1997年4月発売
とある精神科病棟。重い過去を引きずり、家族や世間から疎まれ遠ざけられながらも、明るく生きようとする患者たち。その日常を破ったのは、ある殺人事件だった…。彼を犯行へと駆り立てたものは何か?その理由を知る者たちはー。現役精神科医の作者が、病院の内部を患者の視点から描く。淡々としつつ優しさに溢れる語り口、感涙を誘う結末が絶賛を浴びた。山本周五郎賞受賞作。
結婚式を挙げに行く途中のカップルが拾ったヒッチハイカーは、赤い眼に裂けた耳、犬のように尖った歯をしていた…。やがてコネティカット州山中の脇道で繰り広げられる恐怖の連続殺人劇。狂気の殺人鬼の魔手にかかり、次々に血祭りに上げられていく人々-悪夢のような夜に果して終りは来るのか?熱に憑かれたような文体で不可能を可能にした、探偵小説におけるコペルニクス的転回ともいうべきカルト的名作、ついに登場。
高校3年生の早乙女翔は、夏休みに友人達と富士山麓の樹海に遊びに行き、霧にまかれて1人はぐれてしまった。そこに突然、銀色の長い髪の騎士シルバーンが現れた。翔は異次元の世界に迷い込んでしまったのだ。この「霧の王国」では、赤い血を持つ翔は天使と呼ばれ、「天使を得るもの帝王となる」と言い伝えられていた。翔は、この国の王ネベルら男たちの重要な標的になる-。「僕は元の世界に戻れるのだろうか?」それを解くカギは「光の石」を見つけること。翔はシルバーンらとともに、天使の謎を追う旅に出るが…。中世ヨーロッパを思わせる異次元空間で繰り広げられる、冬城蒼生のファンタジック・アドベンチャー。シリーズ第1弾。
「いっ、いやだーっ!!俺はホモもサドも嫌いだーっ!!」新米刑事の黒川睦月は、着任早々、サドの日沖からいじめられ、鑑識課の血フェチな本橋からも可愛がられる。心とはウラハラに慣れてゆく身体に抵抗する睦月。事件捜査中も二人のことが気にかかり、遂には犯人の罠に落ちてしまった。
福祉予算を倍にせよ。さもなければ次々に犠牲が出るだろうー鎌倉市長に“殺人鬼”なる人物から届いた脅迫状。最初は悪戯かと思われたが、犬猫先生の隣人・月夜子のインコが市庁舎の前で斬首されたのを皮きりに、猫、犬と殺されたため事態は深刻に。犬猫語を操る犬猫先生は、市内の動物たちを駆使して犯人探しに乗り出す。だがその矢先、遂に人間の犠牲者が…。
人類が火星移民を始めて100年を経た22世紀後半。火星市民はナノテクを初めとする先端技術を適度にとりいれた共同体生活を謳歌していた。だが、火星が独立憲法の制定と政治的統一をめざしていたそのとき、母なる地球は密かな陰謀をめぐらしていた。テクノロジーの袋小路につきあたった地球の目的はただひとつー独立にはやる火星を従属化、搾取すること!未曾有の動乱の嵐は、いままさに赤い惑星をまきこもうとしていた。ネビュラ賞受賞。
火星の命運は若き女性政治家キャシーアに託された。困難な地球との交渉にあたる彼女は、かつての恋人だった物理学者のチャールズから、超兵器としても応用可能な“ベル連続体理論”の存在を知らされる。だがそれは両刃の剣だった。その理論の潜在的な破壊力に気づいた地球によって、火星への全面攻撃が開始されたのだ…近未来火星のヴィヴィッドな描写と破天荒なプロットでネビュラ賞に輝いた、ベア畢生の超大作登場!ネビュラ賞受賞。
警察官になりたい一心で、アビーは警察学校の厳しい訓練を経て卒業にこぎつけた。だが、新人警察官に実地研修は苛酷で、性差別主義の教官に泣き、緊迫のパトロールに胃が痛んだ。ある日、彼女の同期で親友のモレリに暴行の疑いがかけられる。事件はやがてアビーをも絶体絶命の窮地に陥れ、予想外の結末へ…現役女性警察官がリアルな描写で放つデビュー作。
ホームレスのジョーイは、財布を盗んだ男が心臓発作で急死したばかりに謀殺罪に問われた。刑事弁護士のディーンは彼の弁護を引き受けるが、まもなくジョーイの供述書の署名が偽造されていたという驚愕の事実が浮かんだ。いったいなにが、警察の内部で起きているのか?調査を続行するディーンは、知らぬうち巨大な陰謀に飲みこまれていった。
