1994年8月発売
早くオトナになりたいよーっ、て。これが、あたし、倉沢笑の、夢。やっと17歳、高2なんだけど、見た目だけは、いちおー遊び人セブンティーン風に、つくってるんだけど。態度とか行動とかと、ホントの本音って、実はズレまくり。ぐーんと年上の貝塚司郎さんに、ひたすら、小学生みたいに一途な片想いしてるんだもんね。だけど夜の街、フラフラしてると、ユーワクってのが、けっこう多かったりして、して…。
一九六七年、高度成長の最中の日本はいまだ米国の頚木の下にあり、真の独立を勝ちとっていなかった。状況を憂い民族独立を標榜する航空自衛隊の中島二尉は12機のF104Jとともに隊を離脱、ベトナムの米軍に一矢報いるためにトンキン湾を目指す。だがその行く手に突如出現したのは小沢提督率いる旧帝国艦隊の幻の空母『信濃』だった。最強の母艦を得た中島は日本帝国独立艦隊の直属飛隊として部隊を再編成、ヤンキーステーションにひしめく米第77機動部隊壊滅作戦を開始した。
サンディエゴの幼児虐待調査官ボウ・ブラドリーは、インディアン居留地で保護された少年を担当することになる。廃屋に置き去りにされた彼は、ボウの亡き妹と同じように口をきくことができなかった。担当する子供に過剰な思い入れをしてはならないと自らを戒めながらも、少年の命が危ないと囁く妹の声が聞こえるような気がしてならない。はたしてこれは、躁病に悩む彼女の妄想にすぎないのだろうか。そんなボウのもとに入院中の少年が命を狙われたという連絡がはいる。そしてまたボウ自身にも脅迫が…。
カリブ海に浮かぶ孤島の刑務所に、精神科医セバスタポル博士が政治犯として投獄された。ある朝、同じ監房の囚人が、いきなり血を吐いて倒れる。身の危険を感じた博士は這うようにして刑務所を逃げ出すが、教会の礼拝堂にたどり着いたところで、追手のライフルに倒れる。敵の狙いは博士が密かに持ち出した一冊の大学ノート。そこには死の間際に書いたある暗号が…。偶然にノートを預かった、事件を追うジャーナリストの娘アメリアに、アメリカ壊滅を企むテロリストたちの魔の手が、次々と襲いかかる。
十八世紀、ニッポンの科学者ヒラガ・ゲンナイは、ヱレキテルによる死体蘇生の実験を成功させる。その秘密を手にいれようと、暗躍する老中タヌマ、探検家マミヤ、そしてドイツ人医師シーボルト。そして、ゲンナイが北方領土で開発した究極兵器ヱレキの虹とは。
京の都は数年前から慢性的な飢餓に見舞われていた。ある日、ふとしたことから施粥を受ける窮民たちが貴族の乗物に襲いかかった。そのおり、その乗物の気品高い女主の危急を救ったのは二十四、五の若武者水無瀬左京、主は八代将軍足利義政の正室富子であった。富子にはまだ男子がなかった。男子がなければ将軍の跡継ぎは他所に持っていかれる。現に、義政は去年、弟の義視を還俗させて後継者にしようと準備していた。“そなたのような剛い武士がわたしは欲しい”という富子の願いを左京は拒絶していた。この後、大乱が都を包んだ。…歳月は流れて、女将軍の権力をもってしても夢が叶えられることなく、日野富子は死んだ。“一切の罪業を障滅して極楽へ行きたし”と。-赤松牢人の勇士と称えられた水無瀬左京の目を通して描かれた日野富子の世界。
江戸は浅草の鳥越神社のご祭礼も終わり、梅雨も明けようという季節、両国広小路にほど近い小料理屋『美舟』で、ちょっとした騒ぎが起こった。“暴れ馬”の異名で知られる街の嫌われ者、駕籠屋崩れの五郎八とその子分がなだれ込んだのだった。かつては柳橋で左褄をとっていたころからお侠で鳴らした女将のお舟が割って入るのを、お舟に気のある五郎八がお鉢を回して危うくなった女将を救ったのは、店の隅で静かに盃を傾けていた西国浪人仏伝八郎と名乗る若侍であった。お舟はその品のよい姿形にすっかりほの字になってしまった。以来、仏伝八郎には不気味な影が執拗につきまとう…。-長崎奉行の抜け荷事件にからんでまき起こるお家騒動の謎と仏伝八郎の活躍は…。
