2003年発売
薩英戦争、鳥羽伏見の戦い、戊辰戦争、西南戦争…激動の幕末・明治を駆け抜けた男、村田経芳。近代「もの作り」の開祖にして、村田銃の開発者。欧米にも知られた名射撃家の波乱の生涯を描く長編時代小説。
幸せに見捨てられた女。偽りの幸せにすがる女…。緩慢な日常の流れの中に身をまかせる女たちが、決意する一瞬。誰も、気づかぬうちに、女は心に変調をきたす。偽りの幸せなんて、許さない。あの人の不幸を、心から願う-。直木賞作家の円熟味あふれる9つの物語。
兵庫県城崎郡の余部鉄橋下の河原で、犬を連れて早朝散歩していた近くの住人がバラバラ死体を発見した。地上41メートルの鉄橋の上から墜落したらしい。だが、警察の調べで他殺であることがわかった。被害者は神戸の法律事務所に勤務する弁護士。休暇で愛媛に行っていたはずなのに、なぜ城崎で殺されたのか?兵庫県警の石田警部が捜査に乗り出す。石田が犯人を追いつめたとき、意外な結末が-。
定年退職した警視庁の名物刑事川島が、八か月後函館本線の経路際で死体となって発見された。首に絞められた痕があり函館警察署は殺人事件として捜査を開始した。十津川の調べで川島は自分が在職中に手掛けた殺人事件の再調査をしていた事が判明した。川島が逮捕した殺人犯は獄死していたが、生前川島に冤罪を訴えた手紙を出していた。その事件の真犯人が川島を殺したに間違いない。十津川は重要容疑者を捜し出したが、彼には強固なアリバイが-。
昭和二十年初夏。愛知県各務原、海軍航空技術廠。(なぜ、今ごろレシプロ戦闘機などを開発したのか。あと数年もすれば、ジェット推進の戦闘機の時代になるというのに)次期戦闘機の飛行試験。坂井三郎は嘆息しながら、二機を見やった。一機は中島飛行機と陸軍共同開発の試製重戦、キ-84。もう一機は海軍と三菱重工の対抗馬、A7M2。(戦訓は一撃離脱が正しい戦法だと教えている-)上空は薄くたなびく雲を除けば、明るい青一色。坂井は“本日の相棒”に向かい歩き出すと、ふと空を見上げた。零戦の勇士、富岳、有人噴進機、震電計画…そして、新たなる大戦。
村椿五郎太、25歳。先祖の不始末といまいち野心に欠ける遺伝子が災いして、うだつのあがらぬ小普請の身。目下の目標は、学問吟味に合格して御番入りを果たすこと、なのだが、文茶屋での代書屋の内職も忙しい。そんなのんびり男を焦らせたのは、幼なじみの紀乃。学ならずんば、恋もままならずー。どうする、五郎太!代書屋に持ち込まれる騒動、そして一進一退の恋と学業の行方や如何に。
引き篭もりの少女・江利子と、“絶対”と名付けられた犬のコンビが繰り広げるぬるい日常を姉の視線から描く表題作『江利子と絶対』。頭髪に問題を抱えた中年男・多田と、その隣人の帰宅を生垣に潜んで待つ女・アキ子。ふたりの悲惨な愛の姿を過剰なまでのスケールで描き出した『生垣の女』。問題児でいじめっ子の波多野君と、その手下の僕と吉見君。3人の小学生が迷い込んだ、窓のない屋敷は…。手に汗握る殺人鬼との攻防を描く、ホラー傑作『暗狩』の3編を収録。
鳥のように空を飛びたい!本邦初のハンググライダーを作った男・頓所好勝。彼と、その夢を共有した男たちの熱い闘い。感動のノンフィクション・ノベル。戦前、たった一人で見事なハンググライダーを作った男とは、どういう人物なのか?航空の歴史ともいうべき1900年代、表舞台に立つことはなかったが、空を飛ぶ夢の実現に賭けた男の人生を描く。
葉沢里美16歳。女子高生。もとい女子高専生。成績不良。やる気なし。彼氏なし。『プログラミング基礎』の授業に疲れきって今日も二限目は保健室。そこにロボット工学の担当教官・図師からの呼び出しが-放課後図師の部屋に行くと、お前には愛がないとなじられる。図師はいう「このロボットには、愛がない」。そして課題のロボットを作り直す代わりに迫られたのは、あの「高専ロボコン」への出場だった。振られた役目はドライバー(操縦士)。試合は明後日。チームメイトの男子3人は全員変なヤツ。無理だよ、無理!絶対無理!友情、根性、努力のまるで似合わない4人の熱い青春が、いま始まった。ぼくたちに足りない部品はなんだろう?チームワーク最低の落ちこぼれ4人組が、「ロボコン」=ロボットコンテストに挑む理数系の青春。同名映画ノベライズ。
