1999年発売
プラハの街をぶらつき、観光客の娘を騙して弄ぶのを無上の楽しみとするアメリカ人青年ニックス。彼はある夜モニカという女に出会い、その魅力に取り憑かれた。ジプシーとチェコ王族の血を引きモニカへの想いはとめどなく膨れあがる。彼はモニカを執拗につけ回し、彼女の兄と称する男を殺してさらにある卑劣極まりない犯罪を企てた…“運命の女”のために転落の一途をたどる男を非情なタッチで描く、サスペンスの新収穫。
元捜査官ケイトのもとに、先住民協会の理事をしている祖母エカテリーナが訪れた。土地の開発をめぐって理事会が開かれるアンカレッジへ同行してほしいと頼みにきたのだ。祖母によれば、開発に反対する理事の一人が最近急死したうえに、他の理事たちも様子がおかしいという。だが、二人が到着して間もなく、反対派の理事がまた一人謎の死を遂げ…ケイトのねばり強い調査が、開発がらみの黒い陰謀を暴くシリーズ注目作。
夏のはじめから、すべてに意味がなくなるまで、ぼくたちは開いたままの大きな窓の前で絡みあった。自分ではどうすることもできず、ぼくは妄想の世界、あの怪物の住む世界に引きこまれていく…少年と少女のひと夏の恋を、エロティシズムと恐怖を交えて綴った表題作をはじめ、大人の仲間入りを果たすために10歳の妹を誘惑する14歳の兄の姿を描いた出世作「自家調達」など、英国文壇の旗手が、時には残酷に、時には優雅に紡ぎだした八篇を収録。官能、恐怖、風刺、叙情…ブッカー賞作家の独自の世界が堪能できるデビュー作品集。サマセット・モーム賞受賞作。
栗村夏樹は都内の短大の二年生で剣道三段の腕前。彼女の母・幹子が突然襲撃された。関係者から手渡された母の所持品のビデオテープには、厳寒の海に浮かぶ“透明な密室”の内部で惨殺される男性の映像が収められていた。事件を追う夏樹の前に、十八年前亡くなった父の死の謎、さらには超能力者の指導者を擁する擬似宗教団体が立ちはだかる。そしてついに、リシが予言したとおり、絶対に実行不可能なはずの、奇怪な殺人事件が…。トリックメーカーの著者が満を持し、正面から読者に挑戦する前人未到の大トリック!“夏樹”シリーズ三部作完結編。
北アイルランドはデリーの町。人びとの根深い対立に端を発する、うわさや密告や陰謀がうずまくミステリアスな町。行方知れずの伯父さんに一体何があったのか?心を閉ざす母。愛すべき沈黙をまもる父。家族一人一人が決して口にしてはならない秘密を胸深く封じこめて生きている。魅惑と恐怖が背中あわせの闇のなかで、のびやかにして繊細な少年の心に刻まれる、生と死と愛と孤独-。アイルランドのゆたかな幽霊伝説や妖精譚に彩られた少年の日々を詩情あふれる筆致で描く。「今日のアイルランドが生んだ小さな大傑作」と絶賛された、心ふるえる連作小説。ガーディアン紙小説賞受賞。
モスは、収穫祭の日に見知らぬお客が訪ねてくるのがいやだった。だからひとり、森に分け入っていった。男の子なら必ず体験しなければならない「森の時間」。ヤマアラシとの会話やひとりぼっちの少女との出会いを重ねたモスは、家族の絆や他人への思いやりの大切さに目ざめてゆく…。『朝の少女』で家族の光り輝く愛を綴った著者が再び謳いあげる、鮮烈な魂の成長の物語。
あの顔は、殺人事件の被害者にそっくり…。検事補のケリーは、交通事故にあった娘を連れていった診療所の待合室で、信じられない光景を目にした。診察室から出てきた女性が、十年前に関わった事件の被害者そっくりだったのだ。そして翌週にもまた別のそっくりさんが…。美貌に憧れる女心と、愛する人を永遠に手許に置こうとする異常な執着心が生んだ、ダークな味付けのサスペンス。
