2003年発売
ニューハンプシャーからカリフォルニアへ-失った恋人の面影を追いながらアメリカ横断の旅に出たバイクレーサーの物語。ヴィンセント・ギャロの映像を清野栄一が言葉にした究極のロード・ノヴェル。
アメリカから連れ帰ったアラブ馬の世話をする富樫裕三郎には悲願があった。郷里・三春に残してきたりんとの恋、そして本邦初の競馬場の建設であった。しかし、幕末という時代は、そんな彼をも動乱のなかに巻き込んでいく…。横浜からパリのロンシャン競馬場、そしてドイツのバーデン・バーデンまで、現地取材と綿密な歴史考証を駆使して書き上げた巨編・幕末秘話。
午前五時五十七分、小田原発東京行普通電車。いつもの通勤電車に乗り合わせる四人の男女。殺したい男がいた。憎悪を抱いた女がいた。恐喝を決意した女がいた。女を狙う男がいた。毎朝、同じ時刻、同じ車両に乗り合わせる気づかない他人…「殺したい!」通勤電車の中で、そう思ったことはありますか?人間のエゴと欲望が剥き出しの空間で、見知らぬ四人が決意した行動とは-。
「君は、自分で思っている以上に、人がいいんだ」十津川警部は、かつての部下で今は私立探偵である橋本豊の身を案じて、そう伝えた。彼は越後湯沢で川端康成の名作『雪国』のヒロインに名ぞらえて選ばれた“ミス駒子”こと芸者菊乃の身元調査を請け負い、事件に巻き込まれていった。十年ぶりに故郷・湯沢に舞い戻った菊乃の実父が殺された…。揺れ動く菊乃の心中を察し思いを募らせていく橋本は「あなたは優柔不断よ。私と一緒に死ぬこともできないくせに」となじられながらも、愛憎が渦巻く事件の糸にからめとられていく…。
豪農の家に生まれながら里子に出された矢野重也は、旧制一高、帝大へと進学する。フランス文学に耽溺し、一方でマルクス主義に傾倒、革命を信じ運動に身を投じるー。貧困と差別を目の当たりにした幼少期、養母や親友との死別、関東大震災、そして理想と現実との狭間で揺れ動く青年期。一代にして大コンツェルンを築き上げた男の、壮大なロマンを描く。中国へと渡った重也を待つ運命とは。
自らの理想に忠実であるために共産党を離れた重也は、地下に潜り文学に没頭していた。ある偶然から手を染めた実業の世界。巨大化する企業の中で、重也は新たな道を選ぶー。裏切りと策略に翻弄されながらも、押し寄せる運命を背負おうとした後半生。史上空前のマスメディア帝国に君臨した男の、円熟期までを描く大河小説。堂々たる人生を歩む重也の、締めくくりの大仕事とは…。
愛を知らずに育ち、生きることに倦んでいる君に、僕の想いは伝わるだろうか。もう君は一人じゃない。僕が必ず君を受け止めるからー。養護施設で成長し、自殺未遂を繰り返す十八歳の李理香の許に届いた一通の手紙。自らも同じ境遇だと明かす手紙の主・基次郎の素直な文面に、李理香も心を開くようになるが、意外な運命が二人を待ち受ける。往復書簡が織り成す、至純な愛の物語。
プラハの時代は去り、いまや魔術の中心はロンドン。魔術師たちは、政府の重要なポストを占め、帝国を牛耳っている。魔術師は貧しい家の子どもを弟子にして、悪魔を思いのままにあやつる技を、歳月をかけて叩きこむ。弟子は、親も生まれたときの名も捨て、帝国に貢献する日のために、ひたすら修行にはげむのだった。いま、ひとりの少年が師匠にかくれて寝室の床に五線星を描き、バーティミアスという悪魔を召喚した。彼は御年5010歳。まあ最高ランクではないが、由緒正しいベテランの妖霊である。妖霊界からロンドンの街へバーティミアスを召し出したむこうみずな少年の名はナサニエル。自分をはずかしめたエリート魔術師に復讐を誓っている。なにもかもが新鮮!文句なしにハマる物語が600ページにギッシリ。
貸した金は何がなんでも返させる。世の中金がすべて!-と豪語するヤミ金一の色男、村上銀行こと瑞穂。…だが、そんな瑞穂も愛しい恋人、商社マンの泰正にはとことん甘い。正月休みもない忙中の合間を縫って、もちろん事務所で姫初め。ところがそんなある日、泰正は瑞穂から突然「お前に飽きた」と言われ、得体の知れない男、茂木に売られてしまい…。爆走!ドケチ愛シリーズ第2弾。
五世紀半ば、倭国は大王允恭(倭王・済)の死後、王家の息子達、その従兄市辺押羽王らの政権抗争の中にあった。一方、朝鮮半島では高句麗国が半島制覇を窺っていた。百済王の弟昆支王は倭国との同盟を模索すべく渡来。勇武に優れた允恭の五子ワカタケル(後の倭王・武)は昆支王に先進文化と情報戦略を学び、次々と反対勢力を制圧する。
百済王の弟昆支王の陰の協力を得て、ワカタケル王子(後の倭王・武)は腹心ムサノ青らの活躍によって、政敵市辺押羽王と御馬王子を斃し、眉輪王を使って兄の安康大王(倭王・興)を、更に立ちはだかる豪族葛城を滅ぼす。五世紀半ばの倭国に中央集権国家を築いた英雄ワカタケル大王の生涯を描く古代史ロマン小説。
神名平四郎。知行千石の旗本の子弟、しかし実質は、祝福されざる冷や飯食い、妾腹の子である。思い屈し、実家を出奔、裏店に棲みついたまではよいのだが、ただちに日々のたつきに窮してしまう。思案の揚句、やがて平四郎は奇妙な看板を掲げる。…喧嘩五十文、口論二十文、とりもどし物百文、よろずもめごと仲裁つかまつり候。
世に揉め事の種はつきぬとはいえ、依頼主のもち込む話は多彩を極める。中年夫婦の離縁話、勘当息子の連れ戻し、駆け落ち娘の探索等々。武家と違い、万事気侭な裏店にも、悲哀にみちた人生絵図がある。円熟期にあるこの作家の代表的連作シリーズ、愈々佳境。人の姿、世の姿の哀切な陰影を端正に写し出す話題作。
新選組の伍長として幕末の動乱を戦い抜いた寡黙な巨漢・島田魁は、討幕派との全ての戦いに奔走する。ときに内部の軋轢に巻き込まれながらも、新選組を心から慈しみ、忠義を尽くし続けた男の苦悩と剣術にかける情熱、戦友・永倉新八との友情など波瀾万丈の生涯を史実に沿いながらありありと再現した長編剣豪小説。