2002年発売
外国人娼婦が共同で住んでいるホテル。そこから、イタリア人の少年が誘拐されたという。しかも連れだしたのは、神尾の恋人、恵子だった。10歳、というそのマリオの年齢に神尾の心の底にあるものがうずいた。少年の背後にあるのはマフィアの掟と白いコカインの闇の道。何かに導かれるように神尾は巻きこまれていく。元一等航海士、神尾修二シリーズ待望の第5弾。
もしもあの時、別の選択をしていれば、全く違う人生を歩んでいたのだろうか…。平凡な会社員・元城一樹のふとした夢想が、すべての始まりだった。一人娘の和子の前に姿をあらわした不思議な少女沙羅。その名前が甦らせる、消し去ったはずの過去。やがて、今ある世界と、あり得たはずの世界とが交錯しはじめてー。表題作を含む、全10編を収録。珠玉のミステリ短編集。
ニューハンプシャーの夏のある月夜、22歳のブレットは恋人と出かけた湖畔でマリファナとワインに悪酔いし、気がつくと恋人の刺殺体を目の前にしていた。ブレットの叔母にあたる弁護士キャロライン・マスターズは、殺人の罪に問われた姪の事件を手がけるため、23年ぶりに帰郷することになる。予審が開始され、次々と検察側の主張を論破していく一方で、昔の恋人や異母姉、元判事である父チャニングとの苦い再会と、家族たちへのある疑惑が彼女を待ち受けていた-。『罪の段階』『子供の眼』に登場した辣腕の女弁護士キャロラインをヒロインに据え、本格的な謎解きに一族の愛憎の物語を盛り込んだ、法廷サスペンス三部作の完結編。
離婚歴のある三十三歳のケイトは、フィラデルフィアでロマンス専門書店を経営。一人住いを避けるため、大学生のジョーとシーンに部屋を貸していたが、二人はゲイだった。ある日、二人が全裸で絡み合っているのを目のあたりにしたケイトは、欲望に火をつけられ、思わず二人の誘いにのって、三人でのプレイに興じてしまう。その日から、奇妙な三人の生活が始まる。年上のケイトは、若い二人の関係にヒビが入ることを恐れたが、同時に三人での新しい愛のかたちが継続することも望んでいた。女と二人の男-複雑に絡み合う愛の行方は…。
広告代理店の女重役ジョアンナは、大事なクライアントに暴言を吐いてしまった。クビを覚悟していたが、支社長から呼び出され、一週間の休暇を言い渡される。その旅先で偶然、元少佐夫妻と知り合い、自宅に招かれるが、二人の夜の営みを覗き見て、驚愕する。お尻を露わにした妻のルイーズが、夫に鞭打たれて悦びの声をあげていたのだ…。ジョアンナはこの出来事をきっかけに、いままで自分の知らなかった、めくるめく倒錯の世界へと誘われていく…。エクスタシー・オデッセイの終着駅は…。
弓月藩剣術指南役・鵜飼兵馬。御前試合で藩主の不興を買い、離縁、そして脱藩。公儀御庭番宰領という闇の世界に身を投じた男が、十五年という歳月を経て知った藩の秘密とは。妻の真実とは…渾身の時代小説。
高校を卒業して家業の花屋を手伝っているヒカルには誰にも言えない秘密がある。それは、ナギサとセックスをしていること。ナギサは、ヒカルが13歳のときふらりと現れた大人の男だ。そして15歳のときからずっと体を重ねている。だが、「恋人」とは呼べないナギサとの関係にヒカルは-。
山間の平和な村を、金塊を背負った旅人が訪れる。村で殺人が起きれば、金塊を村に提供しようという旅人の提案に、村人達の欲望が喚起されーー。異常なまでの緊張感で、人間の根元的な問題に迫る衝撃作!
倒産寸前の貿易会社社長、市川。仕事先の北京で宿痾が鍼と漢方により完治したことから、日本でインポ、ダイエット、不妊…悩める善男善女を集い「日中友好漢方旅行団」を結成!治す喜び、癒される感動、そしてなにより健康という幸せ。貴方によく効く「読む薬膳」です。
小さな町の銭湯の一人娘(水の女)は、町で有名な“雨女”。彼女の人生に何かが起こると、決まって空は雨になる。唯一の肉親の父親と婚約者を同時に失い、天涯孤独の身になったある雨の日、ふらりと現れた謎の男(火の男)を釜場に雇い、ふたりは暮らし始める。名前も過去も、何も聞かない、今ここだけの愛が綴られていく。晴れた日に降る雨のように…静かで、やさしい男と女の愛の物語。
妹の死。頭を打ち、失った私の記憶。弟に訪れる不思議なきざし。そして妹の恋人との恋ー。流されそうになる出来事の中で、かつての自分を取り戻せないまま高知に旅をし、さらにはサイパンへ。旅の時間を過ごしながら「半分死んでいる」私はすべてをみつめ、全身で生きることを、幸福を、感じとっていく。懐かしく、いとおしい金色の物語。吉本ばななの記念碑的長編。