2000年11月発売
横浜と梅県の殺人事件には、中国の裏社会で対立している秘密結社同士の抗争、ウイグル民族独立をめぐる内紛、公安当局の暗躍とが複雑に絡み合っていた。それぞれの思惑に挟撃される男たちが、タクラマカン沙漠の沙塵の彼方に見たものはー中国の闇の世界を抉り出す長編大作。
定年間際で会社を去り、男は故郷に戻った。死に場所と定め、数十年ぶりに眺める山村。そこではかつて、妹が惨殺され、世を儚んだ母が自殺を遂げていた。久々に訪れた実家には首を吊った弟の亡骸ー。それでもなお、自身の最期にはふさわしい地のはずだった。だが、ぶっぽうそうの鳴き声が響いた夜、仇敵は姿を現わした。女たちを狙う猟奇殺人犯を、男は餓鬼岳の頂上に追い詰める。
哲学科を卒業した竹田栄君は一念発起アメリカ留学を志し、猛勉強を開始する。英会話学校で出会った人たちとの交流、そして会話の上達ぶりをユニークなタッチで見事に表現する。165回に及ぶレッスンの始まり…栄君の英会話学校奮戦記。
ああ、俺あ本物のデグノボーさ、なってしまいあんした。きっとご免してけろじゃ…哀切だがどこかユーモラスな賢治の人生とその人物像を、いきいきと骨太に描き出す。
敗戦後、私ことメルローズ・ビシャスは、父の事業を助けて一族の再興を計ろうとしていた。そこへ、かつての敵軍将校であるクライシスから夏城への招待状が届けられた。断りきれずに向かった夏城で、私は、尊敬してやまなかった上官カート・フレグランス大佐と再会する。だが、美貌と英知で多くの崇拝者を得ていた大佐は、クライシスの夏城に囚われる性奴に身を堕とされていたのだ。悪魔的なクライシスは、誇り高い大佐を苦しめる手段として、かつての部下であった私に陵辱させようとしたー。世紀末の香り漂う耽美の世界。青年が知った禁断の城での遊戯とは…山藍紫姫子の最高傑作、書き下ろし2作を含め、待望の完全版刊行。
天国のように美しい南仏プロヴァンスを舞台に繰り返される凄惨な殺人事件。ダヴィデのごとき美貌と天使の微笑みを持つ冷酷非情な殺人犯と、難解な殺人事件のみを扱う特別犯罪捜査官ミシェル・ダントンとの、息詰まる頭脳戦が今はじまる…。
権力の内訌、大同を崩す。大蒙古の興隆、草原の光と風。チンギス・ハーン亡きあとも拡大するモンゴル帝国。孫のフビライは南宋を破り元朝を築き、標的を日本に向けた。しかし後継者の内乱は醜く続く。西側からの視点を混えた帝国興隆史の傑作。中国冒険譚「小説マルコ・ポーロ」併録。
「アウト!」プロ野球審判員・三宅健一郎が、ホームプレート上のクロス・プレイに下した判定をめぐり、両チーム入り乱れての大乱闘となった。試合後、木村と名乗るカメラマンが三宅の前に現われ「セーフを証明する決定的瞬間を撮った」と言うが、翌日、なぜかそのスクープ写真は掲載されなかった。しかし、三宅の胸にはもっと大きな不安が広がっていた…。同僚の死の謎を追う審判員の山際は、はたして公正なジャッジメントを貫き通せるのか。超新星が放つ書き下ろし長編ミステリー。
不倫を清算し会社を辞めた紗季は、夜の公園で男の死体と「不思議の国のアリス」のウサギを見る。果たして幻覚か?引越したマンションで、隣人の老婦人のお節介に悩む紗季に元不倫相手が自殺したという知らせが。一方「アリス」をモチーフにした奇妙なメッセージによって、十五年前のある事件の記憶が蘇る。
ノンフィクション作家・五十嵐友也のもとに届けられた一通の手紙。それは連続婦女暴行魔として拘置中の河原輝男が冤罪を主張し、助力を求めるものだった。しかし自らの婚約者を犯人に殺された五十嵐にとって、それはとても素直に受け取れるものではない。河原の他に真犯人がいるのだろうか。謎のまた謎の千枚。
丑の刻、貴船神社に夜毎現われる白装束の女が鬼となって、自分を捨てた男を取り殺そうとする。そんな男の窮地を救うため、安倍晴明と源博雅が目にしたものは!?女の悲しい性を描いた「鉄輪」他、全七篇。百鬼夜行の平安時代。魍魎たちに立ち向かう若き晴明と博雅の胸のすく活躍、魅惑の伝奇ロマンシリーズ第三弾。
十年間堪え忍んだ夫との生活を捨て家政婦になった主婦。囚われた思いから抜け出して初めて見えた風景とは。表題作ほか、劇作家にファンレターを送り続ける生物教師の“恋”を描いた「虫卵の配列」、荒廃した庭に異常に魅かれる男を主人公にした「月下の楽園」など全六篇。魂の渇きと孤独を鋭く抉り出した短篇集。
大学の心理学科に通う「僕」は、ひょんなことから自閉的な少女・下路マリの家庭教師を引き受けることになる。「僕」は彼女の心の病を治すため、異空間にワープしたダックスフントの物語を話し始める。彼女は徐々にそのストーリーに興味を持ち、日々の対話を経て症状は快方に向かっていったが…。表題作ほか三篇。
「あいつから逃げなきゃ!」執拗に追ってくる男の影に脅えつつ、逃亡を続ける花屋の店員、三田村夏季。同じ頃、神奈川県下では不可解な連続女性殺人事件が起こり、刑事部長・小田垣の苦悩の日々が始まった…。追う者と追われる者の心理が複雑に絡み合い、やがて衝撃のクライマックスへ。傑作長篇ミステリー。
「狐」「人形」「てんとう虫」という三つの愛らしいシンボルに秘められた、男女のすさまじい葛藤を描く愛の三態。天才作家ロレンスの傑作三編を、『ロレンス全集』の決定版ともいえるケンブリッジ版をもとに編む本邦初の書! 「狐」…狐に魅せられた女の自己喪失の物語。主人公が完全犯罪をねらって男性の殺害を企て る後半のシーンは、雑誌掲載後につけ加えられたものとして有名である。 「大尉の人形」…愛人の人形を作ったばかりに、その人形ともども数奇な運命をたどること になるヒロイン、ハネリの運命は……。 「てんとう虫」…てんとう虫をかたどった指貫から、伯爵夫人の想像力は果てしなく拡がって いく。愛人、そして夫……。旧版では欠落があった原稿が復元された本邦初訳。