2006年4月発売
激突間近の米中両国から、軍事基地として狙われている南太平洋の小国USA。その外交顧問に雇われた天才詐欺師沖田次郎吉は、超大国相手に巨大な騙しを仕掛けていた。時同じくして、沖田の盟友・足立梵天丸は、アラブの富豪率いる国際詐欺師団への仕掛けの真っ最中。二つの作戦は一つとなり、空前絶後のコン・ゲームに発展していく。前作を上回るスケールで放つ、究極のエンターテインメント。
三十年住んだ武蔵野の地を離れ、妻とふたりで都心へと居を移した「私」。ゆっくりと確実に変化していく日常と、家族の形。近づいてくる老いと沈殿していく疲れを自覚しながら、相変わらず取材旅行に駆けまわる毎日だ。そんなとき、古い友人の悪い報せが「私」を大きく揺るがせる…。『岳物語』から二十余年。たくさんの出会いと別れとを、静かなまなざしですくいとる椎名的私小説の集大成。
友近克也は父・善次郎が築いた馬牧場を出た。兄嫁となる女性に想いを残して…。行くあても帰る場所もない、ただ生きるための流浪の旅だった。町々にはびこる悪徒に、容赦なくとどめを刺す克也。暴力と策謀が渦巻く荒野の果てに、安住の地はあるのか?北海道開拓期。過酷な運命に立ち向かう家族、そして男女を描く連作短編集。
首相公選制がしかれた近未来の日本。投票を明日に控え、かつてサッカーのスタープレイヤーだった政治家・長田が圧倒的な支持率で最高権力者になろうとしている。人々はこの清新で危険なにおいのするカリスマに夢中だ。だが、果たしてこの選択は正しいのだろうか?わたしたちはどこへ向かっているのか?忍び寄るファシズムの空気を濃厚に描く、第25回野間文芸新人賞受賞の傑作小説集。
秦の不敗の将軍、章邯に包囲された絶体絶命の魏王を救うべく、田〓(たん)率いる斉軍は、臨済へと向かった。秦軍は二十万、迎え撃つ魏斉連合軍は十万。田〓(たん)は、章邯の自在な用兵、精緻な機略の前に苦戦を強いられる。田横は義を以て楚に援兵を乞い、楚の勇将項梁は、項羽・劉邦・黥布らを率いて、章邯の大軍と激突する。楚漢戦争前夜、帝国秦の終焉を圧倒的迫力で描く、驚天動地の第三巻。
無辜の民をも殱滅する残虐無比の項羽と、陰謀と変節の梟雄劉邦。中国の人口を半減させたといわれる楚漢戦争が勃発した。緒戦こそ劉邦は項羽に敗れたものの、劉邦の壮大な包囲網に項羽は追いつめられていく。人民にその高潔英邁を尊崇された不撓の人、田横の正義さえも、漢軍の奔流に呑まれていく。著者をして「理想像」と言わしめた不屈の英雄を描く傑作、明鏡止水の第四巻、完結編。
渓流釣りに来た片倉は一瞬の目眩ののち、一緒に来たはずの上嶋を見失い、手首の生えた岩を発見する。その手首には上嶋と同じ傷が。そこへ持ち物までそっくりの「もう一人の自分」が現れた!混乱し、現場から逃走する片倉。携帯電話も機能しない。おれはこの世界に適合していないのか!?片倉に生じたゆがみが次々と広がっていく…。気鋭が描く幻惑の意欲作。
私は彼女の事を何も知らなかったのか…?大学へ通うために上京してきた春海は、京都からきた麗子と出逢う。お互いを干渉しない約束で始めた共同生活は快適だったが、麗子はやがて失踪、跡を追ううち、彼女の二重、三重生活を知る。彼女は名前、化粧、嗜好までも替えていた。茫然とする春海の前に既に死体となったルームメイトが…。
知る人ぞ知る裏(マイナー)な名刹・大悲閣千光寺に、今日も珍妙な事件が持ち込まれる。元裏世界の住人にして寺男の有馬次郎とマイナー新聞の自称「エース記者」折原けい、自称「裏京都案内人」のスチャラカ作家・ムンちゃんが、難事件の謎を追う!?誰も知らないミステリアス京都と、古都ならではの謎解きの妙味、たっぷりとご堪能ください。
「あいつが浮かれ蝶々なんぞにひっかかるものか」麻生家に通う途中で感じた熱い視線。新内流しの娘、お蝶の思惑を量りかねる麻太郎だったが…。大人の入り口に差しかかった麻太郎、花世、源太郎たちが大活躍。
母さんが死んでから、初めての夏…僕は、“ともだち”を見つけたー。バルゴン、ジャイガー、バイラス、ジグラ、ギロンー“昭和”怪獣も登場する、新たな『ガメラ』ストーリー。
浅見が五島列島で知り合った親切な初老の元刑事。娘夫婦との同居を前に、彼は静岡の海岸で死体となって発見された。清貧の元刑事のささやかな人生を、突然断ち切ったのは誰か。怒れる浅見に突きつけられる、過去最大の難問。百番目の事件に、大団円はあるのか。
なんにもない田舎で暮らす小学生センリ。でも気になることは山ほどある。クラスメイトとの微妙な距離感、となり町での発見、垣間みるオトナの事情…。“明るい子ども”でいるため、言葉にできなかった7つの思い。人生で一番長い6年。小学生センリが初めて知る、不安、痛み、憧れ、恋。『檸檬のころ』で注目を集めた24歳の新鋭が、新しい発見に満ちた日々とほろ苦い成長の過程を、細やかに掬い上げる。