2002年12月発売
海賊。-それは常に奪う側に立ち、奪われる側には決して立たぬ者。魔法が文明を支配する世界の中で、海賊ムガンドゥ一族に略奪される危機が訪れる。全面戦争も辞さぬ強大な魔導艦隊が彼らに要求するもの、それは完全密室の中で起きた殺人事件の容疑者だったー全世界が緊張する中で海賊は一人の女を呼ぶ。その名はレーゼ・リスカッセ。そして彼女には、仮面を付けたとても奇妙な友人がいてーこの世で最も美しい死体と、三代に亘る一族の歴史をめぐる因果の先に待つものは、勝利か敗北か、それともー。
登の柔術仲間、新谷弥助が姿を消した。道場に行くと言って家を出たまま、その後、深川の遊所でよからぬ男たちと歩いているところを目撃されたという。行方を追う登の前に立ちはだかる悪の背後に、意外や弥助の影があった。何が彼を変えたのかー。熱血青年獄医が難事件の数々に挑む。大好評シリーズ第二弾。
日本人が抱く喪失感はこれだったのだ! 弥勒丸引き揚げ話をめぐって船の調査を開始した、かつての恋人たち。謎の老人は五十余年の沈黙を破り、悲劇の真相を語り始めた。私たち日本人が戦後の平和と繁栄のうちに葬り去った真実が、次第に明るみに出る。美しく、物悲しい「シェエラザード」の調べとともに蘇る、戦後半世紀にわたる大叙事詩、最高潮へ。 ソフィアの丘 サザンクロス 帰郷 日ざかりの午後 夏の夜の再会 托された黄金 遥かな闇 抱擁 シェエラザード 夜の涯に
トルコに生れ、ロシアに没した天与の詩人ナーズム・ヒクメット。トルコ第一の国民詩人と称賛されながらも、人間味あふれる詩魂ゆえに17年の獄中生活、のちに国外亡命。詩句は全世界で愛唱され、原爆の悲劇を唄った「死んだ女の子」は日本であまりにも名高い。詩人に出会った生き証人・中本信幸氏の編訳による珠玉の詩の数々。
盲目の武士をやさしくいたわる托鉢僧ー旅の途中で出会った、年老いた二人連れが何故か秋山大治郎の心に残った。江戸に帰った大治郎は、偶然試し斬りされかかった件の老僧を助け、二人が二十八年におよぶ仇討ちの敵同士であることを知る。人知をこえたその絆の不思議さを描く「隠れ蓑」。小兵衛が小金持ちの隠居と見られて盗賊に狙われる「徳どん、逃げろ」など、シリーズ第7弾。
1939年、アメリカで独裁者たらんと願う政治家が、博学多識の教授を従えて模索の旅の途上スイスのジュネーヴに。迎えるは海千山千の亡命知識人。目下のヨーロッパのキナ臭い政治状況を視野に独裁者の条件をめぐって辛辣にして抱腹絶倒の激論が続く。1962年に書かれた作品ながら、まさに世界の今を照射する政治小説![解題:加藤周一] 本書の刊行によせて 独裁者について(加藤周一) 1 著者,コロンブスの卵を求めてヨーロッパにやってきた2人のアメリカ人に会う.相手は,独裁者志望のダブル氏と氏のイデオロギー顧問,かの有名なピックアップ教授 2 伝統的政治術と,大衆文化の時代におけるその限界 3 われわれの時代において全体主義的傾向を助長するいくつかの条件について 4 革命失敗後のクーデタ計画 5 独裁を志す男の文芸の女神(ミューズ)への片思い,ナンセンスな家系図と偏頭痛について 6 素質ある者多かれど,選ばれる者少なし 7 独裁志願者の政党について 8 綱領は無用の長物.議論は禁物.いかにして大衆を暗示にかけるか 9 民主主義はいかにしておのれを食い尽くすか.どさくさに紛れて漁夫の利を得る術の参考例 10 二枚舌の使い方と自分の嘘に騙される危険について 11 全体主義の天命に嫌気がさして,プライヴェートな生活が恋しくなる 12 警察と軍隊の後ろ盾がない陰謀,反乱の孕む危険性について 13 溺れる者への藁(レンズ豆スープ)作戦と当局の手を借りたクーデタ 14 国民総賛成,国家=党の浸透,濡れ衣の大量生産について 訳者あとがき 人名註
シリーズ第1作『ストームブレイカー』で日本のファンのハートを早くもつかんだヒーロー、ぼくらのアレックス・ライダーは、本国イギリスだけでなく、すでに世界16カ国の若者たちの間でも人気沸騰中。第2作では前作にも勝るとも劣らないハイテク新兵器が登場するほか、アレックスが一瞬、気絶しそうになるくらいの美女が現れる。
2003年NHK正月時代劇の主人公で話題。明治新政府の施策の多くを構想し、日本の近代化を仕掛けた男。幕末に散った悲運の名奉行、驚くべき先見性と凛然たる生涯。「小説上杉鷹山」に並ぶ、著者渾身の歴史長編。
医師という肩書きは、その響きだけで特別なステータスが匂う。近年、頻発する医療ミスの根幹にはどのような原因があるのか。権力、金、性と医師を取り巻く知られざる実態にスポットを当てた!現役医師が赤裸々に描いた医療現場の内幕小説。
七通の手紙が彼女のもとに届いた。差出人はすべて不明。手紙は決まって、縦書きの便せんに水性のボールペンで書かれ、最後のページがきれいに一部切り取られていた。やがて、八通目の手紙が託された。そして、それが最後の手紙だった。80年代前半・長野。90年代後半・東京、そしてアメリカ西部。ふたつの時代が出会い、そして、今、静かに響きあう。『天国の本屋』シリーズの著者が描く、絶対零度の最新恋愛小説。
伝説の刀鍛冶の末裔として、ある時は対立し、ある時は臣従しつつ、天下を目指してともに進む父と子。互いに親子と知らぬまま、因縁の秘剣「櫂扇」に導かれ、頭角を現わすふたりだが…。壮大な夢を追った武将を描く、血沸き肉躍る大型時代活劇。
パフォーマンス・アーティスト=ボディ・アーティストであるローレンは、夫の自殺に直面し、言語とアイデンティティーの危機に晒される。そして、彼女の前に出現する奇妙な青年。いつの間にか彼女が住む別荘の上階に住みついていた彼は、時間の概念もなく、因果関係もわからないままローレンと交流を重ねていく-。現代アメリカ文学の巨人が、アメリカの裏面史を壮大なスケールで語った前作『アンダーワールド』から一転、ひとりの女性が変わりゆく姿を緊密に、詩のように美しい文体で描く極小かつ極上の傑作。