩みの相談に乗ったばかりに、量子と元亭主の四方探偵は思わぬ難事件に巻き込まれる羽目に陥る。
ある朝、ふと目にとまった〈俳優、死亡〉の記事-。俳優エリック・タールは、幼い僕を捨てて去っていった父だった…。死の謎を追ってさすらう少年アランが出会う、かつて父を愛した、そして父が愛した男たち。父の航跡をたどるうち、少年はいつしか悲しい愛のかけらを手にしていた…。
世界的ベストセラー、『フーコーの振り子』でテンプル騎士団の陰謀説を展開するエコに対抗して、著者はヨーロッパ・キリスト教文化の地下の一大思潮、“神秘主義”とこれを信奉する各教団の系譜について、その淵源から現代までのさまざまな変遷を詳細にたどり、エコの虚偽性を開示する。懐疑主義者エコをも懐疑にかけようとする。