1997年3月発売
青年は若すぎる年齢で夫となり、父となった。電気工として、小説家として、妻とおさな子三人を懸命に支える日々-。都会を離れ、北関東での心細い借家探しを通して生きることの危うさを捉えた「古河」。父と子の幸せな瞬間とその隣合わせで待ち構える崩壊の兆しを描いた、傑作「木の一族」等、普遍的な家族の原風景といのちの手ざわりを美しく切実な言葉で綴る珠玉の中短編4編。
高校一年の夏、同級生たちのリンチをうけてから登校拒否を続けていた僕は、父親の転勤で函館に転校することになった。そこで出会ったのは自分とそっくりの顔をした不良のレイジ。友達を作ることが苦手だった僕が、レイジとはすぐ仲良くなった。飲酒、暴行、セックス、そして函館の海での密漁…。行き場のない想いを抱えた少年が駆け抜けた短い夏を、みずみずしく描いた青春小説。
江戸城の桜田門外、日比谷近くに御庭番が住まう桜田御用屋敷があった。十一代将軍・家斉は、御庭番の真五郎に膃肭臍(強壮剤)の買付けを任じた…と見せかけて、ある重大な密命を託していたー。産ませた子女54人、荒淫将軍・家斉が、御庭番を絶妙に操り内憂外患を抑えていく名君ぶりを描く三編のほか、御庭番家筋の初代新潟奉行・川村修就の人情味溢れる活躍を描く三編を収録した。
少年拘置所で悪逆な監督官に命を狙われたネイサンは、身を守ろうとして彼を死なせ、脱走。忍びこんだ家のラジオで、自分が一方的に断罪されていることを知り、自らトーク番組に電話を入れる。トーク・ジョッキーの“ザ・ビッチ”はネイサンの擁護に回り、彼は一躍メディアの寵児となるが、捜査を開始した警察とともに、暗黒街の黒幕が送り出した第二の殺し屋が彼を追っていたー。
炸裂する砲弾、絶望的な突撃。凄惨極まる戦場で、作家の視線が何かを捉えたー1937年、ヘミングウェイはスペイン内戦を取材、死を垣間見たこの体験が、以降の作品群に新たな光芒を与えることになる。「蝶々と戦車」を始めとするスペイン内戦ものに加え、自らの内面を凝視するラヴ・ストーリー「異郷」など、生前未発表の7編を含む全22編。遺族らの手による初の決定版短編全集、完結編。
妊婦ら四人を殺害した兇悪粗暴な男ウォートンは死刑囚舎房にやってくるなり看守のひとりを殺しかけた。看守主任を務めるポールは、その日持病の尿路感染症が悪化し、激痛に苦しんでいたのだが、なんとか騒ぎを鎮めた。その後、いつもおとなしい大男の死刑囚コーフィが、なぜか懇願するようにポールを独居房内に呼び入れ、下腹部に手を触れてきた。そして次の瞬間、奇跡が起きた…。
武則天転生の美少女、暗器達人の尼僧、変幻自在の妖人、鋼鉄機械巨人、娘子騎馬隊の隊長、科学の天才少年、腐敗堕落の世を粛正し天下を狙う青年…彷徨い続けた武則天の魂魄が復活する。