2000年発売
八丁堀同心・畝源三郎の嫡男・源太郎も、はや七歳。いつもよりしおらしい麻生家の花世が気にかかる。花世の歯痛を治そうとして、幼い二人が偶然巻き込まれたのは…。表題作ほか、東吾とるいに待望の長子誕生の顛末を描いた「立春大吉」「虹のおもかげ」「狸穴坂の医者」など全八篇。江戸の春とともに旅籠「かわせみ」にも春の訪れか。
単車で転んで彼女にケガさせた。でも、彼女の白い肌もBMWも俺には同じ位愛しくて。伊豆の海沿いのカーブで、歌舞伎町の路上で、また二人きりの空間で生み出される“青春”という時間のつらなり。そこに在るのは、自由すらもて余してしまう凶暴な情熱と、ほんの少しの虚しさ…。切なくて、愛しい青春の五断片。
帰りたい、でもどこへ?僕たちの人生も半ばを過ぎたー。古郷を出て20年あまり。旧友の死が、4人を再会させた。彼らの帰る場所はどこなのか?渾身250枚の書き下ろしを含む力作中篇集。
エレーヌは眠らなかった。ロイックを起こしては悪いと思い、できるだけ動かないようにした。時々足と膝でシーツを少し揺すり、途切れ途切れに鼻先に届く自分達の匂いをかいだ。そうやって小さな風が送られてくるたびに、ロイックの髪がふわりと持ち上がった。「匂い」と「肌触り」を感じる、不思議な恋愛小説。
店舗を持たず、自分の鑑定眼だけを頼りに骨董を商う「旗師」宇佐見陶子。彼女が同業の橘董堂から仕入れた唐様切子紺碧碗は、贋作だった。プロを騙す「目利き殺し」に陶子も意趣返しの罠を仕掛けようとするが、橘董堂の外商・田倉俊子が殺されて、殺人事件に巻き込まれてしまう。古美術ミステリーの傑作長編。
OL、高校教師、旅館の若女将、先輩…。ある時は風呂場で、ある時は図書館で、またある時は海の中で…。美貌の教師に性のすばらしさを教えられて以来、山神大地は次々と魅力的な女性に出会い、快感の深みにはまっていく。『週刊現代』好評連載中の官能ロマンー圧倒的期待に応えて第2弾登場。文庫オリジナル。
京都、堺町綾小路に名ばかりのお堂と小さな庫裡をかまえる地蔵寺。東山知恩院の末寺で、檀家もないこの寺には、もうひとつの顔があった。怨みを抱く相手の足を引っぱり、ひそかに誅伐を加えてくれる“足引き寺”-。闇の仕事師は住職の宗徳、町絵師のお琳、羅宇屋の与惣次、西町奉行所に出仕する蓮根左仲、そして紀州犬の豪。今日も地蔵寺の賽銭箱に、願文と銭が投げ入れられる…。傑作時代連作。
落人となった一行。山中の逃避行で生き残った足軽・三郎太と主君の娘・小夜姫。熱夏の下、激しく求め合う二人。しかし、姫は捕らわれ、高木勝政の側室に。三郎太は工藤泰兼と名乗り、二十五年を経て戦国の覇者となり、高木を攻め落とした。小夜姫を求める泰兼に対し、彼女は「わらわが欲しくば盲いて見せよ」と冷然と言い放った…(表題作)。他二篇所収の、麗質の時代作家・諸田玲子傑作集。
2020年ー人類はついに史上初の有人飛行を実現した。だが、火星探査中にマーズ1号の4人の宇宙飛行士たちは突然NASAとの連絡を絶つ。その後、ミッション・コマンダーのルークから謎に満ちたメッセージが発信される。ルーク救出のため、親友のウッディ、ジム、ウッディの妻テリー、フィルの4人は6カ月におよぶ危険なミッションに挑む。しかし火星で待ち受けていたのは、想像を絶する真実だった…。
旅先のヴェニスで出会った、ギリシャ美を象徴するような端麗無比な姿の美少年。その少年に心奪われた初老の作家アッシェンバッハは、美に知性を眩惑され、遂には死へと突き進んでゆく。神話と比喩に満ちた悪夢のような世界を冷徹な筆致で構築し、永遠と神泌の存在さえ垣間見させるマンの傑作。
すぐ目の前に大きな黒塗りの車が止まっていて、私はその後部座席に押しこまれた。助手席に江津子がすわって、痩せた運転手に言った。「ストックホルムへ」車が走り出したとき私はやっと、自分がどこかへ連れ去られるのだと気がついた-私は監禁された。彼らを嫌悪し、そして愛した“私”の物語。長編ミステリー。
ポー、メルヴィルからオースター、パワーズまで── 著書自ら訳し、語る、待望の本格的講義。 ●名前 ●食べる ●幽霊の正体 ●破滅 ●建てる ●組織 ●愛の伝達 ●勤労 ●親子 ●ラジオ
面の持つ怨念によって村内に死者が急増し、社に封印されたという伝説を持つ「凶笑之面」。その由来を調査して欲しいとの依頼が、蓮丈那智の研究室に届いた。差出人は業界でも悪名高い骨董商の安久津圭吾。不可解な思いを抱きつつも長野へ赴き、調査を始めた矢先、安久津は死体となって発見される。果たして面の呪いなのか?写真だけが残された「喜人面」の実物はどこに?(表題作)伝承は死なず、必ず甦る。封じられた怨念は、深き業を糧に何度でも息を吹き返す-。最新の民俗学を大胆に取り入れ、日本人の根源を容赦なく抉り出す。本邦初、本格民俗学ミステリー。
ー24時間いっさい嘘はつかないと約束させられた男の、その結末は…「正直トマス」、不運はどこまでもついてまわる。1番にはけっしてなれない。それが彼の人生だった。とことん屈折した男の悲喜劇をシニカルに描く「次点の男」。-粗にして野であり、卑でもあるデブ警視ダルジール&パスコー、旋盤工あがりの黒人探偵シックススミスものなど13編を収録。本シリーズの掉尾を飾る、イギリスミステリー界の鬼才ヒルの傑作短編集。
土砂降りの雨の夜、果樹園主を訪れたその男は「おまえには50ドルの貸しがある」と言い放つや、銃を発砲した! 霧の中を手探りするように手がかりを求めるフェローズ署長。試行錯誤の末に彼が見いだした、犯人の恐るべき正体とは? 警察の捜査活動を緻密に描きつつ、本格推理の醍醐味を満喫させる、巨匠ウォーの代表作。
こんなにせつない、こんなに妖しい…1000年続く大ベストセラー!永久不変の名作を、いま、じっくり読んでみませんか。1000年前も、きのうの夜も、恋する気持ちにかわりはない。