小説むすび | 1999年発売

1999年発売

シングル・ショットシングル・ショット

それは確かに手負いの雄鹿のはずだった-。だが、銃声がおさまったあと、野薔薇の茂みの向こうに倒れていたのは、まだ若い女性の死体だった。山中にひとり住み、密猟で生計をたてていたムーンにとっては、逃げ場のない罠にかかったような事態だった。前科があるので、通報すれば刑務所入りはまぬがれない。だが幸いにも、現場は人影のない山奥の石切場、彼女もどうやら家出でもしてきたらしく、この近辺の人間ではない…ムーンは手近の洞窟に死体を隠し、知らぬ顔を押し通すことにした。近くにあった彼女の持ち物のなかには思いもかけぬ大金があったので、これも持ち帰った。こうすれば、事件が表沙汰になることもなく、そのまま忘れさられるはずだった。しかし、彼女の恋人と思われる男が出現し、事態は一変する。あわてて死体を隠した洞窟へと走ったムーンは、そこで愕然とする…。一発の銃弾をきっかけに、徐々に追い詰められてゆく男の、恐怖と焦燥。人跡も稀な山中で展開される、異色サスペンス。

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