2001年9月発売
通りで遊んでいた3人の少年に近づいてきた車から降り立ったのは、警官を思わせる男だった。男は3人を叱りつけ、デイヴを車に乗せると、相棒とともに走り去る。あとに残されたジミーとショーンは、遠ざかる車の中に囚われたデイヴを呆然と見送った。四日後、誰もが内心ではデイヴの帰還を諦めていた時、彼は自力で脱出してくる。だが、囚われの4日間に何があったかは、誰の目にも明らかだった。ジミーもショーンも、それを痛いほどに感じていた。25年後、いったんは犯罪社会に身を落とし、今は更生したジミーを、悲劇が襲った。彼の19歳の娘が、何者かに惨殺されたのだ。事件の捜査を担当するのは、刑事となったショーン。そして捜査線上には、かつての友人デイヴが浮上した。必死の捜査を展開するショーン、犯罪社会のコネを使って復讐をはかるジミー、妻にも告白できない秘密を抱えるデイヴ。そして、彼らの家族もまた苦悩する。親を、夫を、子供を、友人を失う畏れに苛まれながら。新たな悲劇の幕は、すでに上がっていた…。
伝説の女テロリストと少年の交流を描く「ブレイン・キッズ」、瀕死の王国を揺るがす倒錯の愛憎劇「夜舞」、黙示録巨篇『バベルの薫り』の主人公、姉川孤悲のサイキックアクション「ソドムの林檎」、猥雑さと純粋さが同衾する残酷な愛に彩られた、危険なテロ小説集。
今川家の目付・深瀬勘左衛門は、重臣の一家皆殺し事件を必死に追いかけたが、なかなか犯人を挙げられなかった。一方、深瀬の幼なじみの多賀宗十郎も度々命をねらわれる。そんな中、義元は浅間大社でお花見の宴を開催した。宗十郎も警固に当たったのだが…。「今川家の家中という歴史設定を馴染ませ、さらに人物に感情移入をさせる手腕はたいしたものだ」と選考委員の福田和也氏に絶賛された、第一回角川春樹小説賞特別賞受賞作、遂に文庫化。
宇宙都市『オデッサ』の太陽が爆発する!?この事態によって、オデッサ代官華表はオデッサを占領下に置いていた宇宙犯罪組織龍党と手を結び、10万人の市民を脱出させるべく行動を開始する。残された時間は1ヶ月しかない。だが龍党と手を結ぶのを良しとしない筆頭内与力コーデリアはこの情報を秘密裏に那国へ送信する。那国防衛軍は艦隊を派遣するが、不可解なことにこの脱出船団を撃破する作戦を発令した!オデッサに未来はあるのか。
物語は世界の果てにある小さな食堂を夢見ながら始まり、静かにゆるやかにつづく。どこからも遠い場所で、どこよりも近い、すぐそばで-クラフト・エヴィング商会の物語作者が贈る、ひとつながりの16の短篇集。
大学院の研究室で起こった奇妙な密室殺人事件の真相とは?戦後本格推理の幕開けを告げた著者デビュー作「犯罪の場」から円熟期の傑作「細すぎた脚」「月を掴む手」まで全十八篇。入手困難の作品集『犯罪の場』『黒い眠り』の二冊を完全収録のうえ、単行本未収録作品四篇を加えて再編集!名手の筆になる、本格推理サスペンスの華麗な融合をご堪能あれ。
自己の同一性の証として、またよりどころとして、己れの内なる「神語体系」の調和を希求するウルフであったが、妻ガーダの不倫を疑ういっぽう、自身も不義密通への抑えがたい欲望を募らせてゆく。果てしない彷徨を繰り返すウルフの魂に、安息の時は訪れるのであろうか?強烈な筆致で、人間心理の奥底の異様な相貌をとらえ、圧倒的な文学世界を構築したポウイスによる、二十世紀を代表する大長編。
1937年7月、北京郊外で軍事衝突が発生。戦火はたちまち広がり、日中両国は全面的な戦争に突入した。帝国海軍航空隊の麻生哲郎は勇んで中国へと向かい、アメリカ人飛行士デニス・ワイルドは中国義勇航空隊の一員として出撃する。上海、南京、漢口、重慶。長江上空に展開する戦闘機乗りたちの熱き戦い。やがてふたりはお互いを、名前を持った敵として意識するようになった…。中国の大空を翔けた男たちの勇姿を見事に謳いあげた航空冒険小説。
もはやボストンのこの界隈に、幼く無垢で無防備なものたちの居場所は無い。ここは崩壊した家族、悪徳警官、詐欺師、そして、夜毎テレビで誘拐された自分の娘について報じるニュースを観るアル中の母親が住む場所だ。少女が消えて80時間が経過し、捜査依頼を拒み続けていた私立探偵パトリックとアンジーは遂に動き出す。しかしこの少女の捜索は、2人の愛、精神、そして生命までもを失う危険を孕んでいたー。現代最高のディテクティブ・ノヴェル、シリーズ最新刊。
カリフォルニア火災生命の火災査定人ジャック・ウェイドは炎の言葉を知っている。寸暇を惜しんでは波の上にいる筋金入りのサーファーが、ひとたび焼け跡を歩けば失火元と原因をピタリと当てる。彼は今、太平洋を見下ろす豪邸の火災現場で確信している。これは単なる保険金詐欺ではない。殺人だ、と。ジャックは愛するカリフォルニアの太陽の下に蔓延る犯罪と悪徳の世界へ挑戦状を叩きつける。炎の言葉に導かれてー。鬼才ウィンズロウ入魂の最新作。
穏やかな恋人と一緒に暮らす、静かで満ち足りた日々。これが私の本当の姿なのだろうか。誰もが羨む生活の中で、空いてしまった心の穴が埋まらない。10年前のあの雨の日に、失ってしまった何よりも大事な人、順正。熱く激しく思いをぶつけあった私と彼は、誰よりも理解しあえたはずだった。けれど今はこの想いすらも届かないー。永遠に忘れられない恋を女性の視点から綴る、赤の物語。
父親に認めてもらおうとボクシングを始める少年、息子と初めての潮干狩りに出かける父親。試験勉強のために女友達の家を訪れる大学生、ベランダで鉢植えを愛でる独身サラリーマン…。ふつうの人生を生きる、ごくふつうの男たちの背中は、いつもどこか淋しい。男にとっての幸福とは孤独とは、いったい何なのか。じんわりと心にしみこんでくる、九つのほのかな感動。著者自作解説つき。
恋人を交通事故で失って以来、北園舞子には、見るもの触れるものすべてが無意味に感じられた。悲しみは赤く焼けた炭火のようにいつまでも残った。舞子はかつて2人で訪れた蛾眉山に登り、そこで出会った外国人の老僧から、「恋人は生きている、彼の子供を生みたくないか」ともちかけられる。その言葉は、“生ける屍”同然となった舞子にとって、天恵以外の何物でもなかった。舞子は老僧に導かれ、ブラジルの港町サルヴァドールへと旅立つ。死んだ恋人の子供を身ごもるために…。押し寄せる感動。衝撃のラスト!比類なき愛と生命の物語。