2002年10月発売
細身のブラック・スーツ、悪戯っぽい笑み、そして温かな体。ヘルス嬢ミキは、ある日店に現れた暴力団幹部太田聡に恋をした。敵対組織との抗争、ミキをつけ狙うストーカー、降りかかる災厄を飄々とかわしていく太田に、日に日に想いを募らせる。一方、常に太田と行動を共にする舎弟分松本は、太田を知れば知るほどに、自分の未熟さを自覚するようになりー。抑えきれない恋心と捩れていく感情、憧れと憎しみにざらつく世界を描き出す、刹那系チンピラ小説。
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康ー三人の天下人と対決したキリシタン大名高山右近の波瀾にみちた生涯を追って、これまでにない新鮮な戦国史像を浮かび上がらせ、風波の激しい荒海においてもつねに一定の方向を示す心のコンパソ(羅針盤)とは何なのか、彼が目ざした魂の故郷とはいったいどういうものであったのかを描出し、国際化の時代を生きる現代人の指針ともなる畢生の力作。
三人の天下人と対決して、これほど重大な選択の場におかれ、深い矛盾に引き裂かれた武将は他にいない。神か、領国か、地上の栄光か、天上の平安かー領土を争って血みどろのいくさが繰り広げられる戦国の世に、だれもが命がけで守ろうとする領国を捨て、魂の故郷を求めつづけて、故国から追放され、遠い異国の地に果てたキリシタン大名高山右近の流転の生涯を鮮烈に描いた大作。
生い立ち、実業家からの転身、処女長編の成功と失敗、ナチス下の獄中、逃亡とアメリカ亡命、戦中戦後、そして最晩年に至る足跡を実証的にたどり、現代の政治的・社会的、実存的・哲学的諸問題を多様な方法で追求した作家ブロッホの全体像を克明に描き上げる。
もっさりした髪型とくたびれた白衣…「やる気のない昼行灯」とまでいわれている、男子校のさえない養護教諭、宝…。だが、それは生徒の実態を知るための世を忍ぶ仮の姿。本当はオシャレでカッコイイ隠密理事なのだ。ある日、宝は、保健室の常連でいつも可愛げのないことばかり言う優等生の芙由希が、実はネットアイドルとして密かに人気を集めていることを知り、さっそく監視を始めるのだが…。キューティラブな書き下ろし。
会社帰りの夜道-田宮吾郎は人生最大の恐怖に見舞われた。光るナイフに自由を奪われ、吾郎は男に犯されてしまったのだ。しかし、悪夢のような不幸はそれにとどまらなかった。明けた翌日、向かった出張先で吾郎を待ち受けていたのは、『容疑者』の汚名で…。わけもわからず同僚殺しの疑いをかけられた吾郎は、必死に身の潔白を訴えた。それを唯一信じてくれたのが、高梨と名乗る刑事だったのだが-「一目惚れなんです」彼はそんなことを言いながら、強引に吾郎の唇を奪ってきて…。
黒鷲ー不良債務者を地の果てまでも追いつめる凄腕ぶりから、誰もが黒木をそう呼んだ。しかし無力な黒木の眼前で婚約者の未優が凌辱され、自殺した瞬間、伝説の取り立て屋は凋落した。2年後、レイプ犯の写真を偶然目にした黒木は再び黒鷲として蘇り、復讐に爪を研ぐ…。最底辺を生きる人間の欲望を炙り出す暗黒小説の金字塔。
黒木が突き止めたレイプ犯は何者かに惨殺されていた。なぜ黒木は死臭を嗅ぎつけた黒鷲のごとく次々と関係者の不幸に遭遇するのか?冷酷な金貸し、サディストのヤクザ、狂ったシャブ中、強面の密売人、嘘つき娼婦ーオールキャストろくでなしの慟哭が読者の脳髄を破壊し、恐怖のどん底に叩き落とす。驚天動地の新堂ワールド。
セビリアに人殺しの教会-。法王のパソコンにハッカーが残した書き込みにヴァチカン外務局が動いた。アンダルシアにうごめく策略と陰謀。クァルト神父が真実に迫る!レベルテ待望の第3弾。
目の前でカネが倍になる-。参考人たちが口を揃えてこう証言する奇妙な詐欺事件に、警視庁捜査二課の警部補・舛城徹は困惑していた。手品めいたトリックの匂いを感じた舛城の捜査に引っ掛かる、プロ用のマジックショップ。その社長を追った舛城の前に、マジシャンを志す一人の少女が現れる。その少女が語ったカネが倍に増えるトリックとは?警視庁に通報される金融関連詐欺事件の大半は立件できないという。中には「奇術詐欺」とも呼べる、凝ったトリックを使った事件も少なくない。余人の想像を絶するその手口とは?そしてその発案者の実像は?「人を騙すこと」を業とする「奇術師」対「詐欺師」の目くるめく頭脳戦。
女の子にもマケズ、ゲバルトにもマケズ、男の子いかに生くべきか。東大入試を中止に追込んだ既成秩序の崩壊と大衆社会化の中で、さまよう若者を爽やかに描き、その文体とともに青春文学の新しい原点となった四部作第一巻。芥川賞受賞作。