1994年8月発売
ジョニーにはなぜか幽霊が見える。ロンドンの街はずれのうらさびれた墓地が土地開発会社に買収され、死者たちは追いだされる強迫観念でパニックに。墓地を救うため、ジョニーたち少年四人組のハチャメチャな活躍が始まる。やがてハロウィンの夜がやってきて…。パロディと切なさに満ちたゴースト・ストーリー。
足掛け七年に一度、信州諏訪で繰り広げられる諏訪大社の御柱祭りに命知らずの男たちが集結してきた。谺襲次・21歳は、養父である谺組の親分・拓造を殺され、その無念を晴らすため、ライバル矢頭丸騎一の待つ諏訪へ帰る。憧れの誉志子を手に入れるには御柱の先頭ハナ切りを決死で敢行せねばならない。
府中の古刹・真光山三界寺でバラバラ死体が発見された。右手には、酒呑童子伝説にまつわる埋蔵金のありかを示す「鬼駒」と「鬼殺し」という奇怪な棋譜が握られていた。被害者は坂田の公時の子孫を自称し、やがて大江山で第二の殺人が発生する。丹後半島に奇怪な怨念絵図が浮かぶ。猟奇殺人の主犯は“鬼”か。
1960年、ニューヨークのブロンクス区。イタリア系の9歳の少年カロジェロにとって、街の顔役ソニーはあこがれの人だった。バスの運転手をしている一本気な父は、まともな道を歩ませようと心を砕くが、ある事件をきっかけにカロジェロはソニーと親しくなっていく。そして8年後。ソニーの子分となった彼は、黒人の娘に恋をした。だが彼の仲間と黒人たちの対立が激化し、やがて悲劇が。限りない優しさをこめて描く青春物語。
1992年4月28日、イラクのティクリートでスナイバー・ライフルが三度火を吹いた。壇上の人影は、血煙をあげて倒れ伏した…。1991年の秋、イギリス海兵隊特殊舟艇部隊を退役し、いまは軍出身者を中心に警備会社を経営するハワードは、顧客からある建設会社社長ダーティングトンから驚くべき依頼を受けた。イラク大統領サダム・フセインの暗殺である。ハワードは実行チームの編成にかかった。アラブの専門家である部下ボーン、射撃の天才のスコットランド人マクドナルド、特殊空艇部隊出身のアッシャー、ローデシア空軍のパイロットだったデナードなど、各分野の最高の人材が集まってきた。周到な準備工作が進められ、やがてチームはさまざまな経路でサウジアラビアに集結、イラク潜入を開始する。ところが、アメリカの国家偵察局がスパイ衛星によって偶然にチームの動きを知し、追尾を開始した。はたしてフセイン暗殺計画の成否は?圧倒的なリアリティと面白さで話題をまいた、イギリスの大型新人登場。
桝井一家の幹部格である尾形菊治は、ヤクザ渡世に嫌気がさし、突然盃を返すと言い出した。親分の怒りを買ったものの、周囲の取りなしで破門を免れ、所払い五年となった彼は、後見人の北浦亀吉から神奈川の土木請負業者丸高組を紹介される。心機一転、カタギの商売に専念し、組を興すようにまでなったが、汚い手口で私腹を肥やそうとする佐々岡組の柳五郎と対立関係に陥ってしまう。
愛車スカイラインGTRを改造し、N1耐久レースで好成績をあげた瀬木治男・北路滋チーム。その余韻さめやらぬうちに、ビッグニュースが飛び込んできた。ニスモからグループAのトップレース・インターTEC参加の誘いを受けたのだ。スポンサーもつき、優秀なメカニック新村芳実の手によりマシンも完璧に仕上がった。再び富士スピードウェイを男達の夢が駆け抜ける。長篇カーレース小説。
火と善行の神・プロメテウス。その名を冠した処女軍団は独裁首相の私兵と化し、“正義”の名のもとに、庶民を弾圧する殺人集団へと姿を変えてしまった。19××年、急速に軍国主義化する日本。反対派は体内に爆弾を埋め込んだ女性テロリストを派遣…。善行と信じつつ愚行へ走る乙女たちの姿が哀しみと共感を呼び起こす、著者畢生の近未来サスペンス。
蝶々夫人に殺されたー新幹線ひかり277号のコンパートメント内で、殺された中年男が息を引きさる間際、車掌に言い残した言葉だ。そして一緒に居た若い女性が姿を晦ました。警乗中だった鉄道警察隊の女刑事・香月美沙子はその謎の女を追って長崎へ。一方美沙子の大学時代の先輩で元警視庁捜査官だった花園千明も事件解明に協力することになった。
ヨーロッパを席捲するナチス・ドイツのメッサー・シュミットがロンドンを急襲する。迎え撃つハリケーン。焦土と化すロンドン。撃沈されるドイツ戦艦ビスマルク-“バトル・オブ・ブリテン”の幕が切って落とされた。イギリスのしぶとい抵抗に業を煮やしたヒトラーは日本を巻き込み“虹のヨーロッパ作戦”を発動する。Mシュミット、零戦の波状攻撃に大英帝国の命運は尽きるのか。空前のスペクタル・シミュレーション。
夢の世界に繰り返し現われる女性との奇妙な交流を描いた表題作「青い犬の目」、死に対する恐怖のイメージに満ちた、カフカ的悪夢の世界「三度目の諦め」、自らの美貌に苦しめられる女性の悲しい変身譚「エバは猫の中に」、死者の側から眺めた日常の光景「誰かが薔薇を荒らす」、『百年の孤独』の世界へと通じるマコンド物の1篇「マコンドに降る雨を見たイサベルの独白」他、全11篇を収録。
紅い髪の勇者アドルの活躍で、世界には平和が蘇ったかに見えた。人々が安寧に浸る中、アドルは瓶詰めの手紙を手に入れる。そこにはセルセタの危急を報せる古代文字がしたためてあった。黄金伝説の眠る樹海の国セルセタに向かったアドルは、古代有翼人の末裔エルディールと闇の一族の、世界征服の野望に巻き込まれていく…。謎に包まれたイース世界の歴史が、いま明らかになる。
ティエン・ガ大陸の南東部に位置するソンツェン・セシ合従国の港町ユナン。その一角に“国土横断を成功させよう”というスローガンを掲げた、何やら怪しげな建物があった。そこでは蒸気機関を用いた飛行機を研究しているというのだが…。技術士のシュゲンを筆頭に、息子のシャハン、黒騎士のジエたちが大空へと挑戦する六覇国伝第2弾。人魚蛟司の筆がますます冴えわたるのだ。
雲や虫など奇妙な写真を専門に撮影する青年カメラマン亜愛一郎は、長身で端麗な顔立ちにもかかわらず、運動神経はまるでなく、グズでドジなブラウン神父型のキャラクターである。ところがいったん事件に遭遇すると、独特の論理を展開して並外れた推理力を発揮する。作家・泡坂妻夫のデビュー作「DL2号機事件」など全8話を収録した。解説=権田萬治 ■目次 「DL2号機事件」 「右腕山上空」 「曲った部屋」 「掌上の黄金仮面」 「G線上の鼬」 「掘出された童話」 「ホロボの神」 「黒い霧」