1996年6月発売
弁護士D・T・ジョーンズの事務所に、突然夫から離婚を求められた女性マレスがやってきた。次に酒乱で乱暴者の夫と別れたいという、若く魅力的なウェイトレスのルーシンダが依頼にくる。さらには、離婚後に難病のせいで生活が苦しくなった中年の女性患者エスターのために看護婦リタが相談にくる。ひきもきらない依頼と難問に東奔西走し、現在の恋人と別れた妻のあいだで、右往左往する弁護士の活躍を描く、傑作長篇小説。
娼婦ライラのベッドで、ブリーム神父が腹上死した。“やもめで片目でアル中気味”の私立探偵ラルフ・ポティートは、階上に住むライラの頼みを断れず、神父の死体を教会に運ぶのを手伝う。その直後、彼女の部屋が突然ガス爆発。本人は大火傷を負う。事件に巻きこまれたポティートは、教会と神父の謎を追う。
鉄道警察隊に勤務する江戸川警部の恋人、小夜香が何者かによって誘拐された。犯人からの電話で囚われの彼女は「グッドバイね」という謎の暗号を残す。だが、奇妙なことに突然彼女は解放された。実はそれが事件の始まりだったのだ。今度はその誘拐犯がランドマークタワーで殺された…。長編ミステリーの傑作。
6つめの「館」への御招待ー自分が何者なのか調べてほしい。推理作家鹿谷門実に会いたいと手紙を送ってきた老人はそう訴えた。手がかりとして渡された「手記」には彼が遭遇した奇怪な殺人事件が綴られていた。しかも事件が起きたその屋敷とはあの建築家中村青司の手になるものだった。惨劇に潜む真相は。
陽光降りそそぐフロリダ・キーウェストでくつろぐマフィアのドン。老い先短い父に自伝執筆を勧める愛息ジョーイ。やがて、ゴッドファーザーは重い口を開き始める。が、そこに厄介ものの兄が、愛人連れでやってきて、トラブル発生。英国推理作家協会ラスト・ラフ賞に輝く、オフビート感覚の熱血クライム・ノヴェル。
ロンドンから鉄道で一時間余りの小さな町。その町でレストランを営む日本人の娘のもとに滞在する初老の男が出会う様々な出来事。“麗人”に翻弄される日本人画家やアメリカ兵や町の男たちの恋愛沙汰は、静かな町を時に騒然とさせる。-個人主義的でありながらも心情あふれる郊外の情緒を交えて物語る、円熟の連作小説。
敵対宇宙種族「ハイヴ」の主力をなす巨大球体船がついに発見された。だが人類とムルディニは微妙な戦争観の相違から敵を目前に対立、ライアン家の次男ロジャーは功を焦ったムルディニ側艦長の命に背いて殺されかけ、失踪してしまう。かけつけたローワンたちは孫息子を救えるのか。そして人類は「ハイヴ」を打ち破ることができるのか…類まれな能力に恵まれた一族の、銀河を股にかけた活躍を描くシリーズ待望の完結篇。
第三眼を額に持つカミス人。かれらは人工衛星カミスに住み、事象制御装置により、惑星リンボス上で社会を営むリンボス生物を制御している。カミス中央機構の理論士イシスは、詩人である弟のアシリスに恋していた。けれども、カミスでは姉弟の恋は禁じられている。イシスは事象制御装置を使って、自分たちの恋を正当化できる世界のシミュレーションを開始したが…日本SFの先端を疾駆しつづける神林長平の意欲的大作。
世界を“時間”“実現事象”“可能事象”の三次元として表現する事象理論の発明者にして犯罪者であるバールが、理論士イシスのリンボス世界(=地球)でのシミュレーションに干渉してきた。北極圏に近い寒村センティシス、ニューデリー、ロンドン、そして日本の各地で、イシスと恋人である弟のアシリス、バールたちは、名前と外見をさまざまに取り替え、自らの目的を達しようとするが…神林SFの最高峰、待望の文庫化。
結婚するときはどれだけ愛していても、死がふたりをわかつまで、と誓いあっても、さまざまな事情から別れざるをえないこともある…みずからも離婚経験のあるD・T・ジョーンズは離婚専門のしがない弁護士。酒とギャンブルが好きで、時間にはだらしないが、弱きを助け、悪をくじく気持ちはだれにも負けない。そんなD・Tの扱う、さまざまな事件と、彼をめぐる人間模様を軽妙なタッチで描きだす、傑作ラブ・ストーリー。
