2003年11月発売
桜の花の咲く頃に出会うはずのない二人が接近した…。凄惨な時代に翻弄された十一歳の少年。歪みを知らない信念が守り通そうとしたものは何だったのか。極限状況の“沖縄”を研ぎ澄まされた筆致で描く、話題の長編小説。
時は戦国。洛東はるかに、西域は波斯の暗殺教団“山の長老”伝来の暗殺の法を秘かに伝える山があった。玉のごとき美貌を謳われ、山中深く刺客として養われた一人の稚児が、兄弟子とともに修羅の巷に下りる時、戦国一婆娑羅な悪党の伝説が始まる!天下二分の夢を誓った兄弟子・斎藤道三への想い、昇る日輪のごとく台頭する若き織田信長への嫉妬と憤怒…。舞い踊る傀儡、乱れ咲く毒の花、神秘の霊薬、妖しの法を自在に操り、久秀は迫りくる千軍万馬に、独り立ち向かい続ける。時代に先駆けながら、自らの誇りにのみ従い、時流に叛逆しぬいた男の華麗なる生涯-虚と実の狭間に屹立する、異形の戦国史。
リィとの一騎打ちに敗れたナジェック王子が敵軍の手に落ちたことで意気消沈するタンガの陣に、国王ゾラタス率いる援軍が到着した。迎え撃つデルフィニア国王ウォル・グリーク。両国の王を将とした大軍が国境の砦をはさみ対峙する。パラストを加えた大華三国は三つどもえの戦乱に突入してしまうのか。
日本国債のディーラーが遭った不審な交通事故。直属の部下・朝倉多希が任された翌週の入札で異常事態が発生した。未達ー国の募集総額に対し応札額が大幅に不足。「この国が破産する」未曽有の危機の背後には壮大な罠が。膨大な取材と卓越した視点が冴える迫真の経済小説。最新データによる待望の改訂版。
日本国債の未達に始まる大混乱は世界に拡大した。入札価格の不審な書き換え、事故に遭った上司が出入りしていた謎の団体。疑問を抱いた朝倉多希は、日本経済全体を揺るがす計画の存在を知る。官邸をも巻き込んだ破局のシナリオの行方は。その後、現実に起きた危機を予見し、大きな反響を呼んだ経済ドラマ。
「眠らんかな、眠らんかな」伊豆下田の禅寺で知り合った老社長の遺したことばが、いつまでも心をゆさぶる。-企業に携わる現代人の内奥に流れるやりとりを、哀惜しつつ瑞々しい筆致で描く表題作ほか3篇。最新作品集。
東京都下、武蔵村山市で占い師夫婦と信者が惨殺された。音道貴子は警視庁の星野とコンビを組み、捜査にあたる。ところが、この星野はエリート意識の強い、鼻持ちならぬ刑事で、貴子と常に衝突。とうとう二人は別々で捜査する険悪な事態に。占い師には架空名義で多額の預金をしていた疑いが浮上、貴子は銀行関係者を調べ始める。が、ある退職者の家で意識を失い、何者かに連れ去られる。
潜りの少年デリヘル、芸術劇場裏の通り魔殺人、謎の人体損壊DVD…ストリートの危険な青春を、光速の切れ味で描く。新世代ミステリー。
“かわいそうなティモニーに疲れたら、陽気な歌に移っていく。そして、夜の続きのために私たちは乾杯する。壊れたグラスも壊れてないグラスも一緒に。過ぎ去ったつらい日々と行方のしれないこれからの日々のために”ハイチを逃れたどり着いたマンハッタン。苛烈な過去と未来への不安を抱えながらも、前を向いて生きていこうとする3人の女学生のいまを生き生きと描いたエドウィージ・ダンティカの「葬送歌手」。“彼女は彼を殺すだろう。それは彼女の名がアンナだというのと同じくらいに間違いのないことだ。彼を殺して、彼女自身の人生がようやく始まる”結婚以来、暴君として君臨してきた、いまや寝たきりの夫の殺害を決意したアンナ。やがて訪れる決行の朝にアンナを待ち受けているもの、果たしてそれはーケトリ・マルスの「アンナと海…」。古くからの因習がひきおこす惨劇を静謐な筆致で綴った表題作をはじめ、カリブ海に浮かぶ小国ハイチに生まれた代表的現役作家9人による、透明なイメージに満たされた粒揃いの短篇集。
社長のロイドに、女性パイロットのマージ、そして、かなりガタのきた恒星間宇宙船+シャトルのアルフェッカ号ーそれが銀河の零細企業・ミリガン運送のすべてだった。愛機の修理費を稼ぐため、惑星ヴェイスへと向かったロイドとマージ。だが、その軌道は『大戦』の負の遺産である機雷原に覆われていた。それを突破して地表へと降下するには、優秀なナビゲーターが不可欠だったが…傑作ハードSF活劇いよいよ開幕。
中高一貫の私立校で英語を教える女性、和田留奈。単調な生活に退屈し、孤独を感じていた彼女は、16歳の教え子、池田純と関係を持っていた。そんな彼女のもとにある日、差出人不明の封書が届く。中から出てきたのは、「殺してやる」と書かれた手紙と、純といっしょにラブホテルから出てくるところを写した一枚の写真。スキャンダルになることを恐れた留奈は、上海の友人のもとに逃れるため、姉のパスポートを盗み、姉になりすまして神戸からフェリーに乗った。同じ頃、イギリスで小さな画材店を営むラルフは、理想の女性を探すため東京に来ていた。彼は東洋の女性はやさしく従順だと考えていて、タイの女性と結婚したが、破局を迎えていた。結局、東京でも理想の相手は見つからず、彼はインターネットで知り合った中国の女性に会うため、フェリーに乗った。運命の糸に導かれるように、同じフェリーに乗った留奈とラルフ。やがて二人が出逢ったとき、恐ろしい結末に向けて、歯車が静かにまわりはじめた…。英国推理作家協会賞最優秀新人賞受賞作『アースクエイク・バード』に続き、気鋭の作家が放つ極上の心理サスペンス。
ロンドンの喧噪を避け、アイルランドの田舎を旅する男は、地図上のとある場所に興味をいだく。宿の主人の警告にもかかわらず、引き寄せられるようにその場所へたどりついた男は、不吉なたたずまいの村を発見した。そのときから、男の身に奇怪なできごとがふりかかりはじめる-。『吸血鬼ドラキュラ』の作者、ブラム・ストーカーを、アイルランドの作家として再評価しようという運動に応えて誕生した、ヴァンパイア・ストーリー4篇。ケルト伝説を下敷きに、ゴシック的荘厳とサイコ的狂気を加味した、正統にして異端なる恐怖、ここに降臨。
夢を見ない理由、死体に似た街、腐敗してゆく自分、地下室で蠢く父、時の王国におわす神、娼婦工場の太った女、演歌と神秘主義の密接な関係、妄想を媒体にする言語人形-現実の皮が剥がれたときに見え隠れする幻覚妄想恐怖戦慄神秘奇蹟を、ヒステリーの治療過程に見立てて並べてみせた、凄絶作品集。『傀儡后』で宇宙的悪夢を描いて日本SF大賞を受賞した牧野修が虚空の果てに見いだした、厳格なる十三の知恵に耳を傾けたまえ。