『世界の中心で、愛をさけぶ』につながる〔3つの愛の物語〕。 「もしわたしが口を噤んでしまえば、わたしたちのあいだには何もなかったことになる。でもそれは確かに起こった。あの年の夏、わたしたちのあいだに起こったことを、きみにも知っておいてもらいたいんだ。」 余命いくばくもないママの病室に突如あらわれた見慣れない中年男性。彼は、ためらいながらも、やがてママとのことを話しはじめた。30年かけて、その夏はようやく終わりを迎えようとしていたー。 〈実現しなかった思いほど、美しいものはない〉。 『世界の中心で、愛をさけぶ』で奏でられたそんな切ないまでの思いが、作者の内的音楽が、耳を澄ませばここでも聴こえてくる。
嶽本野ばらが夭折の天才画家と紡ぐ恋愛小説。 デビュー以降、“乙女”を描き続けてきた嶽本野ばらの最新作は、「月刊IKKI」という青年マンガ誌に連載されたため、男性にも親しみやすい内容となっている。優柔不断な僕と、記憶をなくした彼女が織りなす恋愛風景。それを、夭折した天才画家・田仲容子の遺作を一章ごとのモチーフとして、親交の深かった著者が綴った恋愛小説全6章。巻頭では目次として、モチーフとなった作品をギャラリー風に紹介し、カラーで楽しめる。さらに、田仲氏をめぐる人々の不思議な真実を書き下ろした26ページに及ぶ「あとがき」も収録。「本編」と「あとがき」、この両者を併せて、初めてこの作品は完結する。
平成の耽美派人気作家が描く、戦慄の美肌ホラー小説! げに恐ろしきは鱗の病ー美貌の娘・楼子(たかこ)を初潮とともに襲った「鱗病」。その忌まわしき病を伝える龍鳥(たつお)家の秘密とは? 自慢の肌を冒す病の恐怖に脅える楼子は、やがて凄惨な治療法を発見するが…。澁澤龍彦に顕現した「魔道継承にこころざす異端の魂が絶えることはないのだ、と実証するかのよう」(本書解説より)と評された、平成の耽美派・嶽本野ばらの異色の美肌ホラー、待望の文庫版。
友を助けるため、主君へ諌言をした近習の村上助之丞。蟄居を命ぜられ、ただ時の過ぎる日々を生きていたが、ある日、友の妹で妻にとも思っていた弥生が、頼れる者もない不幸な境遇にあると耳にしー「五年の梅」。表題作の他、病の夫を抱えた小間物屋の内儀、結婚を二度もしくじった末に小禄の下士に嫁いだ女など、人生に追われる市井の人々の転機を鮮やかに描く。生きる力が湧く全五篇。
尾張の国荒子城主前田利昌の四男利家は、15歳で織田信長に仕えた。武勇に優れ「槍の又左」と畏れられ、また派手好みで、美しいものが好きだった。天下を望まずナンバー2を貫き、その律儀さ誠実さで加賀百万石の礎を築き上げたが、信長・秀吉から最も頼りにされたこの利家が最も頼りにしたのは、10歳年下の従妹妻まつだった。日本一の女房の生き方から学ぶ、賢い亭主操縦術。
夫の様子がなんだかおかしい。不審に思い始める妻に、従者の若者が、主の変化を問いかける。奇妙な振るまいの裏には何があるのか。この家にはなにか秘密があるらしい…。絶えず誰かに監視されているような婚家での生活に耐えつつ夫の謎を探るうちに、若い妻は思いもかけず本物の恋を知るーサスペンスフルな展開と、凛とした女の恋心に心揺さぶられる、新感覚の時代ミステリー。
薬品会社のOL栗子は、30歳を目前にして落ち込んでいた。職場はお局扱い、結婚見合いも断られ、家族も勝手気まま。とうとう家を出る。落ち着いた先は、幼なじみでレズビアン(オナベ)の菜摘の部屋。そんな栗子はある日、菜摘が経営するバーの常連客、古窪伸を紹介され、彼に一目惚れ。二人はやがて深い仲に。プロポーズを待ち望む栗子だが、どうも伸の態度が煮え切らない…。