1994年8月発売
1960年、ニューヨークのブロンクス区。イタリア系の9歳の少年カロジェロにとって、街の顔役ソニーはあこがれの人だった。バスの運転手をしている一本気な父は、まともな道を歩ませようと心を砕くが、ある事件をきっかけにカロジェロはソニーと親しくなっていく。そして8年後。ソニーの子分となった彼は、黒人の娘に恋をした。だが彼の仲間と黒人たちの対立が激化し、やがて悲劇が。限りない優しさをこめて描く青春物語。
1992年4月28日、イラクのティクリートでスナイバー・ライフルが三度火を吹いた。壇上の人影は、血煙をあげて倒れ伏した…。1991年の秋、イギリス海兵隊特殊舟艇部隊を退役し、いまは軍出身者を中心に警備会社を経営するハワードは、顧客からある建設会社社長ダーティングトンから驚くべき依頼を受けた。イラク大統領サダム・フセインの暗殺である。ハワードは実行チームの編成にかかった。アラブの専門家である部下ボーン、射撃の天才のスコットランド人マクドナルド、特殊空艇部隊出身のアッシャー、ローデシア空軍のパイロットだったデナードなど、各分野の最高の人材が集まってきた。周到な準備工作が進められ、やがてチームはさまざまな経路でサウジアラビアに集結、イラク潜入を開始する。ところが、アメリカの国家偵察局がスパイ衛星によって偶然にチームの動きを知し、追尾を開始した。はたしてフセイン暗殺計画の成否は?圧倒的なリアリティと面白さで話題をまいた、イギリスの大型新人登場。
桝井一家の幹部格である尾形菊治は、ヤクザ渡世に嫌気がさし、突然盃を返すと言い出した。親分の怒りを買ったものの、周囲の取りなしで破門を免れ、所払い五年となった彼は、後見人の北浦亀吉から神奈川の土木請負業者丸高組を紹介される。心機一転、カタギの商売に専念し、組を興すようにまでなったが、汚い手口で私腹を肥やそうとする佐々岡組の柳五郎と対立関係に陥ってしまう。
愛車スカイラインGTRを改造し、N1耐久レースで好成績をあげた瀬木治男・北路滋チーム。その余韻さめやらぬうちに、ビッグニュースが飛び込んできた。ニスモからグループAのトップレース・インターTEC参加の誘いを受けたのだ。スポンサーもつき、優秀なメカニック新村芳実の手によりマシンも完璧に仕上がった。再び富士スピードウェイを男達の夢が駆け抜ける。長篇カーレース小説。
ヨーロッパを席捲するナチス・ドイツのメッサー・シュミットがロンドンを急襲する。迎え撃つハリケーン。焦土と化すロンドン。撃沈されるドイツ戦艦ビスマルク-“バトル・オブ・ブリテン”の幕が切って落とされた。イギリスのしぶとい抵抗に業を煮やしたヒトラーは日本を巻き込み“虹のヨーロッパ作戦”を発動する。Mシュミット、零戦の波状攻撃に大英帝国の命運は尽きるのか。空前のスペクタル・シミュレーション。
夢の世界に繰り返し現われる女性との奇妙な交流を描いた表題作「青い犬の目」、死に対する恐怖のイメージに満ちた、カフカ的悪夢の世界「三度目の諦め」、自らの美貌に苦しめられる女性の悲しい変身譚「エバは猫の中に」、死者の側から眺めた日常の光景「誰かが薔薇を荒らす」、『百年の孤独』の世界へと通じるマコンド物の1篇「マコンドに降る雨を見たイサベルの独白」他、全11篇を収録。
紅い髪の勇者アドルの活躍で、世界には平和が蘇ったかに見えた。人々が安寧に浸る中、アドルは瓶詰めの手紙を手に入れる。そこにはセルセタの危急を報せる古代文字がしたためてあった。黄金伝説の眠る樹海の国セルセタに向かったアドルは、古代有翼人の末裔エルディールと闇の一族の、世界征服の野望に巻き込まれていく…。謎に包まれたイース世界の歴史が、いま明らかになる。
ティエン・ガ大陸の南東部に位置するソンツェン・セシ合従国の港町ユナン。その一角に“国土横断を成功させよう”というスローガンを掲げた、何やら怪しげな建物があった。そこでは蒸気機関を用いた飛行機を研究しているというのだが…。技術士のシュゲンを筆頭に、息子のシャハン、黒騎士のジエたちが大空へと挑戦する六覇国伝第2弾。人魚蛟司の筆がますます冴えわたるのだ。
『11枚のとらんぷ』を筆頭に、『乱れからくり』等数々の名作でわが国推理文壇に不動の地位を築いた泡坂妻夫が、この一作をもってデビューを飾った記念すべき作品ーそれが本書冒頭に収めた「DL2号機事件」である。ユニークなキャラクターの探偵、亜愛一郎とともにその飄々とした姿を現わした著者の、会心の笑みが聞こえてきそうな、秀作揃いの作品集。亜愛一郎三部作の開幕。
1066年。イギリスはノルマン軍の手中に落ちようとしていた。ダーケンウォルドの領主の一人娘エイスリンも、戦乱に巻き込まれ、父やその部下たちは目の前で惨殺される。エイスリンも、命はたすかったものの、母とともに奴隷という屈辱の身の上にあった。誇り高く、ブロンドの髪とすみれ色の瞳の美しいエイスリンを、略奪の騎士ラグナーは無理矢理に自分のものにしようとする。やがて、新して領主ウルフガーが入城。エイスリンは傷つき、激しい憎しみと愛のうねりの中にのみこまれていく。
エイスリンは、いつしかウルフガーの孤独の影にひかれていった。父の領土を略奪し、自分を奴隷としてひざまずかせる男からの寵愛。ふたりの魂は複雑に絡み合い、運命の糸は紡がれていく。身篭ったエイスリンは、その新しい命があの狡猾な男ラグナーの子ではなく、愛するウルフガーの血を引くものであってほしいと望み苦しむ。略奪と愛に、名誉を掛けて激しく戦う騎士たち、愛に揺れ動く美しい女たち-11世紀のイギリスを舞台に繰り広げられる、壮大なる長編歴史ロマン。
1968年12月21日、毛沢東は「知識青年は農村へ行って貧農・下層中農の再教育を受ける必要がある」との指示を発した。いわゆる“下放(挿隊)”である。69年1月、本書の作者史鉄生は陜西省の農村に向かった。彼、17歳の冬であった。その村で見たものは…。-文革期の青春の“光と影”と今を生きる自分の思考と感性を過去への巡礼として総括した記念碑的作品の邦訳ついになる。