2005年5月発売
トレニア湾にスケニアの大艦隊来襲。国境沿いにタンガ軍二万集結。ビルグナ砦陥落!王妃の矢傷も癒えぬうちに、デルフィニア包囲網は厚く強固に完成されつつあった。獅子王ウォルは防戦を余儀なくされる。この危機に、独騎長イヴンは形勢逆転の切り札を担ぎ出すべく単身大海に乗り出した。
私の夢ー。娘の幸せ。何よりも。私の命よりも。自分には殊更なことは望んではいない。定年退職後に釣りでもおぼえ、可愛い孫たちに囲まれながら安穏な余生を過ごせれば、それでいい。あとは、妻とのんびりイタリア旅行にでも行ければ。妻に、ローマを見せてやりたいのだ。私は妻と娘を愛している。可もなく不可もない人生の道程で、妻と娘の存在だけが私の誇りであり、守るべき宝なのだ。人事の家族調査欄に妻と娘のことを記す時の至福。その至福を乱し、汚す者は許さない。そう、私は家族を守るためなら生命の危険も厭わない四十七歳のサラリーマン、のはずだった。そう信じていた。あの日が訪れるまではー。いまから私が話そうと思っているのは、私のひと夏の冒険譚だ。
あまたの橋が架かる町。眠るように流れる泥の川。太古から岸辺に住みつく「うなぎ女」たちを母として、ポーは生まれた。やがて、稀代の盗人「メリーゴーランド」と知りあい、夜な夜な悪事を働くようになる。だがある夏、500年ぶりの土砂降りが町を襲い-。いしいしんじが到達した、深くはるかな物語世界。2年ぶり、待望の書下ろし長篇。善と悪、知と痴、清と濁のあわいを描く、最高傑作。
過去の呪縛から逃れるため転校した神戸の小学校では、奇妙な遊びが流行っていた。「牛男」と呼ばれる猟奇連続殺人鬼の、次の犯行を予想しようというのだ。単なるお遊びだったはずのゲームは見る間にエスカレートし、子供たちも否応なく当事者となっていくー(表題作)。新世代文学の先鋒が描き出す、容赦ない現実とその未来。ボーナストラックとして書き下ろし二編を収録。
戦後初。探偵小説にも英国文学にも巨大な影響を及ぼし、全世界で百年以上も読まれつづける巨匠、ウッドハウス。その全貌を明らかにする戦後初の選集、第1巻は天才執事ジーヴズの機略縦横の活躍、よりぬき傑作選。
学校に防弾チョッキ着てくなんてかっこ悪すぎ。でも、心臓を守ってるチタンのプレートをはずすとすごく不安になる。きついアイロニーとおおらかなユーモアに彩られた9つの物語。
久しぶりに開かれる大学の同窓会。成城の高級ペンションに七人の旧友が集まった。(あそこなら完璧な密室をつくることができるー)当日、伏見亮輔は客室で事故を装って後輩の新山を殺害、外部からは入室できないよう現場を閉ざした。何かの事故か?部屋の外で安否を気遣う友人たち。自殺説さえ浮上し、犯行は計画通り成功したかにみえた。しかし、参加者のひとり碓氷優佳だけは疑問を抱く。緻密な偽装工作の齟齬をひとつひとつ解いていく優佳。開かない扉を前に、ふたりの息詰まる頭脳戦が始まった…。
旧約聖書「民数記」に癒しの力を持つと記されている「青銅の蛇」-。預言者モーゼが作ったとされる「青銅の蛇」はその後、失われたと信じられていたが、聖書考古学者マーフィーは謎の老人の導きで、その在処を記したパピルスを手に入れた。宗教的狂信者によるテロがささやかれる不穏なアメリカを離れ、中東へ飛んだマーフィーの周囲では驚くべき事件が続発する。「インディ・ジョーンズ」を超える壮大なスケールで、全米を興奮させた超大型冒険伝奇アクションシリーズここに開幕。
さらに怪異はつづくー!三千年前、偶像崇拝禁止により、三つに破壊された聖遺物「青銅の蛇」は、バビロニアに移されたのち、さらに中東の某所に隠されたという。アラビア半島に飛び、まず頭部を手に入れたマーフィーを苦難が襲う。腹、そして尾はどこに?謎の勢力の妨害をはねのけ、三つを合体して解読されたメッセージ。それは古代バビロニアのネブカドネザル王の神官ダクリが残した驚くべき予言だった!聖書の謎に挑み、古代と現代を結ぶ壮大な冒険は、読者を最後の最後まで放さない。