七年前の事故がデイヴィッド・ヴァンデマークを変えた。瀕死の重傷から回復したとき、彼は他人の心が読めるばかりか、物に触れただけで過去の出来事を知る特殊能力=サイコメトリーを身につけていたのだ。しかもその事故と時を同じくして、妻子が異常殺人鬼に殺されるという悲劇が重なった。彼はそれまでの生活を捨て、復讐を決意する。かくして、デイヴィッドはハンターになった。特殊能力を使い、警察に先んじて異常殺人犯を見つけ出し、つぎつぎと殺していく。それが自分の使命だと信じて。しかし…FBI捜査官のアイラは、七年越しでひとりの殺人犯を追っていた。犯人の名はデイヴィッド・ヴァンデマーク。異常殺人鬼ばかりを狙う謎の男だ。逮捕まではあと一歩だった。こんどデイヴィッドはニューヨークに現われるはずだ。ラテン系の家族ばかりを襲う異常殺人鬼を追って。しかし…超能力を持つ殺人者と一徹の捜査官-宿命の二人が出会うとき、そこには二人が夢想だにしなかった未曾有の恐怖が待ちかまえていた!スピルバーグ映画化決定!超ハイテンションで読む者を離さない、スピード感溢れる新世代サスペンス巨篇。
中国領海の近くで、ビニール・バッグに詰められた3つの人間の首が浮かびあがった。捜索に向かった皇家香港警察隊のチャーリー・チャン警部は、中国側の沿岸警備兵とはげしくもめたすえ、バッグの回収に成功する。鑑定の結果、数日前に市内で見つかっていた、商業用肉挽き機でミンチにされた死体と一致することが判明、返還を600万秒-約70日-後にひかえた香港の街には戦慄が走る。チャンは捜査を開始するが、その続行に対して、本国であるはずの英国政府から、やがて不可解な圧力がくわわりはじめた。背後で不穏な動きを見せる香港マフィア「三合会」の存在、さらには、中国南部の大部分を影で支配する人民解放軍の将軍までも渦中に巻きこみ、急速に混沌の渡合いを増していく真相の行方。そして、その間も、英国支配の香港が消滅する、1997年7月1日午前零時までの残り時間を告げるカウントダウンの時計は、容赦なく時を刻みつづけていく…。
昭和二十年八月、満州国国境はソ連軍によって突破され、各都市はソ連戦車により蹂躙されつつあった。もともと海軍重視である日本国において日陰者である陸軍、満足な対戦車火器を持たない関東軍にあって、唯一抗しえた部隊である栗林忠道中将指揮下の第七戦車師団は、居留民を無事に後方に逃すため玉砕の道を選択する。軍隊とは本来自国民を守るために存在する。時を同じくして海軍の一部隊も避難民を逃すために圧倒的に優勢なソ連海軍に突撃をかける。
豊能の山中で猪犬訓練所を営む氷室竜介は、過去からの追手を振り切るため、生きることへの未練のために、何人もの人間を殺してきた男だ。ある夜、氷室のもとに城北組の女組長・小枝子が訪ねてくる。淫蕩な彼女に引きずられるまま、氷室は情交を貪るが…危険の匂いに欲情する彼女が男を求めるとき、それは過去からの新たな追手が現れる前触れでもある。その日、城北組を訪ねた関東鬼神会の若頭が、氷室の過去に深く関わる、ある男の行方を探っているというのだ…。氷室の果てしなき戦いが、いま始まろうとしている。
山瀬燎と翔太はハネムーンでモルディブに旅行し、田園都市線沿いの新居に帰った。その翌日、高さが七十センチほどの木枠で組まれた荷物が届いた。梱包を解いた燎は悲鳴をあげた。中からは石の地蔵が出てきたのだ。差出人の住所は熊本県人吉市で名は犬童悠。燎も翔太も全く心あたりがなかった。公認会計士である燎の父に尋ねたところ、怯えたような目になった。数日後、燎の父が「事故死」した報せが入った。場所は、九州の五木村だった…。「事故死」はすぐに「殺人事件」と断定され、宮之原警部の活躍がはじまる-。