2004年11月発売
イラクでまたも日本人人質事件が発生、四人の人質にPTSDの疑いが濃厚との情報を察知した日本政府は、交渉役の外務省職員に臨床心理士を同行させる。岬美由紀、二十八歳。彼女がこの重大な任務に選出された理由はカウンセラーとしての実績ではなく、その過去にあった…。女性自衛官初の戦闘機パイロット、岬美由紀が臨床心理士に転向した真の理由とは。そして、人類の歴史の長きに渡って戦争の狂気が持続する、その心理の根源はどこにあるのか。究極の平和を目指し、孤立状態に陥りながらも奮闘する美由紀の波乱万丈の冒険と、驚愕の集団心理分析の類稀なる能力を描く、冒険ミステリー最新傑作。
最初は夢だと思った。いつも隣りにいた大好きなあなたと結婚し、ふたりの間には佑司というかわいい男の子が生まれた。二十九歳のわたしは、あなたと佑司とともに幸せな時を過ごしていた。穏やかで優しい日々を送っていた澪が、やがて知ってしまう哀しい運命ー。それでも、絶対に変わらない思いがあり、絶対に失いたくない人がいる。ずっと一緒にいられないと分かっていても、澪はためらわず愛する人のもとへ走っていった。市川拓司のベストセラー『いま、会いにゆきます』の映画化脚本をもとに、みずみずしい感性で新人が書き下ろした、もう一つの愛の物語。
日本の銀行マンと結婚したフィリピン女性が、転勤で九州から新潟へ移った途端に経験した、雪国という未知の空間。ふさいだ気分が周囲への憎悪に変わる様子を描いた表題作「悪魔の羽根」。早春、恋愛中の女性が突然、姿を消した謎に季節特有の悩みを絡めた「はなの便り」など、四季の風景を織りまぜながら、男女の心模様、友人同士の心のズレを浮き彫りにする。ちょっぴり恐い7つの物語。
土地の不正取引で、環境保全団体の活動家が惨殺された。容疑者として逮捕されたのは、ワイオミングの捜査官アントンの兄。真実を求めるアントンは活動家の恋人を追ってアリゾナの湖へと向かう。しかし、彼女を探しているのはアントンだけではなかった。断たれかけた家族の絆を守るべく、司法を敵にまわしたアントンの戦いが始まる。ハイテンポのリーガル・アクション・スリラー。
深夜放送の人気パーソナリティ、パリス・ギブソンは仕事関係者にも素顔を見せない。番組ではラブ・ソングの電話リクエストやリスナーからの相談事に応じ、心のこもったアドバイスで信頼を得ているにもかかわらず、その私生活は謎にみちている。ある夜、ヴァレンチノと名乗る男から電話が入った。「監禁している女の子を3日以内に殺す」-十代の“乱脈な性”を取り上げた問題作。
不審な電話について警察に通報したパリスは、今は亡き婚約者の親友、心理捜査官のディーンに遭遇する。秘められた過去の恋に心乱されながらも、少女の行方を追うふたり。浮上してきたのは、高校生を中心とするセックス・クラブの恐るべき実態だった。そしてまたもや電話をかけてきたヴァレンチノはパリスに告げる。「次に殺すのはきみだ」。深夜のスタジオに黒い影が忍び寄る…。
誰からも見捨てられた旧主に仕える忠義な元家臣とその恩義に報いようとする旧主の思い、弟を見捨てた幼い日の後悔を「ごめんよ」の一言に万感の想いを込めて世を去った兄、藩主の寵姫とその息子に無私の忠誠と憧憬を捧げ愚直な生き方を貫いた男、老いたる戦国武将が彼を慕う少年武士へ注ぐ情に満ちた心意気、11歳の幼い少女の健気な決意と江戸の人情を描いた物語、など、世情に左右されない爽やかな生き方、愛のあり方を教えてくれる人間賛歌。涙を呼ぶ名作9編。
