2001年発売
なぜ凄いのか?少女を含めて、この作者は女性たち、たとえばオフィスガールでも、おミズの世界の女性たちでも、さらには海外駐在員の妻たちでも、女たちが「集まる」場の光景を実に生きいきと描き出す。女性の生命感にはずみのつく瞬間を、これほど鮮やかに明快に書く作者はそんなにはいない。パワーがあって愛嬌があり、悪意を鋭く見る。
紀元前九世紀のイスラエル。世の中は混乱していた。指物師として工房で働くエリヤは、子供の頃から天使の声を聞いていた。だが、運命はエリヤのささやかな望みはかなえず、苦難と使命を与えた。「出来事」はすべての人に降りかかる。兆しを見つめるのか、見ない振りをするのか。諦めてしまうのか、乗り越えるのか。旧約聖書の時代から蘇る、愛と勇気の物語。
ヨットレースの最中、髪の毛一筋ほどのきわどさで目撃した落雷の恐怖と眩さ。海面下23メートルに広がる豪奢な水中天井桟敷。杭打ち機の何千トンという圧力を跳ね返すぼろぼろのされこうべ。ひとだまを捕獲する男。冷たい雨の夜に出会ったずぶ濡れの奇妙な男。かけ替えのない弟裕次郎の臨終の瞬間。作家の人生の中で鮮烈に輝いた恐ろしくも美しい一瞬をあざやかに切り取った珠玉の掌編40編。
極道小説で売れっ子になった作家・木戸孝之介は驚いた。たった一人の身内で、ヤクザの大親分でもある叔父の仲蔵が温泉リゾートホテルのオーナーになったというのだ。招待されたそのホテルはなんと任侠団体専用。人はそれを「プリズンホテル」と呼ぶー。熱血ホテルマン、天才シェフ、心中志願の一家…不思議な宿につどう奇妙な人々がくりひろげる、笑いと涙のスペシャル・ツアーへようこそ。
路面電車の走る町。「珈琲アリマス」と記された小さな居酒屋。隣で呑んでいた正吉さんは、手土産のカステラを置いたまま、いったい何処へ向かったのか?-荒川線沿線に根をおろした人々とあてどない借家人の「私」。その日日を、テンポイントら名馬の記憶、島村利正らの名品と縒りあわせて描き出す、滋味ゆたかな長篇。
新興量販店を狙った連続爆弾テロが発生した。犯人の狙いは曰く付きの社長・琢磨信之を標的にしたものと思われていたが、新たに琢磨とは何も関係のないショッピングセンターで爆弾テロが発生!このショッピングセンターで働く藤村幸造は、二十五年前に起きたテロ事件の捜査をきっかけに公安捜査官をやめていた。その爆破現場には二十五年前の事件で、藤村に恨みを持つ人物の姿が…。連続爆弾テロ事件の犯人の狙いは?藤村の娘の公安捜査官・早苗まで巻き込む、爆弾魔の闇が迫る!抜群のテンポで描く、元刑事と爆弾魔との息詰まる死闘!!新鋭が放つ、度肝を抜く犯罪小説の登場。
闇の中で緑色に燃える眼、呪い師に操られ蠢く屍者、壁の中から聞こえてくる声、月の光に揺蕩う恋人の白き顔、桜舞う幻想のなかにゆらめく炎。現実と怪奇幻想の狭間にある、底知れぬ恐怖を描いた珠玉の作品集。
日本の近代において久しく、あの著名な『人形の家』に象徴される社会劇という枠組みに堅く閉じられたイプセン。このイプセンの戯曲の台詞の核心に踏み込み、その重層的なありようを素手で自在に解きほぐし、いま二十一世紀に解き放つ。原典をノルウェー語から全訳した著者ならではの、芝居の本音の面白さがいたるところから吹き出す、渾身の書き下し四〇〇枚。
地中海の真珠、キプロス島を取材で訪れた編集者・響子とカメラマン・桧山。銃声、停戦ライン、軟禁…。激動の歴史の名残を留めるこの地で、生死をかけた愛と冒険の嵐に巻き込まれる。壮大なロマン。
東京人の母の影響で自意識過剰のぼくは大阪の小学校六年生。成績優秀なれど人に言えない三大弱点がある。それはデブとカナヅチと夜尿症。気になる女の子はいるし、憎いライバルや腹の立つエコヒイキ教師もいる。気がつけば、あっという間に水泳大会は目前。…高度経済成長期の大阪を舞台に、どうなる?がんばれ!こぼんちゃん。
ロンドン下町育ちの優柔不断男アーチーと、バングラデシュ出身の誇り高きイスラム教徒サマード。似ても似つかないこの二人の友情を軸に、19世紀からミレニアムにいたる時空間を往還しつつ、カオスの都ロンドンを活写する。ディケンズ/ラシュディばりのストーリーテリングにインディーズの心意気。新世紀初の偉大な才能と称えられた、ジャマイカ系大型新人のデビュー長篇。ウィットブレッド賞処女長篇賞、ガーディアン新人賞、英国図書賞新人賞、コモンウェルス作家賞最優秀新人賞受賞。
アーチーのジョーンズ家とサマードのイクバル家。妻子にはなにかと不評の二人である。そこへ、リベラルを気取るチャルフェン一家が登場し、二組の家族をさらなる混乱に陥れる。折りしもロンドン北西部では、あらゆる急進主義がはびこっていた。過激なイスラム原理主義者、熱烈なエホバの証人、闘う動物愛護主義者、危ない遺伝子工学者…一筋縄ではいかない面々が繰り広げる世紀末の狂想曲。多文化社会の困難と希望を恐るべき力技で描きだす、超絶ノンストップ・ノヴェル。ウィットブレッド賞処女長篇賞、ガーディアン新人賞、英国図書賞新人賞、コモンウェルス作家賞最優秀新人賞受賞。
見分けのつかぬ家がずらりと並ぶロングアイランド郊外の新興住宅地。その一角の朽ちかけた家に、一人のシングルマザーが引っ越してきた。彼女の名はノラ・シルク。8歳の息子と生後11カ月の赤ん坊を連れてやって来た。離婚を罪悪のように考えるお堅い住人は、ノラに冷やかな視線を投げかける。彼女は専業主婦の輪に入れてもらえず、息子は学校でいじめられる。それでもノラはひるまない。おしゃれでセクシー、開放的なその生き方に、やがて大人も子どもも、男も女も魅了され、それまでの人生を捉え直すようになる。そしてある日突然、一人の主婦が家を飛び出してしまった…。自分らしい新しい人生を求めるシングルマザーが平凡な町に吹きこむ自由の風を、マジカルに描く感動作。