小説むすび | 2003年11月発売

2003年11月発売

月光浴月光浴

“かわいそうなティモニーに疲れたら、陽気な歌に移っていく。そして、夜の続きのために私たちは乾杯する。壊れたグラスも壊れてないグラスも一緒に。過ぎ去ったつらい日々と行方のしれないこれからの日々のために”ハイチを逃れたどり着いたマンハッタン。苛烈な過去と未来への不安を抱えながらも、前を向いて生きていこうとする3人の女学生のいまを生き生きと描いたエドウィージ・ダンティカの「葬送歌手」。“彼女は彼を殺すだろう。それは彼女の名がアンナだというのと同じくらいに間違いのないことだ。彼を殺して、彼女自身の人生がようやく始まる”結婚以来、暴君として君臨してきた、いまや寝たきりの夫の殺害を決意したアンナ。やがて訪れる決行の朝にアンナを待ち受けているもの、果たしてそれはーケトリ・マルスの「アンナと海…」。古くからの因習がひきおこす惨劇を静謐な筆致で綴った表題作をはじめ、カリブ海に浮かぶ小国ハイチに生まれた代表的現役作家9人による、透明なイメージに満たされた粒揃いの短篇集。

睡蓮が散るとき睡蓮が散るとき

中高一貫の私立校で英語を教える女性、和田留奈。単調な生活に退屈し、孤独を感じていた彼女は、16歳の教え子、池田純と関係を持っていた。そんな彼女のもとにある日、差出人不明の封書が届く。中から出てきたのは、「殺してやる」と書かれた手紙と、純といっしょにラブホテルから出てくるところを写した一枚の写真。スキャンダルになることを恐れた留奈は、上海の友人のもとに逃れるため、姉のパスポートを盗み、姉になりすまして神戸からフェリーに乗った。同じ頃、イギリスで小さな画材店を営むラルフは、理想の女性を探すため東京に来ていた。彼は東洋の女性はやさしく従順だと考えていて、タイの女性と結婚したが、破局を迎えていた。結局、東京でも理想の相手は見つからず、彼はインターネットで知り合った中国の女性に会うため、フェリーに乗った。運命の糸に導かれるように、同じフェリーに乗った留奈とラルフ。やがて二人が出逢ったとき、恐ろしい結末に向けて、歯車が静かにまわりはじめた…。英国推理作家協会賞最優秀新人賞受賞作『アースクエイク・バード』に続き、気鋭の作家が放つ極上の心理サスペンス。

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