将軍家斉の逆鱗に触れ、掛川十七万石の藩主たる本郷大和守は、信州の小藩へ転封となった。怨み骨髄に達し、将軍弑逆を目論んだ大和守は、凄まじい威力をもった大砲を作り上げた。大目付の乾官兵衛は、参勤交代を利用し江戸府中に大砲を運び込む大和守の陰謀を察知したが、ひとりではいかんともしがたい。官兵衛の脳裏をよぎった男の横顔。三木兵庫の剛剣が、私利私欲にまみれた亡者どもを冥府に堕とす。
笙一郎と梁平の三人だけで母の葬儀を終えた優希は、悲しみを振り払うように再び病院に戻っていた。失踪を続けていた聡志は笙一郎の前に現れ、事件の真相と姉への思いを語り始めるが、捜査の手が伸びたことで再度逃走を図り、交通事故に遭い病院に搬送される。意識を取り戻した聡志に、優希は長年抱えてきた秘密を告白する決意を固めたが…。
母に続き弟まで喪ってしまった優希、母と優希への愛情にもがき苦しみ続けた笙一郎、そして恋人を殺害されてしまった梁平。三つの無垢なる魂に最後の審判の時が訪れるー。十七年前の「聖なる事件」、その霧に包まれた霊峰に潜んでいた真実とは?“救いなき現在”の生の復活を描き、日本中に感動の渦を巻き起こした永遠の名作、衝撃の最終章。
清張ファンを自認する宮部みゆきが巨匠の傑作短篇を選びに選び、全てに解説を付けた。上巻はミステリ・デビュー作「恐喝者」の他、宮部いち押しの名作「一年半待て」「地方紙を買う女」「理外の理」や、「或る『小倉日記』伝」「削除の復元」の鴎外もの、斬新なアイデアで書かれた「捜査圏外の条件」、画壇の裏面を描く「真贋の森」等を収録。
宮部みゆきの清張短篇コレクション中巻。「遠くからの声」「巻頭句の女」「書道教授」「式場の微笑」など、悪女を描けば筆が冴えわたった清張が短篇小説で見せた“淋しい女たち”の数々。そして、夢破れ、己の居場所を失った“不機嫌な男たち”を登場させた名作群「共犯者」「カルネアデスの舟板」「空白の意匠」「山」を収録した。
清張の傑作短篇を宮部みゆきが選ぶシリーズ最終巻。昭和史の謎に精力的に取り組んだ清張が、権力に翻弄される人間を描いた「帝銀事件の謎」「鴉」や、絶妙なタイトルとストーリーの傑作「支払い過ぎた縁談」「生けるパスカル」「骨壷の風景」。さらに横山秀夫ら松本清張賞受賞作家が推薦する名作「西郷札」「火の記憶」「菊枕」も収録。
フランスの古いシャトウで、毎夜くりひろげられる美貌の妻の「調教」。そして、異国の男たちによって弄ばれる妻の裸身をのぞき見る夫の若い医師ー。はたしてこの背徳の行為は二人の運命に何をもたらすのか?恋愛小説の第一人者が、現代の男女の「愛と性」というテーマに正面から挑んだ衝撃の問題作。
小川のほとりで酸漿を鳴らす娘は別れた母を探していた…表題作ほか、御三家の水戸様の屋敷に賊が入ったという噂がたち、大名家の事件に町方は手が出せないが、源三郎と東吾が密かに探索を始める「能役者、清大夫」など全六篇を収録。るいと東吾の色模様もしっとりと、江戸情緒豊かな異色の人気捕物帳シリーズ新装版第七弾。
埼玉県久喜市で新年早々、元校長の老夫婦とその長男夫妻の四人が惨殺された。十日後、再び同市内で老夫婦の変死体が発見される。そして一方、池袋で万引きと傷害で逮捕された男が、自分の名前を一切明かさぬままに裁判が進められる、という奇妙な事件が語られていく。この男は何者か?巧緻を極める折原ミステリーの最高峰。
ある日、連邦検事の訪問をうけた弁護士ロビー・フェヴァーは、脱税と判事への贈賄を指摘され、罪の軽減を条件に取引を持ちかけられる。家族を抱えるロビーに選択の余地はない。かくして法曹界の大規模贈収賄事件を摘発するべく、連邦検察局とFBIの囮作戦が始まった!「推定無罪」を凌ぐと絶賛されたリーガル・スリラーの傑作。