2000年1月発売
神様おねがい!アイツの隣に席替えしたいの…。時は1970年、よど号がハイジャックされるわ、大阪で万博は始まるわ、ジミ・ヘンは死ぬわで、もう大変!だったあの頃も今も、高校生の願いは変わらない。深夜放送に眠い目をこすり、創刊されたアンアンを読みながら大福の誘惑に涙を浮かべるちょっと太めのロック少女タヤマシゲミが、文庫書下ろし小説に登場。
「帝国」はぼくたちのこころの中にあるー。丸い卓袱台、四本脚のテレビに、フタ付きのくみ取り式トイレ。かつては、こんな暮らしが当たり前だった。そこに暮らす怪人アータン、妖怪シリナメ、ゲロゲロヨネダたち。若くして死んだ「ぼく」があの世から18年間の記憶を語りはじめる。忘れられたかつての郊外生活、「帝国」の記憶をやさしく誘うノスタルジー溢れる郊外今昔物語。
見えない、聞こえない、想うことしか出来ない。でも、待ち続けている。待てども来ぬ春を。あのクリムトが、そうだったように…。待っているのは私。とり残された土蔵に暮し、クリムトの偽絵を描く、この私。私の前に現れたのは、不幸の匂いを持つ女、キキ。新鮮な果実には腐敗を、若者の肉体には末期の老醜を見てしまう女。そして女も、春を待っていた。-哀しくも静謐な、愛の綺譚。
「われは孔明の生まれ変わりなり」…確信が官兵衛(如水)を比類なき軍師に成長させた。天下統一を目前にして信長が狂った。苦言する者を殺し大量殺人を好み猜疑心は頂点に…遂に自己制御力を失っておのれを神と信じるに至る。万民の幸せをはかる器量は秀吉一人と信じる官兵衛のもとに「朝廷の密命で明智光秀が信長反逆の機をねらっている」の情報が入った。反逆成功は信長の一瞬の隙を突く以外にない。今井宗久・嶋井宗室とはかった官兵衛は信長の隙をつくるべく本能寺の茶会を工作する。その夜、彗星が尾を曳いて流れるー。すずやかな軍師竹中半兵衛の義侠。姿を現しはじめた秀吉の陰の素顔。
光り輝く英傑宗麟が「国くずしの大砲」を先頭に九州の大半を制圧すると、なぜか一転、王国崩壊につながる「国くずしの愚挙」を重ねはじめる。離縁の命令をはねつけ、強圧を押し返して、決然と妻の砦を守り抜く火の女のたたかい-。使命観を喪失した現代の夫と妻に問う。
LAのしょぼくれ女こまし、タケシに舞い込んだおいしい仕事。それは絶世の中国美人とともに亡命して来る北京大学教授をシスコからLAへ運び、匿うという“NO PROBLEM”の仕事の筈だった。ところが…!?チャイニーズ・マフィアの凄絶な罠の落とし穴に追い込まれていく臆病者のタケシが逃げる。だが、このどうしようもない男を突然奮い立たせる意外な真実が…!?男は生涯に一度ド根性を魅せる。
昭和8年。東京近郊の梅広町にある「月辰会研究所」から出てきたところを尋問された若い女官が自殺した。特高課第一係長・吉屋謙介は、自責の念と不審から調査を開始する。同じころ、華族の次男坊・萩園泰之は女官の兄から、遺品の通行証を見せられ、月に北斗七星の紋章の謎に挑む。-昭和初期を雄渾に描く巨匠最後の小説。
昭和8年の暮れ、渡良瀬遊水池から他殺体があがった。そして、もう一体。連続殺人事件と新興宗教「月辰会研究所」との関わりを追う特高係長・吉屋謙介と、信徒の高級女官を姉に持つ萩園泰之。「『く』の字文様の半月形の鏡」とは何か?背後に蠢く「大連阿片事件」関係者たちの思惑は?物語は大正時代の満洲へと遡る。未完の大作。
第一講 印象批評 第二講 新 批 評 第三講 ロシア・フォルマリズム 第四講 現 象 学 第五講 解 釈 学 第六講 受容理論 第七講 記 号 論 第八講 構造主義 第九講 ポスト構造主義 同時代ライブラリー版によせて 現代文庫版によせて
兵吾少年は奇妙な枡形の屋敷に住む老婆に助けられた。その夜、少年は窓から忍び入ろうとする鬼に出くわす。次々と起きる奇怪な事件。虎の彫像の口にくわえられた死体や、武者像の弓矢の先にぶら下げられた死体が発見される。真相は五十年の時を経て、「推理嫌いの探偵」の手により明らかとなる!本格超巨編。
うち捨てられた病院で起きた荒唐無稽な不可能犯罪-収容されていた院長の娘が密室で刺殺され、凶器の短剣も“三重の密室”から持ち出されていた。彼女が遺した奇怪な小説『迷宮Labyrinth』は何を語る?不吉な紅姫の伝説とは?混沌のなか惨劇はエスカレートし、悪魔的終局が現出する。これぞ鬼才の精華。
ニューヨークは眠らない。だから救急救命士の俺も、静かな夜は過ごせない。心拍停止、呼吸困難、薬物中毒、銃撃事件、交通事故。大都会の夜は生と死のせめぎあいに満ちあふれ、救急車は夜を徹して、すさんだ街を走り回る。そんなある夜、心臓発作を起こした老人の家に呼ばれた俺は、不可解な体験をした。俺の面前に現われた人影は…自らも救急救命士であった著者が、その実体験をもとに描き出す、生死と愛憎のドラマ。
刑事たちは呆然と、眼の前で展開されている活人画を凝視した。床の上には、男の射殺死体が横たわっている。そしてベッドの上には、白いガウンを血しぶきに染め、射殺された夫の身体を抱き、片手に拳銃を握りしめた女性が、涙に濡れ、悲痛に顔を歪めて腰掛けていた。元警官で、州の上院議員をつとめるエレン・クリースを見舞った悲劇は、センセーショナルな話題を呼んだ。合衆国上院議員への熾烈な選挙戦をくりひろげている彼女が、自宅に侵入して夫を殺害した強盗を、逆に射殺したのだ。世間は悲劇のヒロインに強い同情を寄せ、支持率は上昇する。だが鑑識による現場の調査は意外なことを物語った。血痕の鑑定結果をもとに、警察はエレンを逮捕、殺人罪で起訴したのだ!思わぬ展開に、世間の注目は裁判に集まる。高潔な人柄で知られるクィン判事が、事件の審理を担当することになった。だがその矢先、判事は予想もしなかった事件に巻きこまれ、窮地に立つ。事件の背後には何者かの意志が動いているのか…。二転三転、予測不可能の展開。『黒い薔薇』の著者がはなつ、サスペンスの新たなる頂点。