1998年4月発売
香西レイは18歳。札幌の女子短大に在学中。心の底に焦燥を抱えるレイは、無邪気な同級生たちとは相容れず、ひたすら詩作に熱中していた。周囲との距離を保つことで、居場所を確保するレイだが、自分を取り巻く環境と無縁ではいられない。虚言癖のある先輩、不感症の女、ストーカーまがいの男…。様々な人たちと出会いながら、心の扉を開け放とうと呻吟する女性を描いた自伝的長編。
ジェリーは23歳、学業半ばにして戦争に駆りだされ、空軍に所属している。大人になりきれないうちに地獄をみてしまった孤独な若者たちのひとり。心は戦争のすさまじい恐怖と不安にひどく傷ついている。故郷には美しい婚約者を残してきているけれど、彼の孤独な魂を癒してくれるのは、別の女性なのだった…。ふたりの女性の間を揺れ動く青年の心理を繊細に描きだす感動の恋愛小説。
中東は未曾有の危機に瀕していた。シリアはイラクと連合し、イスラエル侵攻を企む。イラクは大量破壊兵器を使用する機会を窺っていた。一方、対アラブ強硬論者のイスラエル首相は、この脅威に核攻撃で応える決意を固める。虚々実々のパワー・ゲームを経て、戦端は開かれた。双方の最終兵器を同時に破壊せよー。米空軍第45航空団の究極のミッションは、「三位一体(トリニティ)」と命名された。
銃撃され、診療所に駆けこんだフリーのパイロット、キイ・タケット。診察に当たった女医ラーラは、かつて上院議員だったキイの兄とスキャンダルを起こし、その失脚と謎の死の原因を作った張本人だった。ラーラがあえてタケット家の近隣で開業した目的は、キイの腕を借りて内戦状態のモンテサングレに密入国し、わが子の遺体を取り返すことだった。
名馬「サンソ」はまさに救世主だった、悪質な飲酒運転から、調教師としての名声を失ったミッキーにとっては。かつて彼が調教した偉大なる種牡馬。その厩舎管理を任され、ミッキーはアイルランドに帰還した。無名の障害馬に賭け、確実に大儲けできる秘策を胸に…。暗転。ある組織の脅迫。取引に応じなければ、「サンソ」を誘拐するという。テロリストとの攻防。不屈の魂!迫真の競馬サスペンス。
マックスはかつてネットワークの花形リポーターだったが、今は田舎町の系列局に飛ばされている。その町で平凡に暮らしていたサムは、ある日突然レイオフされた。ささいな偶然の積み重なりがサムを人質犯へと変貌させ、事件を中継するスクープを得たマックスに返り咲きのチャンスを与えた。彼らが“主演”する大事件が全米でテレビ放映された時、男たちの運命は狂いはじめたー。
ねむれる森の美女さながら永いねむりについてしまった美しく幼ない姫に魅入られるかのごとく数奇な運命をたどる腹違いのひとりの童子ー中世の京の都を舞台にくり広げられる男と女の不可思議な生涯を物語る「ねむり姫」ほか、実母の生んだ牝狐を愛し命を奪われてしまう男の物語「狐媚記」など、古今東西の典籍を下敷きに構築されたあやかしの物語六篇。
御殿場での放火殺人。女声の密告電話で、犯人と名指しされた女には完璧なアリバイがあった。犯行時刻、寝台特急「さくら」に乗車していたのだ。殺された孤独な男をめぐる二人の女の思惑と殺意。そして、仙台での隠された事件が謎を深める。ご存じ浦上伸介の、緻密な調査と名推理が辿り着いた、迷宮の出口とは。
北陸・福井出身の祖父は奉天会戦に出征。日露戦争後、満州で馬賊となり事業を起こした。父親はその事業を継いで奉天の成功した実業家となる。一人娘のルイは、上品な亡き母とは比較にならぬ父親の後妻、妖艶な苑子と“女の争い”を演じる。そして激しい行動力で、関東軍の敗色濃いノモンハンへ恋人を追って行くが、その恋人とはなんと…。旧満州全盛期。自由奔放に生きる“炎の娘”ルイ。日本人社会に繰り広げられる愛欲の葛藤。壮大なドラマは『風と共に去りぬ』に迫る。
三方面から怒涛のように侵攻したソ連軍によって“偽国”満州は崩壊した。若き戦争未亡人となったルイは、気力を喪失した男達に代わって家長の役割を負った。日本人同士の醜い争い、中国人、朝鮮人の冷たい視線、激しい抗日暴動の中で、今日食うためにどう金を稼ぐか、必死の日々が続いた。その渦中、あれほど憎んだ苑子が実は…。“偽国”満州の崩壊。敗戦の地獄図。歴史に翻弄される女達をささえ、若く美しい主人公ルイは、渾身のパワーを振り絞って生き抜く。