1995年発売
“やっぱり、日本は美しいなあ。”万延元年(1860)五月五日、端午の節句の日、浦賀の港で『咸臨丸』の手摺から身を乗り出すようにして四カ月ぶりに故国日本の山河を眺めているのは、あの歴史的壮挙であるいわゆる遣米使節一行の中の軍艦操練教授方頭取・勝麟太郎その人であったが、船中取調べの浦賀奉行所付与力から、この年三月三日上巳の節句の日の雪の朝、登城の途中で大老井伊掃部頭直弼が水戸藩の浪士たちの襲撃により斬殺されたことを初めて知らされることになった。これ以後、大変革の暴風雨が軍艦奉行の勝海舟を襲うことに…。-幕末維新、この日本の大難局を勝海舟の“江戸っ子気質”の武士道が救う。
昭和16年11月、御前会議において米英に対する宣戦布告が決定された。開戦は12月初旬。連合艦隊司令長官山本五十六はハワイにある米太平洋艦隊基地を攻撃すべく、準備を進めていた…。その年の夏、二人の兵隊が呉に降りたった。海軍大尉吉良俊介と指羽竜太郎一等飛行兵曹。吉良への命令は「特第一飛行隊指揮官を命ず」であった。山本長官はこの隊に真珠湾攻撃と同時に行なうもうひとつの攻撃目標を狙わせる計画の成否を託したのだ。「帽ふれ」に見送られて出撃する伊号400潜隊。めざすははるか太平洋の彼方。いよいよ開戦の時は迫る…。果たして特第一飛行隊を待ち受ける運命は。
他人の心を読む超能力を植え込まれたベン。彼は義父のシンクレアが大金を横領し、前KGB議長オルロフと極秘に接触していたこと、そして地球を救うため「賢者たち」が企んでいるある計画を知らされる。だがその裏には恐るべき野望が隠されていたー。最終戦争へ向かう人類の危機を克明に描く大ドラマ。
CIA長官ハリソン・シンクレアが交通事故をよそおって殺された。元CIAのベン・エリソンはその一人娘モリーと結婚、いまは辣腕の弁護士となっているが、ある日上司から見知らぬ男を紹介され、数々の試練の後極秘の任務を言い渡される。それは世界を震撼させた大陰謀に係わる、危険極まる作戦だった。
極寒の惑星「氷瀑」に育ったマロリーは、正式にパイロットに任命されるやいなや“エンティティ”と呼ばれる宇宙のバイオ=コンピュータとの接触に成功した。その結果、人類を救う鍵“古エッダの秘密”は最古のDNAにしるされていると判明。マロリーは、ネアンデルタール人のDNAを自らの遺伝子に組みこんだアラロイ人を求めて新たな探索行へ旅立つが。生命の究極の謎を追うマロリーの活躍を描く傑作長篇。
太陽系が5分間の未来に移行したローリン・デイから3年、太陽系帝国の植民世界には不穏な空気が満ちていたー惑星プレクールの総統制官エシボン・ヘリヘットがローダンにかわって大執政官の地位につき、帝国の最高権力を奪取すべく画策をはじめたのだ。さらにヘリヘットに加担するティーパ・リオルダンによりアトランが誘拐されるにいたって、ついにローダンは、みずから太陽系艦隊5万隻を率いプレクールに赴くが…。
きょうはアプロの666歳の誕生日。ラテルはいやな予感がした。あんのじょうチーフからアプロともども苦情処理係勤務を命じられた。「しっかり矢面に立って、海賊課を守れ」とチーフはいう。そんなことをしたら体じゅう穴だらけだ。ところが苦情映話を受信しはじめたディスプレイの上に、時を超えたラテルの叔父が現われた。ラテルの家族の宇宙キャラバンを襲撃した真犯人を捜してほしいというのだが…人気シリーズ第5弾。
1917年4月、ロシア革明の動乱下、幽閉された元皇帝ニコライ二世一家を救出すべく、日英共同の秘密作戦が立案された。英国情報部は臨時政府との交渉役に作家サマセット・モームを派遣。一方、日本陸軍は、救出隊隊長にロシア語に堪能なはみだし中尉志摩薩之介を任命。中尉と不良兵卒ばかりからなる“陸軍懲治隊”の選抜兵7名の決死隊は、極寒のシベリアへと潜入した。歴史冒険小説の雄、典厩五郎の代表作、加筆決定版。
レーニンの率いるボルシェビキが政権を奪取し、内戦状態にあるロシア。志摩中尉率いる救出隊は、皇帝一家が幽閉されているトボリスクにようやく辿りつく。同じ頃、怪僧ラスプーチンが秘匿したというロマノフ王朝の厖大な財宝を狙う元秘密警察のイワノフも、手がかりを追って同地へ。皇帝救出は成るか。秘宝は誰の手に。皇女マリーヤと志摩中尉のロマンスと必死の脱出行。多彩な人物が描き出す波瀾万丈の歴史冒険ロマン。
鳥羽崇、33歳。光学機械の輸出入と装弾機材や機器の輸入会社を独力で築き上げた。秋川渓谷の谷底から鳥羽の両親の死体が発見された。警察は事故死を主張するが、2人の体には不自然な傷があり、父の会社や父個人の動産不動産は、新東邦エンタープライズのものになった。そして今、鳥羽自身が襲われ、妻の雅子が殺されたのだ。復讐の鬼と化した鳥羽は、巨大な組織に凄絶な戦いを挑む。傑作長篇。
首都圏のベッドタウンとして都市化が進む滝川市。人口の増加とともに犯罪も増えた。この街の治安を守るのが滝川署である。「輪さん」こと輪王寺巡査部長は、署内、管内に知らぬものはない生き字引的存在だ。近隣では自動販売機荒しが多発している。手掛かりのない中、今度は身元不明の女性の他殺死体が発見された。自分の足で回るーこれが刑事の仕事よ。輪王寺の聞き込みが始まった。捜査ミステリー傑作。
未通女に魔性、女郎に真心、妬心剥ぐれば夜叉が出る。愛しさ憎さは背と腹で、邪恋のはての無理心中。汗か涙か鳴咽にむせび、躍る白磁の脛の影。色の外道も胸かきむしり、貞女の胸裡に不貞あり。銭でつるんだ男と女、銭に裂かれた男と女。淫情殺せば妄執生まれ、男も女も愛欲地獄、仏の慈悲なぞ、ありがた迷惑。淵に立たなきゃ底さえ見えぬ、溺れ溺れて闇のなか…江戸の春情を鮮かに描く。