彼女のためにテープを編集したこと、ありますか?彼氏からそんなテープを贈られたこと、ありますか?この本は、そんな貴男とそんな貴女のための小説です。もうからない中古レコード店を営むロブと、出世街道まっしぐらの女性弁護士ローラ。同棲の危機を迎えたふたりは、どんな結末を迎えるのでしょうか。英国だけで百万部を突破した話題のベストセラー、いよいよ日本に上陸です。
中央公園で拳を交したふたりの龍ー風祭龍紀と風祭龍弥。その死闘の果てに、ふたりは、ふたりがふたりである事の意味を知る。その背負った宿星に導かれるようにふたりは、学園を覆う異変の核心へと近づきつつあった。妖艶淫靡な那智姉弟に猜疑の瞳を注ぎながら、龍紀は九桐から、那智家に関わる驚くべき血の歴史を知らされるのだった。新宿は真神学園に訪れた二組の転校生を巡って繰り返される因果と宿星を描いた「東京魔人学園双龍変」シリーズの第四巻。
「今夜、俺の悲劇は勝利を収めた。そう、俺は強くなるのだ。…」永遠、それは甘美で残酷な死の微笑。「ピッポ・スパーノ」をはじめ「女優」、「ムネー」、「知られざる者」など、弟トーマス・マンとの確執が反映する中期短篇小説のコレクション。
元DIA(アメリカ国防総省、国防情報局所属の救出作戦実行部隊)大佐、島津利明は、極秘任務遂行のため再び古巣のDIAに戻り、捕虜奪回作戦の指揮を執ることになった。母島、クラ島を部隊に繰り広げられる壮絶なノンフィクション巨編。
「人は、どんなことからでも学ぶことができる」-祖父のこの教えを実践するように、学校でも、それ以外の場所でも多くのことを学んでいく倫太郎。そんな彼に、またひとつ格好の場所ができた。倫太郎が保育園時代から慕っていたあんちゃんが、少林寺拳法の道場を開いたのだ。倫太郎と仲間たちの可能性は、学校という枠を超えて広がっていく。子どもたちの鮮烈なエネルギーに満ちた、感動の大河小説、シリーズ第二巻。
現代版聖ゲオルク伝説を翻訳するために火山島を訪れた“わたし”。だが文字の群れは散らばり姿を変え、“わたし”は次第に言葉より先に、自分が変身してしまいそうな不安にかられて…言葉の火口へあなたを誘う魅力あふれる代表作。
年少組なのに年長組の子を泣かせたり、突拍子もないいたずらを考えついたりと、いつも保育園の先生を手こずらせてばかりの倫太郎。大人たちからはとんでもない悪ガキだと思われることが多いが、実は鋭い感受性とさりげないやさしさをあわせもった個性的な子だ。倫太郎はどのように成長していくのか、そして周りの大人たちは倫太郎をどう見守っていくのか。灰谷健次郎が満を持して贈るライフワーク集体成、遂に待望の文庫化。
梨果と八年一緒だった健吾が家を出た。それと入れかわるように押しかけてきた健吾の新しい恋人・華子と暮らすはめになった梨果は、彼女の不思議な魅力に取りつかれていく。逃げることも、攻めることもできない寄妙な三角関係。そして愛しきることも、憎みきることもできないひとたち…。永遠に続く日常を温かで切ない感性が描いた、恋愛小説の新しい波。
現役自衛官殺人事件の捜査本部が、何の手がかりすらつかめぬまま、解散同然となった。以後の捜査は自衛隊の警務部が行うという。自衛隊は捜査状況の一切を秘匿する。あきらめる報道陣の中で、ひとり事件を追う決心をする男がいた。警察すら手出しできない殺人事件の謎に、何の力も持たぬ男が迫ることはできるか。