2006年4月発売
友近克也は父・善次郎が築いた馬牧場を出た。兄嫁となる女性に想いを残して…。行くあても帰る場所もない、ただ生きるための流浪の旅だった。町々にはびこる悪徒に、容赦なくとどめを刺す克也。暴力と策謀が渦巻く荒野の果てに、安住の地はあるのか?北海道開拓期。過酷な運命に立ち向かう家族、そして男女を描く連作短編集。
首相公選制がしかれた近未来の日本。投票を明日に控え、かつてサッカーのスタープレイヤーだった政治家・長田が圧倒的な支持率で最高権力者になろうとしている。人々はこの清新で危険なにおいのするカリスマに夢中だ。だが、果たしてこの選択は正しいのだろうか?わたしたちはどこへ向かっているのか?忍び寄るファシズムの空気を濃厚に描く、第25回野間文芸新人賞受賞の傑作小説集。
秦の不敗の将軍、章邯に包囲された絶体絶命の魏王を救うべく、田〓(たん)率いる斉軍は、臨済へと向かった。秦軍は二十万、迎え撃つ魏斉連合軍は十万。田〓(たん)は、章邯の自在な用兵、精緻な機略の前に苦戦を強いられる。田横は義を以て楚に援兵を乞い、楚の勇将項梁は、項羽・劉邦・黥布らを率いて、章邯の大軍と激突する。楚漢戦争前夜、帝国秦の終焉を圧倒的迫力で描く、驚天動地の第三巻。
無辜の民をも殱滅する残虐無比の項羽と、陰謀と変節の梟雄劉邦。中国の人口を半減させたといわれる楚漢戦争が勃発した。緒戦こそ劉邦は項羽に敗れたものの、劉邦の壮大な包囲網に項羽は追いつめられていく。人民にその高潔英邁を尊崇された不撓の人、田横の正義さえも、漢軍の奔流に呑まれていく。著者をして「理想像」と言わしめた不屈の英雄を描く傑作、明鏡止水の第四巻、完結編。
渓流釣りに来た片倉は一瞬の目眩ののち、一緒に来たはずの上嶋を見失い、手首の生えた岩を発見する。その手首には上嶋と同じ傷が。そこへ持ち物までそっくりの「もう一人の自分」が現れた!混乱し、現場から逃走する片倉。携帯電話も機能しない。おれはこの世界に適合していないのか!?片倉に生じたゆがみが次々と広がっていく…。気鋭が描く幻惑の意欲作。
私は彼女の事を何も知らなかったのか…?大学へ通うために上京してきた春海は、京都からきた麗子と出逢う。お互いを干渉しない約束で始めた共同生活は快適だったが、麗子はやがて失踪、跡を追ううち、彼女の二重、三重生活を知る。彼女は名前、化粧、嗜好までも替えていた。茫然とする春海の前に既に死体となったルームメイトが…。
知る人ぞ知る裏(マイナー)な名刹・大悲閣千光寺に、今日も珍妙な事件が持ち込まれる。元裏世界の住人にして寺男の有馬次郎とマイナー新聞の自称「エース記者」折原けい、自称「裏京都案内人」のスチャラカ作家・ムンちゃんが、難事件の謎を追う!?誰も知らないミステリアス京都と、古都ならではの謎解きの妙味、たっぷりとご堪能ください。
「あいつが浮かれ蝶々なんぞにひっかかるものか」麻生家に通う途中で感じた熱い視線。新内流しの娘、お蝶の思惑を量りかねる麻太郎だったが…。大人の入り口に差しかかった麻太郎、花世、源太郎たちが大活躍。
浅見が五島列島で知り合った親切な初老の元刑事。娘夫婦との同居を前に、彼は静岡の海岸で死体となって発見された。清貧の元刑事のささやかな人生を、突然断ち切ったのは誰か。怒れる浅見に突きつけられる、過去最大の難問。百番目の事件に、大団円はあるのか。
なんにもない田舎で暮らす小学生センリ。でも気になることは山ほどある。クラスメイトとの微妙な距離感、となり町での発見、垣間みるオトナの事情…。“明るい子ども”でいるため、言葉にできなかった7つの思い。人生で一番長い6年。小学生センリが初めて知る、不安、痛み、憧れ、恋。『檸檬のころ』で注目を集めた24歳の新鋭が、新しい発見に満ちた日々とほろ苦い成長の過程を、細やかに掬い上げる。
アンティーク店フラココ屋の二階で居候暮らしをはじめた「僕」。どうにも捉えどころのない彼と、のんきでしたたかな店長、大家の八木さん、その二人の孫娘、朝子ちゃんと夕子ちゃん、初代居候の瑞枝さん、相撲好きのフランソワーズら、フラココ屋周辺の面々。その繋がりは、淡彩をかさねるようにして、しだいに深まってゆく。だがやがて、めいめいがめいめい勝手に旅立つときがやってきてー。誰もが必要とする人生の一休みの時間。7つの連作短篇。
70年代半ばの就職氷河期に中堅商社に入った「僕」の社内抗争、リストラ、独立、合併と続く社会人としての転変と、一人娘の不登校、不良化を防ごうとする父親、家庭人としての奮闘をユーモアのある読みやすい文章で描く、切実な現代の物語。30年前に死んだ大好きだった叔父さんに語りかける、暖かくて新鮮な大人の小説。
14世紀後半の英国。宗教改革の先駆者ウィクリフの手で初めて庶民の言葉、英語に翻訳された聖書。迫害を耐え忍びつつ新しい聖書に美しい挿絵を描く流浪の絵師フィンは、美貌の女領主キャスリンの元に身を寄せ、彼女と恋に落ちたがゆえに、神父殺害の嫌疑をかけられる。英国小説伝統の語りの面白さをゆたかに継承し、スリリングな場面の連続で、読み出したらやめられない歴史ロマン。
ダーティペア・イン・ソード・アンド・ソーサリー!?バーバリアン・エイジは、超人気テーマパーク。最新テクノロジーで、大陸まるごとひとつをヒロイックファンタジーの世界に仕立てあげてしまっているのだ。ところがここに犯罪組織が介入しているとの情報があり、WWWAのトラコン、ユリとケイが潜入捜査に乗り出したのだが…道は険しかった。ロバート・E・ハワードに捧げる、シリーズ初のヒロイックファンタジー。