2007年8月発売
愛ー、それは気高く美しきもの。そして、この世で最も恐ろしいもの。毒島半蔵の歪んだ妄想が、この世を地獄へと塗り替える。虚ろな心を抱える吉美が、浮気を続ける亭主に狂気をぶつける。傷を負い言葉を失った、薄幸の美少女・まゆか。実の娘に虐待され続けている、寝たきり老人・英吉。暴風のような愛情が、人びとを壊してゆく!新堂冬樹にしか描けなかった、暗黒純愛小説集。
「世界の果てにある食堂」を舞台にした物語を書きあぐねる吉田君は、奇妙な連作小説を予告して消息不明となった謎の作家=ジュールズ・バーンを知る。「物語」の入り口を探し求める吉田君がいつしか迷い込んでいたのは、バーンが企んだ連作の世界なのかー。ビートルズの“ホワイト・アルバム”を軸にしてシンクロする過去と現在。16+1の短篇のリンクが「物語」の不思議を奏でる。
霊山・吉野の桜守と、大坂・堺の大店の娘。決して結ばれることのないふたりを繋ぐのは、吉野の山に咲き誇る満開の桜-。ひとりの男の命を懸けた愛の証。決してかなわぬあの女への想い。長年にわたる純愛を貫いた男女を描く、せつなくも美しい恋物語。
剣術と柔術を組み合わせた刀法起倒流の遣い手、瀬戸七郎太。ある事件がきっかけで、南町奉行所与力から同心に格下げされた。元同僚からは蔑まれ、不慣れな仕事の辛さに悲哀を感じる日々。給金が減ったのに愚痴も言わぬ妻の顔を見るにつけ、心が重い。極悪人をぶちのめし、手柄を立てて与力に戻る!怒りの覚悟を胸に今日も本所深川を歩き回る。やがて持ち前の腕と推理で難事件を次々に解決していく七郎太だが、奉行所の反応は意外と…。話題の著者の新シリーズ。
2007年は竜騎士07! 大ヒット同人ゲーム「ひぐらしのなく頃に」が、全面改稿を経て、その原点に限りなく近い小説版として講談社BOXに登場!!
薬学の研究に没頭した挙げ句、夫と娘を失った栂原晃子は、新たなテーマを求めてインドネシアに向かうが、飛行機墜落事故に巻き込まれる。だが奇跡的に助かった晃子は、山奥の村で神秘的な歌声を持つ少女と出会い、驚異的に快復した。一方、町では猟奇的な殺人事件が発生していたー。伝説と神話に彩られたスペクタクル巨編。
1969年。安田講堂事件が起き、東大は入試中止。アポロが月に行き、ビートルズが「アビーロード」を、ローリング・ストーンズは「ホンキー・トンク・ウイメン」をリリースした。ベトナム反戦運動が高まり、基地の町・佐世保で、僕は高校をバリケード封鎖したー。明るく楽しく生きる青春のエネルギーに満ちた日々を描いた永遠の古典。
故郷を捨て、過去を消し、ひたすら悪事を働いてきた日系ブラジル人の高木耕一は、コロンビア人の出稼ぎ売春婦DDと出逢う。気分屋でアタマが悪く、金に汚い女。だが耕一はどうしようもなくDDに惹かれ、引き摺られていく。DDのために大金を獲ようと、耕一はかつて自分を捨てた仲間ー裏金強奪のプロである柿沢に接触する。
恋人との大喧嘩の果て、薬の過剰摂取で精神病院の閉鎖病棟に担ぎ込まれた明日香。そこで拒食・過食・虚言・自傷など、事情を抱えた患者やナースと出会う。普通と特別、正常と異常…境界線をさ迷う明日香がたどり着いた場所はどこか?悲しくて笑うしかない、絶望から再生への14日間を描いた、第134回芥川賞候補作。
高校生・向井広幸は、公園で戸浦という男と知り合う。やがて彼が指名手配犯であることを知った広幸は警察に通報するが、戸浦は察知して逃亡する。その事件から4カ月後、戸浦は広幸の恋人を彼の目前で殺害して行方をくらます。戸浦を追う広幸が執念の追跡の果てに見つけたものは…。人の心の絆の強さを問う長篇ミステリー。
両親の死を機に、東京を引き払い、信州でひとり暮らす姉のそばへ越してきた妹夫婦。両親の気配の残る小さな宿を引きついで、おだやかな日常が始まったように見えたが、そこでは優しさに搦めとられた、残酷な裏切りが進行していたー精緻な描写と乾いた文章が綴るいびつな幸福。うつくしく痛ましい愛の物語。
ところは中国、栄華を極めた大貴族の邸内に築かれた人工庭園「大観園」。類稀なる貴公子と美しき少女たちが遊ぶ理想郷で、奇々怪々な連続殺人が勃発します。衆人環視の中で消え失せる犯人。空を飛ぶ被害者…。中国最大の奇書『紅楼夢』を舞台にした絢爛たる犯罪絵巻は、中国古典ファンも必読の傑作ミステリー。
「これは奇跡に関する物語だ。」-洪水に苦しむ人々を救うため、愛する妻が“亡者”と交わした取引とは?鮮烈な余韻を残す表題作ほか、謎の圧死をとげた伯父の家での不思議な邂逅を描く「やもりのかば」、裏の空き地で少年が体験する不条理「夏の軍隊」など、美しく奇想天外な13の物語。
『連れてこい。俺の花嫁を、ここへ』少女の前に開かれた世界は、生まれたときから既に欲望と憎悪で塗り固められていた。「鬼の花嫁」の刻印を持つ少女「神無」は、16歳の誕生日に美しくも冷酷な鬼、「華鬼」のもとへ嫁ぐよう告げられる。なかば連れ去られるように向かったその先には、多くの鬼とその花嫁たちが生活する学園があった。鬼や花嫁たちの嫉妬が渦巻き、奸計がはりめぐらされるその学園で、神無は更なる地獄をみる。彼女に害をなそうとする鬼、命をかけて護る鬼、そして、彼女を疎ましく思う華鬼。さまざまな想いが交じりあう中、華鬼の残酷なまなざしの奥にひそむ苦しさを感じ取った神無は、知らず知らずのうちに彼に惹かれていくが…。
婚約破棄、リストラ…不幸のどん底に落ちた氏家譲は、ロック・スターになったという旧友・阿久津武蔵に再会し、彼の愛人の相手をするよう命じられる。さらに、武蔵が経営する怪しげな会社「ハピネス計画」で働くことになった譲は、ある謎めいた女性に遭遇して-。
60年代から現在に至る作家の全貌を求め、中短篇を編んだ。『幼い廃園』(デビュー作)、『石のニンフ達』(文學界新人賞受賞作)、『誰かが触った』(芥川賞受賞作)、『やわらかい兇器』、『小舟の上で』、『待っている時間』、『私小説家の私事』を含む33篇。