燃えるような赤い髪と意志の強さを持ったマギーは、アイルランドのクレア県に工房を構えるガラス工芸家。ひたすら情熱の赴くままに制作を続ける彼女の家を、ある日ダブリンに本拠を置く国際的な画廊のオーナーであるローガンが訪ねてくる。彼はマギーの作品の独占販売権を申し出た。強引なやり方に最初彼女は反発するが、ローガンの提示した条件に心動かされ、これまで無縁だった華やかな世界に足を踏み入れてゆく…。個性の異なる姉妹の波瀾に満ちた生き方と愛憎を描いた三部作の幕開き。
高僧クトゥーチクとの戦いのすえ、ガリオンとベルガラス一行はついに“珠”を邪神のしもべの手から奪還することに成功した。“珠”を本来あるべき“リヴァの広間”に安置すれば、旅は終わり、かつてのような農園での暮らしに戻れるのではと期待したガリオン。だが“珠”がかれを歓迎する喜びの歌は鳴りやまず、「運命」の一語だけを話す不思議な少年を介して、“予言”はガリオンをさらに壮大な宿命へといざなうのだった…。
20世紀アメリカの最も偉大な語り部が、冷徹な筆致と壮大なスケールで描く父と子、家族、そして人間の自由の物語。時は19世紀末。厳しくも雄大な自然に囲まれた開拓地カリフォルニア州サリーナスは、限りない希望を胸に抱く人々で溢れていた。その一人、厳格な父の命で心ならずも参加した戦争に疲弊した男アダム・トラスク。美女キャシーとの結婚にみずからの幸せを見出したアダムは、妻と生まれてくる子供のために永遠の楽園を建設しようと決意し、農夫にして鍛冶屋、天才発明家でもあるサミュエル・ハミルトンに手助けを求めた。だが、キャシーを一目見たサミュエルは、彼女の冷たい眼差しと奇怪な振る舞いに気づき、その得体のしれない邪悪の影に身震いするのだった-アメリカ文学史上に燦然と輝くノーベル賞作家畢生の大作が新訳で登場。
父と子の葛藤はなぜ繰り返されるのか?人間の自由な心とは何か?瑞々しい新訳で甦るスタインベック文学の集大成。妻キャシーが家を去り、失意の深い底に沈んだアダム。賢明な中国人の召使リーによってトラスク家の生活は守られていたが、アダムの心は楽園への夢から遠く離れ、生まれてきた双子さえ目に入らないまま長い年月が過ぎた。だがやがて、自らの死期を悟ったサミュエルは、凍てついた友人の心を絶望から救うためキャシーの邪悪な真実を明かしてしまう…。一方、双子は父親の愛なく思春期を迎えた。愛らしく純真なアロンとひねくれ者のキャル。町育ちの美しい少女アブラと仲睦まじくなっていくアロンを横目に、孤独なキャルは自分でも分からない何かを探し求め、深夜の街を徘徊しはじめる-ジェームズ・ディーンを一躍スターダムに押し上げた名作青春映画の原作。
「テロリンを殺せ!」ラジオからは戦意高揚のメッセージが四六時中流れ出す。テロリンっぽい子どもをいじめるテロリンごっこが流行する。テロリンっぽい行動をした奴は民衆のリンチでぶち殺される。いつ終わるともわからぬテロリストの襲撃に、民衆は疲弊し、次第に狂気の度合いを高めていった。肉体労働者の椹木武は病気の妻子を養うため、愛人を買春宿で働かせて稼ぎを搾取していた。小柳寛子は椹木のために、狂った客たちに弄ばれ続けていた。やぶ医者の斎藤良介は、今日も手術に失敗して一人を殺した。麻薬密売人の土門仁は浮浪者たちを薬漬けにしていた。素人画家の井筒俊夫は、売春宿で抱いた小柳のあとを尾け回していた。そして遂に最大級のテロが発生した。国家はテロリン殲滅の大号令を出し、地上最強の武器「神充」を確保せんと、大陸にある「地区」へ志願兵を送り込んだ。椹木、小柳、斎藤、土門、井筒、五人はそれぞれの思惑から「地区」へと向かう。しかし「地区」で待ち受けていたのは…超極限状況下における人間の生と死を、美しくかつグロテスクに綴る、芥川賞受賞作家渾身の破壊文学。