1994年12月発売
徳川の威光あまねき江戸の世に、天下の御用提灯も照らし出せない闇がある。泰平の盛りを誇る街並みに、夜の帳が降りるころ、人の心に棲む闇が、おもむろに目覚め蠢き出す。鼠小僧、天一坊、石川五右衛門ー憑かれたように騙り、盗み、殺す者たち、密やかに繰り広げられるうたかたの宴。その心の闇ゆえに、「悪党」と呼ばれた人間たちの人生の明暗を描く、アンソロジー第6巻。
ロンドンの会計士パトリックは、ボルドーのワイン工場不正経理を追及中、勤務する多国籍経理会社から一方的に解雇された。この不正に麻薬が絡んでいると知った彼は単身マドリードの密売ルートに潜入する。次第に浮かびあがってきたコロンビアの麻薬王は、少年の日、ゲルニカの惨劇を体験したバスク人だった…。世界各地を舞台に、迫真の描写で展開する、国際麻薬サスペンス巨篇。
巡り合いとすれ違いをくり返す日米の恋人同士の話「雨に打たれて」、日本文化の虜になり、吉祥寺に40年も暮す“ガイジン”の話「吉祥寺綺譚」、伝説的なビッグスターへのインタビューを任された新米雑誌記者の緊張と気後れを扱った「有紀子のためのブルース」など、爽やかでチャーミングな短編13編を収録する。大都市TOKYOを舞台に、生粋のニューヨーカーが描く大人の愛の物語。
なぜ父は猟銃で自らの頭を吹き飛ばしたのか。非業の死の背後に潜んでいたのはロンドンの“成長産業”金融界と麻薬ルートを牛耳る二人のマフィアの影だった。闇の人脈に復讐を誓った「わたし」は犯罪のスペシャリストを集め「報復チーム」を組織し、マフィアの重鎮を追いつめる罠を画策するのだが…。復讐サスペンスと金融小説双方の醍醐味を見事に盛りこんだ新進気鋭のデビュー作品。
信吾は上半身を起こし、白いパンティをクルリと剥いだ。正子の女陰はしっかりと目覚め、指先で開いた左右の肉の隙間から透明なあぶくがプクッ、プクッとせり上がっている。信吾は両手で内ももを大きく開いた。「あーっ、あっ、あーん」女陰の奥の内ひだから湧き起こる泡の量が、さらに増す。信吾は生唾を呑み込み、聳り立った分身をその泡の源に突き立てた。「週刊大衆」好評連載、新鋭の長編官能“股間小説”第三弾。話題沸騰。
疾走する豪華客船の中、僕たちは激しい恋に落ちた。彼女は24歳の有名女優、僕は35歳のテレビドキュメンタリー作家。僕たちが結婚を誓い合った夜、女優の部屋でもう一人の男が自ら命を絶った。突然終わった生命、無惨に引き裂かれた恋。今亡き人と過ぎ去った青春に捧げるレクイエム。くり返す生と死のテーマが息苦しい。
孔明VS秀吉VSナポレオン、三ツ巴の決戦。幻のシミュレーション戦記レベルの傑作。日本・中国・ヨーロッパ古今の英雄・豪傑が一堂に会してバトルを繰り広げる、全世界三国志の幕が今、切って落とされた。
荊州奪回を狙う周瑜はひとつの策を孫権に進言した。夫人を亡くしたばかりの劉備に孫権の妹を娶せようというのだ。もちろんそれは口実で、江東に招き寄せた劉備を亡きものにしようというのだ。一方、劉備は両者の関係修復になるのならとこれを快諾する。しかし、軍師・諸葛亮はその策略に気づいていた。彼は、劉備の護衛とすべく一番信頼できる武将を呼んだ。長坂坡の英雄・趙雲である。諸葛亮から受け取ったのは三つの絹の袋。そのなかに、軍師の秘策が入っているという。趙雲はそれと自分の腕だけを頼りに、君主劉備とともに敵地に赴く。はたして、周瑜の策謀から劉備を護ることができるのか。立ちふさがる敵の前で、趙雲の剣がうなる。大人気の三国志をモチーフに、新たなるキャラクターの生きざまを描く「三国志武将列伝」。趙雲シリーズ第3弾。
蝋燭の炎の揺らめく降霊会で出会った無邪気な妖精たち。孤独な私の魂に救いはあるのか-。卓越した映像作家フェッリーニの放恣な夢と歓喜の幻影があふれる哀しくも賑やかな『私』探しの物語。
エイランがガイウスと引き離されて三年が過ぎた。一度は再会しながらも結ばれなかったガイウスへの思いを断ち切るために、巫女の修行にいそしんでいたエイランだが、修行中、ケルト人とローマ人の血を継ぐ者が一族の導き手となるという予言を得た。そして、その年の豊穣の祭で偶然ガイウスと巡りあったとき、予言を信じたエイランは、巫女のいましめに触れることを承知でガイウスと…壮大な歴史ロマン第二弾。
心理療法士アランとダイアンの診療所が拳銃を持った男に押し入られ、患者クレアが射殺された。つづいて彼女と同じ大陪審の証人ローレンスが不審な爆発で死亡してしまった。アランは事件の調査をはじめるが、真相の究明もままならないうちに、こんどは診療所に泥棒が入り、カルテや本棚などが荒らされた。やがて、アランとダイアンの身辺に危険な出来事が起こりはじめる…『凍りついた告白』につづく精神医学サスペンス。
老朽駆逐艦パラタインを指揮するキャメロンに与えられた任務は、無謀とも思えるものだった。同型艦二隻とともにドイツ占領下のブレスト港に突入し、建設中のUボート基地を破壊せよというのだ。基地が完成の暁には、連合軍の海上補給路は常時その脅威にさらされる。海兵隊の奇襲部隊を分乗させた三隻は、夜陰に乗じて港内に突入を敢行。だが敵の反撃は熾烈をきわめ、先任指揮官は戦死、作戦の成否はキャメロンの双肩に。
覚醒剤と催淫剤の効果を持ち、深刻な副作用をもたらす新型麻薬。その流通ルートを追って、麻薬取締課の女刑事レノアは捜査を開始した。そんな折、郵便局に勤めるレノアの双子の弟は、現在使われていない私書箱9号宛に不気味な小包が届けられているのを発見するが…独創性と刺激に満ちた衝撃の話題作。第1回ミステリアス・プレス・コンテスト最優秀作。
心身ともに虐待され、心にトラウマを負ったチェロキー・インディアンの幼女、タートル。若い独身女性のテイラーはその子の傷を癒し、ともに生きようと決意して、やがてタートルを養女にした。しかし、人生とはつねに思わぬ方向へ転がるものなのかもしれない。たまたまタートルとテイラーがテレビに紹介されるや、チェロキーの女弁護士がいきなり乗り込んできて、こう言ったのだ。「白人は部族の許可なしにインディアンの子を養子にはできないのよ」切れ者と評判の女弁護士にわが子を奪われるとおびえたテイラーは、衝動的に、あてのない逃避行へと走る。一人の傷だらけの子をめぐり、サスペンスフルに、かつ情味豊かに繰り広げられる、大人たちの人生を賭けた駆け引き。旧来の幸福な家族像がことごとく崩壊しつつあるアメリカ社会で、新しい家族のありかた、新しい母子と隣人の関係を鮮明な夢のように描き上げ、全米ベストセラーに輝いた感動の大作。