1999年発売
人でありながら、神の子であったイエス=キリスト。数々の奇跡を起こし、そして人間の罪を負って十字架にかけられたイエスの生涯を、われわれと同じ、ひとりの人間の生涯として描いた本書は、神を求め、その声を聞くことができない悲しみや、信仰に迷いながらも、貧しい者の中に希望を見いだそうとするイエスの姿を鮮やかに甦らせる。ここには、神話の中にではなく、われわれの心の中に息づくイエスがいる。
19世紀末、封建的時代のスウェーデン。貧しさゆえに12歳で農園に奉公に出されたハンナは主人の息子に強姦され、13歳で母親になる。苛烈な差別と過酷な労働にも耐え、息子を明るい子に育てるハンナ。彼女が産んだヨハンナも、奉公先の医師一家に虐待され社会主義に傾倒しながら、豊かになっていく社会と女の地位とのギャップに苦しむ…。-あまりに残酷な運命を生きた、北欧の美しい大地の女たち。母娘の、夫婦の、気高い愛が激動する時代を背景に光を放つ「希望の書」。
飲めば大酒、女にはフラれっぱなし。そんな巨漢の高校教師「俺」が設立したアメリカンフットボール同好会『ベアーズ』。肥満児から秀才まで、およそ運動に不向きな生徒11人と俺が繰り広げる、抱腹絶倒感涙滂沱疾風怒涛ファイト一発!の物語。「まれにみる快作」「ビールで乾杯したくなる」と全選考委員が絶賛した、第五回小説新潮長篇新人賞受賞作。「俺はキャプテン」「NG胸を張れ」の二篇を同時収録。
全長4000メートルの海峡大橋を支えるコンクリートの巨大な塊“アンカレイジ”。内部に造られた窓ひとつない空間に集まった科学者・建築家・医師の六名。プログラムの異常により海水に囲まれ完全な密室となったこの建物の中で、次々と起こる殺人…。最後に残ったのは、盲目の若き天才科学者とアシスタントの二人だった。犯人は、私?僕?それとも-。
昭和16年3月。萌は故郷・明日萌を遠く離れ、生まれて初めての地に降り立った。そこは大都会・東京-。人の多さと生活リズムの速さに圧倒され、不安になる一方で、東京で母に会えるかもしれないと、淡い期待を抱いていた。そんな萌に襲いかかる災難の数々。あてにしていた働き口がだめになったうえ、すり騒動に巻き込まれ、財布を盗まれてしまったのだ。途方に暮れた萌は、最後に残っていた十銭硬貨を握りしめ、駅近くにあった猫又食堂の暖簾をくぐるのだった。食堂の女将・としは津軽三味線を爪弾く趣味があり、その音色が萌にはなぜか懐かしい。もしや本当の母では…そして、さまざまな出会いを重ねていく中で、萌は結婚相手とめぐり会う。しかし、幸せな生活もつかの間だった。徐々に忍び寄る戦争の影が萌の人生を一転させる。
ヒトラー救出作戦失敗!富嶽隊、壊滅!戦局はついに最終局面に達しようとしていた。米軍は原子爆弾の開発に成功し、テニアン島に実戦配備した。原爆投下阻止のため、日本軍は試作機として残存するたった一機の富嶽で、テニアン島空爆をはかる。護衛機もない富嶽に乗った近藤正己隊長は、はたして日本の“運命の日”を阻止できるのか!シリーズ堂々の完結編。
私立光曜学園高校の二年生・高梨瞭司の恋人は、ちょっとストイックな雰囲気で超カッコいい社会科教師・友利秋洋。でも、どうもこの“教師と生徒”という禁じられた関係が邪魔をして、なんなか先に進めないのだ。なんとか友利とイイ関係になりたい瞭司だけど…。
毒リンゴの罠に陥りながらも、息を吹き返した雪姫。しかし物語は、めでたしめでたしでは終わらなかった。グリム兄弟の手によって幾度も改訂された後に、ついにできあがった完全版を初完訳で刊行。
不知火(しらぬい)の海辺に暮す土木事業家の主とそれをとりまく三代の女たち。遊女、石工、船頭…人びとがあやなし紡ぎ出す物語は、うつつとまぼろし、生と死、そして恋の道行きー。第三回紫式部文学賞受賞作品。
その時、村は笑っていたのか-’70年代をすぎて、’80年代へ実りの予感と危機への畏れのあいだで家族は時代を見つめ続けた。名作『四万十川』シリーズの作者が女の半生を通じて問う村の運命。
職業医師として、年来、私は性的強迫観念が色濃く滲み出た情事の破局に関心を懐いている-本書の語り手、ピーター・クリーヴはそう語る。1959年の夏、精神科のマックス・ラファエルはロンドンからうらさびた土地にある、堅固な精神病院に副院長としてやってくる。並外れた美貌と知性をもちながらも孤独な彼の妻ステラは、そこで、狂気の彫刻家、危険な入院患者であるエドガー・スタークと宿命的な出会いをする。堰を切ったように情事に走る二人。そして作中人物たちはそれぞれに自らの悲劇を手繰り寄せていく…。
北九州市内の繊維メーカーに勤務するやり手の営業課長が誘拐された。家族からの知らせを受けた警察は極秘裏に捜査体制を敷くが、犯人はそれをあざ笑うかのように逆探知されない方法で連絡を寄越し、身の代金五千万円を会社に出させるよう指示。さらに人質の息子を運搬役に指名し市内を転々とひきずり回したあげく、関門海峡を挾んで奇想天外な方法で受け取りを謀る。だが、犯人の真の狙いは、五千万円というはしたガネではなかった!!期待の大型新人が、現代社会の裏を鋭くえぐった渾身の書き下ろし。
アメリカ中西部はミネソタ州スタンダード・スプリングズ。人口:4317。このスモール・タウンで最大のイベント、年に一度の“連続殺人記念祭”の季節がやってきた!毎年、町で起こる殺人事件はたったの一件。どういうわけか犯人が捕まることなく20年も続いている。大した危機感もなく、平和がしみついている人々は、恐怖を知りたい、味わいたい。ぞっとするような叫び声をあげる少女を“絶叫クィーン”の座に据え、祭りのパレードは最高潮に達する。デビイは、そんな異様な町に暮らす女子高生。今年がクィーンになるラストチャンスなのに、「恐怖が感じられない」と困り果てる日々。…ところが本番目前に、最大のライバルが戦線離脱!?コンテストの結果は?保安官は今年こそ犯人逮捕なるか?『葬儀よ、永久につづけ』の著者が再び放つ、奇想天外な田舎風アメリカン・コメディ。