1995年発売
寝台特急「エルム」のB寝台で芸能プロダクション社長が変死した。毒物による他殺も考えられる。数日数、容疑者と目される人物が都内のホテルで毒殺された。二つの事件で容疑者扱いされた作詞家の小池は身の潔白を証明すべく、犯人探しに乗りだす。協力するのは殺された社長の姪・純子。が、二人が犯人と睨んだ人物には鉄壁のアリバイがあった。
東京の麻布十番商店街に店を構える和菓子屋の開化堂は、創業以来100年続く老舗。その開化堂の菓子職人、剣持政吉は一竹薮に猛虎の吠える図柄の胸から背中にかけての彫り物でー「白虎の政」という通り名で会津若松から東北一円で鳴らしたスジ者。足を洗った白虎の政が主家の危機にドスを抱いて斬り込みに。任侠ファンなら読まずにいられない短篇6話。
天下分け目の関ケ原。この日本を二分する合戦の前夜、豊臣恩顧の一群の大名が密議を凝らしていた。黒田如水を旗頭に、第三の勢力を形勢し、徳川方に挑もうとしたのだった。頼りとするのは、十余年前に伴天連が企てた幻のキリシタン王国の軍資金。十一年後、その時の連判状『祇面音密巻』がふたたび嵐を呼び起こした。それぞれの思惑を密めた七大名が、連判状の回収を始めたのである。関ケ原の合戦で、たまたま連判状の存在を知った旅の武芸者宮本武蔵が、この連判状の回収と南蛮の金銀財宝を求めて立ち上がった。幕府子飼いの裏組織「裏柳生」が、大坂方の忍者集団「甲賀赤蜘党」が、そして大御所家康が直々に選びだした超弩級の刺客が、武蔵の命を狙う。武蔵は、果して七巻の連判状と南蛮財宝を奪取できるのだろうか。
魂とひきかえに欲望を満たしてくれる天使のごとき悪魔、カレラとメルセデス。彼女たちのゆくところ、必ずや大満足&昇天の嵐が吹き荒れるのであった…。世界をリードするアニメーション技術で美少女パソコンソフトに革新をもたらした大ヒットシリーズを、制作者自らが小説化。
三日池潤矢。十五歳の、とびっきりの美貌だった。彼には秘められた力があった。それを目覚めさせた、上級生の男女の痴態。彼は二人に、指先で触れるだけで苦痛と快感を与えてしまった。そして、その夜、母親の玲香からは「じゃこうの血が流れている…」との謎の言葉を聞かされた。舞台を軽井沢に移し、潤矢は女体を相手に自らの力を確信していた。「淫導師」を名乗る老人の出現により、今、潤矢の力が全開する。
灼熱のサウス・カロライナ・オープン。ツアー開催中に、将来を嘱望されたゴルファーが謎の死を遂げる。警察、市、ツアーの上層部がもみ消しをはかるなか、ボストン・ジャーナルのゴルフ記者、ピート・ハッカーは真相究明に乗り出した。調査を続ける彼の前にゴルフ界の闇の部分が次々と暴かれてゆく。ドラッグを売買するキャディー、復讐をたくらむライバル、プロを追いかけるグルーピーの女、そして謎めいたクリスチャンの集会…やがて“犯人逮捕”の報せに、事件は収束へと向かう。ひとり容疑者の動機に疑問を持ち、推理を続けるハッカー。-真犯人は別にいる。ゴルフという名の巨大なシステムがそれぞれの欲望と交錯するとき、疑惑のツアーはついに運命の最終日をむかえる。自身もゴルフ記者であった著者が描く、迫力のゴルフ・ミステリー。
あで姿で大江戸の人気をさらう上方芝居の若手女形・雪之丞の胸には、重大な決意が秘められていた。豪商だった父と母を奸計で破滅させ、無残な死へ追い込んだ長崎奉行と輩下の商人たちが、いま江戸で権勢を振るっている。親の仇、恥知らずの悪人どもを許すことはできない。免許皆伝の腕を美貌に隠し、雪之丞は侠賊・闇太郎とともに復讐の時を窺う。絢爛たる設定、手に汗握る展開、これぞ大衆小説の粋。
あるときは危機一髪の白刃、またあるときは決意を鈍らせる人情の足枷。女賊の横恋慕、将軍家愛妾の純愛、さらには邪剣の使い手の逆恨みが、次々に雪之丞の前に立ちはだかる。しかし、闇太郎の侠気にも助けられ、雪之丞の復讐の刃は、一歩また一歩と親の仇に迫っていく。そして、ついに凄絶な最後の時がやってきた。映画や舞台の名場面でも知られる、奔放華麗、日本大衆文学史を飾る代表的長編。
きみの助けが必要だ-写真学校の恩師から届いた突然の手紙。主人公の飛鳥理恵は恋人のいる故郷をあとに上京を決意する。報道写真家への情熱を胸に、待ち受けていたのは過酷な助手の仕事だった。やがて、訪れたチャンスをものにする理恵。しかし、マスコミの寵児と化した彼女を賛辞、羨望、中傷、嫉妬が翻弄するのであった…。
時は1870年。理想の音楽を求めて止まぬベルシュタイン公爵。公爵が目をかける新進音楽家フランツ・マイヤー。クラブ・ハウス「プレジャー・ドーム」の経営者である外国人興行師モーリィとパトロンのセントルークス卿。音楽を絶対的な快楽に変える麻薬「魔笛」と、人々を恐怖に陥れる音楽機械をめぐって暗躍する彼らは、その果てに何を見たのか。日本ファンタジーノベル大賞選考会にて選考委員を驚嘆させた、虚実混淆、波瀾万丈の物語。82歳にして博覧強記を誇る著者が、様々な仕掛けをこめて描く世紀末小説。
ズニ族の少年と、その友人であるナヴァホ族の少年が行方不明になった。ナヴァホ族警察のリープホーン警部補は、ズニ族警察と共同で二人の捜索を始めた。が、ズニ族の少年は遺体で発見され、さらに新たな殺人事件が、やがてFBI、麻薬取締官も介入し、事態は複雑な様相を呈してくるが…アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞を受賞した傑作。
女の名はオリーヴ・マーティン、現在、無期懲役の刑に服している。母親と妹を切り刻みそれを再び人間の形に並べて、台所の床に血みどろの抽象画を描いた女-だが、本当に彼女がやったのか。アメリカ探偵作家クラブ最優秀長編賞受賞作。
本所深川をあずかる回向院の旦那こと、岡っ引きの茂七が、下っ引きの糸吉、権三とともに摩訶不思議な事件の数々に立ち向かう。歓び、哀しみ、苦悩、そして恋…。江戸下町に生きる人々が織りなす人間模様を描く連作時代小説。