2002年発売
複雑な家庭環境の中、これまで会わずに育った「兄妹」が出会った瞬間から恋を育むー。互いに愛する人を失った男女が出会い、やがて何かに導かれるようにして寄り添ってゆくー。運命的な出会いと恋、そこから生まれる希望や光を、瑞々しく、静謐に描き、せつなさとかなしい甘さが心をうつ珠玉の中編二作品。明るさのさしこむ未来を祈る物語。定本決定版。
ネットワークのどこかに存在する、仮想リゾート“数値海岸”の一区画“夏の区界”。南欧の港町を模したそこでは、人間の訪問が途絶えてから1000年ものあいだ、取り残されたAIたちが、同じ夏の一日をくりかえしていた。だが、「永遠に続く夏休み」は突如として終焉のときを迎える。謎のプログラム“蜘蛛”の大群が、街のすべてを無化しはじめたのである。こうして、わずかに生き残ったAIたちの、絶望にみちた一夜の攻防戦がはじまる-仮想と現実の闘争を描く『廃園の天使』3部作、衝撃の開幕篇。
フリーライターの広瀬隆二は、有名代議士の自叙伝執筆の取材で、15年前に失踪した代議士の娘・香奈の行方を追う。転々とする彼女の足跡を辿ると、そこには行く先々で女の魔性の虜になった男たちの姿があった。広瀬はいつしか、会ったこともない香奈に惹かれている自分に気づく…。何から女は逃げるのか?何を女は探るのか?男を虜にしながら…。俊英作家、渾身の書下し長篇ハードボイルド。
1966年、統一事業を任務として南下、慶尚南道で銃撃戦の末、スパイとして逮捕される。33年間の獄中での死と隣り合せの生活と出所後、北へ帰るまでの1年半の南の人々との触れ合いを記録した非転向・信念の現代史。
青島俊作29歳。脱サラして警視庁に転職。念願の刑事になったものの、配属は管轄も署員も“寄せ集め”の湾岸署。理想に燃える青島だったが、現実はパトカーで出動するにも上司の判子、犯人逮捕のおいしいところは本庁が横取り…と、サラリーマンよりマンネリで理不尽な毎日。それでも青島は、トラウマを持つ女刑事すみれや、同僚殺しを追い続ける、定年間際のベテラン刑事和久たちと、体当たりで事件に挑んでいく…。フジテレビの人気刑事ドラマ、ついに文庫化。
たてよこななめ、どこから見ても「十一点…」。赤点を取った高校生・馨は、学内人気No.1教師・巽の補講を受けることに。夢見がちな巽のファンのやっかみをかいくぐり、教師の使命に燃える巽にクール&ドライな毒舌で返す、補講バトルの火蓋はダイナミックに切って落とされた!馨はそんな中、巽の人には言えない秘密を知ってしまい…。
日本の近代を「現場」でつくった人々の声。 〈サラリーマンというけれど、いったい会社で何をやっているのか。実は、妻も子供も、もちろん隣人もあまりよく知らない。でも、それはもしかしたら自分によく似た人。鏡の向こうのあなたであるかもしれない。〉…そんなコンセプトで始まった、ヨイショ企画にはない痛快さが味わえるインタヴュー集。有名人でも何でもない「フツー」の人に対して、ときに本気で怒らせながら、巧みに本音を引き出す技術は、ジャーナリストを目指す者にとって大いに参考になる。同時に「日本の近代」が、名もない人々によって支えられ育まれていったことがわかるのだ。巻末には「猪瀬直樹」が、なぜ「物議を醸す男」になったのかをうかがわせるエッセイ式略年譜も掲載。
細身のブラック・スーツ、悪戯っぽい笑み、そして温かな体。ヘルス嬢ミキは、ある日店に現れた暴力団幹部太田聡に恋をした。敵対組織との抗争、ミキをつけ狙うストーカー、降りかかる災厄を飄々とかわしていく太田に、日に日に想いを募らせる。一方、常に太田と行動を共にする舎弟分松本は、太田を知れば知るほどに、自分の未熟さを自覚するようになりー。抑えきれない恋心と捩れていく感情、憧れと憎しみにざらつく世界を描き出す、刹那系チンピラ小説。
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康ー三人の天下人と対決したキリシタン大名高山右近の波瀾にみちた生涯を追って、これまでにない新鮮な戦国史像を浮かび上がらせ、風波の激しい荒海においてもつねに一定の方向を示す心のコンパソ(羅針盤)とは何なのか、彼が目ざした魂の故郷とはいったいどういうものであったのかを描出し、国際化の時代を生きる現代人の指針ともなる畢生の力作。
三人の天下人と対決して、これほど重大な選択の場におかれ、深い矛盾に引き裂かれた武将は他にいない。神か、領国か、地上の栄光か、天上の平安かー領土を争って血みどろのいくさが繰り広げられる戦国の世に、だれもが命がけで守ろうとする領国を捨て、魂の故郷を求めつづけて、故国から追放され、遠い異国の地に果てたキリシタン大名高山右近の流転の生涯を鮮烈に描いた大作。
もっさりした髪型とくたびれた白衣…「やる気のない昼行灯」とまでいわれている、男子校のさえない養護教諭、宝…。だが、それは生徒の実態を知るための世を忍ぶ仮の姿。本当はオシャレでカッコイイ隠密理事なのだ。ある日、宝は、保健室の常連でいつも可愛げのないことばかり言う優等生の芙由希が、実はネットアイドルとして密かに人気を集めていることを知り、さっそく監視を始めるのだが…。キューティラブな書き下ろし。
人生最悪の日ー大学入試に落ちたあげくバイト先もクビ、そのうえ帰り道に轢き逃げにあい、今まさに死出の旅へと…。そんな浪人生、正路の命を救ったのは、骨董屋を営む超絶美形の妖魔、司野だった。「これほど旨い血の持ち主はそうはいない。それにお前の『気』も悪くない」…などと言われ、正路は命と引き換えに司野の忠実な「下僕」となり「餌」となる誓いをさせられるのだが…。ドキドキラブ書き下ろし。
会社帰りの夜道-田宮吾郎は人生最大の恐怖に見舞われた。光るナイフに自由を奪われ、吾郎は男に犯されてしまったのだ。しかし、悪夢のような不幸はそれにとどまらなかった。明けた翌日、向かった出張先で吾郎を待ち受けていたのは、『容疑者』の汚名で…。わけもわからず同僚殺しの疑いをかけられた吾郎は、必死に身の潔白を訴えた。それを唯一信じてくれたのが、高梨と名乗る刑事だったのだが-「一目惚れなんです」彼はそんなことを言いながら、強引に吾郎の唇を奪ってきて…。
黒鷲??不良債務者を地の果てまでも追いつめる黒木を誰もがそう呼んだが、彼の眼前で婚約者が凌辱され、凋落した。二年後、レイプ犯の写真を偶然目にし、再び黒鷲となって復讐を誓う!