2003年発売
東京・杉並区の連続殺人事件は、毎回死体の傍らに悪魔の絵柄のトランプが置かれることから“ジョーカー連続殺人事件”と呼ばれた。その容疑者・田宮は犯行を自供したものの、裁判では一転して冤罪を主張。同じ頃、息子を“ジョーカー”に誘拐されたと信じる母親は、息子を取り戻そうと孤軍奮闘していた。裁判を、そして母親を嘲笑う真犯人“ジョーカー”はどこに?驚愕の結末が待つ誘拐&法廷ミステリ。
旧制第一高等学校に入学した川端康成(1899-1972)は、1918(大正7)年秋、初めて伊豆に旅をして、天城峠を越えて下田に向かう旅芸人の一行と道連れになった。ほのかな旅情と青春の哀歓を描いた青春文学の傑作「伊豆の踊子」のほか、祖父の死を記録した「十六歳の日記」など、若き川端の感受性がきらめく青春の叙情六篇。
「最も多く愛する者は、常に敗者であり、常に悩まねばならぬ」-文学、そして芸術への限りないあこがれを抱く一方で、世間と打ち解けている人びとへの羨望を断ち切ることができないトニオ。この作品はマン(1875-1955)の若き日の自画像であり、ほろ苦い味わいを湛えた“青春の書”である。
男と女。2人をつなぐものは、愛の言葉と月の満ち欠けだった。彼女のアドレスに残された81通のラブレター。これは僕が2年間にわたって書いたラブレターである。相手はどこかに実在する女性。Eメールで送り、また送らなかった手紙もある。日付も、時間も、手紙も、これは現実のものだ。
衝撃のノンフィクション! ●地下鉄サリン事件を追う問題作 ●著者による書下ろし「解題」入り 著者初のノンフィクション長篇作品。 地下鉄サリン事件の被害者からのインタビュー形式での話題作。 普通の人々が、この日、どのように行動し、事件にかかわってしまったか、事実が語る書下ろし長篇。
ロンドンの法律事務所の書類金庫の中からある日、外遊中のはずだった顧客スモールボーン氏の遺体が発見された。事務所で煙たがられる存在だった共同管財人の彼を、なぜ、いつ、誰が、ただでさえ人目に付く事務所の中で、それも開閉に多くの鍵を必要とする面倒きわまりない金庫に、どうやって詰め込んだのか?チャンドラーの法律顧問でもあった英国の弁護士作家が、さりげないユーモアを込めて描き出した人間パズル。二十世紀ミステリの黄金時代を代表する正統的本格派ミステリの本邦初訳登場。
大学受験に失敗した諸口ヒカルは、有名作家である父親に抑圧され、鬱屈した日々を送っていた。恋人の萌子とオートバイだけが救いだった。しかし、萌子が妊娠してしまい、追い打ちをかけるように、父の盗作事件が発覚する。そして、ついにヒカルの鬱屈は臨界点を超えてしまうのだった…。風に吹かれて、転がって、痛いほどに純粋な青春が鉄馬に乗って、走り出す。行く先は、再生か破滅か。
精神科医・南川藍子の前にあらわれた三人の男たちは、それぞれが脳に「傷」を持っていた。試合中、突然マスコットガールに襲いかかり、殺人未遂で起訴されたプロ野球選手。制服姿の女性ばかりを次々に惨殺していく連続殺人犯。そして、事件捜査時の負傷がもとで、大脳に障害を負った刑事。やがて、藍子のもとに黒い影が迫り始めるー。人間の脳にひそむ闇を大胆に抉り出す、傑作長編ミステリ。
魏の曹丕、蜀の劉備、呉の孫権。天下は三分された。孔明に諌められ一度は東征を断念した劉備だが、関羽の弔い合戦を果たそうと画策。ついに蜀軍は呉に向けて東進する。孫権は苦しい選択を迫られた。劉備の軍を迎え撃つ間に、北方から魏に攻め込まれたなら万事休す。双方を相手に戦う力など呉にはない。止むを得ず陸遜の言に従い、魏の曹丕に臣従を申し入れるが…。
図書館を出たブルームは、モリーのために猥本を探し、酒場でナショナリストと口論。浜辺で若い女の下着に欲情、モリーら女たちに思いを巡らす。読みやすい訳文、詳細な訳注で大作の全体像に迫る。
僕の首の後ろにも、他人よりもちょっと濃いめの産毛が生まれたときから生えていて、これが物心ついたころから僕の抱えた爆弾だったのだけれど、十三歳になってすぐのある晩、自分の鎖骨をこすっていて、そこにいつもとは違う感触を感じてうつむいて、首元に赤くて長くてコリコリと固い明らかな鬣の発芽を確かめたとき、それまでは祖父と父と同じように背中に負ぶっているつもりだった爆弾が、気づけば僕だけ胸の上にも置かれていたと知ってショックで、その上さらにその導火線にとうとう火が点けられたのを実感して、僕は絶望した。-福井県・西暁の中学生、獅見朋成雄から立ち上がる神話的世界。ついに王太郎がその真価を顕し始めた。ゼロ年代デビュー、「ゼロの波の新人」の第一走者が放つ、これぞ最強の純文学。
年上のあの人を追って、18歳のカヲルは海を渡る。期待と続望の間を行き来する、狂おしくもどかしい恋ー。そんなある日、手強すぎるライバルが、突然現れた。親子四代が弄ばれた悲恋の運命に、カヲルは天性の美声を武器に立ち向かおうとするが…。恋は遂に、叶うのか?『彗星の住人』に続く、「無限カノン」第二部。
黒塗りの愛車に5台の色違いの携帯電話を載せて、ロンドンを駆けめぐるタクシー運転手のチート。携帯電話は5人の恋人に分け隔てなく接するためのホットライン。だが、自由気ままな彼女の夜は、ひとりの奇妙な男性客との出会いで少しずつ壊れていく…。ロンドンを舞台にした異色のストリート・ノベル誕生。
私立探偵・天白五郎は、二人の女性の依頼を立て続けに受け、トラブルに巻き込まれた。毬子と名のった女は、闇金融業者を彼におしつけて、行方をくらます。優花が取り戻してくれと頼んだ携帯電話を探してみれば、そこには死体が転がっていた。腕っぷしだけはいちばんの、戦車みたいな探偵は、縺れて絡んだ謎の糸を解きほぐせるのだろうか。