中京の盛都名古屋で代々呉服商を営んできた松丘家だったが、番頭の横領と当主の失踪によって破産状態に陥ってしまった。そして、それから七年ー二十三歳になった長男鍵一だったが、最後の頼みの綱であった“七宝の花瓶”を盗まれ、絶望のあまり恋人中込寿美子と古美の海岸で心中を企てた。その花瓶には松丘家に永年伝わる宝物を隠した場所を示す暗号模様が描かれていたからだった。ところが、運よく助けられた二人は、海辺に捨てられていた花瓶を漁師が拾っていたことを知って驚くとともに、その僥倖に力を得て宝探しの謎解きに再度挑むことになったが…。-表題作の他に「意外な告白」、第一回作品「残されたる一人」(脚本)を併収した。
十七世紀のイタリアを舞台にふたりの麗人と死せる者たちを巻き込んで展開する古風な惨劇。亡き女主人が丹精込めて造りあげた庭園-その呪われた庭を起点に開始される死の舞踏。『琥珀の城の殺人』で世の読者を瞠目させた著者が満を持して問う長編推理第二弾。
ケネディ暗殺前夜、英仏独ソによるアメリカ壊滅作戦を託された英国潜水鑑が大西洋の深海に消えた…それから二十五年、米海軍深海調査艇シーナイトが謎のメッセージを残し、同一ポイントで消息をたった。必死の捜索活動をする米海軍。それを妨害しようとする英仏独ソ。迫真のハイテク軍事サスペンス。
こんがり焼けた肌、すらりと伸びた脚と長い髪。夕暮れの海辺で出会った美少女の名は美奈。彼女との出会いが、僕の17歳の夏を狂わせていく。二つの殺人そして奇妙な誘拐劇ー得体の知れぬ陰謀に巻き込まれた僕を待っていた事件の真相とは。期待の俊英が放つ、青春の危険な香りに満ちた“愛”のミステリー。
幸せな花見の後、天木家を不幸が襲った。主の有作が交通事故で脳死となったのである。精神科教授であり、敬虔なクリスチャンであった彼は、死後の臓器の提供を書き残していた。妻の蝶子は遺志を継ぎ、胸部外科蒲生助教授に申し出た。覚悟を決めた蒲生は、瀕死の心臓病患者に、密かに移植手術を行った。
手術は成功し、重症者を蘇生させたが、蒲生と蝶子は、厳しい闘いに直面した。移植反対派の抗議、マスコミの取材、身内の反目等が渦を巻き、「死」の認定をめぐって緊迫する。-脳死を死と認める立場から、死者の贈り物が他の人を生かし続けて、切実な共生の喜びとなる様を描く、愛と救済の長編小説。
難破船で漂着した美貌の慈善家、モードリブール公爵夫人とは何者か。グールズボローに、次々と起こる怪事件。英仏植民地の勢力争いと、先住民族の絶え間ない抗争の狭間で、理想郷づくりをめざすペイラック伯爵とアンジェリクをつけ狙う謎の敵が、また、ふたりの身辺に、危険な罠を仕掛ける。
敵が身近に迫っているー不安に駆り立てられたアンジェリクは、慈善家モードリブール夫人の勧めに従い、夫のあとを追って旅立つ。だが、徐々に明らかになる夫人の恐ろしい正体と行く先々に待ちかまえる敵の罠…。アカディアの呪われた浜辺で、ついにアンジェリクの壮絶な闘いが始まった。
ドラゴン・ブラザースの超人的能力を目の当りにした闇の世界の支配者は、ついに長兄・始の謀殺指令を下す。火と化した続、風を呼んだ終、水を奔らせた余に続いて、長兄・始がドラゴンに変身するときが迫る。世界を牛耳るフォー・シスターズさえもひれ伏す悪の帝王の陰謀は今、人類の最終戦争を誘発する。