米国中西部ウィスコンシン州の田舎町。吹雪の夜に、湖畔の森をスノーモービルで駆け抜ける「アイスマン」。コーン・ナイフを片手にラクール一家の住む白い家へと接近していく。まず、父親フランクを、次にその妻クローディアを殺し、最後に一人娘の少女リサを生きたまま切り刻んで殺害。そして、なぜか家に放火して立ち去った。全焼した現場を訪れたルーカス・ダヴンポート。警察を辞めたあとフリーの立場で異常殺人の捜査を手伝っている。今回はオジブウェー郡の保安官シェルダン・カーが応援を求めてきた。ダヴンポートは現場検証で出会った女医ウェザーに心惹かれるものを感じる。「アイスマン」はある写真を捜していた。全裸の少年がベッドでポーズをとり、前景には太った中年男の腰から下が写った写真で、その少年は2ヵ月前に殺されていた。秘密を暴露しかねないその写真はラクール家にあるはずだった。しかし写真は見つからず、「アイスマン」は一家を皆殺しにしたあげく、写真の存在を消そうと家に火を放った。タヴンポートの聞き込み捜査が進み、事件の鍵をにぎる写真の存在に気づくと、今度は、ダヴンポートと接近しはじめた女医ウェザーが「アイスマン」に狙われはじめた。…「アイスマン」とは果たして誰なのか。そして連続殺人の背後にある意外な真実とは。-小さな閉鎖社会における異常な犯罪者の心理状態を鮮やかに描く「獲物」シリーズ最高作。
東光銀行の現金輸送車がシュマイザーMP38短機関銃で武装した三人組に襲撃され、六億円近い現金が奪われた。運転していた陸上自衛隊特殊部隊あがりのガードマン・杉田勇は、重傷を負った同僚の証言から共犯の疑いをかけられ、警備会社を解雇された。こんな会社に未練はない。それより俺を罠に嵌めやがった奴に何がなんでも復讐してやる。杉田は貯金を軍資金に行動を開始した。傑作ハードアクション。
親威の結婚式に招待された工藤秋生は、香港に到着した途端、パスポート泥棒に遭い、迎えに来た朱明に救われた。そのとき秋生を見た老人が、彼の未来を暗示するかのように呟いた言葉は「…混沌…」。翌日、今度は警察を騙る数人と黒ずくめで太陽眼鏡の不気味な男に絡まれた。やがて中国の特務機関と香港マフィアに追われていることに気付く秋生だったが、何故自分が狙われているのかが分からないー。
CIA秘密エージェントのリストを、ロシア人がプラハのアメリカ大使館から盗み出そうとしていた。それを阻止すべく「インポッシブル・ミッション・フォース」のメンバーが立ち向かう。しかし何者かの裏切りによってメンバーは次々と殺されてしまう。唯一生き残ったチームのリーダー、イーサン・ハントは真の犯人を探すべく、たった独りで壮絶な闘いを始める。ブライアン・デ・パルマ監督の冒険スリラー映画原作。
逸郎と嵐士、一基、そしてボーイッシュな女の子セリは仲の良い四人組で、学園のアイドル的存在だった。途中で一基が転校し、逸郎と嵐士は互いへの思いを自覚することでセリに秘密を持ってしまい-ずっと一緒にいたいと願った四人だったが、子供から大人へと成長する中、徐々に道が分かれて…。『小説花音倶楽部』に発表され好評を博した中学生編に、書き下ろしの高校生編180枚を加えた紫片貴志の初ノベルス。
ジョイス文学の輝かしき頂点であり、二十世紀文学の偉大な指針でもある、『ユリシーズ』の新訳決定版。ダブリン。1904年6月16日。それはダブリンにとってはありふれた一日だったが、ふたりの中心人物にとっては平穏無事な日ではなかった。22歳の文学志望の青年スティーヴンと、新聞社の広告とりである38歳のユダヤ人ブルーム。彼らはダブリンのなかを歩きつづける。まだ親しくはならずに。第1挿話「テレマコス」から第10挿話「さまよう岩々」まで。
正義感と人情に厚い岡っ引、騒々しい子分の八五郎を供に、窮地は名人芸の投げ銭で切り抜ける、ご存じ銭形平次。若い娘が化粧品屋で次々と消える『金色の処女』、与力一家に崇る化物の怪『復讐鬼の姿』、輿入れ途上の花嫁が相次いで誘拐される『七人の花嫁』など、江戸情緒たっぷりの妖奇と謎。初文庫化作品を中心とした初期傑作十編。恋女房となるお静とはまだ許嫁の仲。全編にみなぎる若き平次の魅力。