1995年発売
あの女だ。あの女に間違いないー。ワイドショーの画面に現れた女の顔を見て、推理作家・庄司桐子は体が震えた。店に押し入った凶悪犯を説得して自首させたその女こそ、十年前、同じように部屋に押し入った桐子の兄を殺しながら正当防衛で不起訴になった丸山志歩美だったのだ。兄の無実を信じていた桐子は、正当防衛に隠された真実を自分の筆で告発しようとする…。書下し心理サスペンス。
百二十人という勢力を誇る「経世会」を旗揚げした竹下登は数の力をバックに、首相の座を目指して着々と準備をすすめる。一方、昭和六十二年十月八日の自民党総裁戦告示日には、竹下とともに安倍晋太郎、宮沢喜一も満を持して立候補届けを提出した。次期総裁をめぐる水面下の暗闘は、名派閥の思惑を秘めて激しさを加える。任期切れの中で最後まで野心を捨てない中曾根が竹下を指名するまでの熱く長い日々を描く。
東京から北越の温泉に出かけた「私」は、ふとしたことから、「繁華な美しい町」に足を踏みいれる。すると、そこに突如人間の姿をした猫の大集団が…。詩集『青猫』の感覚と詩情をもって書かれたこの「猫町」(1935)をはじめ、幼想風の短篇、散文詩、随筆18篇を収録。前衛詩人としての朔太郎(1886-1942)の面目が遺憾なく発揮された小品集。
サンフランシスコのアトリエにいる彫刻家を責め立てる、日本の妻からの長い国際電話。彫刻家の前には二人の白人女性が…。卓越したシチュエーションと透明なサスペンスで第七十七回芥川賞に輝いた表題作ほか二篇を含む、衝撃の愛と性の作品集。
その朝、休暇を返上して警察本部に出頭したフィンチ首席警部を待っていたのは、いささか風変わりな事件だった。かつては富をほしいままにしたアストン家。その広壮な屋敷で、同じ夜に二人の人間が自然死を遂げたのだという。不自然きわまりない状況の背後に、フィンチが見いだした意外な真相とは…。鮮やかな描写を駆使して周到な謎解きを展開する、女流本格ミステリの粋。
ヴィクトル・ユゴー街のアパルトマンの広間で、血の池の中央に外出用の服を着け、うつぶせに横たわっていた女の死体は、あるべき場所に首がなかった。こうして幕を開けたラルース家を巡る連続殺人事件。司法警察の警視モガールの娘ナディアは、現象学を駆使する奇妙な日本人矢吹駆とともに事件の謎を追う。ヴァン・ダインを彷彿とさせる重厚な本格推理の傑作、いよいよ登場。
日本にもシャーロック・ホームズはいた。江戸の風物、人情に関する綺堂の豊かな造詣と限りない郷愁を身にまとった神田三河町の岡っ引・半七の名推理は、大衆文学史に、“捕物帳”という魅力のジャンルを拓いた。江戸ならではの怪事件の謎を通して、この街に生きた人びとの息づかいをも活写した探偵譚六十八編から、江戸市井物に才筆を振るう直木賞作家が十編を厳選、雑誌発表時の挿絵とともに贈る。
「君は私のものだ」-舞台がはねた後、伊関拓朗を待っていたのは、大手広告代理店課長・永見潔の熱烈なアプローチだった。永見の艶やかな眼差しに心を奪われながらも、自分の未来を決めつけたような言葉に反発し、思わず犯してしまう…。
バイストン・ウェル…それは、現し世とは違った別世界。自分たちに夢と希望と与えてくれると、現世に生を受けし者たちのだれもが、想いをいだく、異なる世界。だが、それは、現世に生きる者たちの甘美な夢と幻想でしかなかった。そのことを、彼、主人公・千秋クリストファは、この本を手にとる者に語り伝えてくれるだろう。いま、ここに、新たなオーラロードの扉が開かれる。
SFCソフト『真・聖刻ラ・ワース』の小説版。序章とも言える前作『真・聖刻熱き疾風猛き思慕』のラストから15年後、主人公シフォンは盗賊タグマの息子としてたくましく成長していた。中原の南部に位置するキタン王国での陰謀に巻き込まれたシフォンは、王女ミシェルダとともに伝説の操兵をめぐる八人の練法師との戦いに乗り出していくが…。話題沸騰の『聖刻』新シリーズ本編の幕開けだ。
盗賊の息子として成長した主人公シフォンは、ふとしたことから中原の南部に位置するキタン王国の王女ミシェルダと知り合い、キタン乗っ取りの陰謀に巻き込まれる。王女とともにキタンを逃れたシフォンは、追っ手と戦ううちに伝説の操兵をめぐる八人の練法師との戦いに乗り出していく…。『八の聖刻』の伝承とは。伝説の白い騎士とは。『真・聖刻』の謎がここに明らかになる。